掻痒感に襲いかかる貞操帯の振動に、絹香は腰が抜けたようになってしまった。
「う、ううっ」
懸命に手で口を覆う。
さもないと、声が出そうなのだ。
脳天から突き抜けそうな気持ちよさに、絹香は完全に四つん這いの状態だ。
真下では、たったいままでいた一階の廊下に戻ってきた野球部の男子が、どやどやと部室に向かっていくのが聞こえる。
今度こそ、音のまやかしではない。本物だ。
絹香は怖くてがくがくと震えてしまっていた。
とにかく、SS研まで行かなければ……。
絹香は階段を這い進む。
しかし、手に持っている首輪の鎖がついつい床に当たって、何度も金属の音が鳴る。絹香はその度に、身体が凍りつくかと思うような恐怖に襲われた。
やっと、一番上まで辿り着いた。
一方で、激しい便意はもう限界になりつつある。
必死で肛門の筋肉を締めつけているが、もう一瞬でも緩めれば中身が噴出しそうだ。
もう、もたない……。
幸いにも二階の廊下には誰もいなかった。
だが、どの部室に人がいて、そこから誰かがいつ出てくるとも限らない。
そうかと言って、ここにいても同じだ。
もう進むしかない。
迷っても無駄だ。
絹香は決心した。
しかし、貞操帯の振動はいまでも激しく絹香を責め続けている。
立とうにも、両膝に全く力が入らない。
仕方なく、そのまま四つん這いで進む。
いずれにしても、自分でも気が狂わないのが不思議なくらいの恐怖だ。
だが、一方で、絹香は自分が燃えたぎるほどの甘美感のうねりに襲われてもいることがわかっていた。
このスリル……。
この惨めさ……。
この快感……。
ほかの生徒のいるかもしれない学園の廊下を素っ裸で這う自分に、絹香は確実に酔っていたし、この極限の羞恥に神経が麻痺しかけてさえいる。
実際のところ、貞操帯によって隙間なくきつく締めつけられているはずの股間からは、それでも抑えきれない股間の樹液が内腿をびっしょりと濡らしていた。
やっとのこと、文化部棟に向かう二階の渡り廊下の手前まで辿り着いた。
ここは、廊下の両側が、解放されたちょっとした休憩場所になっていて、いくつかの長椅子と飲み物などの自動販売機がある。
絹香は、とりあえず、渡り廊下に面する扉の窓から、向こうの文化部棟を見た。
絹香に絶望感が襲う。
運動部とは異なり、向こうの文化部棟では、いまでもかなりの生徒が廊下にもいた。
学園の文化部発表会は今月末であり、もう一箇月足らずである。
運動部と掛け持ちの生徒もいて、そんな生徒たちも、いまの時期は発表会の準備で忙しい。
平素よりもかなり多いのだ。
そんな生徒で廊下は溢れている。
無理よ……。
真夫、助けてよ……
許して……。
絹香はここにはいない鬼畜男の名を必死で心の中で呼んだ。
しかも、だんだんと便意は切迫して来る。絹香は目の前が真っ暗になる気持ちになった。
そのときだった。
運動部棟の二階の反対側の渡り廊下の扉ががらりと開かれる音がした。
そして、かつかつと靴音を響かせて、誰かがこっちにやって来る。
絹香は心臓が止まりそうになった。
来ないで──。
絹香は必死で祈った。
だが、運動部棟の向こう側は、絹香も活動している生徒会室もあれば、職員用の施設などもある。生徒の各種委員会の部屋もあるし、教場棟も向こう側だ。
従って、そっちからやって来たということは、運動部棟そのものに用事があるのではなく、文化部棟側に通り抜けようとしている可能性が高い。運動部の活動はもう終わりかけなので、いまこの棟に新たに用事がある者は少ないだろうからだ。
すると、必ずここを通る……。
絹香は今更ながら、ここではなく階段の横にあったトイレにでも隠れればよかったと思った。そうすれば、最悪個室に隠れているということもできただろう。
漏らしても、貞操帯を水で洗うことだってできたかも……。
しかし、もう無理だ。
人が来る……。
絹香は片手に貞操帯の操作具。片手に首輪に繋がった鎖を握りしめて、ただただ長椅子の陰で震えていた。
足音がだんだん近づく。
やはり、中央の一階に降りる階段には向かわずに、こっちの文化部棟に向かってきた。
そして……。
足音がすぐそばでとまった……。
絹香は顔を伏せた。
息を飲む声がした。
「お、お嬢様……?」
その声に、びっくりして顔をあげた。
そこにいたのは、絹香の従者生徒である双子のひとりの松野|梓(あずさ)だ。ルビミス
