「玲子さん」
真夫はSS研の隠し部屋に入ってきた玲子さんを確認するとともに、壁の時計を見た。
昼休みは残り二十分弱というところだ。
「ふたりをおろしてやってくれ。ただし、股間は貞操帯で封印だ。ディルドはなしでいい」
「わかりました」
梓が手に持っていたリモコンを操作する。
絹香とかおりちゃんの股間を苛んでいた木馬の球体の回転がとまったのだろう。ふたりが木馬の上でがくりと身体を脱力させた。
梓と渚のふたりが、絹香とかおりちゃんの
やっと、淫らな木馬からおろされたふたりだが、動作はぎこちない。
ふたりとも、両手で制服の上から胸と股間を押えるようにするとともに、完全な内股で太腿をすり合わせるようにしている。
無理もないだろう。
真夫には、その理由もわかる。
股間に当たる部分を刷毛で刺激し続ける木馬に座っていたのは、十五分くらいのことだと思うけど、そのあいだに、すっかりとふたりとも身体の快感の疼きを燃えあがらせられてしまったのだ。
しかも、刺激されっぱなしで、絶頂はしていない。
くねくねと切なそうに身体を動かしている。
「いいモニターがとれたよ。ありがとう。やっぱり、木馬展示は無理そうだ。どうにも、エッチすぎるしね。文化祭展示では、三角木馬の実演展示はやめにするよ」
真夫はうそぶいた。
拷問具や刑具のいくつかを公開展示する予定はあったが、もともと、木馬責めのような過激なものを使う予定はなかった。
そう言って、無理矢理にやらせたのは、ただの口実だ。
怒るだろうか?
すると、かおりちゃんが急に顔をあげた。
「……そ、そんなのどうでもいい……。それよりも、や、やってよ……」
「んっ?」
挑むように真夫を睨みつけるかおりちゃんは、真夫の惚けるような返事に、口惜しそうに歯を噛みしめる仕草をした。
「わ、わかっているんでしょう──。あ、あと少し時間があるわ──。ここで、みんなの前でいい。わたしを犯してったら──。こ、こんなんでやめたら頭がおかしくなる──」
かおりちゃんが声をあげる。
「あ、あっ、わ、わたしも……」
慌てたように絹香が声をあげた。
真夫はふたりの可愛い姿に、思わずにんまりしてしまった。
「申し訳ないけど、玲子さんの話を聞かないとならなくてね。その代わり、今夜の相手はふたりにしてもらうよ。それまでお預けだ」
少し前までは、あさひ姉ちゃんと玲子さん、そして、かおりちゃんの三人だけだったが、いまは、絹香とその侍女の梓と渚の三人が真夫の相手として増えている。
さずがに、毎晩全員を相手にするわけにはいかないので、夜の遊びは数名ずつにしてもらっている。
その順番も一応は決めてもらっているが、真夫の気まぐれでどんどん変更になる。
かおりちゃんと絹香には、今夜の相手を命じることで、いまは我慢してもらおう。
こうやって甘えてもらえると、真夫も思わず、受け入れてあげたくなるが、しかし、今日の放課後は大切な「仕事」があるのだ。
その前に精力を使いたくない。
それに、こうやって追い詰められているふたりの姿に接すると、身体の中の嗜虐欲がどんどんと刺激されて、もっと苦しめてしまいたくなってしまうのだ。
もうちょっと焦らし責めの相手をしてもらおうと思った。
「そ、そんなあ……」
「ああ……」
かおりちゃんと絹香ががっかりと肩を落とした。
すると、にこにこと微笑んでいる梓がふたりに寄っていく。手に革の貞操帯を持っていて、渚も一緒だ。双子たちは、それぞれにひとつずつ貞操帯を持っていた。
木馬に乗せられる直前まで、ふたりが装着されていたものであり、嵌めると外からの一切の刺激を遮断するTバック式の電子ロックタイプである。
さっきの真夫の指示のとおり、内側のディルドは外されている。
ただ、クリトリスや局部、さらにアナルの部分には、大小の瘤が内側についていて、ディルドほどではないが、身に着けている限り、ずっと淫らな刺激を受け続けることになる。
はっきりとした快感を与えてもらえない分、むしろ、ディルドがなくなったことは、ふたりをさらに苦しめるかもしれない。
まあ、これも調教だ。
