「ああ、痒いいいっ」
明日香は、ホテルの天井から吊られている両脚を引き千切らんばかりに暴れさせた。
だが、左右の脚をそれぞれに天井に向けて引っ張っている鎖は、がちゃがちゃと根元で音をたてるだけだ。
「両手を解いて──。お願い──。もう許してよお──。絹香──。梓──。渚──。お願い──。これを外して──」
とにかく、大きな寝台の上で仰向けに拘束されている明日香の周りに集まっている絹香たちに哀願した。
「そんなこと言われてもねえ……」
「ふふふ、そんなに痒いのですね」
「許してください、明日香さん」
それぞれに腰の下着一枚だけの絹香、梓、渚がちょっと困ったような顔になる。
だが、顎をぐいと掴まれて、顔を恵に向けさせられた。
「この子たちじゃなくて、言いたいことがあるから、あたしに言いなさい。さっきから、あたしがお前を調教しているのはわかってるんでしょう。絹香たちはただ指示に従っているだけだわ」
やはり、下着一枚だけで乳房も露出している恵が上から明日香を睨む。
明日香は涙目で恵を見あげた。
「もう許してください……。謝ります……。真夫さんの悪口を言ってごめんなさい……」
明日香はとにかく謝った。
もう、何度同じことを口にしたかわからない。
しかし、この恵はどうしても許してくれないのだ。
だから、まだ、絹香たちなら可能性があるかと思って、哀願をしたのである。
「わかった。じゃあ、また、これで刺激してあげるわね」
恵が取り出したのは、またもや、耳かきだ。
しかも、白い綿毛がついている部分を使って、痒みが襲いかかっている局部を触れるか触れないかくらいの刺激でくすぐるのだ。
「いやあああっ、やめてえええ。もうだめです──。ひと思いに──」
「ひと思いになあに、明日香? それは真夫ちゃんに頼んでね」
恵がくすくすと笑いながら、耳かきの綿毛を操り続ける。
「もういやあああ──」
明日香は絶叫した。
街中にあるどこかのホテルの一室である。
絹香と双子の従者との賭けゲームで、破廉恥な勝負させられた明日香は、相手が絹香だったこともあり、ひと晩を絹香の奴隷として過ごすことを応諾した。
なんだかんだと言っても、明日香の身体は絹香との百合愛を求めていた。どっちが責めで、どっちが受けであるかは関係なかった。
拗ねた態度をとったものの、明日香は絹香を求めていたのだ。
しかし、その絹香が明日香を拘束したまま連れていったのは、グラウンドに横付けされていた車であり、そこにいたのは、あの真夫の恋人の女子大生の朝比奈恵だったのだ。
恵とは全く面識はないが、絹香たちは真夫を通してなのか、とても親しそうにしていた。
ところが、恵は今日の昼間に、明日香が真夫に対して、「孤児のくせに」と罵倒したことをなぜか知っていて、それについて激怒する態度を向けてきたのである。
そして、恵は絹香たちに指示して、明日香を車の中で全裸に剥き拘束具を装着すると、股間に得体の知れないクリームを塗ったのだ。
それから、明日香の地獄が始まった。
すぐに狂うような疼きと痒身が襲いかかり、明日香は苦悶した。
しかし、ずっと放置され、余りの痒みに気が狂いそうになったとき、やっと車がどこかの建物の地下と思われる場所に停止したのだ。
そこがどこだかわからなかったが、明日香は拘束された裸身に、コートだけを羽織らされて、エレベータで地下からこの部屋のあるフロアに連れてこられたのだ。
車の中で装着されていた膝枷は外されたが、両手は背中で拘束されているし、コートは被っているだけなので、剥がされれば全裸だ。
さすがに、逃げるわけにもいかず、ここまで連れてこられた。
部屋に入るまで、従業員にも、ホテルの客にも誰に会うことがなかったことだけはほっとした。
連れてこられたのは、複数の部屋からなる豪華なスイートルームだったが、みんなを案内する恵は、部屋を素通りして、奥の本棚を操作して、その向こうにあった隠し部屋に全員を導いた。
そこがここだ。
まさに、「SMルーム」という場所であり、さっと見ただけで様々なSM用具が責め具、拘束具が揃っていた。もっと奥には大きな浴室もあるみたいだ。
そして、恵は明日香を寝台にあげると、後手拘束のまま仰向けに寝かせ、左右の足首に足枷を嵌めて、それぞれの金具を天井から伸びる鎖に嵌めて、両脚を開脚させた格好で引きあげたのである。
それだけでなく、改めて再び股間に得体の知れない媚薬を塗って、しばらくそこに放置したのだ。
誰もいなくなって部屋で明日香はひたすら悲鳴をあげてのたうち回った。
おそらく、戻ってきたのは、小一時間位してからだと思う。
どうやら、ルームサービスで食事をした気配であり、絹香の双子の侍女が明日香の分と思われる飲み物と食事を持ってきた。
飲み物はすぐに飲んだが、その瞬間に身体がまたかっと燃えるように熱くなった。