そう言えば、委員会で遅くなるとか言っていたっけ……。
「な、なにをしているのです?」
梓は目を丸くしている。
しかし、最悪の結果は免れた。ほんの少しの安堵も沸き起こる。
「な、なにって……」
どう説明していいかわからない。
「だ、だって、こんなところで裸で……。服はどうしたのです?」
「……プ、プレイよ。う、ううっ……」
仕方なく、そう言った。
「プレイ?」
梓は唖然としている。
しかし、絹香はさっと閃いたものがあった。
「お、お前、命令よ……。せ、制服を……、はあ、はあ……、ぬ、脱ぎなさい。わたしに……貸すのよ」
そう言った。だが、少しでも油断すれば、振動で責め立てられている気持ちよさで、いやらしい声が出そうだった。絹香はそれを一生懸命に耐える。
それはともかく、ここで梓の制服を借りれば、文化部棟の奥のSS研の部屋まで辿り着くことができる。
その代わりに、梓は下着姿になるしかないが、それはいまの状況では仕方がない。
「な、なんで……」
梓は困惑している。
しかし、絹香は身体を両手で隠しながら梓を睨んだ。
「い、言うことを……きくのよ。さ、さもないと、お前の写真を……ネットに……ば、ばらまくわよ」
絹香には従者でもある双子を調教して撮影したふたりの恥ずかしい写真が無数にある。そのデータはパスワードをかけて、寮のパソコンの中に保存している。あれがある限り、絹香の従者の双子は、絹香には逆らえないのだ。
梓の顔がさっと蒼くなった。
「わ、わかりました……。で、では、トイレにでも……」
梓は諦めたようだ。
しかし、絹香は首を横に振った。
「い、いま、こ、ここで脱ぎなさい──」
声を荒げた。
もう限界なのだ。
トイレになんて逆戻りしたくない。
「わ、わたしに服を貸したら、お前はトイレにでも隠れてなさい。あ、後で迎えに行くから──」
本当に迎えに行けるかどうかは知らない。絹香だって、真夫の鬼畜な遊戯を強制されている最中なのだ。しかし、いまはなにを誤魔化してもいいから、梓の制服が欲しい。
「わ、わかりました……」
梓は絹香のそばまで来ると、抱えていた荷物をおろして、制服のスカートと上着を脱ぎ始める。
それを順に手渡してきた。
従者生徒用の灰色の制服だがいまはどうでもいい。また、まだ一年生の梓は、絹香に比べれば、ちょっと小柄だ。だが、入らないことはないと思う。それもどうでもいい。
絹香は梓の制服を着こんだ。
首輪は目立たないように、上衣の内側を通して服の下側から出して隠し持つ。
いまだに貞操帯は激しく動き続けている。
最後に梓をちらりと見た。梓は長椅子の陰で小さくなって下着姿を隠している。
とにかく、SS研に……。
壁にもたれかかるようにして、必死に立つ。
だが、振動で腰が抜ける。
立てない……。
「あ、ああっ」
絹香は崩れ落ちて、泣いてしまった。
その瞬間、なぜか急に貞操帯の振動が止まった。
梓がなにか声をかけた気もするが、絹香は考えることなく扉を開けて、向こう側に出た。
渡り廊下を通り……、いよいよ、文化部棟だ。
ほかの生徒たちが立ち話などをしている横をよろけるようにして通り抜ける。
幸いにも、絹香であることに気がつく者もいないし、気に留める者もなかった。
やっとのこと、最奥のSS研に着く。
安堵のあまり脱力しそうになるのを我慢して、絹香は扉を開けようとした。
開かない……。
鍵が締まっている。
なんで──?
『絹香、やっと、そこに来たね。だけど、残念ながら、俺たちはそこにはいない。君のことは監視カメラで見ている』
耳から声がした。
真夫の声だ。
ずっとイヤホンを耳に入れっぱなしにされていたのだ。
見回すが周囲には真夫たちはいない。監視カメラのようなものもない。
しかし、少なくとも、この扉の向こうにいる気配もない気がする。確かに、向こう側には人気がない。
『……だけど、従者から服を取りあげるなんて反則だよ。これは絹香のゲームなんだからね……。とにかく、服は返しておいで。そして、さっきの梓の命令に従うんだ。本当のゴールの場所は梓が知っている』
声が消えた。
愕然とした。
まだ、どこかに向かわされるのか……?
そして、それよりも驚愕するのは、梓の命令に従えと指示を受けたことだ。
この「遊び」にまさか、梓が関わっている?
なぜ──?
どうして──?
