がちゃんと、首と両手首に木枠が嵌まるのがわかった。
さらに、いつの間にか、身体の下にも大きな板が準備されていて、坂本君が光太郎の足首にも、それを嵌めてしまっている。
気がつくと、手も足も首も、完全に板に固定されてしまっていた。
首を前に出して動けず、足も肩幅に拡げたまま固定されてしまった。足枷には、床にある金具にさえ繋げている。まったく動かせない。
とにかく、呆気にとられるしかない。
「な、な、なんで?」
やっと我に返って、声をあげた。
「ほら、晒し刑を受ける囚人になった気分はどうだい、光太郎?」
光太郎の足元で、足首を固定する作業をしていた坂本君が前側に回ってきた。
しかし、なにがなんだか、さっぱりと理解できない。
まったく強要されたわけでもないのに、いつのまにか、光太郎は自らこうやって拘束を受け入れてしまったのである。
光太郎としては考えられないことだ。
「あらあら、本当に拘束されちゃったの? 知らないわよ。こいつって、とっても好色よ。しかも、陰湿だしね。まあ、諦めるのね。これは、あんたを嵌めるための罠なんだから……。だけど、どうして、晒し台に首なんて置いたの?」
淫靡な仕掛けをされているのは間違いない白岡さんが、尻もちをつくように腰を床におろしたまま、両手を股間で押さえるような恰好で、光太郎に視線を向けて笑っている。
その顔には、苦笑のような表情が浮かんでいた。
だが、罠?
しかし、確かに、これは危険な状態だ。
いつもいる護衛とも離されているし、ここが学園の地下にあたることも考えれば、光太郎が悲鳴をあげたところで、救援が来ることが考えられない。
ぞっとした。
考えると、背に冷たいものを感じた。
「ま、待ってくれ、坂本君。もう、わかった。だから、これを外してくれ。体験はもういいよ」
光太郎は焦って言った。
どうして、こんなことを受け入れたのか、自分にも理解できないが、これは危険な状況だ。
坂本君がおかしなことをするとは思えないが、とにかく、光太郎には絶対に知られてならない秘密があるのだ。
「いやいや、まだだよ。折角だから、晒し刑の本質を理解してもらおうか。まだいまは、ただ自由を奪われただけだ。だけど、中世における晒し刑の本質は、自由を奪って屈辱を与えることじゃない。名誉を奪うことなんだ」
「名誉?」
思わず、問い返したが、そんなことはどうでもいいと思った。
とにかく、これを外してもらわないと……。
「人前で謝らせたり、珍妙な服を着せたり、時には、性的にいたぶったり……。とにかく、晒し刑の基本は、恥をかかせて笑いものにして、刑罰を受ける者から名誉を奪うことにあるんだ。それは耳や腕を斬り落とすのと、同じような意味がある」
「腕を切り落とすのと、この晒し台に拘束されるのが同じ? だったら、わたしは晒し台でいいわ。ちょっと我慢すればいいだけじゃない」
坂本君の言葉に反応したのは、白岡さんだ。
立ちあがって、光太郎の後ろ側に回ってきた。一方で、坂本君は晒し台で立たされている光太郎の前側でにこにこと微笑んでいる。
「中世においては未熟な国家体制でしかない。だから、当時は身の安全を保つには、共同体の集団に入って、生命や財産の安全を守っていくしかなかった。従って、晒し刑で恥をかかせることは、共同体という集団の外に出すということを意味する。一度、共同体から排除された者は、誰になにをされても、守ってもらえない。集団から外れている者を守るような法律なんて存在しない時代だしね」
「ふうん、そういうもの?」
白岡さんが言った。
その白岡さんの手が光太郎が身に着けている制服にかかった。
上からボタンを外していく。
光太郎は驚愕した。
「わっ、わっ、なにをする──。やめないか──」
光太郎は怒鳴った。
しかし、白岡さんの手はとまらない。
それどころか、いつの間にか大きな鋏を取り出して、制服を肩から腕にかけて切断し始めた。
光太郎は恐怖した。
「や、やめてくれ──。な、なにをするんだ──。やめろおお」
