正確には番外編というわけではなく、正規の49話という意味合いで書きました。これは実際に2人がどういう誕生祭の夜を過ごしたかという物語です。本編ではできる限り表現を控えるため、あえて語られなかった2人の夜。その一部を、この場を借りて公開させていただきました。
僅かでも、楽しんでいただけると幸いです。
そのホテルは、グランド・ロイヤルセブンホテルという名前であった。
七条グループが経営しているホテルの名としてセブンの文字が加えられているところに、より一層のグループとの繋がりの深さを感じるようだ。
5万㎡という広大な敷地に、客室数は1000を越える大型ホテル。施設内部にはプールやフィットネスも完備され、去年からはバラ園も併設されている。
特にプールは外部にも設置されており、ナイトプールを楽しめるとして夏場は宿泊客で賑わう。
さらに結婚式を目的としたチャペルや、宴会用の別館。食事も一流シェフの手によるもの。
本館は上階に近くなるにつれて、一般客専用からVIP専用の部屋まで用意されている。
そのVIPルームに高校生のカップルが入る、などという事は極めて難しい。しかも、2人とも平均的な中流家庭の生まれならばなおさらである。
「本当に、凄い部屋ですね」
ホテルのボーイに指定された部屋。その部屋に入った初めの感想がそれだった。本当に、これ以外に表現のしようがなかったのである。
「こういう所って、テレビの中だけかと思っていました」
津田タカトシの言葉に続くように、五十嵐カエデも呟いた。まさか、高校生のうちに親を抜きにしてこんな部屋に泊まる日が来るとは。
「まあ・・・・・・圧倒されてばかりもいられませんよね。少し、一緒に見て回りませんか?」
「はい。私もそうしようと思っていたところですので」
見て回る、という表現は正しかった。実際、2人の部屋は歩いて回れるくらいの規模の広さだったのである。
上質なテーブルや、椅子。ソファに冷蔵庫。おしゃれなライトに、上品なカーテン。
そして、柔らかそうな降高級のベッド。
以前のミステリーツアーが行われた館にも格の高い家具が使われていたが、あちらはどちらかというと、雰囲気を出すために用意されたアンティークさに重点が置かれてあった。
扉があり、そのうちの一つを開ける。
「凄いですね。バスルームはガラス張りです」
足下は美しいタイルに、新品のシャワーや風呂。壁は一面がガラスなので、そこまで近づけば輝きを見せている都会の夜景が全て見下ろせる。
空は、すでにいくつもの星が輝いている。冬のクリスマスは、満天の夜空だった。
この夜なら・・・・・・と、つい一緒になって隣に立っているカエデの顔を見てしまう。
「っ」
目が合った。慌てて、顔を背ける。
「あ、すみません・・・・・・」
つい赤面して、恥ずかしそうに俯いてしまうカエデ。ひょっとして、彼女も同じ事を考えていたのかも知れない。
思わず、ここで押し倒してしまおうかという考えが脳裏をかすめたが、それは持ち前の自制心で耐えた。
「え、ええっと・・・・・・次に行きましょうか」
そう言って、そそくさとバスルームを出てしまうカエデ。どうやら、空気が変わりはじめたことを悟られたようだ。
すこしだけ残念に思いつつ、タカトシはカエデの後を追った。
「ああ、ここはトイレでしたか」
カエデが向かい側の部屋を開くと、清潔な洋式トイレがあった。ここは特に見るものはない。次は扉と思っていたが、クローゼットを開いてしまう。
「えっと、次は・・・・・・」
「こっちですよ。カエデさん」
タカトシが恋人を促す。バスルームと同じく、ガラス張りになっているドア。その先が何であるかなど、流石に見れば分かる。
「ここは・・・・・・」
一緒にガラス製のドアを開くと、2人してその先に。
バルコニーの出入り口。眼下には、今もなお夜空の下で生活を続けている人々の光の証。
今もなお開発が続いている、故郷とは遠く離れた一つの都市。都会の夜景。
別世界。そうとしかいいようのない光景を、今2人は寄り添って見下ろしている。
「素敵・・・・・・」
カエデの唇から自然と零れる呟き。室内からとは違う、冬の風が頬をかすめる。だけど、なぜだか心地よい。
「本当に・・・・・・今日の幸運に感謝ですね」
そう。今日、あのテーマパークでデートをしていなかったら、こんな夜は過ごせなかった。聖夜の夜、二人きり。眼下にイルミネーションが浮かぶこの場所で。
「ええ。なんだか、夢の中にいるみたいです」
夢はいつか覚めるもの。だけど、今だけは。
「カエデさん」
「あっ・・・・・・」
甘い声。誰もが惹かれずにはいられない、自分を呼ぶ彼の声。
「んっ」
カエデの身体が、かあっと熱くなった。気付いたときには、タカトシは自分を抱きしめて唇を吸っていたのである。
舌を差し出された。彼女の心に、驚きはない。絶対にそうしてくれると願っていたのだから。
小さな唇を開いて、タカトシの舌を迎え入れた。舌を絡め、唾液を嚥下する。
彼女は、ぐっと彼を抱きしめ返した。
バルコニーから室内へと入り、大型のベッドへ近づく。
照明の一部を消し、薄暗くなった。それだけで、どこか洋画のワンシーンを思わせる空気になる。