媚薬が含まれていたのは明らかだ。
さらに食事を食べさせられた。
拘束をされたままなど嫌だと拒絶したが、すると四人がかりのくすぐり責めを受けた。
あまりに苦しさに、食べると答えると、恵を含めた絹香と双子の侍女が四人で代わる代わる口移しで食事を明日香の口に運んできた。
唾液混じりの咀嚼混じりの食事だったが、気持ち悪いとか屈辱だとか感じる余裕はなかった。
四人はただ食べ物を明日香の口に入れるだけでなく、明日香の口の中のあちこちを舐めまくってきたのだ。繰り返される熱い口づけに、明日香はあっという間にぼっとなってしまった。
しかも、ほかの三人は明日香の乳首や内腿も舌で刺激もしてきたのである。
明日香は四人がかりの刺激に狂いながらも、必死に口に入れられたものを喉に押し込んだ。ちょっとでも拒む態度をすると、またもやくすぐり責めに移行されるからだ。
そうやって、おそらく一時間以上はかかって明日香は食事をさせられたと思う。
さらに始まったのがこれだ。
掻痒剤がそろそろ汗と愛液で薄まっただろうと、恵が明日香の股間に塗り直したのである。
寝台の真ん中で四人に囲まれて腕を後手に拘束されて仰向けにされ、両脚を天井に吊られているという相変わらずの格好のままでだ。
痛いほどの痒みの威力を発揮している掻痒剤の効果にひたすら泣き叫ぶしかなかった。
「き、き、気が狂う──。もう許して──。痒みをなんとかしてえ──」
ついに明日香は号泣してしまった。
恥も外聞も、プライドさえない。
もう、この痒みさえ癒やしてくれるなら、どんなことでもしようと思った。
「じゃあ、真夫ちゃんの奴婢になると誓いなさい。真夫ちゃんにも謝るのよ。今度、孤児だからって馬鹿にしたら、もっと酷い目に遭わせるわよ。いいわね──」
恵が明日香の顔に詰め寄ってきた。
明日香は必死で頷く。
考えるのは、この痒みから逃れたいという一心だけだ。
「わ、わかりました……」
「そう……。じゃあ、これからは、優しくする時間……。みんなで構ってあげましょう」
恵が明日香の太腿を撫でさすってきて、指でゆっくりと明日香の薄い茂みの上側をとんとんと叩いたりしてくる。
「じゃあ、わたしも加わりますね……。ねえ、恵さん……。明日香は普段は気は強いけど、実は、苛められるのが好きなんですよ」
絹香だ。
そして、恵に倣うように、恵の指に合わせてクリトリスの周辺をくすぐってくる。
だが、ふたりとも、一番痒い場所にはぎりぎり触れてこない。
「あたしたちも参加しよう、渚」
「う、うん……」
梓と渚は左右から明日香の乳首をぺろぺろと再び舐め始める。
「いやああっ──。もっと激しくしてよお──。焦らさないで──」
明日香はまたもや、この四人がかりの、まるでネズミをいたぶるような淫靡な責めに激しく身悶えた。
「大丈夫よ、明日香ちゃん……。うんと苛めてあげるから……。久しぶりだけど、むかしはよく女同士で愛し合ったりしてたから、思い出しながら責めてあげるわ。ちゃんと、レズ愛をしてあげる。何度も、何度も気をやって失神するまで……。いえ、気絶してもやめないかな。それが女同士の愛し方だし」
恵が指先ですっと痒みに狂っている股間にやっと触れた。いまのいままで、そのすぐ近くまで触っても、絶対にまともには愛撫をしてくれなかったのだ。
だが、すぐにそこから動いて、もう少し下のアナルの部分をさりげなくまさぐりだしてきた。
「いやああ、許してくれるって言ったじゃないのよ──」
明日香はお尻をがくがくと震わせた。
「もう許してあげてるわ。いままでは意地悪の責め……。これからは、歓迎の意地悪よ……」
恵はすっかりと濡れている明日香の愛液を利用して、指をアナルの中に挿入してきた。
絹香は絹香で明日香のクリトリスをくすぐるような責めを続けている。
双子は執拗に左右に乳首を舐め続けている。
しかも、その四人がかりの責めを大きく脚を開脚して吊られるという恥ずかしい格好で受けなければならないのだ。
堪らない感覚に明日香は、汗まみれの全身をうねらせた。
一気に全身が溶けだすような鋭い被虐の快感が沸き起こってくるのを知覚した。
「ああっ、あっ、ああっ、だめよお……」
明日香はすすり泣くような甘い声を出した。
だが、まだ足りない。
怖ろしいほどの痒みに襲われている股間は、もっと激しい愛撫を求めているのだ。
「い、意地悪しないで──。もっと強く愛撫してよお──」
明日香はついに我を忘れたように、吊られている両脚をがちゃがちゃと蹴るよう鎖を動かして絶叫してしまった。
「慌てないのよ……。夜はまだ長いんだから……。さあ、ちょっと待ちましょう。休憩よ」
恵の合図で四人の責めが離れる。
だが、愛撫の中断はいまの明日香には、むしろ残酷な責めだ。
その瞬間に、長時間の妖しい媚薬で痒みにただれている明日香の身体に、凄まじいほどの焦燥感が襲いかかってきた。