しかし、迷っている暇はない。
本当に洩れそうだ。
絹香は仕方なく、さっきの廊下を逆に戻る。
速足で進みたいのだが、もう、それもできない。
絹香はなんとか、再びさっきの運動部棟の自販機の場所まで戻ることができた。
「来ましたね、絹香様……。いえ、絹香……。じゃあ、制服を返してもらいましょうか」
梓は相変わらず下着姿で小さくなっていたが、絹香が戻ってくると、にやりと挑戦的な笑みを浮かべて、絹香を睨んだ。
そのとき、絹香ははっとした。
梓の両手首と首に、絹香の両手首にある者と同じ金属の輪が嵌まっていることにやっと気がついたのだ。
さっき、かおりは、あれは真夫の奴婢の印だと言っていた。かおりにもあったし、かおりによれば、真夫は絹香を犯したときに、首輪についても嵌めるだろうと言っていたのだ。
しかし、目の前の梓には、もう首輪がついている。
まさか……。
それにしても、梓はおかしい。
たったいま、梓は絹香のことを呼び捨てにした。
それは、いままであり得なかったことだ。
「早く、返してよ、絹香──。お前にはこれを準備しているわ。それを裸の上に来なさい」
梓は荷からレインコートを取り出して、絹香に放り投げた。学園のものだ。
だが、それよりも、梓の態度は信じられない。
絹香は呆然としてしまった。
「早くしなさいよ。こうしてあげるわ。残り全部の浣腸液を流し込んであげる」
梓はさらに荷から操作具のようなものを取り出し、ぐっとボタンのようなものを押し込んだ。しかも、押し続けている。
「んぐううっ」
絹香は両手でお尻を押さえて崩れ落ちた。
貞操帯の中でもの凄い激流となって、浣腸液がお尻の中に流れ込んできたのだ。腰の横に密着していたタンクがみるみる軽くなるのもわかった。
梓がけらけらと笑う。
そして、立ちあがると、絹香から貞操帯の振動の操作具を取りあげて、一気に全開までダイヤルを回したのだ。
「うはああっ」
歯を喰いしばっても洩れ出る悲鳴が迸った。
絹香は完全に脱力してしまった。
そして、あっという間に達してしまう。
出る……。
もはや、便意に耐えることなどできず、完全にお尻を緩めた状態にしてしまった……。
しかし、出ない。
限界まで排便が襲っているのはわかるが、辛うじて貞操帯の直前でとまっているようだ。
「浣腸液はあたしが操っていたのよ。流すたびに、お嬢様が顔を蒼くするのが愉しかったわ……。ところで、その貞操帯は肛門栓にもなっているそうよ。本当はしたくても、貞操帯を外さないと出せないんだって」
梓は笑い続ける。
何がどうなっているか、さっぱりとわからないが、ともかく、この「鬼畜ゲーム」には、絹香の従者生徒であり、絹香の奴婢のうちの、少なくとも梓も関わっているということだ。
「ほら、返してったら」
梓はうずくまっている絹香から制服を無理矢理に脱がせて、もう一度着る。逆らいたくても、力が入らなくて、まったく抵抗できない。
絹香はまた貞操帯だけの素裸に戻った。
投げられたレインコートを着ようと思うのだが、振動がきつくて指も動かない。
「んんっ、んんっ、んんんっ」
ぶるぶると震えた。
また、いきそうなのだ。
絹香は股間を両手で押さえて、身体を弓なりにしてしまった。
「あらあら、さすがは、マゾの絹香ね……。ねえ、あたし知っていたんですよ。本当は絹香がマゾだってこと……。マゾなのに、あたしたちを調教して、エスの振りをしていたんですよね。だけど、もう終わり。これからは、あたしがご主人様です。渚(なぎさ)と絹香は、これからはあたしが飼育する。ちゃんと、真夫さんの許可は受けているし」
梓は言った。
ぐるぐると疑念が頭を走る。
真夫の許可──?
梓が、渚と絹香のふたりを飼育する──?
そう言った?