カーテンを閉めることはしない。美しい夜景に囲まれながら、今夜を迎えたかったからだ。
心臓が早鐘を打つ。はやる気持ちが抑えきれない。
お互いに、夢中で舌を絡め合った。カエデはそっとタカトシの頬に触れ、逃がさないとでもいうように優しく押さえている。
それに対し、タカトシもまたカエデの小さな耳を指でそっとなぞる。くすぐったそうに、彼女が肩をすくめた。
タカトシは彼女から唇を話すが、それだけでは終わらない。舌を這わせたまま、顎から喉、首筋まで舐め上げる。
「ああ、ん・・・・・・」
顎を逸らし、切なそうな声。今まで、聞いたことのない艶めいた反応だった。ニットの襟を開き、さらに鎖骨まで舐めれば、たまらずにギュッとタカトシの首に抱きついた。
ニットの裾をつまみ、スルスルとたくし上げる。白い清楚なインナーを確認すると、それもめくり上げた。かわいらしい小さなヘソに、白い引き締まった腰回りがあらわになる。
2枚とも、少しだけ強引にずり上げた。こういう行為は、少しだけ乱暴にする方がいい気がしたのだ。カエデも嫌がるそぶりなど無く、むしろ上着をそっと上半身から抜き取った。
タカトシは、目の前の光景に息を呑んだ。ブラジャーに包まれた胸元が目の前に飛び込んできたのだから。
鎖骨のラインはしっかりと浮かんでいるのに、吸い付きそうな艶やかな肌が18歳の色香をまき散らしている。レースがあしらわれた白のブラジャーに持ち上げられた発育の良い乳房が、見事なまでに深い谷間を見せていた。
流石に羞恥を覚えるのか、カエデは頬を染めながら目を背ける。それでも、タカトシが彼女のスカートを足から抜き取るまで、ずっとされるがままであった。
タカトシもまた、自分の衣服を脱ぐ。スポーツと格闘技で鍛えた身体は、否応なく逞しさと頼もしさを兼ね備えた男性特有の色香があった。
カエデは自然と、ブラジャーのホックに指をかけた。肩紐を滑らせ、カップが床に落ちる。
解放を喜ぶように弾んだ乳房は、あまりにも美しかった。見事な重量感を持ち、とても10代の少女のものとは思えない。
タカトシの視線が突き刺さっているのを感じ、羞恥とほんの少しの優越感を感じるカエデ。いま、彼は自分に魅了されているのだという女の悦びを。
ヒップに食い込んでいる純白のパンティまで脱ぎ去ると、とうとうカエデは一糸まとわぬ全裸になった。タカトシも唯一残っていたトランクスを脱ぎ去ると、美しい姿態をそっと背後のベッドに押し倒す。
フワリとした感触のベッドは、2人をそっと受け止める。指を彼女のツンとした乳房の谷間にあてがい、柔らかい脂肪を経て小さな乳首に到達した。
胸の大きさと張りが絶妙だ。愛撫するたびに乳首が硬く尖り、舌先にも心地よい反発を与えてくれた。
いつしか、両手で揉むのに夢中になる。カエデも激しい行為に感じ始めているのか、薬指を噛む仕草をする。
上を向いた乳頭を舌で舐め転がし、時折きつく吸い上げる。さらに片方の乳房は、指で乳首をつまんだまま円を描くように揉み込んだ。
「・・・・・・少し、痛いかな?」
呟くように言うと、カエデは視線だけをこちらに向ける。切なげにトロンとした瞳は、全く痛がっている様子はない。
「気持ち、いいです・・・・・・淫猥ですけれど、とっても」
いじらしくも、微笑みを向けてくれるカエデ。その反応に、タカトシの背筋に激しくも痺れる感覚が走った。
「きゃっ・・・・・・」
カエデの膝を開き、薄い恥毛が混じった性器がよく見えるように、彼女の足をM字に開脚させた。
「は、恥ずかしい・・・・・・」
カエデが顔を真っ赤に染める。タカトシは彼女の秘部に顔を近づけた。
ほのかな汗の匂いと、ミルクのような香りが鼻腔をくすぐった。
これが、カエデの匂い。だが、不快に思うどころか、脳が痺れるほど恍惚となった。
「綺麗ですよ、カエデさん」
「ああ・・・・・・」
股を大きく開かされているのに、カエデのそこは僅かに貝の足のようなものが先端を少しのぞかせているばかりだ。
陰核がある場所も包皮にくるまれており、定かではない。薄い陰毛に隠れている膣内への入り口は、カエデが身をよじらせるたびに複雑に変形させている。
こんなものを見ては、耐えられるはずもない。密口を慈しむようにキスをして、舌先で摩擦を加えた。
「やあん・・・・・・そんなところ、汚いです。舐めちゃダメ・・・・・・っ」
「汚くなんかありませんよ」
夢中でしゃぶるように吸い付くと、カエデが背筋を反らせた。その反応を見て、今度は二本の指で左右にそっと開く。
密かに息づく花びらが開かれ、中にピンク色のひし形ができた。そこに僅かに触れるだけで、感電でもしたかのような腰の動きをするカエデ。
刺激が強すぎたと悟ったタカトシは、今度は優しく熱でほぐすように愛撫をする。小さい陰核が僅かに圧縮を繰り返す。
「はあ、ああん・・・・・・タカトシ・・・・・・私、変な気分・・・・・・」
カエデの身体が断続的に痙攣し初め、丹念に舐め回した乳首がピンと突起したままだった。
タカトシは鼻先でクリトリスを擦ると、穴の中心をなぞるように舐めていく。
そこからは、先ほどまでなかった密汁があふれ出した。手応えを感じ、舌先ですくい取った密汁で丹念に舐めた。ひときわ大きな声が上がる。
「はああんっ・・・・・・!」