「はい、お姉様方、スカートをめくってくださいね。嵌めますよ」
梓が声をかける。
かおりちゃんも絹香ももう、文句は言わない。
諦めたように、股間をやや開いて、スカートを自分でめくり上げている。
「利尿剤は許すけど、でも、いずれにしても、おしっこはいまはお預けかな。装着が終わったら食事をしてくれ」
真夫は声をかけた。
奴婢たちの排泄は、原則として真夫の目の前でさせると決めている。
本音をいえば、プレイのとき以外には、自由にさせてもいいと思うが、操心術が自在になるにつれて、真夫には女たちの感情がだんだんと読めるようになってきている。
それによれば、絹香もかおりちゃんも、そして、目の前の玲子さん、さらにあさひ姉ちゃんは、真夫の許可なくトイレに行けないという命令が、とにかく嬉しいようだ。
むしろ、自由にしていいと告げると、失望するような感情が出現する。
そのため、意図的に本人のしたいときには排泄の許可を与えず、真夫の都合だけで排泄時間を決めている。
六人にいる今の奴婢たちの中のこの四人は、それが実は嬉しいみたいだ。
だから、そうしているのだ。
また、利尿剤のことを口にしたのは、ふたりへの調教を仕切っている梓が、さっきそんなことを口にしていたからだ。
しかし、さすがに利尿剤を飲ませてしまえば、まずは排尿を我慢することが不可能になる。
それでは、むしろ面白くない。
ぎりぎりのところを見極めて耐えさせる。
それがいいのだ。
「うう、はい……」
「わかりました……」
かおりちゃんと絹香がかすかに項垂れたのがわかった。
今日の午前中は、ディルド付きの貞操帯で遠隔調教を受け、昼休みはずっとさっきの木馬で寸止め責めのような責めを受け、再び貞操帯だ。
朝に一度してから一度も排泄はさせていない。
そろそろ、おしっこがしたい頃なので、真夫の命令にがっかりしたのだと思う。
まあ、病気にでもなったら困るが、それについては、定期的な検診をしっかりと玲子さんを通じてお願いしているので、問題になる前に処置できるから、好きなようにしていいと玲子さんにも言われている。
「さて、お待たせしました、玲子さん……。ところで、玲子さんはおしっこは、いいですか?」
アタッシュケースを抱えたままスーツ姿で真夫の横に立っている玲子さんに声をかけた。
玲子さんにもまた、ディルド付きの貞操帯を常時装着させている。
こっちについては、電子ロックを解除する信号の操作具を玲子さん自身が持っているので、必要により外すことはできるが、玲子さんは一度も勝手に外したことはない。
排泄も同様だ。
「ま、まだ問題ありません。で、でもできれば、わたしも後で可愛がっていただければ……」
玲子さんが顔を赤くした。
「……帰宅前に時間を作ります……。理事長室で待っていてください」
真夫がささやくと、玲子さんが微笑んだ。
頭がよくて実力もある隙の無い玲子さんだが、真夫以外には絶対に見せない飾りのない笑顔だ。
真夫も思わずもらい笑みをしてしまう。
「あ、ありがとうございます……。ところで、龍蔵様からのお言葉をお伝えします。十人の奴婢に、生徒でなければならないという制限はないそうです。生徒でも、生徒でなくても……。ただ……」
玲子さんが言って、持っていたアタッシュケースを真夫の前の机に置く。
すでに食事の終わっていた弁当箱を真夫は鞄に片づけた。
玲子さんに確認を頼んでいたのは、龍蔵が玲子さんを取りあげない条件としてあげた十人の奴婢の条件のことだ。
龍蔵は、真夫を龍蔵の後継者と指名する条件として、半年以内に十名の女奴婢を作ることを命じている。
その奴婢をこの「SS研」に入れて支配しろということだったが、真夫は十人の中に、すでに奴婢にしているあさひ姉ちゃんや玲子さんを加えていいかどうかを確認してもらっていたのだ。
当初真夫は、龍蔵の支配する豊藤グループの総帥の座など興味はなかったが、後継者になることを放棄するのであれば、玲子さんを取りあげると言われて、いまは覚悟を決めて、総帥になる決心をしている。
少なくとも、それを目指す。
