「勝負って?」
明日香は訝しんだ。
勝負とはどういう意味だろう?
「そうねえ……。サッカーのPK対決なんてどうかしら。もちろん、わたしたちは、シュートなんてできないから守るだけよ。あなたが三球蹴って、一発でも外せば、わたしの勝ち。全部シュートが決まれば、あなたの勝ち。こんな感じでどう? そして、勝った方は負けた方の言うことをなんでもきくのよ」
絹香が言った。
明日香には、絹香の魂胆が想像できてしまった。
そして、自分の背筋が冷たくなるのを感じた。
十中八九、これは、その坂本真夫の命令だろう。どういうわけか知らないが、絹香は、その真夫のどんな命令にも逆らえないほどに心酔してしまって、いまは、その真夫の命令で、明日香に接触しにきたということだ。
絹香だけでなく、明日香まで真夫の性奴隷とやらにしようと思って……。
「でも、もちろん、ハンデはつけてもらうわ。だって、明日香は全国出場を果たすほどの女子サッカー部の主将でストライカーで、わたしたちはまったくの素人だもの。ハンデなしで、明日香が勝つのは当たり前だわ」
どんなハンデか知らないが、ハンデがないと明日香が勝つのが当たり前だけじゃなく、ハンデがあったところで明日香が勝つのは当たり前だと思った。
ペナルティキックというのは、ゴール前の十メートルそこらの距離から、一対一で蹴るのだ。実際、ほとんど外すことなどない。キーパーを絹香がするつもりなのだろうが、そもそも、西園寺家の令嬢である絹香の運動神経は普通だ。
絶対に、明日香が勝つ──。
「へえ……。それで、あたしがその賭け勝負に勝てば、絹香はその坂本真夫を別れるということでいいのね?」
明日香が勝つのが当たり前の勝負を提案してきて、なにを企んでいるかわからない。
だが、それで絹香が真夫と距離を置くということであれば、勝負をする価値はある。
脅迫をして性奴隷にされたというようなことをあっけらかんと明るく言う絹香はおかしいのだ。なにかの洗脳でもされたのではないかと怪訝に感じるほどだ。
まあ、もっとも、外面では真面目で固い生徒会長で知られている絹香だが、実はド淫乱で双子の侍女たちを性的嗜虐をして愉しむ悪癖があるのは、当事者の侍女たちを除けば、明日香しか知らない秘密だろう。
もしかしたら、真夫はそんな絹香の性癖に付け込んだのかもしれない。
だが、冷静になって頭を冷やす時間を稼ぐことができさえすれば……。
「その代わり、明日香が負ければ、わたしの言うことをきいてもらうわよ」
「わかったわ。やろう──」
明日香はボールの入っているボールカゴを押して、ゴール前のPKの位置に移動した。
絹香たちもついていくる。
ボールを所定の位置に置く。
「勝負と決まった以上、手を抜くことはないわよ。絹香の顔面だけは狙わないようにはするけどね」
「わたしは守らないわよ。さすがにできないもの。キーパーは渚がやるわ。
絹香は言った。
「はい、お嬢様」
双子のうちのひとりが制服のままゴールポストの前に向かう。
実のところ、明日香は絹香の侍女の双子とはほとんど喋ったことはない。名前もよく覚えてなかった。
そういえば、渚という名前だったか……。
もうひとりは、誰だっけ……。
「大丈夫なの? もちろん、誰がキーパーでもいいけど」
「渚も梓も、わたしよりは遙かに運動神経はましよ。わたしの護衛も兼ねてるから古武道をたしなんでるわ。甘くみないことね」
絹香が白い歯を見せた。
「甘くみることもないけどね……。じゃあ、もういいわね?」
明日香はキックの態勢をとった。
「ちょっと待ってよ。まだハンデを言ってないわ」
明日香は顔を絹香に向けた。
そういえば、ハンデをつけると言っていたか……。
「そうだったわね。それで、ハンデってなに?」
「まずは、これで親指を重ねて縛らせてもらうわ。背中側でね。指縛りよ。覚えているでしょう?」
絹香が一本の細い紐を取り出した。
明日香はどきりとした。
指縛り……。
なんてことのない悪戯だと思って、以前に絹香に言われるままに、両方の親指を重ねて背中側で根元を縛ることを許したことがある。
