「“拷問の歴史”でいいじゃないのよ。それになんの不満があるのよ」
かおりが面倒くさそうに、目の前の白紙の紙を中央に向かって中央に弾く。
真夫は苦笑した。
「そういうわけにはいかないさ。拷問の歴史が展示のテーマなのは確かだけど、パンフレットに載せるインパクトのあるキャッチフレーズで人目を引きたいのさ。興味を持てば、集客もある。できるだけ、見に来る者を増やしたい。それが目的なんだから」
「そうよ。そもそも、どんなものでもいいから、ひとり二個ずつのアイデアを出そうと決めたのに、なにも出さないなんて、なによ、かおり――」
絹香も不満そうに言った。
学園の図書館内に設置されている会合用のテーブルが集まっている研修ルームだ。
十人程の生徒が囲めるテーブルが二十個ほどある、かなり広い部屋である。
その一番奥の隅にある一画に、真夫とかおりと絹香が集まっていた。
今日の午前中は、三学年の全員が総合学習時間ということになっていて、秋に発表する自学研鑽研究の論文発表に向けた自習をすることになっている。
もっとも、半月ほどに迫っている「文化発表会」のことがあるので、文化部に所属する生徒は、この時間を活用して、その準備をするために集団も多い。
真夫たちもそうだ。
三人で集まっているのも、「SS研」としての展示準備を進めるために、この時間を利用しているというわけだ。
まあ、総合学習として位置づけられている個人研究は、どんなテーマでもよく、真夫たちの部も、表向きには「Social・Science(社会科学)研究部」ということになっていて、文化部活動の内容を、個人論文の発表に繋げられないこともない。
だから、全く別のことをやって、さぼっているというわけでもないだろう。
ところで、秀也の愛人クラブから、真夫の愛人クラブという体裁になった「SS研」だが、いまの構成部員は、真夫のほかに、両横にいる「白岡かおり」、「西園寺絹香」のふたりに、絹香の侍女である双子の「松野
もうひとり、秀也時代に部員だったという「前田明日香」もいるが、彼女については、いまのところ、真夫は手は出していない。
いずれにしても、真夫の父であることがわかった豊藤財閥の総帥の豊藤
期限は半年であり、その間に条件を満たせなければ、玲子さんをとりあげるという。
その条件の十人に、学園の生徒ではない、あさひ姉ちゃんこと「朝比奈恵」と、玲子さん、つまり「工藤玲子」を含めていいのか訊きそびれてしまったが、とにかく、あと六人ほどの女を集めないとならないのだ。
さもないと、玲子さんを龍蔵に奪われてしまう。
それに反抗する力は、真夫にはない。
しかし、玲子さんは、すでに真夫の女だ──。
何者であろうとも、余人に渡すつもりはない。
真夫はすでに、十人の奴婢を集めることを決心している。
「だけど、いくら案を集めても、選ぶのはひとつでしょう? 真夫も絹香も考えたんだから、そっから選べばいいじゃない。わたしのは却下よ。幻の案だけどね」
かおりが悪びれることなく笑った。
「もう──」
絹香が怒ったように頬を膨らませる。
真夫はその自然体の表情がなんとも嬉しくなり、思わず笑みを向けた。
すると、真夫の視線に気がついたのか、ぱっと絹香が顔を赤くした。
いずれにしても、学園では生徒会長であり、学園の模範的な優等生ということになっている絹香が、これまで他人に見せることなどなかった表情だろう。
しかし、目の前にいる、およそ欠点がないと誰もが思っている絹香は、実は重度のマゾだ。
その性癖をあからさまにしてやり、真夫に奴婢にしてやったことで、絹香はまるで憑き物が落ちたかのように、普段でも感情を剥き出しにした顔を見せるようになった。
いい傾向だ。
「いいじゃない。じゃあ、さっさと選びま……。ううっ」
「あはあっ」
絹香とかおりが同時にがくりと身体を震わせて、股間に両手で押さえた。
ふたりの股間に嵌まっているディルドが振動を開始したのだろう。