薄い包皮から陰核が顔を出した。カエデの身体は震えが大きくなり、悲鳴とも喘ぎともつかない声が途切れ途切れに出ている。
タカトシの男性器は、すでに力強く勃起していた。脈を打っているのが触れずとも理解できる。
だが、まだだ。もう少し、カエデの大切な場所を弄んでみたい。
タカトシは舌を尖らせて、膣の中に差し込む。膣内のウネウネとした肉の収縮に、つい舌を目一杯伸ばしてしまう。
すると、舌の先端に薄い壁のようなものを感じた。そこを優しく突くと、カエデはまたしても上半身を反らして身悶えた。
これが、カエデさんの処女膜・・・・・・
それに感動と興奮を覚えると、舌先をゆっくりと回転させた。すると、彼女はむしろ積極的に腰を動かしてくる。
密汁の勢いが止まらない。唾液と混じり合い、タカトシの喉を伝ってベッドの上に落ちていく。
そこで、やっとタカトシはカエデの濡れそぼった秘部から口を離す。のしかかるようにして、彼女の上に四つん這いになった。
「タカトシ・・・・・・」
「カエデさん・・・・・・行くよ」
その意味が分からないはずがない。カエデはまっすぐに彼の瞳を見つめ返した。自分の意思で足を開いて、大きく深呼吸をする。
「はい・・・・・・」
タカトシはカエデとキスをして唾液の交換をすると、亀頭の先端をゆっくりと割れ目へあてがった。
カエデの膣は先ほどまでのクンニによって左右に開き、それと同時に粘液が亀頭に絡みついてきた。
その感触に、タカトシはうめき声をあげそうになるが、体重を少しずつかけていく事は止めない。同時に、カエデの身体が痙攣する。
媚肉を押し込んでいる手応えはあるが、処女ということもあって抵抗力は強かった。それを察したのか、額に汗を浮かばせながらもカエデは両手をタカトシの首に巻き付けてくる。
「私、大丈夫ですから。タカトシに、捧げたいんです」
「カエデさん・・・・・・俺も、です」
彼女の一押しに、タカトシは吹っ切れた。下半身が剛直になり、縦割れの筋にめり込んでいく。
「カエデさんを、俺のものにします」
タカトシが絞り出すような低い声で本音を呟いた。
「私も、タカトシが欲しいです」
ギュッと、しがみつく力が強まった。
タカトシは亀頭をさらに押しつける。すると、あれほど狭かった膣内が、ゆっくりと押し広げていった。
何かを破る感触が、亀頭の先に感じる。しかし、もう奥に進む勢いは止まらない。
受け入れたのだ。カエデの子宮が、タカトシの男根を。
そして、タカトシの分身をその熱い肉壁で強く締め付けてきた。
「はああああ・・・・・・っ!」
「大丈夫ですか?」
「はい・・・・・・大丈夫です」
そう言いつつも、カエデは首にしがみつくのを止めない。
子宮の奥の底までたどり着き、タカトシの巨大な剛直はなお逞しさを止めない。子宮の中で収まりきれないそれは、容赦なく純潔を失ったばかりの少女の膣を容赦なく押し広げていく。
「く、う、ああ・・・・・・」
カエデは目を見開き、呼吸が荒くなっていく。一方のタカトシは根元を締め上げる感触が、どうしようもないほど心地よかった。
苦痛に耐えているカエデに、無理をさせるわけにはいかない。一刻も早く、自分の身体に馴染ませようと考えた。
亀頭を包む媚肉のぬめりと、これまで味わったことのない締め付け具合を味わいつつも、タカトシは腰を動かすことを選ぶ。
「行きますよ。ゆっくりと、深呼吸をしてください」
「はいぃ・・・・・・くううっ!」
未だ続く痛みに翻弄されつつ、カエデは唇を噛みしめた。無理矢理こじ開けられる断続的なピストンに、呼吸をするのが精一杯という状態である。
ペニスを奥へ誘う膣壁の蠢きは相変わらず激しく、その強いシゴキと熱い体内にタカトシの方も夢中に腰を動かしはじめた。
次第に痛みが和らぎはじめ、媚肉の締め付けも変化していく。その代わりに襲ってくるのは、波打つほどの感覚。
子宮の奥を何度も突き上げる怒張に、膣口が反射的に締め付けてくる。
「あ、ああっ! き、気持ちよくなってきて、んんっ」
苦痛が遠ざかっていく。今感じるのは、純粋な快楽。一つになった悦びと心が、2人を満たしていくのが分かった。
「もっと、強く・・・・・・突いてあげますよ」
「くううっ! こ、こんなの・・・・・・あああああっ」
腰の動きが増していく。鍛えているだけあって、とてつもない突き上げ運動がカエデの子宮に襲いかかる。乳房が上下にブルブルと震えた。
タカトシのピストンに、カエデの腰はついていけない。ただされるがままメチャクチャに腰を振って、生まれて初めての快感に翻弄される。
せめてもの抵抗として、タカトシの頭を押さえて唇を重ねる。舌を入れ、唾液を飲み干していった。
タカトシは激しい快楽の波に呑まれながらも、さらにストロークを大きくしていく。
「愛しています、カエデさん」
甘く囁きながら、カエデの顔に再びキスをした。
「私も、愛しています」
互いに抱きしめ合ったまま、お互いに激しく愛し合う。
タカトシは力強さを抑えつつ、今度はじっくりと腰を動かした。
次第にピッチを速めると、今度はカエデもそれに合わせて腰が動く。
その初々しさが、また快楽を煽った。
「カエデさん・・・・・・いきますよ」
「は、はいっ・・・・・・好きな・・・・・・好きなところにっ!」
