「……ああ、あ、熱い……、ああ……」
首枷と足枷に拘束されている身体を強張らせて、光太郎は全身を揺すった。
しかし、当然ながらびくともしない。
首と両手を前に出し、足さえも閉じることさえできない状態から全く動くことができない。
なによりも屈辱なのは、足首までズボンと下着をさげられて、完全に露出させられている股間だ。
そして、上半身は完全に制服や下着を取り去られ、小さな乳房のある裸体を晒されてしまった。
光太郎は、金城財閥の後継者とされ、学園でも一目も二目も置かれている自分が、まさかこんなに屈辱的な目に遭っているということが、いまでも信じられない。
しかも、どう考えても、光太郎は自分から罠にかかったようなものだ。
この隠し部屋のような学園の地下に、なんの備えもなくのこのことひとりで同行し、善良だと思い込んでいたとはいえ、それほど親しくもない坂本君の言葉に誘導されるかのように、首枷に首と両手を拘束させることを許したのだ。
その結果がこれだ。
「……それにしても、見れば見るほど、不思議な身体ねえ。身体は女よねえ……。だけど、男の性器だけがあるのね……。ふたなりって言うんだっけ? 本当にいるのねえ」
足元には、坂本君の奴婢生徒の白岡さんがしゃがみ込んでいて、隠すことのできない光太郎の股間をしげしげと見つめている。
恥ずかしい……。
光太郎は、この恥辱に歯噛みした。
そもそも、次期金城グループの総帥と見込まれている光太郎が、実は男性と女性の両方の性を持つ両性具有であることは、金城家の秘中の秘だった。
これを、こんなにも呆気なく暴露されてしまうとは……。
「や、やめてくれ……。み、見るな――。この身体を見るな――」
光太郎は声をあげた。
ずっと隠していたのだ。
こんなにも恥ずかしい光太郎の身体を……。
自分が他人とは違う身体だと思ったときには、あまりものショックに死んでしまいたいとさえ考えたくらいだった。
女であるのに、男でもあり、男として育てられたのに、男性の性器以外は、まったくの女で……。
それなのに、男にはなれず、かといって女でもなく……。
おぞましい……。
常識ではありえない両性の特性を持つ自分の身体……。
どれだけ、この身体に悩み、苦しんだものか……。
だから、誰にも知られないように……。
学園の二大巨頭と称されながらも、もうひとりの加賀豊のように徒党など作らず、ずっと孤高を甘んじた。
それは、偏にこの秘密を守りたいためだった。
この恥ずかしい秘密を知っているのは、両親と祖父、財閥の主治医、乳母の花江と……そして、婚約者だけであり……。
「別に恥ずかしいことはないよ、ひかりちゃん……。美しい身体だよ。とても可愛いしね……。すべて、受け入れようよ。恥ずかしいことも……。気持ちいいことも……。悩む必要もないということも……」
すると、坂本君が不意に、光太郎の心を読んだようなことを言った。
そして、光太郎の首枷のある前側にやってきて、いきなり、坂本君が身につけているものを脱ぎ出す。
「な、なにっ?」
思わず声をあげた。
だが、一方で、すでにじんじんと痛むような疼きと痒みが乳首と股間に襲い掛かっている。
光太郎は愕然としてしまった。
自分の乳首と股間が光太郎の意思とは離れて、刺激と求めようとしているのがわかったのだ。
痒みと疼きを癒されたい。
目の前の坂本君という不思議な少年に滅茶苦茶に触って欲しい……。
そう思った。
そのことに驚いた。
この恐ろしいような疼きと痒みは、さっき坂本君たちに塗られた得体の知れない塗り薬の影響に違いなかった。
しかし、坂本君に靡き、媚びたくなる感情の理由はなにか……?