大声を出した。
しかし、白岡さんが手をとめる気配はない。
あっという間に制服の上衣がバラバラに切断されて床に落とされた。
上着の下は、ワイシャツだが、今度はボタンも外すことなく、じょきじょきと肩の後ろから縦に切断していっていく。
「なにをするんだ──。やめてくれえ──」
光太郎は絶叫した。
必死に枷から脱出しようとするが、ピクリとも動かない。
「言っておくけど、わたしはやらされてるんだからね。文句があるなら、目の前のこいつに言ってよね。言いつけを守らないと、わたしが罰を与えられるのは、いま見てたでしょう? 股間にディルドを挿入されて外せないようにされてるの──。逆らったら、激しく振動されるの──。とにかく、命じているのはそいつだから」
白岡さんの不貞腐れたような口調の返事が戻ってきた。
そのあいだも、はさみは動き続ける。
ズボンからワイシャツの裾が出される。
あっという間に切断されて、シャツも上半身から取り去られた。
ついに、上半身の肌が露出してしまった。
「えっ? 本当だったの?」
すると、白岡さんの驚いたような声がして、彼女の手がとまった。
見られた……。
光太郎に絶望が襲う。
「ブラ……? あんた、やっぱり、女? こいつが言ったとおり?」
白岡さんの声……。
シャツの下にあるのは、光太郎の膨らんでいる胸を隠すスポーツブラの形状をした下着だ。
小さいが男の身体とはいえない二つの膨らみ……。
それこそが、光太郎がずっと隠し続け、しかも、金城家が絶対的に秘密にしている極秘事項だったのだ。
光太郎の上半身には、れっきした乳房がある。
そんなには膨らんでいないが、これを見た者は、それを男の身体とは思わないだろう。だから、ゆったりとした服を身に着け、誰にも見せないようにしてきた。
侍女としての乳母が光太郎から絶対に離れないのも、この秘密を守るためだ。
しかし、呆気なくそれが暴露してしまったことに、光太郎は愕然としていた。
「女でもない……。男でもない……。光太郎はそのどちらでもないさ。光太郎は、ただ光太郎さ。だけど、君はどういう存在でいたい?」
前にいる坂本君の手が首枷に嵌まっている光太郎の顎に下から触れる。
坂本君の顔が近づく。
目を見開いた。
坂本君の唇が唇に重なる。
「ん、んんっ」
拒否しようと思ったが、強引に舌を口の中に入れられた。
坂本君の舌が口の中を這いまわる。
気持ち悪いと思ったのは一瞬だ。
むしろ、気持ちいいかも……。
不思議な愉悦が口中から全身に拡がっていく。
身体が脱力する。
ただのキスじゃない……。
光太郎は、坂本君に口づけされて、呆然とするほどの恍惚感に襲われていた。力が抜ける……。
思考が切断される。
不思議な快感が身体を覆う……。
「んはっ、な、なにを……」
坂本君が口を離すと、光太郎は坂本君を上目遣いで睨んだ。
しかし、どうしても、彼に圧倒される気持ちから逃れられない。
金城家の嫡男として育てられた自分が、こんな仕打ちをされている相手に怒りも感じなければ、憎悪も沸かない。
ただただ、圧倒される。
光太郎はわけがわからなかった。
「はい、これも外しましょうね」
白岡さんが上半身の下着を切断した。
布切れになった下着が落ちて、胸を覆うものはなにもなくなる。
「ほら、よろしく」
坂本君がなにかを白岡さんに放った。
背中で何かごそごそと動く音がして、白岡さんの手が背後から胸の前に伸びてきた。
光太郎はぎょっとした。
「うわっ、なに? やめてくれっ」
叫んだ。
だが、白岡さんの手が胸に当たる。
その指には、なにかの油剤がたっぷりと塗ってあり、それが光太郎の胸全体に塗られていく。
「これは小さいけど、完全に乳房ねえ。乳首も女……。いえ、身体は完全に女よ……。びっくりね……。いまでも信じられない。こいつがそう指摘したときには、半信半疑だったけど」
白岡さんの指が光太郎の乳首に得体の知れないクリームを拡げながら呟いている。
それはともかく、坂本君が指摘していた?