常識外れのではあるが、十人の奴婢を支配することが、真夫を後継者にする条件というのであれば、それが道義に反することでも、真夫はするつもりだ。
「家族」になった玲子さんを真夫は手放す意思はない。
いずれにしても、玲子さんには午前中に、前回の面談のときに確認を忘れていた奴婢にする相手の資格を確認してもらっていたのだ。
「だから、もちろん、十人の奴婢は、わたしでも問題ないそうです……。ただ、問題が……」
玲子さんが複雑そうな表情になって言った。
とりあえず、自分も真夫の奴婢の許可を受けたということであり、それは嬉しそうな感じなのだが、なんだか不満そうな表情にもなっている。
果たして、問題とはなんだろう?
真夫は首を傾げた。
「問題ですか?」
「新たな条件を示されたんです」
「条件?」
「とにかく、試してみていただけますか? 確かめさせてください。それから説明を……」
玲子さんがアタッシュケースを開く。
中には、銀色の金属の板が複数枚入っている。
手のひらほどの長さの細長い薄い金属板であり、名前が横書きで刻んであった。
一枚だけ、ほかの金属板の倍くらいの大きさがある。
視線をやると、それには “坂本 真夫” と名が刻まれていた。
「これは?」
真夫はそれを手に取りながら首を傾げた。
「秀也さんを通じて、龍蔵様から渡されました。真夫様が奴婢にされる女たちが増えるごとに、名札は逐次に追加してお渡しすると言っておりました」
「秀也を通じて? それに、これは、名札ですか……」
ほかの札を手に取る。
“工藤 玲子”……。
“朝比奈 恵”……。
“白岡 かおり”……。
“西園寺 絹香”……。
“松野 梓”……。
“松野 渚”……。
すでに、真夫のところに集まっている女性たちの名前だ。
また、片面には黒文字で名が刻まれていて、反対側の面には、同じ名が赤文字で刻まれている。
ただし、真夫の名札に対して、女たちの名はひと回り以上は小さい。
「秀也さんによれば、正規の部室側の壁の一角に、電子磁石で貼れるようになっているそうです。ただし、奴婢として認めた者でなければ、黒文字側を表にして、壁に貼りつかないそうです。でも、黒文字で密着しないときには、赤文字側が表であれば、壁に密着できる仕掛けということです」
「つまりは、黒文字を表にしている女性が十枚になれば、俺のことを龍蔵さんが認めるということですか?」
とりあえず、真夫とあさひ姉ちゃんの名札だけを手に取って立ちあがる。
まだぐったりとしている絹香たちや、その世話をしている梓たちに声をかけてから、隠し通路を戻って正規の部室に戻る。
そして、玲子さんが示した壁に寄る。
なるほど、気がつかなかったが壁紙と同系色の金属面になっている。
最初からそうだったのか、数日前くらいの時期に差し替えたのかはわからないが……。
龍蔵は、十人の奴婢を集めて性支配することが、真夫が後継者となるための帝王学の教育の一環のように口にするが、やはり、こんな遊びは、彼の倒錯した性的な愉しみのひとつだろう。
とりあえず、試しに、自分の名札を適当な場所に密着させる。
小さな電子音がして、名札が壁に接着したのがわかった。
「なるほど……」
次いで、“朝比奈 恵”と書いている名札を壁にくっつけた。
真夫の横だ。
ただし、赤文字を表にした。
しかし、名札はくっつかない。
逆にして、黒文字を表にする。
今度は密着した。
「ふうん……」
あさひ姉ちゃんの名札を剥がしてみた。
いとも簡単に壁から離れる。
「秀也さんを通じての言葉ですけど、龍蔵さんが認めた支配を施したとみなした者のみが黒文字で密着するということだそうです。逆にいえば、黒文字で密着しない限り人、人数には認めないと……。申し訳ありません。わたしでは龍蔵様に直接に面会は叶いませんでした。秀也さんの言葉を龍蔵様の言葉を受け入れるしか……」
アタッシュケースを開いたままの状態で盆のようにして持ってきている玲子さんが頭をさげた。
「別に謝ってもらうことでは……」
どうして、こんな仕掛けにするのか……?