思いもしなかったが、たったそれだけで、完全に両手の自由を奪われてしまうのだ。
それからあとは、絹香の気が済むまで、徹底的に明日香は絹香の玩具にされた。
あの痴態を思い出して、明日香はかっと身体が熱くなるのを感じた。
「な、なんで、そんなことをする必要があるのよ──」
「そりゃあ、もちろん、明日香の動揺を狙うためだわ。それに腕が動かなければ、普段のような蹴りもできないでしょう。素人と対決するんだから、そのくらいのことはさせてもらわないと」
絹香は言った。
明日香は躊躇った。そもそも、後ろ手に拘束されたままシュートができるかどうか不安だったのだ。
そんなことは一度もしたことないし……。
「わかったわ。でも、一度練習させて」
「だめよ。練習はなし……。どうするの? 勝負はやめる?」
絹香が挑むように言った。
明日香は迷った。
そして、絹香を見る。
「……約束は守るわね……。あたしが勝てば、坂本真夫と絹香は別れる。本当ね?」
「守るわ。その代わりに、負ければ明日香は、わたしの玩具よ。なにをされても、文句はなし。そうねえ……。なにしようかしら……。少なくとも、明日の朝までは離さないわ。もしかしたら、明日の一日だって……」
「好きにするといいわ。サッカーであたしが負けるなんてあり得ないし……」
「じゃあ、親指を背中側で重ねて」
明日香は絹香に背を向けて、両親指を背中で重ねた。
その親指の根元を紐で縛りあげられる。
「これでいいわ。じゃあ、二つ目のハンデね」
「二つ目──。そんなの聞いてないわよ──」
びっくりして明日香は声をあげた。
「心配しなくても、ハンデはそれで終わりよ。さあ、梓──。渚も来なさい──」
両手を封じられた明日香を絹香が後ろから羽交い締めにした。
「あっ──なにするのよ、絹香──。離して──」
「じたばたしないのよ。ちゃんと約束は守ってあげるから……。もしも、あなたが勝てばね」
とにかく、絹香を振りほどこうともがいたが、前から絹香の侍女の梓が明日香の腰を掴んで動きを封じる。
しかも、いつの間にか、キーパーの位置にいたもうひとりの双子の渚も戻ってきて、明日香に抱きついた。
さすがに三人がかりでしがみつかれれば、抵抗などできない。すでに両手を背中で拘束されているのだ。
すると、腰を掴んでいた梓が明日香がはいていたサッカー用の半ズボンのパンツを膝まで押し下げた。
「きゃああ、なにするのよ──」
明日香は悲鳴をあげた。
「大きな声を出さない方がいいんじゃないの。金曜日で生徒は外出して少ないといっても、厚生棟に近いこのグラウンドだと、何事かと思って覗きに来る男子生徒がいないとも限らないわよ」
後ろから明日香にしがみついている絹香が耳元でささやく。
羞恥が襲いかかる。
確かにそうだ──。
明日香は口を閉じた。
すると、梓がプレイのときに身につける明日香のボクサータイプの下着の上から、いつの間にか手にしていた革ベルトのようなものを腰に巻きつけた。
そして、その革ベルトには、真ん中に股間を割る帯ベルトもついていて、それを股間にぐいと下着の上から喰い込まされる。
「ひんっ、なにこれ──」
装着される前にはわからなかったが、股間に喰い込まされた革帯の内側には幾つかのの丸い突起がついていたようだ。
それがクリトリスや局部などに当たって、明日香に刺激を与えてきたのだ。
ずっとおかしな情感で疼いていたこともあり、それに締めつけられた瞬間に、鋭い刺激が明日香の股間から脳天に向かって突き抜ける。
「ああっ、やっ──」
明日香は一気に脱力して膝を崩してしまった。
そのときには、後ろで金属音がして、その股間の革帯にロックがかかったのがわかった。
「じゃあ、準備は終わりよ。勝負を始めましょうか、明日香」
絹香たちが膝におろしていたパンツを元に戻して明日香を解放した。
しかし、明日香は膝を地面につけたまま立てなかった。動くと異物によって股間を苛む革帯が身体を刺激するのだ。
「な、なによ、これ? こんなのつけて、蹴れるわけないでしょう──」
明日香は身体を震わせながら、絹香を睨んだ。
「賭け勝負の放棄は問答無用で負けよ」
しかし、絹香は明日香を見下ろしながら、容赦のない口調で言い放った。