実のところ、ふたりの股にはディルド付きの貞操帯を装着させていて、それはいつでも遠隔で振動をさせることができるようになっている。
しかも、ふたりの股間に嵌まっている淫具は同じ信号で動き、ここにはいない
それで、いまも、突然に襲われた淫らな振動に身体が反応してしまったというわけだ。
だが、大きな空間の研究ルームの隅とはいえ、衝立で視界を隠されているだけの人目のある場所だ。
最も近いグループは、誰もいないテーブルをひとつ挟んだ向こうだ。
ふたりが必死に、声を噛み殺して、身体を真っ直ぐにしようとしている。
しかも、この「遊び」をするのがわかっていたので、真夫は今朝はふたりを愛撫して責めるだけで、最後まで達しさせることはしなかった。
真夫に悪戯されて、あっという間に絶頂するのが日常になっていたふたりには、その「お預け」はつらかったみたいだ。
そして、そこに来て、ここにはいない相手からの遠隔のバイブ責めだ。
ふたりは、たじたじになっている。
「くっ」
「ふうっ」
ふたりが脱力した。
振動が静止したのだろう。
だが、安堵の表情とは別に、ふたりはちょっと切なそうに、スカートの中で太腿を腰り合わせるような仕草をしている。
さっきから繰り返されている振動の時間は、決して長時間ではなく、ふたりを焦らす程度の短い時間しかない。それでいて、それを繰り返されるものだから、堪ったものじゃないだろう。
「うう、もう許してよ……。ねえ、もう、これ外させて……」
かおりが机に上体を突っ伏させて言った。
真夫はほくそ笑んでしまった。
「そんなこと言っても、操作具を持っているのは、梓だ。一年生は普通に授業中だし、接触ができるのは、早くて昼休みだね。今日に限っては、ふたりの貞操帯の鍵もあいつに渡している。昼休みになれば、部室に集まることになっているんだから、それまで待つんだね」
真夫はうそぶいた。
しかし、それは嘘だ。
貞操帯を外す鍵は、真夫が持っている。
また、その気になれば、梓に渡している遠隔の操作具を無効にできる信号を、貞操帯に組み込まれている基盤に送ることもできる。
もちろん、それはするつもりはなく、授業のない今日の午前中については、こうやって愉しませてもらうつもりだ。
「そ、そもそも、あいつは、こいつの調教係でしょう。なんで、わたしまで、ああっ」
「んひっ」
またもや、振動に襲われたのだろう。
ふたりが再び、身体を反応させた。
「ああ、こ、ここも、う、動くの……、んぐうっ」
「うくっ、くくくっ」
しかし、様子がおかしい。
さっきまでは、まだ多少は余裕があった感じだったのに、ふたりとも事前に取り決めていたみたいに、口を手で押さえて、声を我慢している。
だが、それでも苦悶の声が漏れ出ている。
それほどにディルドの刺激のために駆け巡る感覚が鋭くて、甘美な刺激なのだろうと思うが、どうしたのだろう?
「あ、あいつ……」
かおりがぶるぶると身体を震わせながら、懸命に歯を噛みしめながら悪態をつくのが聞こえた。
真夫たちは、壁を背にして、三人で真央を中心にして並ぶように座っている。
絹香も我慢はしているが、かなり激しい反応になっている。
「どうしたんだ?」
真夫は思わず言った。
「ク、クリトリスが……、んぐうっ」
「はうっ」
絹香がそれだけを呟き、突然に脱力した。
かおりも同時だ。
一方で、真夫はまたもや、苦笑してしまった。
遠隔操作具は手渡したものの、責めのやり方は、ここにはいない梓に任せっきりにしていたので、どういう風に責めてくるのかは、真夫にもわからなかった。
だが、どうやら、股間のどの部位も自在に振動させられるようになっている貞操帯なのだが、ずっとクリトリスだけは避けていたみたいだ。
それを慣れた頃に責めてくるのは、なかなかにえげつない。
さっきから、深い刺激を与えずに、中途半端な刺激だけを連発してくるやり方についても、なかなかに堂に入った責めだ。