「意地悪しないでって、言っているじゃないのよ──」
明日香は逆上してしまった。
「だめよ……。たっぷりと意地悪するわ。今夜ひと晩で、身も心も真夫ちゃんの奴婢になるように、みっちりとしごいてあげるつもりだもの」
恵が意地悪く笑う。
明日香が全身を貫く痒みの苦悶に激しく身体を揺らした。
「でも、やっぱり、恵さんって、スケバンだったんですか。子分たちには、こんな折檻を? 随分と慣れた感じですけど」
梓の声だと思う。
「スケバンなんかじゃないったら。まあ、慣れているのは否定はしなけどね。だって、あたし、けっこうエッチだったもの。真夫ちゃんもそうだったけど」
「真夫さんは、むかしはどんな感じだったんですか?」
「すっごくエッチだった。でも、頼もしくて……」
恵と梓がそんな会話を続ける。
そのあいだ、ずっと明日香は放置されたままだ。
ひたすら悶え苦しんだ。
そして、しばらくして、やっと恵が再開の指示をほかの三人に出す。
「次は道具を使いましょうか」
恵が寝台の横につけていたトレイから今度は小型バイブを取り出すのが見えた。
それを振動させて、明日香の秘唇に静かに触れさせた。
「ひあああ──」
背骨まで突き通するような鋭い快感に、明日香は拘束されている身体を大きく弓なりにする。
さらに、バイブは股間の秘裂をゆっくりとおりて、さっきと同じようにアナルのくすぐるように当たり、しばらくアナルの入口を刺激してから、再びじわじわと肉の裂け目に沿ってあがり進む。
「いやああっ、はあああ──」
そして、ついにクリトリスに当たり、激しく振動する先端でクリトリスに押し潰すようにされる。
「んふうううっ、ああ、あああ──」
明日香は首を左右に激しく振り、ついに絶頂に向かって快感を飛翔させていった。
「まだだめよ。お預け。気はやらさせないわ」
だが、恵の操るバイブは、絶頂寸前ですっと離れてしまった。
「いやあっ」
明日香は泣き叫ぶしかなかった。
「さあ、順番に責めましょう。でも、ぎりぎりまでよ。間違って気をさせたら、罰ゲームね。次は絹香ちゃんがいこうか」
恵がバイブレータを絹香に手渡したのがわかった。
「へえ、罰ゲームですか?」
絹香がすっと、明日香の宙吊りの内腿にバイブを当てる。
「ひんっ」
明日香はびくんと身体を弾かせる。
「どんな罰ゲームはいい、みんな?」
恵だ。
「本当に別ゲームですか?」
当惑した声は渚だと思う。
「じゃあ、みんなのお尻を舐めるというのは?」
笑いながら提案したのは梓のようだ。
「それじゃあ、舐められる方が罰よ。お前、わたしのときはねちっこく舐めるでしょう」
「そうかもしれませんね、絹香お嬢様。それよりも、思いついたんですけど、明日香さんのことが終わったら、絹香お嬢様のお尻の本格的な調教に入りますからね。覚悟してくださいね」
「な、なによ、お尻って──」
梓と絹香のそんな会話が聞こえた。
侍女の梓が明日香を調教?
なんか、そんな風に聞こえたが……。
それはともかく、明日香はバイブを内腿に当ててから、全く動かさない。
すると、痒みが復活して、焦燥感で狂いそうになる。
「き、絹香、やめないでよ──。続けて──。お願い──」
明日香は叫んだ。
「あら、だったら、こんなのはどう?」
すると、絹香がバイブを明日香の股間に押し当て、ぐいと最奥まで一気に貫いてきた。
「ああああっ、いいいいっ」
明日香はがくがく額を身体を震わせた。
しかし、あっさりと絹香はバイブを抜いてしまう。
「ああっ」
明日香はがくりと身体を脱力させた。
そうやって、双子からも同じように責められた。
梓は、絹香以上に責めがうまく、明日香の焦燥感が頂天になるのを狙うかのように、少しだけ責め、責めては中断して、明日香が狂いそうになるとバイブを強く当てるということを繰り返した。
明日香はひたすら翻弄された。
渚の番になると、四人の中で一番手馴れてないのはわかった。
すると、恵が指示して、クリトリスを刺激して一気に責めたり、それでいて、急に離したり、あるいは、アナルに向けたりしてきた。
恵は女同士の性愛に一番手馴れている感じがあり、言語に絶するような切なさと官能の痺れに襲わさせられた。
同じような焦らし責めが二周りして、三周り目になったとき、明日香は「やめないでくれ」と号泣して哀願した。
「焦らされすぎて、いよいよ頭にきたみたいね。じゃあ、もう焦らすのはやめてもいいわ。その代わりに、あたしたち四人の責めをひとりで朝まで受けるのよ。できる?」
恵が明日香の顔を覗き込みながら言った。
「もうなんでもしてください……。その代わりにもう焦らさないでください」
「いいわ。その代わりに音をあげてもやめないわよ」
恵が自分の唇を舌で舐めて濡らしながら妖艶に微笑んだ。