「ひ、卑怯よ──」
「これがハンデよ。それとも、明日香が勝つとわかっている勝負で、わたしを彼と別れさせようと思ったの?」
絹香が制服のポケットから小さなカードのようなものを取り出した。
次の瞬間、突然に股間の秘裂を圧迫している革帯の球体が動き出したのだ。布越しだが、悶絶するのかと思う程の快感が股間から全身に貫く。
「うんっ」
なにが起きたかわからないまま、明日香はしゃがんだまま内腿を摺り寄せた。
強烈な刺激が身体の内側を襲ってきた。
午後からずっと疼いて熱くなっている股間への突然の刺激は強烈だった。
「な、なによ、これ──。や、やめてっ」
「勝負をするわね?」
股間の球体の振動がだんだんと強くなる、
「や、やめてえっ」
明日香は身体をがくがくと両脚を擦り合わせながら絹香を睨んだ。
「勝負をすると誓いなさい──」
「ふくうっ──」
明日香は身体を硬直させて眼を閉じた。
今度はクリトリスだ──。
そこにも、球体が当たっていたが、それがローターのように動き出した。
身体が反り返るような、甘い感覚が駆け抜ける──。
「勝負するわね?」
「するうっ──。するから、とめて──」
明日香は叫んだ。
やっと股間の内側の球体の振動が停止した。
「じゃあ、勝負よ」
絹香が言った。
おぼつかない足取りで、明日香がPKを蹴るための位置につく。
ゴールポスト側でキーパーをするのは渚だ。両手と両脚を拡げて、ボールを弾き返す体勢をとった。
それに対して、明日香はボールの置いてある位置にそのものに立った。
ただし、後ろ手に指縛りで拘束されているし、さっき股間に装着させた革帯の内側の球体で悪戯を繰り返した結果、サッカーの半ズボンの前部分が染みで丸く変色している。
今日の昼食以降、あの玲子さんの工作によって、明日香が口にするものにはかなり強い媚薬を混ぜさせたらしい。しかも、体調の異変を覚えた明日香が医務室を訪れたので、さらに強い媚薬をビタミン剤だと騙して服用させる徹底ぶりだ。
そして、その玲子さんによれば、午後だけで明日香は、二度トイレに駆け込み、ひそかに自慰をしたらしい。
その隠し撮りの映像データも、少し前にスマホに送られてきたからびっくりした。まあ、映像で脅しても明日香には無意味なので使うつもりはないが、改めて玲子さんには驚きだ。
いずれにしても、そんな事前工作で明日香の身体は信じられないくらいの発情状態にあるはずだ。
そのうえで、股間を刺激する淫具の帯まで仕掛けたのだ。
ここから見るだけでも、明日香の足腰がふらついているのがわかる。
あれで、まともにボールが蹴れるわけがない。
「そこでいいの? 助走はしないの?」
ボールのすぐ近くで体勢をとった明日香に絹香は訊ねた。
絹香と梓はゴールエリアの外側にいて、明日香とは距離を置いた位置にいる。
「好き勝手に股間を動かされて、足元をもつれさせられたら、たまらないわ──。それよりも、ここまで受け入れたんだから、約束は守るのよ、絹香──。あたしが勝負に勝ったら、あの坂本真夫とは別れてもらうからね」
「あなたこそ、一本でもしくじれば、あなたは、わたしたちになにをされても文句は言わない……。誓うわね?」
「ち、誓うわよ──」
明日香は怒ったように吐き捨てると、ボールを蹴る体勢になる。
まあ、絹香は明日香が蹴る直前に、遠隔操作で股間に当たっている突起を動かしてシュートを邪魔するつもりなので、助走してくれた方が好都合なのだが、それは明日香も読んでいたようだ。
だが、いまにも蹴る体勢だった明日香が、思い出したように身体から力を抜き、こっちに視線をやった。
「そういえば、あたしのシュートのタイミングはどうするの? 警笛とかないけど、あたしの都合でいいのかしら?」
絹香に視線を向けたまま訊ねてきた。
「タイミング? もちろん、明日香のタイミングでいいわ……」
絹香がそう応じると、その言葉が完全に終わる直前に、明日香はこっちを見たまま左脚を振り抜いた。
キーパー役の渚などまったく反応できずに、ボールはゴールの左上の枠内に突き刺さる。
「くっ……。ま、まずは一本ね……」