そのことに、驚いた。
「さ、坂本君……。君は……」
顔をあげる。
しかし、坂本君は応じることなく、光太郎の後ろ側に行ってしまった。
身体を動かせない光太郎には、それを視線で追えない。
しかし、なにをされるのか予想がついて、全身に恐怖が走る。
「もう君の秘密は知っている……。だから、卑怯なことを言えば、それを暴露されたくなければ、このままSS研に入るしかない。そうすれば、秘密は守られる」
坂本君がそう言いながら、光太郎のズボンのベルトに手をかけた。
ベルトが緩み、ホックが外れ、ファスナーも下げられていく。
「いやあああ、やめてくれええっ」
今度こそ、泣き叫んだ。
だが、坂本君は容赦なくズボンを足首に向かっておろした。しかも一緒に下着を持っていることにも気がついた。
下着ごとズボンが足首までずりさげられる。
「ああ……」
絶望に染まる。
外気が下半身に当たる。
「うわあ……」
白岡さんの呆気にとられる声がする。
恥ずかしい……。
羞恥と屈辱が襲い掛かる。
「光太郎……。いや、ひかりちゃんと呼ぼうかな……。これが晒し刑の真髄だよ。決定的な恥をかかせて、社会からの抹殺をするんだ。そうすることによって、共同体からの追放を余儀なくさせる。中世社会では、共同体から外れれば、もう殺されるしかない。守ってくれる法なんてないからね」
坂本君が言った。
白岡さんが身体を屈めて、光太郎の下半身に顔を寄せたのがわかった。
「不思議な身体……。男? 女……? どう見ても、女の子の身体だわ……。とてもきれい……。でも、これはペニスよねえ……。あんたのものよりも全然小さいけど……。でも睾丸はないのね……」
白岡さんの声……。
すると、坂本君の指だと思う手が、光太郎の股間に伸びてきたことに気がついた。
白岡さんの言葉のとおり、光太郎の股間には小さいが男のペニスもある。これもまた、光太郎が秘密にしていたことである。
「ひんっ、いやっ」
そして、思わず声をあげていた。
光太郎の股間にぶら下がっているものに、坂本君の手が触れたのだ。
しかも、さっき白岡さんが指に塗っていたものを指に塗っていると思う。それを光太郎のペニス全体に塗り拡げている。
たちまちに、股間が勃起するのがわかった。
「ああ、もうやめてくれ」
光太郎は哀願した。
だが、坂本君は卑猥な指の刺激をやめない。
しかも、股間が熱い。
光太郎はぎょっとした。
もしかして、ただのクリームじゃない?
光太郎の小さなペニスには、先っぽに放尿をするための割れもあるが、そこにクリームを塗られると、そこが異常なほどにむず痒くなった。
信じられないくらいに股間が硬く勃起するのがわかった。
すると、坂本君の手が光太郎のペニスをすっと持ちあげた。
「えっ、亀裂? 女の性器もあるの?」
白岡さんが驚いた声を出したのが聞こえる。
「両性具有……。男でも女でもなく、そういう存在ということだよ……。五人組生徒の筆頭。学園の第一生徒ともいえる金城光太郎の秘密は、彼が男でもなく、女でもない身体だということさ」
「本当に、両性?」
白岡さんが呆気にとられている。
「まあね……。だけど、ひかりちゃん……。悪いけど、もう君を逃がすつもりはない。SS研に入るんだ」
坂本君が言った。“ひかり”というのは、光太郎に対する呼び掛けのようだ。
「ひ、ひかり? じょ、冗談じゃない――。と、とにかく、こんなのは終わりだ。拘束を解け――。そうすれば、金城家として報復はしないと約束しよう。だが、ここまでた」
光太郎は言葉にできるだけ、凄みを込めようとした。
しかし、あまりにも、心が動揺している。自分でも迫力がなさすぎると思った。
「わかった。じゃあ、話し合いを続けよう。もっとも、こっちは拒否できない条件をつけるけどね」
すると、今度は、坂本君は、光太郎の“女”である部分に、さっきの薬剤を塗り込み始めた。
「さ、さっきから、なにをやっている──。いい加減にやめないか──」
光太郎は怒鳴った。
しかし、だんだんと身体の異常な火照りが拡がる。
さらに、最初にクリームを塗られた場所が……。
「あ、ああっ、なに──? なに? 胸が痒い──。い、いや、股も……。な、なにをした──? ぼくに何をしたんだ──?」
胸が痒い──。
いや、ペニスの先も……。
いま、薬剤を塗られている女の亀裂も……。
「SS研に入ると約束したくなる薬を塗っただけだ、ひかりちゃん……。さあて、あとは、待つだけかな」
坂本君がやっと光太郎の股間から手を離した。
だが、そのときには、異常なほどの痒みが胸と股間に襲い掛かっていた。