その懇願の叫びが、タカトシの最後の一線を越えさせた。
ピストン運動が早まる。時に力強く押し込んでは、一気に引き抜いた。
子宮が吸い出されそうな感覚にも、カエデは一端の快楽を覚えてしまう。愛液で潤っている結合部は、すでに動きがスムーズになっている。
怒張に蜜液と混ざった血が絡みつき、少女の白い太腿の一部も赤く染まっていた。
「ああ、タカトシ。私、もう・・・・・・」
目の前の彼にしがみつき、顔をタカトシの胸に埋めた。しがみついていないと、姿勢を保てないようだ。
そして、健気にも自分から腰を振り、クネクネと動かしはじめた。カエデもまた、タカトシを悦ばせようと必死になっているのである。
その健気さに、対面座位の姿勢のまま怒張を何度でも突き上げた。裏筋が肉壁に摩擦されて、灼けるような快感が沸きおこる。
「カエデ、さんっ・・・・・・! 俺っ、出ます・・・・・・!!」
「タ、タカトシっ・・・・・・私もですううううっ・・・・・・!!」
凄まじく暴れる肉棒は膣内をかき回し、熱く濃厚な白濁液を吐き出したのである。
尿道が焼けるような感覚に襲われ、強烈な快感が身体を駆け抜けていく。
自分でも信じられないほどの射精が続き、大量の粘液を恋人の膣内に放ったのであった。
五十嵐カエデが目を覚ました時、すでに意識が途切れる前から一時間が経過していた。
まだホテルに入ってから、日付を跨いでいない。普段の自分でもまだ充分に起きている時刻だ。
そう。ここは初めて来たホテル。記憶をまさぐると、生まれて初めて経験した行為に気絶してしまったらしい。
そうか。私、タカトシと・・・・・・
思い出し、急激に恥ずかしさがこみ上げてくる。自分は、とうとう経験してしまったのだ。乙女ではなくなる、大人の行為を。
かあっと顔が熱くなり、ベッドの掛け布団に包まってしまう。
そこで気付く。自分は掛け布団をしたまま眠ってしまったのだろうか。横を見ると、自分と同じように一糸まとわぬ裸のタカトシが、身体をこちらに横たえて目を閉じている。自分が気を失ってしまったので、一緒に添い寝をしてくれていたのだ。
ちゃんと寝かせてくれたんですね。それが分かり、チュッと眠る彼の頬に軽いキスをしてあげる。
少しだけ、気分が良くなった。外を見れば、色とりどりのイルミネーションの世界。
きっと今こうしている時でも、誰かが誰かと共にそれぞれの時間を過ごしている。どこかへ向かい、誰かと会う。人の数だけ交流があり、ドラマがある。この街で生きている人たちもそうなのだ。
あ、と気付く。そういえば、行為をしてから汗まみれのままで眠ってしまったのだ。せっかくなのだから、バスルームを使わせてもらおう。
カエデは横で眠っているタカトシを起こさないように、そっとベッドから降りる。
「痛っ・・・・・・」
床に足をつけたところで、股間に痛みが走る。話には聞いていたが、やはり処女の喪失というものは行為の後も悩ませるものらしい。
でも、すぐに慣れる。この傷は、女ならば絶対に耐えられる痛みなのだから。
脱ぎ捨ててしまった衣服を拾い、ふらつきながらも風呂場へと向かった。衣服を脱衣所の籠に置き、バスタオルを持ってバスルームに。
2度目とはいえ、やはり絶景と言うほかない。壁がガラス張りで、ここでもベッドからとは違う夜景が見える。
本当に、VIPルームというものは違いますね。今更ながらそんな場違い感を抱きつつも、カエデは三つ編みにしていた髪をほどき、タオルで前を隠しながら中に入っていく。
風呂は新品同然で、大人が2人なら余裕では入れそうな広さであった。なみなみと熱いお湯を出しておき、続いてタオルを外してシャワーを出す。
ちょうど良いお湯加減になったら、上から降りかかるシャワーを浴びる。白い湯気が立ち上り、疲れ切った女体を優しく温めてくれる。
気持ちいい。夜の遠い夜空を見ながらシャワーを浴びるというのが、これほどまでの開放感だとは知らなかった。
白く曇り始めている洗面鏡の中の顔と目を合わせてみると、いつも通りの自分の顔が映っている。三つ編みを解いたためにウェーブのかかった、ロングの髪の女性。
しかし、どこか自分の殻を破ったかのような、1人の女の顔。
自惚れかも知れないが、なんだか少しだけ顔が変わったような気がする。どこが、と聞かれると困るのだが、なんとなくこれまで見てきた顔とは別人のようにも思える。
女になる、というのはこういうことなのでしょうか。カエデは思う。
手のひらに備え付けのボディソープを付け、引き延ばすようにして全身に塗りたくる。肌を保つコツは、タオルやスポンジを使わず、手のひらでマッサージしながら丁寧に洗うことだ。
張り付いたままの愛液。そして、破瓜の出血が流れた跡。それらが全て、排水溝の中へと消えていく。
「はふう・・・・・・」
唇から熱い吐息が漏れた。
肌が熱い。なんだか全身が敏感になっている。実を言うとベッドから覚醒してからというもの、微熱があるような気がするのだ。夜の自室でこっそりと、タカトシを想って自慰にふけた後よりも。
特に、今は変調が激しい。彼に責め立てられた股間が燃えるようだ。
手のひらでジェルを膝の裏側に塗り込めながら、カエデは白い太腿を擦り合わせていた。子宮がキュンと締まる感じがある。