真夫の行動をしっかりと管理するということだろうか?
そして、あの操心術で完全支配をすることを求めている……?
手加減などすれば認めないと告げるとともに、裏切ることのないくらいに、完全に人を支配せよということ……?
まあいい……。
腹は括ったのだ。
もちろん、玲子さんを取りあげられないように、龍蔵の命令を実現してみせる。
「そうではないんです。そのう……、秀也さんの言葉の通りに告げますが、豊藤グループの総裁の後継者として相応しい女しか十人のうちに認めないというんです。そこら辺の有象無象は人数に数えないと……。これは、あのときに示された条件とは違います。龍蔵様はそんなことは口にしていませんでした。奴婢にする女に、新たに条件を示すなど……」
「えっ?」
真夫は玲子さんの言葉に、ちょっとびっくりした。
つまりは、どんな女でもいいから、十人を奴婢にしろということではなく、どんな女を奴婢にするかも管理するということか?
確かに、それはあのときに示された条件とは異なる。
「今更、そんな新しい条件を示すとはひどいです。しかも、秀也さんを通してとか……。だから、直接に確認したかったのですけど、会えなくて……」
玲子さんは残念そうに言った。
そういえば、あのとき、龍蔵は、今後は玲子さんとは直接には会わずに、すべてを秀也を通じて指示をするとか口にしていた。
だから、面談は突っ張られたのだと思うが、そもそも、秀也にすれば、真夫があっさりと十人を集めてしまえば、都合が悪いだろう。
あるいは、真夫が十人を集めても、こんな女は認めないと秀也が言えば、数には入らないようにした?
「どりあえず、名札を貸してください」
真夫は玲子さんの持っているアタッシュケースから次の名札を取りだす。
“工藤 玲子”──。
玲子さんの名札だ。
ちょっと考えて、あさひ姉ちゃんの名札の横に置く。
黒文字を上にして、貼りつけることができた、
“白岡 めぐみ”──。
“西園寺 絹香”──。
このふたりの名札も黒文字で貼りついた。
位置は、玲子さんの名の下にした。
「あれっ?」
しかし、次いでくっつけようとした“松野 梓”と“松野 渚”の名札は、いずれも、黒文字では密着しない。
「そ、そんな」
玲子さんがかすかに震えた声で呟いた。
ふたりは、絹香の侍女生徒であり、人数には認めないということか……?
侍女だから?
でも、真夫と同じ孤児院出身のあさひ姉ちゃんは、黒文字で密着したけど……。
今度は、双子の名札を赤文字を表にして、壁に貼ってみる。
しっかりと、密着した。
「やはり、これは秀也さんの嫌がらせとしか……」
玲子さんは口惜しそうにしている。
確かにそうかもしれない……。
真夫は思った。
でも、そんなことを言っても仕方がない。
真夫としては、半年以内に龍蔵が示した十人の女を支配するしかない。
双子を認めないということであれば、残り四人の予定が、六人になるだけだ。
だけど、困ったのは、どんな女なら、条件に合致した者として認めるかだ。
真夫には、奴婢として認められたかおりちゃんや絹香と、認められなかった梓たちの違いがわからない。
あるいは、真夫が後継者として認められることを阻止するために、どんな女でも認めないと弾いてしまうか?