ずっと絹香の「ペット」として絹香の責めを受けてきただけの梓であり、本来は“
それにもかかわらず、ああやって、じわじわと追い詰めるやり方ができるのは、責め手として天性の才能があるのかもしれない。
「……ふうう……、ほ、本当にもうやめさせてよ、真夫……。こ、こんなの、も、もたない……」
かおりが泣きごとを口にした。
一方で、絹香はもうとろんと呆けた表情になっている。
マゾっ気の強い絹香だ。
完全に、できあがりかけている。
「そう言うなよ、かおり。それよりも、梓が一度責めさせて欲しいと言っていたぞ。特別に一対一でね。かおりと遊びたいってね。許可してもいいか?」
「じょ、冗談じゃないわよ──。あんただけでなく、なんでほかの奴婢に……、んひいいっ」
「んぐううっ」
またもや、ふたりが突っ伏した。
どこをどんな風に振動させられたか知らないが、これじゃあ、なんの話し合いにもならないな。
真夫は、今日、なにかの結論を出すのは諦めた。
そのときだった。
目の前に影が落ち、気がつくと、ひとりの女子生徒が真夫たちの前に立っていた。
「うわっ」
「えっ、明日香──」
真夫も驚いたが、ずっと淫具で責められ続けているかおりと絹香からすれば、驚愕よりも、恐怖がまさっている。
いま、この瞬間も、淫具は動き続けていると思う。そのタイミングで彼女がやって来たのだ。
しかも、とりあえず、耐えたとしても、やはりいつ淫具が動き出すかわからない。
この状況で話しかけられたくないだろう。
ふたりの顔が引きつっている。
一方で、真夫は目の前の女生徒の顔を知っていた。
一応は、SS研の部員ということになっている前田明日香だ。
絹香の友人であり、女子サッカー部の主将であって、文化部活動は掛け持ちだ。
まあ、秀也のSS研も、彼の愛人クラブというのは耳にしているので、本気で文化部活動をしていたわけじゃないだろうが……。
だいたい、秀也の愛人というのも、絹香を引き込んだときのことで、よくわからなくなった。
秀也に調教を受けていたはずの絹香だが、真夫が抱いたときには処女だった。
だったら、目の前の明日香についても、手を出していないということも考えられる。
本当に、秀也という男はわからない。
……とはいえ、この明日香だ。
随分と怒った顔をしているが、どうしたのだろう?
そして、やっと振動が終わったらしいふたりが脱力して、目に見えてほっとしている。
「ねえ、絹香、話があるの──。来てくれる」
明日香が真夫たちを無視して言った。
「なによ、あんた? あたしたちには、挨拶もなし?」
すると、かおりが横から口を挟んだ。
それにしても、このかおりも、ついこの間までは、大会社の社長令嬢ということで、それなりに猫を被っていたはずだが、真夫に対する冤罪事件を学園に報告され、処罰として、A級生徒の地位を取りあげられ、真夫の従者としてのC級生徒に落とされてからは、開き直ったかのように、素の自分を出している。
このぞんざいな人扱いは、飾りのないかおりそのものだ。
「ねえ、絹香、最近、ちょっと付き合い悪いよね。いいから来てよ」
明日香は、完全無視だ。
しかし、真夫はこの明日香が真夫のことを無視するどころか、ほとんどの意識を真夫に向けているということがわかった。
操心術を使うことで、真夫は、その気になれば、他人の感情や本音をに触れることができる。
それどころか、感情を増幅したり、鎮めたりすることで、操作することさえできる。
なぜか、突然にできるようになった真夫の能力であり、これこそが、あの巨大な豊藤財閥の総帥の血を引く後継者の証なのだそうだ。
いずれにしても、この明日香は真夫を無視することで、思い切り、真夫に強い感情を向けている。
つまりは、嫉妬だ。
どうやら、明日香は、真夫に対して強い悋気を抱いている。
これは面白いことになったかもしれない。
それにしても、嫉妬だって?