明日香が膝を半分折る。
顔は真っ赤だし、かなり息も荒い。
だが、あんな状態で決まってしまった。
絹香は呆気にとられた。
「あっ、ず、狡いわよ──」
「なにが狡いのよ。こんなものを装着させて、PK勝負をさせる絹香の方がずるいわよ──」
明日香は後手で指縛りをしている手で、背中側で器用にカゴからボールをとると地面に転がして、PKの位置に足で配置した。
「ま、待って──。撃つタイミングはこっちで指示する──。わたしが声を掛けてから──」
「わ、わかったわ。じゃあ、声を掛けて……」
明日香はそれだけ言うと、集中モードに入った。
「……だ、大丈夫よね……。勝つわよね……」
絹香は隣にいる梓にささやく。
「当たり前です。次はタイミングを逃さないでくださいね……。ずっと動かしている慣れる可能性もありますけど、突然、動かされれば絶対に対処できません。必ず失敗します……。まともに蹴れもしないはずです」
梓だ。
「……でも、さっきは決まったわ」
「そうですね。さすがは明日香さんですね。サッカーともなると、淫具を装着されていても、シュートにぶれはありませんでした。それこそ、何千回、何万ものシュート練習の結果、身体が覚えてるのでしょう」
「呑気なこと言わないでよ。万が一、三球とも決められたらどうするのよ……。真夫さんと別れなきゃいけなくなるじゃない」
「馬鹿ですか、お嬢様は」
すると、梓が遠慮のない言葉を放った。
「ば、馬鹿って……」
「すでに、勝負なんて詰んでるんです。両手は指縛りで拘束して、大量の媚薬で発情状態。そのうえで、股間に淫具まで嵌めたんです。負けたところで、今度は次の勝負を挑ませればいいだけじゃないですか。明日香さんが最終的に勝つことはあり得ません」
「結構狡いことを考えているのねえ……。でも、それじゃあだめよ。明日香を納得させるためには、賭け勝負に負けたという結果がないと……」
「わかってます。最悪でも、明日香さんが逃げられるわけがないということを言いたかったのです」
「まったく、あなたは……」
絹香は嘆息した。
わざわざ勝負事の状況を作ったのは、梓の考えだ。いまも、絹香が主導して明日香を追い詰めているように見えるが、絹香は梓の命令通りに動いているだけであり、梓の指示に従っているだけだ。
「いずれにしても、勝負に応じた時点で明日香さんに勝ち目などないんです……。でも屈服させるには納得できる負けがあった方がいいのはわかってます。だから、今度はタイミングを間違わないでくださいね。失敗すれば、絹香お嬢様には罰を与えますからね……」
「ば、罰って……」
「そうですね……。週明けにでも、おむつをして授業に出てもらいましょうか。もちろん、一日トイレに行くのは禁止で……。出掛けに浣腸もさせてもらいます」
「うう……。わ、わかったわ……」
すっかりと、絹香の調教係として下剋上を果たしている梓が冷徹に言った。
やると言ったらやるのだろう……。
もはや、絹香の全てを管理しているのは、真夫であり、この梓だ。トイレに行くなと言われれば行くことはできないし、おむつをつけろと言われれば、それを拒む手段は絹香にはない。浣腸であろうと逃れられない。
失敗しないようにしないと……。
絹香はポケットの中でリモコンのスイッチを握りしめるとともに、明日香に合図をした。
明日香は大きく脚を後ろに引く。
シュートの体勢に入った──。
絹香は振動のスイッチを押した。
「くあっ」
だが、明日香は蹴る素振りだけで振り抜くことなく、蹴り足を宙でとめた。
膝を折り掛けたものの、シュートそのものはしてない。
「くあっ」
そして、蹴り抜いた。
かなり激しい振動が続いているはずだが、シュートそのものは崩れることなく見事であり、ボールもネットに突き刺さった。
今度も、渚は動くことはできなかった。
それくらい強烈なシュートだった。
「うーん、さすがの集中力ですねえ……。途中で股間を刺激されるよりは、タイミングをずらして、刺激されたまま蹴ることを選んだみたいですね。すごいです」
「感心している場合じゃないでしょう。もうあと一発よ」
絹香は梓に訴えた。