「どんな相手だといいんだろう?」
真夫はぼそりと口にした。
すると、玲子さんが小さく「あっ」と呟いた。
「どうしました?」
玲子さんを見た。
「そういえば、秀也さんと話をしていたときに、真夫様が次のターゲットを誰にするかということを話題になったんです。わたしが口にしたわけでなく、秀也さんは、相場まり江ちゃんの名を知っていて……」
真夫は、文化部発表会で、SS研で展示を予定している羞恥絵や拷問絵を通じて、心の中に被虐癖を隠している女生徒を探していた。
奴婢にするのに適している女性を見つけようとしているのだ。
それで、真夫の覚醒した能力で心に触れ、さらに調査をし、奴婢にして問題ないと考えた女性を取り込もうとしている。
真夫に支配されれば、おそらく、残りの一生を多くの女性たちとともに、真夫に従うことになる。
そういことに嫉妬心を抱き難く、さらに、真夫の性癖である嗜虐欲を受け入れてくれるような相手を見極めようと考えているのだ。
操心術で支配するというのは、身勝手な考えで、自由な心を奪ってしまうということだ。
卑怯かもしれないが、考え抜いた末に相手を選んだということであれば、真夫の心も多少は慰められる。
そして、次のターゲットとして考えているのは、とりあえず、ふたり……。
確かに、そのうちのひとりが“相場まり江”だ。
熱心にSS研が廊下に掲示しているあの絵画をかなり頻繁に見学にくる女生徒であり、芸能モデルに所属する美少女である。
真夫は、その相場まり江を奴婢にすることを考えていた。
「まあ、知っていても不思議はないですね。時子婆ちゃんに、それらしいことを言ったし……。時子婆ちゃんから龍蔵さんに伝わったのかも……」
真夫は言った。
「その話題のときに、そういえば、秀也さんが口にしていました。相場まり江のような“四菩薩”だったら、とりあえず、真夫様にも相応しいなとか……」
「四菩薩?」
四菩薩という存在は、真夫も最近になって教えてもらっていた。
この学園の生徒たちが勝手に作ったものだそうで、この学園の美女四人を総称する尊称とのことだ。
ひとりが、生徒会長の“西園寺 絹香”──。すでに、奴婢にした。
絹香の親友で、女子サッカー部の主将であり、実は、このSS研に名前だけの所属をしているらしい“前田 明日香”──。
今日の午前中、かおりちゃんと絹香と三人でいるときに、不意に現れてつっかかってきた。
少しびっくりしたが、絹香から彼女との関係を教えてもらったので、いまは納得だ。
そのときには深くは考えていなかったが、いまは間違いなく、彼女も奴婢候補と考えている。
そして、“相場 まり江”──。
もうひとりは、女体育教師の“伊達京子”だ。
直接の担任でないので面識はないが、しっかりと身体をきたえていることがわかる気の強そうな若い大人の女性だった。
つまりは、伊達先生以外は、すでに奴婢にしているか、奴婢候補として考えているということになる。
そのための下調査も、玲子さんに進めてもらっていた。
それはともかく、その菩薩とやらに、玲子さんが含まれないのは、玲子さんが理事長代理として、学園に常駐するようになったのが、ごく最近だからだ。
もしも、玲子さんが以前から学園に出入りしていたとしたら、間違いなく、玲子さんは、四菩薩とやらに入っているだろう。
あさひ姉ちゃんやかおりちゃんも美人だけど、玲子さんは誰もが認める抜きんでる美貌を持っているし、とても優秀で、なんでもできるスーパーウーマンのような女性だ。
「誰でもいいというわけでもないけど、四菩薩という人たちであれば認めるということですかね」
「認めなければ、今度こそ抗議できます。直接に龍蔵様にお会いできなくても、なんとかします……」
玲子さんがきっぱりと言った。
真夫は頷いた。
とにかく、伊達先生のことは知らないが、狙いにしている相場まり江と前田明日香については確定か……。