「カエデさん。入りますね」
「タ、タカトシ?」
突然バスルームに姿を見せたのは、他ならぬタカトシであった。鍛えた身体を晒したまま、湯気の中から姿を見せる。明るい照明の下で見る彼の肉体は、より一層ハッキリと雄の逞しさを思い知らされた。
仰天すると同時に、思わずタイルの床にしゃがみ込んでしまうカエデ。
「すみません。脅かすつもりはなかったんですが」
「い、いえ。確かに、驚きはしましたが。お、起きていたんですか?」
「はい。カエデさんが、そっとキスをしてくれた時に」
あれか。カエデは思う。そのせいで、起こしてしまったらしい。
「そ、それはすみません。ですが、わざわざ入ってくるなんて」
「はい。俺も少しどうかとは思いましたが、せっかくこんな部屋で泊まっているんです。冒険してみたくなるのは当然ですよ」
タカトシはタオルを持っているが、前を隠そうとはしていない。しかも行為をして間もないというのに性器は全く衰える気配はなく、相変わらず天を突かんばかりであった。
彼はボディソープの液体を手のひらに垂らすと、すでにヌルヌルになっている風紀委員長の肌に触れた。
「背中、流してあげます」
「ちょ、ちょっと待って・・・・・・」
そそり立つ男性の象徴に動揺しながらも、彼が背後に回ることを許してしまう。背中に感じる彼の手の感触に、ぐっと身をすくめた。
全裸で、明るい照明が照らされる下で、男と2人きり。先ほどまでは薄暗い部屋の中であったが、今は初体験を迎えるときよりも気まずい感じがする。
「いきなり入ってきてしまって、悪いとは思います。でも、こんな経験は滅多にありませんから。俺だって、こういう時は積極的になりますよ」
それに、とタカトシは続ける。
「なんだか、俺も変な気分なんです。カエデさんと、少しでも離れてしまうことが怖くなってしまって」
いささか、彼らしくない言葉であった。背中や腰回りを撫でられつつも、カエデは黙っていた。
「もっと抱きしめていたい。触れたい、って。気がついたら、風呂場に足を踏み入れていました」
「別に、そんなつもりはありません。ただ、汗を洗い流したかっただけで・・・・・・ひゃん!?」
タカトシの指がツーッと背中の中心を撫で下ろしてきた。くすぐられるような感覚に、カエデは裸身を反らす。
背中を撫で回す両手が、腋の下に潜り込んできた。ヌルヌルの手が左右の乳房を鷲掴みにして、絞るように膨らみを揉みたててくる。初体験を迎えたばかりのはずなのに、彼の手つきはあまりにも彼女の性感を刺激するものであった。
「あふっ、あんっ・・・・・・タ、タカトシの手つき・・・・・・淫猥です」
「気持ちいいですか?」
「は、はいっ・・・・・・とっても」
10本の指と手のひらを使って器用に揉み続け、やがて乳首をもつまみ上げる。痛みに似た快感に、カエデは首を振りたてる。
「だ、ダメえっ。それ、凄いいっ」
膨らみを揉みしだきながら、指の先で乳首を転がした。繊細な手つきに、みるみる乳首がしこり立っていく。
タイルに座り込んだまま、腰を動かすカエデ。それが、何よりも快感に溺れている証拠でもあった。
タカトシの手は乳房を離れ、肋骨を浮きだたせた脇腹をマッサージするように愛撫しはじめた。エステでも普通にされるような行為にも、カエデの肢体は心地良さに痙攣する。
湯気と羞恥。そして何より快感に、カエデはもう全身が真っ赤であった。湯気の中にのたうつ裸身も、熱い血の色を透かせて悩ましく色づいている。乳房や脇腹の性感をここまで刺激されては、腰の動きが止まらなくなるのも仕方が無い。
ボディソープに包まれた男の手つきは止まらない。左右の乳房をギュウッと絞られ、ああっと歓喜にのけぞった。
「ああっ、タカトシっ!」
純潔を失ったばかりの最奥が、キュンと収縮する。秘部に触れてもいないのに、彼の愛撫だけで達してしまいそうになっているのだ。
「あううんっ、はああっ」
「イキそうなんですよね。いいんですよ。イカせてあげます」
尖った乳首を、ここぞとばかりにタカトシの指がしごいた。しごいては引き伸ばし、それを何度も繰り返す。そのたびにカエデは嬌声を上げ、肢体を大きくのけぞらせた。
「ほら。いいんですよ。思いきり、イッてください」
「ひううっ、はああああんっ!」
熱い乳首を強くひねり上げられ、女体が何度もバウンドする。
「あああああああああああ・・・・・・っ!!」
膨れあがった快感が爆発し、カエデはとうとう大量の分泌液を吹き出しながら、達してしまった。
「ほ、本当にするんですか?」
未だに白い湯気が立ちのぼるバスルームと、夜空と夜景が一望できる絶景。その境であるガラスに、カエデは両手を付いていた。不安げな眼差しで、肩越しに背後に立つタカトシを見つめている。
「思い出ですよ。これも、この夢みたいな夜のために」
「で、でも・・・・・・こんな所じゃあ、見られてしまいそうで」
ここが、いかに数十階層の室内といえども、ガラス一枚先に外があることに変わりは無い。まるで、今まさに誰かが望遠鏡でも使ってこちらを見ているのではないかと、そんな想像までしてしまいそうなのだ。
「絶対にありませんよ。ただ、この夜景と星空を見下ろしながら、俺はカエデさんと愛し合いたいんです」