わからない……。
また、そのあいだにも、その坂本君は服をどんどん脱いで、裸になっていく。
「なにしてんのよ、あんた?」
後ろにいる白岡さんの声だ。
「ひかりちゃんだけ裸だと恥ずかしいだろう? だから、俺たちも全裸になろう。かおりちゃんもね」
「わたしも――? なんでよ──」
白岡さんは不満そうな口調で文句を言ったが、逆らう態度は見せずに、すぐに立ちあがった。
首枷で固定されているので、枷の後ろ側になる真横の白岡さんの姿は見えないが、彼女もまた、自分で服を脱いでいる気配だ。
また、顔側では、坂本君が最後の下着を腰から取り去った。
その股間には、隆々としている男根がそそり勃っている。
「うわっ」
まともな男の勃起など初めて見てしまった光太郎は、思わず声をあげた。
「男の勃起が珍しいかい、ひかりちゃん? SS研に入れば、これを受け入れてもらうことになる。俺の調教もね」
坂本君が微笑んだ。
光太郎は自分の全身が真っ赤になるのを感じた。
どうでもいいが、これほどの卑劣なことをしている坂本君に対して、いまだに憎悪の感情が浮かばない。
圧倒されるような忌避感はあるものの、不思議にも坂本君を嫌悪する気持ちがなぜか湧かない。
光太郎は自分の心が信じられないでいた。
「ぼ、ぼくは、き、君の調教なんて……絶対に……」
とにかく言った。
さっきから、SS研に入れとか、調教とか、おかしなことしか坂本君ばかりを口にする。
光太郎は全力で拒否した。
いや、拒否しようとした。
しかし、不思議にも自分の言葉が途中で消えてしまう。
それどころか、心の端に坂本君になら、心を許してもいいかもしれないとちょっと思った。
一瞬後に、そのことに愕然とした。
「そうかな……。じゃあ、ゆっくりとやるさ。時間はいくらでもある。今日だけじゃない。明日もある。明後日もね。週末は学園に残ると、ひかりちゃんの侍女の
坂本君がくすくすと笑った。
そういえば、そんなことになったのだった。
だが、考えてみれば、そのことも不自然だ。
あの花江は、光太郎のことを知っており、ほかの生徒と週末を一緒に過ごすことを許すなど、絶対に許可などしない。
それこそ、花江自身の力だけでは無理でも、金城家の全能力を使ってでも阻止するだろう。それだけ、光太郎の秘密を守ることが大切なのだ。
金城家の嫡男がこんな身体であることをライバルグループに知られれば、どんな醜聞に使われるかわからない。
だから、婚約者まで準備して、光太郎が普通の少年であることを装い続けたのだ。
その花江が、目の前の坂本君が光太郎と週末を過ごすことに協力するというのは、絶対にあり得ないことだった。
護衛生徒のふたりだって、光太郎の意思とは関わらず、絶対に光太郎と離れないことを光太郎の祖父と契約しているのだ。
しかし、実際には花江も護衛生徒も、坂本君の言葉ひとつに従って、光太郎を置いていき、光太郎自身もあのとき、それを不自然とは思わなかった。
それどころか、その祖父さえも、坂本君との外泊を許すとは……。
だが、はっとした。
「ま、待て、もしかしたら、祖父からのメールというのは、君たちの作った偽物では?」
祖父からのアドレスであり、いつも祖父が光太郎に伝言をするときの書式だったので疑いはしなかったが、あのメールそのものが偽物の可能性もある。
「ばれたか……。あれは、玲子さんに準備してもらったフェイクだね。まあ、だけど、どっちみち同じことだよ。救援がここまでやって来ることはない。いまはまだ接触してないけど、玲子さんが金城家に本当に手を回せば、絶対に金城家は、俺を受け入れる」
びっくりした。
あれは嘘だったのだ。
しかし、考えてみれば当然だ。
祖父が光太郎が得体の知れない生徒たちとの残留を許可するわけがないのだ。
だが、光太郎としたことが、うっかりと信じてしまった。
そのことには、驚きだ。
普段の光太郎ならあり得ないことだ。
ともかく、全身に起こっている異常な状況を少しでも和らげようと、懸命に身体を揺する。
しかし、なにも変わらない。
どんどんと、光太郎は追い詰められているのを自覚した。
「そ、そんなことはない……。い、いまからでも、お、遅くない……。ぼ、ぼくにこんなことをしたことがわかったら……そ、祖父は……き、君たちを殺す……。多分、間違いない……。そ、祖父にはそれだけの力があるんだ……」
必死で言った。
だが、それはともかく、乳首と股間の感触が我慢できない。
だんだんと疼きが強くなり、男の性器も、女の性器も、かっと燃えあがるように熱い。
そして、その熱からぞわぞわと無数の虫がうごめくような異様な感覚が沸き起こっている。
痒いとは感じていたが、そんな生易しいものじゃない、狂うような痒みだ。
恥も外聞もなく、全身を指で掻き毟りたくような、それほどの激しい痒みだ。
「あがあああっ、か、痒いいい、あああああっ」