ふうん。
「ふうっ」
「くっ」
そのとき、タイミングよく、絹香とかおりの股間の淫具が動き出した。
ふたりが胸を喘がせ、ぐっと歯を噛みしめる動作をする。
「絹香は取り込み中だ。SS研の文化部発表があるから、キャッチフレーズを考えさせていてね。いまは無理だ。どうしても、話をしたければ、夕方に部室にでも来てよ。君も、一応はSS研に籍を置いているよね、前田明日香さん?」
真夫は明日香の意識をこっちに向けるために声をかけた。
すると、明日香が怒りの表情を真夫に向ける。
「あんたねえ、ちょっと生意気なんじゃない? 絹香は生徒会長だから、気を使って孤児のあんたの世話をしているのよ──。それをいいことに、連れまわすなんて、身の程を知ったら──? 絹香の家は名家よ──。本来であれば、あんたみたいな孤児が声をかけていい相手じゃないのよ──」
明日香が真夫を睨みつけたまま怒鳴った。
「な、なにを……はうっ」
明日香の物言いに、絹香がびっくりして口を挟んだ。
しかし、そのせいで、気を抜いてしまったのか、明日香の目の前で甘い声をあげた。
おかげで、明日香はやっと、絹香の状態が不自然なことに気がついたみたいだ。
「き、絹香?」
明日香はなにがなんだかわからずに、眼を白黒している。
「見た通りに、絹香は調教中だ。言っておくけど、絹香にこういうことを強要しているわけじゃないぞ。こいつはこういうことが好きなんだ。わかったら、外してくれ。さっきも言ったけど、放課後なら時間を作らせる」
「ちょ、調教って、馬鹿なことを──。しかも、呼び捨てって、西園寺家がどういう家なのか知らないの──?」
明日香が喚いた。
一方で、やっと振動がとまったみたいだ。
ふたりの身体の硬直が終わる。
「あ、明日香、あ、あとで話す……。話すから……」
絹香が立ちあがり、真夫に詰め寄らんばかりにしている明日香のあいだに割り込むように立った。
「身の程を知るのはあんたよ。あんたのこと思い出したわ。女子サッカー部の前田明日香じゃないの──。だったら、平民の家よね。身分がどうのこうのというならなら、あんたも、わたしや絹香には、口もきいちゃいけないんじゃないの?」
かおりが小馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
そうか……。
前田明日香は、普通の家なのか……。
「あ、あたしと絹香は──」
明日香がかおりを睨む。
「んくっ」
「あうっ」
だが、間髪入れずに、またもや梓による遠隔責めだ。
本当に容赦ない。
ふたりが反応する。
立っていた絹香など、刺激に耐えられずに、股間を手でおさえるようにして腰を落としかけた。
「おっと」
真夫は立ちあがって、絹香の身体を支える。
「口を開け。命令だ、絹香」
真夫は見せつけるように、明日香の目の前で絹香に口づけをする。
衝立があるので、目の前の明日香以外には、こっちのことは直接には見えない。
だが、明日香が絡むように声をあげたので、何事だろうかと聞き耳くらいはしているかもしれない。
「ええっ、んふうっ、は、はい……あああ、んああっ」
絹香が躊躇ったのは一瞬だけだ。
真夫が口づけをすると、絹香はスイッチが入ったみたいに、雌の顔になった。
目の前に明日香がいるというのに、真夫にされるまま貪るような深いキスをする。
真夫は横目で、明日香を見る。
操心術で心を読むまでもなく、かなり動揺している。
なによりも、絹香が抵抗することなく、真夫と舌を絡ませていることに、ショックを受けている。
やがて、口づけをしながら抱き締めていた絹香から力が抜ける。
振動が終わったのだ。
真夫は絹香から口を離した。
「ほ、本当に、あいつったら……」
かおりは、ここにはいない梓に小さな声で悪態をついている。
一方で、絹香は目を潤ませて真夫を見たままだ。
身体をぐったりと預けて、ここがどこで、周りに誰がいるのかも、頭から飛んでしまった感じだ。
男に支配されることを望み、依存する女……。
まさに、これほどに完全に真夫に没頭してしまうのは、マゾ女の絹香の真骨頂だ。
「わかってくれたか、明日香さん? じゃあ、夕方に……。さっきも言ったけど、明日香さんもSS研の部員だからね。部長としては、文化部発表会の準備もあるし、せめて、十分だけでも顔を出して欲しいね。掛け持ちで忙しいのはわかるけど……」
「ぶ、部長? あんたが?」
明日香がたじろいでいる。