「そ、そんな言い方、ずるいです・・・・・・」
いっそ紳士ともいえる言葉を耳元で囁かれ、カエデは狼狽した。半ば無理矢理にとらされている格好は、紛れもない立ちバックである。
これ以上は、押し問答をする気は無い。そう言わんばかりに、タカトシは凄まじいほどにいきり立っている怒張を、ヒップの割れ目に押しつけた。
「タ、タカトシ・・・・・・なんだか、さっきよりも、凄くなって・・・・・・?」
そそり立つ剛直の裏側を尻割れにそって、上下に擦りつけた。すでにカエデの秘部は達したばかりなので、準備万端とばかりに蜜をあふれ出している。
「まだまだ、夜は始まったばかりですよ」
「んああっ!」
鍛えた力で腰をつかみ、押し込むように熱い剛直を突き刺した。長い髪を振り回し、尻をもたげたカエデは弓なりに背をそらす。
「はうううううっ!」
押し入ってくる勢いに押され、カエデは上半身をガラスに押しつけた。弾力のある乳房が、餅のように張り付く。
これでは、外から見れば潰れた乳首と、むにゅっとした乳房が押しつけられている様が丸見えだ。それが分かっていても、背後から打ち抜いてくる快感はどうにもならない。
「ああああっ! だ、ダメです、見られちゃううううっ!!」
この夜空と都市の美しいイルミネーションを観客にした、恋人同士の公開プレイ。その事実が、凄まじいまでの背徳感と快感を燃え上がらせた。
メリメリと引き裂かれる拡張感に続いて、息もできないほどの圧迫感が襲ってくる。
狂ったように喘ぐカエデは脳の芯まで灼きつくされていく。先端がズンと最奥に達し、子宮口をグイグイと押し上げてきた。
ピストンのスピードが、どんどん速まっていく。淫らな汁の音が響くほどの激しい動きで、ピタリと腰の動きを止める。
「ああっ、ど、どうして・・・・・・?」
オロオロと狼狽するカエデ。ガラスに上半身を押しつけられている体勢のまま、肩越しにおずおずとタカトシを見つめる。
やめないで。そう瞳が訴えている。
ここで寸止めをされるなんて、と震えるヒップを動かしてしまう。目覚めたばかりの18歳の切なげな悶えは、悲しい女の性としかいいようがない。
刺されたままの臀部が小刻みに痙攣し、タカトシの怒張を締め付ける肉壺がヒクヒクと物欲しげにうごめく。
明らかに、カエデを焦らしている。あえて根元まで挿入せず、浅いところをユルユルとかき回しはじめたではないか。
「ああん・・・・・・ダメ、ダメです・・・・・・タカトシ、意地悪・・・・・・しないで、ください」
中途半端な抜き差しがもどかしい。自分でも気付かぬまま、腰を振りたてていた。さっきみたいに、何度も奥を貫いて欲しいのに。
「どうして欲しいか、言ってください。この街に住む皆の前で、何をして欲しいのかを」
「そ、そんなあぁぁ・・・・・・」
徐々にペースを上げながら、タカトシは試すように訊ねた。カエデが切羽詰まっていると見抜いた上での意地悪なのだ。
「答えてくれないなら、抜きますが」
「ダメえええっ!」
カエデはもうひとたまりも無かった。懇願の悲鳴を上げると、腰をブルブルと震わせる。
「つ、突いてください。さっきみたいに、激しく、何度も・・・・・・」
自分を貫いている男根に支配されている。そう分かっていても、カエデはもはや肉欲の示すままになるしかなかった。
「その言葉を、待っていました!」
「ひぐうううっ!!」
タカトシは再びペースを上げた。今度こそ手加減なんていらない。この牝を一匹の獣として犯し尽くす。その一心で、フルスロットルに突き上げる。
「ああああん! それっ、それが欲しかったんですううっ!!」
「やっと正直になってくれましたね! 可愛がってあげます!! 一晩中、何度もイカせてあげますからっ!!」
「あぁん、嬉しいっ! タカトシっ、タカトシぃぃぃっ!!」
「愛しています、カエデさんっ!」
「愛しています! 私も、タカトシを・・・・・・だから、もっとっ! ああっ、もっとして!! ひいっ、ひいいいっ!!」
激しく後ろから犯されながら、前では色とりどりの夜景がこちらを見ている。芸術そのもののような光景が、今は自分達の観客席となっていた。
豊満な裸身を狂ったように悶えさせる。熱くただれた肉壺を、逞しく傘を広げた怒張が嵐のように突きえぐってくる。
「凄い、締まりですよっ! カエデさんは、どうですか!?」
「ああっ、いいです! タカトシのそれ、いいですうっ!!」
もう普段の凜とした風紀委員長の姿など、どこにもなかった。もう嬌声が止まらない。失禁でもしたかのような愛蜜が、震える太腿の内側をトロトロとつたい流れる。同時に抜き差しを繰り返す男の怒張の根元からも、熱い雫となってポタポタとしたたり落ちた。
「ダメっ、もう・・・・・・もうダメですううっ!」
全身に小刻みな痙攣が走り出した。
「イクッ! ああっ、わたし、もうダメええええ!!」
完全に男の味に屈服した少女は、貫かれたヒップを激しくわななかせる。誰にもはばかることもなく歓喜の声をほとばしらせ、キリキリと弓なりに背を反らした。ギュウギュウと押しつけられている乳房の面積が、一層広くなる。
強烈すぎる発作に、頭が真っ白になった。もたげた臀部が何度も震える。