ついに、光太郎は絶叫した。
そして、木枠の嵌まっている枠を必死に揺すった。
相変わらず、びくともしないが……。
「始まったね。さあ、ひかりちゃん、屈服するんだ……。SS研に入って、俺の調教を受け入れるとね……。恥ずかしくないよ。全員が仲間だ……。そのかおりちゃんも、あさひ姉ちゃんも、玲子さんも……、絹香も……。楓と渚も……。みんな仲間だ……。そして、君も……」
坂本君が枷の後ろ側に回ってくる。
なにをされるかわからない恐怖に身体が竦むのがわかった。
そして、なによりも痒い──。
とにかく、痒い──。
「まったく……。最初に会ったときには、善良そうで、とっぽい世間知らずの男子だと思ってたのに、いつの間にか、すっかりと悪役が似合う卑劣漢になったわよねえ」
白岡さんがそう言うのが聞こえた。
そのとき、すっと光太郎の男側の性器である男根に手が触れた。
下から上に向かって幹の部分が撫でられる。
「ひいいい」
絶叫していた。
それは微細な刺激にすぎなかったが、怪しい薬剤を塗られた光太郎の小さな男根は、これ以上ないというほどに膨らみ切っていたのだ。そして、刺激を求めて狂っていた。
そこを指で撫でられた感触は、なにものにも代えがたいような気持ちよさに感じてしまった。
しかし、あっという間に手は離れて、いまはなにもない。
光太郎は腰を揺すって泣き声をあげた。
「うわあっ、や、やめてくれ──。苛めるのは……ああっ」
光太郎は叫んだが、自分でもなにを口走っているのはわからない。
だが、本当はもっと刺激を自分が受けたがっているのはわかっている。しかし、そんなことをされれば、自分が自分でいられなくなるということもわかっている。
怖い──。
「じゃあ、なにもしないでいいのかい、ひかりちゃん。なら、しばらく放っておくか。触って欲しくなったら声をかけてね」
坂本君が言った。
光太郎は歯を喰いしばった。
だが、すぐに我慢の限界はやってきた。
腰を必死で動かして、ちょっとでも痒みを癒そうとする。
しかし、そんなもので痒みが消えるわけもない。
光太郎は絶望に襲われた。
「本当に可哀想に……。まあ、だけど、全員が一度は受ける関門よねえ。こいつは、自分の女がこういう痒みで苦しむのが大好きな変態だしね……。まあ、あんたに恨みはないけど、屈服した方がいいわよ。どうせ、逃げられないんだし。だったら、さっさと受け入れた方が楽よ。こいつ、こんな卑劣漢みたいなことするけど、結構優しいしね」
白岡さんが言った。
光太郎は全身を身悶えさせながら、再び口を開く。
「た、頼む、助けてくれ、白岡さん──。こ、拘束を解いてくれ──。頼む、あああああっ」
光太郎は絶叫した。
手足の自由を奪われて、痒み責めで苦しめられるなど、光太郎にとっては信じられない仕打ちだ。
なんとか脱出を……。
「わたしはなにもできないって言ってんでしょう? これを見なさいよ。こいつにこんな破廉恥な貞操帯を嵌められてんのよ。逆らえば、こいつは、人前でも股間のディルド動かすんだから。わたしは、ここにいる豊藤グループの後継者の奴隷なの──」
白岡さんが枷の前に現れて言った。
彼女は素裸だったが、黒い革のTバッグみたいな帯が腰に巻かれて、やはり股間に細い革帯が喰い込んでいる。
これが貞操帯か……。
それはともかく、いま、白岡さんは、坂本君のことを豊藤グループの後継者だと言ったか?
あの謎の大財閥の?
光太郎は呆気にとられた。
「……あれ、その顔は知らなかったの? こいつはまだ教えてなかったのね……。そうよ、こいつはあの豊藤の後継者よ。あんたがいくら金城家とはいっても、豊藤に比べれば大人と子供でしょう。だから、屈服しなさい。どんなに抵抗したって、こいつはあんたを手に入れるわ。あんたは、こいつに目をつけられたんだから」
白岡さんが言った。
光太郎はびっくりした。
すると、坂本君が後ろでくすくすと笑うのが聞こえた。
「まだ、後継者候補だけどね……。だけど、かおりちゃんの言葉は、その通りだよ。ひかりちゃんはもう逃げられない……、だから、屈服するんだ……。さあ、SS研に入ると承知するんだ……。どうする?」
坂本君が言った。
光太郎は狂おしい痒みに気が狂いそうだったが、辛うじて残っている理性で懸命に首を横に振る。
「い、いやだ──」
必死に叫んだ。
すると、坂本君が枷の後ろ側でまたもや笑った。
「くくく……、だったら、もっと屈服したくなるようにしてあげようかな」
坂本君がそう言って、またもや、光太郎の男根を握って刺激を加えてきた。
今度は強く握られて前後に擦られる。
激しい。
あっという間に、なにかが込みあがる。
「ひいいっ、やめてええっ」
光太郎は悲鳴をあげた。
「ほんっとに、あんたって、悪人役が似合ってきたわねえ」
顔の前にいる白岡さんが呆れたような口調で言った。