しかし、もうそれ以上考えられなかった。
またもや襲いかかってきた絶頂感に、絹香はこの鬼畜ゲームで数回目になる昇天をしていた。
「んふううっ」
慌てて片手で口を押さえたが、それでも大きな声が迸った。
すると、突然に股間に振動が静止した。
絹香は脱力した。
そして、顔をあげると、梓はさっき振動を全開にした操作具とは別の操作具を手にしていた。それで振動をとめたのだとわかった。
もう完全に確信するしかなかった。
真夫は、この梓に絹香をいたぶることを指示して、さまざまなものを手渡しているのだ。
「さあ、行きましょう。排便をさせてあげます。そして、真夫さんのところに連れて行きますね」
梓が絹香に浸けられている首輪に繋がっている鎖を握る。
そして、ぐいと引っ張って強引に立たせた。
「んぐうっ、ひ、引っ張らないで──」
絹香は悲鳴をあげた。
とにかく、よろけながらも必死で立つ。そのとき、慌ててさっきのレインコートを掴んだ。
「ま、待って、梓──。も、もっと、ゆっくり……」
絹香は哀願した。
だが、梓の嘲笑が戻ってきた。
「絹香のために急いでいるのよ。そんな恰好、誰かに見られたんですか」
梓は足を遅くする様子はない。
いまだに腰に力の入らない絹香は、へっぴり腰になりながらも、懸命に歩くしかなかった。
また、歩きながら、渡されていたレインコートを着る。
「あっ」
思わず声をあげた。
意地の悪いことに、コートのボタンは全部切断されていたのだ。
仕方なく、両手で前を押さえるようにして歩いた。
梓は絹香を反対側の渡り廊下まで連れて行き、そこから外の階段で一階に絹香をおろした。
そのまま、棟の後ろの裏の広場のような場所に向かった。
外はもう夜だが、学園内は防犯灯がたくさんあり、暗闇ではない。
「ど、どこに……?」
絹香は喘ぎながら訊ねた。
だが、返事はない。
やがて、物置の陰のような場所に着いた。
そこにも防犯灯があり、その真下には大きな穴が開いていた。
また、その防犯灯の柱に金具が取り付けられていて、そこにはその金具にぶら下がった手錠があった。
さらに、防犯灯の穴に向けられているビデオカメラが三脚で立てられている。しかも、前後に二台。
「ほら、穴を跨いで立つのよ」
レインコートを剥がされて、どんと押し出された。
なにをさせられるのかがわかって、さすがに絹香は逃げようとした。
「いやあ」
しかし、数歩進んだところで、突如としてまたもや貞操帯の振動が襲いかかった。
腰を落としてしまって、ふと見ると、梓が操作具を手に持っている。それを動かしたのだとわかった。
「世話のやけるいままでのご主人様ねえ……。もう、観念しなさいよ。絹香が、本当はマゾだったことは、モニターでもわかったわ。売店でオナニーしたときは、本当にのぼせちゃってたじゃないのよ。気持ちよかったんでしょう? なんだかんだといっても、こうやって侍女のあたしに苛められることで興奮しているんでしょう」
梓はそう言いながら、絹香の腕を掴んで引き戻し、強引に立たせて、両手首を防犯灯にぶら下げらた手錠に嵌めてしまう。
もう絹香はカメラの前から逃げられなくなってしまった。
穴は真下にあるので、どうしてもそれを脚で跨ぐような体勢になる。
それにしても、さっきの梓の言葉……。
いままでずっと虐げていた梓に、鬼畜に苛められて、確かに絹香は興奮していた。
それは事実だった。
絹香の身体は便意のおこりとも、振動による気持ちよさとも異なる、嗜虐の悦びに激しく打ち震えもしていた。
惨めだ。
しかし、この惨めさがいい。
嫌がりながらも、逃げられない鬼畜……。
絹香はまるでなにかに酔っているような朦朧とする心地に襲われていた。
「さあ、始めようか」
梓がカメラのスイッチを入れる。
そして、荷からまたもや操作具を出した。
カチリ──。
貞操帯の背後で電子音が鳴った。
締められていた貞操帯が緩むのがわかった。
「ご開帳──」
梓がお道化た口調で手を伸ばして、貞操帯を引っ張った。
振動を続けていた貞操帯が離れるとともに、お尻に刺さっていた浣腸液の管も抜ける。
「ああああっ」
絹香は泣き声をあげた。
瞬時に液便がお尻から噴流して、固形物とともに真下の穴に向かって流れ落ちたのだ。それだけでなく、勢いのある液便は背後の防犯灯の柱にかかって汚しもしている。
「だめねえ、ちゃんと穴にも入れられないの、絹香お嬢様?」
梓がわざとらしく揶揄する。
絹香は興奮で打ち震えた。
やがて、やっと排便が終わった。
排便だけでなく、おしっこもしたが、そのすべてを撮影されてしまった。
「さあ、身体を洗ってあげるわ。絹香が汚した柱もね。だけど、その前に言いなさい。あたしたちの写真を開くパスワードを──」
梓はカメラのスイッチを切ると、物置の横の水道からホースを伸ばしてきた。これもあらかじめ準備をしていたのだろう。
絹香は項垂れたまま、双子の痴態の写真データーのフォルダのパスワードを口にする。
「ありがとう。じゃあ、それはすべて消去するわね。新しくいまの映像データを別のパスワードを使って保存するわ。それがある限り、絹香お嬢様は、あたしのペットよ。真夫さんは、絹香を奴婢にするつもりのようだけど、あたしの飼う雌犬にもするわ。いいわよね──。これも知らなかったと思うけど、実は渚もあたしのペットなのよ。これからは、絹香お嬢様もね」
「はい……」
絹香は小さく言った。
密かな、心からの悦びとともに……。