グッタリと力が抜け、ガラスに上半身の全てを押しつけそうになった。その崩れた腰をタカトシは両手で引き上げる。
そのまま、バックで犯し続けた。腰の勢いはとどまるところを知らず、達したばかりの女の肢体を、容赦なく突き上げる。
小さな唇を開いて熱っぽく喘ぐ美貌は、完全に堕ちた女の顔だった。
「ま、待って・・・・・・少しだけ・・・・・・休ませ・・・・・・」
立て続けに責められるのは、初夜を迎えたばかりの女には荷が重い。この男の身体にはどこまでの力とタフネスがあるのだろう。
「まだですよ。カエデさん」
タカトシは全く疲れを見せておらず、それどころか力強いストロークは少しも衰えを見せていない。膝をぐらつかせる先輩に活を入れるように、グイグイと腰を掴んでいる腕を持ち上げる。
「俺はまだ、最後まで達していません。今度こそ、一緒にイカせてあげますので」
さも心地よさそうに腰を振り続ける男。声の感じや、抜き差しする怒張の勢い。もはや射精が差し迫っているとしか思えなかった。
「ああっ、ああっ! ひいっ、ひいいいいっ!!」
揺すられながら、カエデはよがり狂う。達したばかりの身体に追い打ちをかけられ、彼女は早くも2度目のエクスタシーに達することを悟った。
ただれた果肉をリズミカルにかき混ぜられて、カエデは快感のあまりに頭がうつろになっていく。燃え上がるような子宮の刺激は、男の律動に合わせて淫らにくねりはじめる。
カエデは今や、快楽の渦に呑まれ続ける中で、男の熱いザーメンを子宮に浴びることを何よりも欲しがっていた。逞しい突き上げがズンズンと最奥に食い込むたびに、愛し合うセックスの味に溺れていく自分を感じてしまう。
子宮が疼いて溶けただれ、熱い喜悦となって溢れ出るのが分かった。タカトシもまた、身を震わせる。
お互いが、顔を歪ませた。絞り出す声色が切実になる。
「くっ・・・・・・俺も、出ます! 全部、中に出しますっ!!」
「あああああん! また、イッちゃううっ!!」
苦しいまでの絶頂。子宮の奥で、凄まじい精液が発射される。
極上の射精。そうとしか言いようのないフィニッシュは、2人の腰を痙攣させるには十分であった。
タカトシは未だに2本の足で立っているが、カエデはもう限界だ。ガラスを伝いながらズルズルとタイルの上にへたり込む。
溺れた後のように激しく息継ぎをしながら、ただ汗と水滴でずぶ濡れになった肢体を休ませた。その様子を見下ろしていたタカトシは、そっと彼女の身体を持ち上げる。
「ふえ・・・・・・?」
トロンとした虚ろな瞳をタカトシに向ける。今、自分がお姫様抱っこをされていることにも気付いていないのかも知れない。
「お疲れ様です。一緒にお風呂に入って、ゆっくり休みましょう」
チュッと、首を伸ばしてカエデの頬にキスをする。そのまま体重を感じさせない足取りで浴槽に近づき、彼女の半身をお湯の中に沈めた。
ずっと出したまま止めるのを忘れていたため、浴槽にはすでに溢れ出るほどの湯が溜まっている。続けてタカトシが入ると、さらにタイルへと湯が逃げていった。
体勢を調整し、タカトシの身体に背を預けている格好になるカエデ。その状況はともかくとして、ほどよい熱さの風呂の湯が、疲れ切った身体を癒やしていくのが分かった。
「はあっ・・・・・・」
「温かいですね。本当に気持ちいいです」
その通りだった。先ほどまで濃厚な体験をしていたからこそ、この風呂は本当に癒やしの一時だ。なんだか、次第に真っ白になっていた頭の中も少しずつ元に戻っていく気さえしてくる。
「タカトシって、凄い・・・・・・」
とはいえ、未だに息はあがっていた。カエデは素直にタカトシの逞しい方に頭を預けながら、余韻に浸っている。
「はは。初めてにしては、本当にうまくカエデさんをリードできた気がします」
「もう・・・・・・終始、圧倒されてしまいました」
プク、と頬を膨らませるカエデ。ほんの少しだけ悔しいのは、負けを認めた証拠である。
ザバ、と手で恋人の小さい肩にお湯をかけてあげた。くすぐったそうに肩を寄せる彼女。
「・・・・・・ねえ、タカトシ」
「なんです?」
「本当に、だれとも・・・・・・経験、なかったの?」
最後の方で、声が小さくなる。だが、ちゃんと聞き取れた。
「本当です。今まで、本当に恋人だっていなくて」
前にも、こんなやりとりをしたことがある。それはいつの頃だったか。話をした相手はカエデか、それとも別の誰かか。
「ふうん・・・・・・でも、実際に付き合ったことはなくても、好意を向けてくれる人はたくさんいたんじゃないですか?」
「それは、どうでしょうか・・・・・・少なくとも、告白されたことだってありませんし」
俺が気付いていなかっただけかも知れませんけれど。そう言って締めくくる。
一方で、カエデは少しだけ考えてしまう。それは女子の方が牽制し合っていたとか、直接アタックできる勇気の無い子ばかりだったとか、そういう事ではないだろうか。
「ふう・・・・・・それにしても、本当に気持ちがいいです。タカトシの身体も、本当に落ち着きますし」
「はは。言うようになりましたね、カエデさん」
「初めて、女になれた気がするんです。タカトシのおかげで」
「俺もです。これで、男になれたんだなって」