ふたりを含めても、残りは四人……。
誰でもいいというわけではなく、秀也が文句を挟めない相手を見つけないとならないのか……。
ハードルをあげられてしまったのかもしれない……。
「いずれにしても、玲子さんについては絶対に守ります。どんな手を使っても……。卑怯者になっても、卑劣漢になっても……。玲子さんは、俺とあさひ姉ちゃんの家族ですから……」
「あ、ありがとうございます……。う、嬉しいです……」
真夫の言葉に、玲子さんが真っ赤になった顔を俯かせた。
しかし、すぐにはっとしたように、顔をあげる。
「そ、そうです……。忘れるところでした……。とりあえずの調査書です。まだ、一日だけのことなので、詳細なものではないですが……」
玲子さんが名札が入っていたアタッシュケースの中から、ファイル綴りを取りだした。
受け取って表紙を見る。
“金城 光太郎”──。
そこにはそう書いてある。
「どうでした?」
真夫は訊ねた。
玲子さんが小さく首を横に振る。
「……半信半疑でした。だけど、真夫様の勘が正しいように思います……。この学園の入学調査は厳格です。それを出し抜けるとは思いませんでした。二年前の入園前調査に粗があったのは確実です。しかも、その後、二年間もわからなかったとは……」
玲子さんは、書類の入っている透明ファイルをめくって、一枚の写真が入っているページを示した。
シャワーを浴びている光太郎の裸身だ。
おそらく、寮だろう。
この学園には、生徒を隠し撮りするあらゆる仕掛けが無数に施されている。
S級生徒である金城幸太郎は、真夫と同様に、S級生徒寮にいるが、そのシャワー室に隠しカメラを仕掛けたのだろう。
「この学園の女生徒は、あらゆる方法で見張っていて、隠し映像も集められているけど、光太郎君は男ですしね。調査の粗になってしまったんですね」
真夫は言った。
玲子さんの教えてもらったことだが、創立者の龍蔵の趣味なのか、この学園に集められた女生徒や女教師たちについては、精緻な調査がなされているだけでなく、寮生活であることを利用して、ひそかに媚薬を口にさせられ、寝室やトイレで自慰に耽る痴態を撮影されたりしている。
玲子さんは、学園に最初に真夫を連れて来きたときに、それを使えば、いくらでも真夫の望む女生徒を脅迫して、ものにできると言ったのだ。
真夫も呆気にとられたものだったが……。
しかし、確かめたが、その撮影記録には、金城幸太郎のものはなかった。
彼に限らず、龍蔵が興味がなかったのか、男子生徒のものは、まったく記録を集められていない。
「とにかく、調査が甘かったことは申し訳ありません……」
玲子さんが再び頭をさげたが、別に、玲子さんが謝罪することではないだろう。
真夫は頭をあげさせた。
「放課後、このSS研に、この金城幸太郎を呼び出しています。ただ、相場まり江さんと明日香さんがやって来るかもしれません。そのときには、玲子さんに、ふたりの対応をお願いしたいと思います。絹香たちとともに……。とりあえず、次の獲物は彼ですから……」
真夫は開かれている金城光太郎の写真を示しながら言った。
隠し撮りにしては、画像も美しく、よく撮れている。
上下左右のあらゆる方法から撮影されており、いったい幾つ隠しカメラを仕掛けたのだろうかと笑ってしまいそうだ。
そして、もちろん、その写真の股間には、少し……いや、かなり小さめだが、真夫が持っているものと同じような男性器のようなものが……。
しかし、その胸は、これもまた大きくはないが、男性ではありえないかたちの膨らみも……。
なによりも、金城光太郎の身体つきは、どう見ても、男性のものではない。
胸の膨らみを見ても、股間にある性器を除けば、彼女が女性だとして疑わないと思う。
真夫は、改めて金城光太郎の外観を頭に呼び起こした。