そういえば、知らないのか。
すると、絹香がやっと呆けから回復して、明日香に顔を向ける。
「い、いまは、ちょ、ちょっと都合が悪いの……。ごめん──」
絹香は言った。
だが、まだ真夫に抱かれたままだ。
そして、逃げようともしない。
「わ、わかったわよ……」
明日香は、まだ心残りがありそうだったが、さすがに圧倒されたのか、動揺を隠せないまま立ち去っていった。
ほっとした様子の絹香を座らせて、真夫も座り直す。
すると、かおりが口を開いた。
「あ、あいつが七人目……?」
七人目というのは真夫の「奴婢」のことだ。
つまりは、恋人であり、あすか姉ちゃん、玲子さん、かおり、絹香、梓と渚の双子に次ぐ七人目ということだ。
玲子さんを奪われないために、学園内で十人の奴婢集めを強要されているという事情は、すでに女たちの全員が承知している。
「七人目になるのかな? それとも八人目、あるいは九人目だろうか? とにかく、俺は素質のない女性を無理矢理に奴婢にしたりしない。俺がSS研に入れるのは、心の底でそれを望んでいる女性をだけだよ」
真夫は言った。
その気になれば、覚醒した真夫の操心術を使い、どんな女であろうとも、真夫の奴婢にすることを望むように暗示をかけて、あっという間に十人でも、二十人でも、龍蔵の示す「奴婢」というものを集められるのかもしれない。
おそらく、龍蔵が望んでいる総帥候補としての素質はそれであり、目的のために、問答無用に人を支配してしまう冷酷さを望まれているのだと思う。
だが、真夫はそれはしたくない。
ひとりの男に支配され、大勢の女のひとりとしてかしずくなど普通の女が受け入れるわけがない。
だからこそ、真夫は心の底で、そういうことを受け入れる素地のある女性を探し、手を伸ばして、奴婢として集めようと思っている。
SS研でやっている「拷問展」はそのための試金石だ。
あそこには、文化部活動の名を借り、女が羞恥責めになったり、嗜虐されたりすることを連想するような絵画やレプリカの拷問具を集めている。
そんな展示に、興味を持つような女……。
被虐の快楽に弱く、そして、心の底に男に支配されたいという願望が隠れている女たち……。
真夫が捜しているのは、そういう女だ。
「それで、あいつは、あんたの眼鏡にかなったの?」
かおりが言った。
「どうかな? ただ、いまのところの候補者はこのふたりかな。さっきの明日香については保留だろうね」
真夫は内ポケットから、二枚の写真を取りだして、テーブルに置いた。
玲子さんに準備してもらったものであり、真夫が「獲物」として狙っている女だ。
すでにSS研の展示物は絵画を中心に、文化部棟の廊下に展示しており、それに興味深く通ってくる者たちだ。
それがふたりいる。
少なくとも、そのふたりは、SS研の前の廊下の責め絵に、性的欲望を刺激されている。
こっそりと観察している真夫には、それがわかっている。
つまり、奴婢候補というわけだ。
「ええ──?」
「えっ?」
かおりと絹香が写真を見て、声をあげた。
なにしろ、写真の一枚目は「相場まり江」──。
彼女は学園でも有名だ。
学園でもトップクラスの美少女である証である「四菩薩」に数えられ、芸能プロダクションにも所属するプロの女子高生モデルだ。
日本人離れした西洋人を思わせる体型と美貌で、世間でもかなりの有名人である。
真夫も、存在は知っていたが、ついこの間までは、彼女を自分の愛人にしようなどとは夢にも思わなかった。
だが、彼女はSS研の展示絵画に興味を持ち、ほとんど毎日通ってきている。
しかも、しっかりと欲情している。
真夫以外の誰も気がついていないが……。
「ええっ、だって、この方も? どういうこと? 奴婢候補って?」
だが、ふたりが驚いているのは、その相場まり江もそうだが、もう一枚の写真に対してだろう。
もう一枚の写真には、ひとりの男子生徒が写っている。
「金城光太郎」──。
真夫と同じS級生徒であり、今朝も寮で会話をした。
だが、男子生徒であり、奴婢候補だと告げられたふたりが驚くのは無理もない。
「あ、あんたって両刀?」
なぜか、かおりがたじろいだようになり、もともと赤かった顔をさらに真っ赤にしている。
「それはいいさ……。それよりも、絹香とあの明日香さんの関係を教えもらおうかな。嘘も隠し事もなしだ」
真夫は、絹香に操心術を注ぎ込みながら、ささやくように言った。
「は、はい……」
すると、絹香の目がすっと虚ろになった。