しばらく、2人でクスクスと笑い合う。先ほどまでの濃厚な時間とは違う、穏やかな空気が流れていった。
「あ」
「わあ・・・・・・」
パアッと、周囲が七色に点滅した。ガラス張りの外に、大きな花火が打ち上げられていたのだ。
夜空に浮かぶ大輪。続けて、二度三度と大きな花が開いた。防音効果のために音こそ届かないが、2人が過ごすバスルームは打ち上げ花火の残滓に照らされ、美しいエンターテインメント照明の舞台になる。
「テーマパークからの花火ですね」
「今夜は、何かイベントをしていたんでしょう。本当に、今日はラッキーな日です」
うっとりと2人は身を寄せたまま、夜空に輝く打ち上げ花火を、飽きることなく見つめていた。
思い出す。そういえば、夏場で花火大会に参加した日のことを。
あの時は、浴衣姿のカエデに心がときめいた。花火を見つめながら寄り添い、そっとキスをした瞬間。
花火の光に、カエデの横顔が照らされる。潤んだ瞳は、穏やかに夜空の花に向けられて。
それがなんとなく悔しくなって、彼は恋人にそっとキスをする。
その視線を、自分に向けて欲しくて。そばにいる自分をもっと気にして欲しくて。
目と目が合う。彼女は、光り輝く世界の中でにっこりと笑った。
花火は続く。愛し合う男女が、もう一度肌を重ね合うまで。
そして、朝を迎えた。
荷物をまとめ、身支度を調えた2人。ロビーに降りた際に、最後の挨拶を受ける。
「またのご利用をお待ちしております」
ホテルのボーイ、スタッフが頭を下げる。
プロのホテルマンは、礼節を徹底するのが基本なのだ。つい、つられてタカトシとカエデも頭を下げる。
その中には、七条グループの出島サヤカと橋高もいた。元々七条グループからプレゼントされたチケットから、今回のデートが始まったのだ。気を利かせて、見送りに来てくれたのだろう。
「本当に、ありがとうございました。今回のこと、本当に感謝しています」
万感の思いを込めて、タカトシはサヤカに何度も礼を言う。
「いえいえ。お2人方の運が掴んだ成果ですよ。私たちも、まさかお嬢様のご学友の方達が100万人目のお客様になるとは思いませんでしたので」
テーマパークのデートのことを言っているのだろう。本当に、数奇な巡り合わせだ。2人は今でもそう思う。
「夜景が綺麗でした。花火も見えて、眺めが最高だったんです」
カエデの素直な感想に、橋高もにっこりと愛嬌のある笑顔を深める。老成した者にしか出せない、優しい笑顔であった。こういう懐の深そうな一面が、七条家を支えているのかも知れない。
「喜んでいただけたようで、何よりです。スタッフやお嬢様にも、お伝えしておきましょう」
「はい。七条さんにも、よろしくとお伝えしておいてください」
「かしこまりました」
もう一度、深々とお互いにお辞儀。それを最後に、2人はホテルを名残惜しげに去って行く。
外に出た瞬間、聖夜の開けた冬の晴天が2人を迎え入れた。ほのかな暖かさのある日光が2人を照らす。
それじゃあ、帰ろう。自分達が暮らす街へ。
誕生祭が起こしてくれた、小さな奇跡の時間は終わった。自分達はこれから、自分達の過ごすべき日常へと帰るのだ。
2人は、ゆっくりと足を動かす。振り返ることはしない。ただ肩を寄せ合って、時折思い出したように短い会話をしたり。
家族連れとすれ違う。テーマパークのロゴが入った紙袋を持った子供がいる。あの一家も、テーマパークのためにあのホテルを予約している宿泊客なのだろう。
地元の人らしく、犬の散歩をしている老人。子供達同士で走り回り、遠くから大人達に窘められている家族グループ。
「楽しかったですね」
そんな、シンプルな感想しか出てこない。それでも、その言葉に込められているのは、どれほどの気持ちが混ざっているのかは容易に理解できる。
「はい。楽しかったです」
どちらかが口にし、どちらかが答えた。様々な思いが、心を駆け巡っているのだ。
駅にたどり着き、改札を抜ける。出勤ラッシュの時間帯はとうに過ぎているので、車両の乗客はまばらであった。
空いている椅子にそろって座り、互いにそっと肩を貸しあう。周囲からいくつかの視線が向けられるが、全く気にならない。
「カエデさん」
「はい」
「これから、カエデさんの家に寄ってもいいですか?」
「もちろんです」
悩むこともなく、カエデは了承した。
つまり。恋人として両親に顔を覚えてもらおうという意味だ。
これまでのように、学園に隠れながらの関係ではない。積極的に公にする必要は無いが、もう自分達の家族には知ってもらうべきなのだ。自分達の素直な気持ちを。
そして、それは己自身の口から告げなければならない。
以前までのカエデなら躊躇したり、親の反応を怖がる反応を見せただろう。しかし、今はもう受け入れている。
どんな反応を示されようとも、もう彼女の心は決まっていた。彼が言わなければ、自分から家に誘っていただろう。
僅かに揺れながら、故郷へ向かって走り続ける列車に乗り続ける2人。
両親にはどんな挨拶をすればいいか。姉は味方だと思いますという話で時間を過ごす。
きっと故郷にたどり着いたときは、また新たなる騒動や友人達の掛け合いが待っているのだろう。
2人が向かう先には、広大な街並みがいつまでも続いていた・・・・・・
本編49話へ続く