中性的な身体つきの細身の身体をしているかなりの美男子だ。そういえば、そろそろ暑い時期なのに、シャツの上に身に着けるジャケットを脱いだことがない気もする。
声だって低くない。
そういえば、金城光太郎には、彼を守るように、いつも寮でも同居している老婦が一緒にいる。
彼女はほとんど光太郎から離れることはない。
S級生徒のひとりである“加賀 豊”とともに、多くの生徒から人気のあって、加賀豊とともに、学園の“双璧”という存在でもあるようだが、周りに人を集める加賀豊とは異なり、金城光太郎は、あの老婆以外を周囲に寄せつけることもない。
考えてみれば、不思議な存在だ……。
真夫は、ファイルを最初からめくっていった。
戸籍調査の記録……。
家族構成……。
幼少時からいままでに至るまでの簡単な履歴……。
「へえ、
真夫は一枚の資料を見て言った。
彼女の写真もある。
着物姿の美少女だ。
「さる財閥のご令嬢です……。幼いころに決められた婚約者だとか……。彼ほどの家柄であれば、珍しいことではありません。この学園の生徒で許嫁を持つ生徒は多いです」
「そうですか……」
真夫は言った。
しかし、金城光太郎の素性がわかってくると、許嫁という存在は不思議なような気がした。
そのときだった。
賑やかな声とともに、まだ隠し部屋にいた絹香たち四人がやって来た。
絹香とかおりちゃんに貞操帯を装着し直すように、梓と渚の双子に指示をしていたが、終わったのだろう。
かおりちゃんも絹香も、それぞれに、C級生徒とS級生徒の制服を着ている。
ただし、かなり短めだ。
特に、かおりちゃんのスカート丈は、調教の一環としての真夫の命令もあり、少し動けば下着が見えるくらいの、かなりのきわどい丈だ。
もっとも、かおりちゃんもそうだが、絹香とともに、スカートの下は下着ではなく、内側にいぼのついている貞操帯なのだが……。
「ま、真夫君、い、いいかげんにやめさせてよ──。こ、こいつ、あんたがいないことをいいことに、な、何度も嫌がらせを……」
かおりちゃんが真っ先に口を開いて訴えてきた。
そのかおりちゃんの顔は真っ赤だし、かなり腰がふらついている。
それは絹香も同じであるが、一方で、ふたりの後ろから歩いてくる梓は、にやにやと意地の悪い表情をしている。
また、手に小さなリモコンを持っている。
どうやら、そのリモコンで悪戯をやっていたみたいだ。
一方で、もうひとりの双子である渚は、さっきと同じで困惑顔だ。
“S”っ気の強い梓とは異なり、どうしても、責め側に回るのは苦手みたいだ。
「あら……、あたしは、真夫様にお姉様方の調教係を認めてもらっているんですよ。あたしに逆らうとこうですよ」
梓がリモコンを押したのがわかった。
「ひゃああ」
「あっ、あああっ」
かおりちゃんと絹香が同時に、股間を押えて、その場にしゃがみ込んだ。
ディルドこそ抜いたが、あの貞操帯に内側には、クリトリスや局部を苛むたくさんの突起が存在していて、遠隔操作でいくらでもそれを動かすことができるようになっている。
それどころか、電撃でさえも流せるのだ。
ふたりの仕草からおそらく、いきなりクリトリスに触れる場所を強く刺激されたのだと思う。
真夫は笑って、梓からリモコンを取りあげてスイッチを切る。
絹香とかおりちゃんのふたりが脱力する。
「梓、今日はもうこれで終わりだ。さっきも言ったけど、午後からは真面目な授業だ。それはちゃんと受けさせる……。その代わりにやってもらいたいことがある。うまく仕事をしてくれれば、改めて、このふたりの調教をやらせてやる。そのときには、なにをしてもいい」
「じょ、冗談じゃない──。あ、あんた以外に調教なんて、されたくないのよ──」
かおりちゃんが真夫の言葉に反応して怒鳴った。
ただ、すでに日常の寮生活から、梓の調教を受けることになっている絹香は、諦めたように溜息をついた。
「なにをするんですか?」
一方で、梓がにっこりと微笑んで、舌でぺろりと唇を舐めた。