閃光のアスナは長い一夜をホテルで過ごす。 作:丸ちゃん
別に、キリトくんが嫌いになったわけではない。愛想が尽きたと思ったこともないし、むしろ愛する気持ちは増していくばかりだ。彼以外との結婚生活や今後の人生なんて、考えられるはずもない。
あのデスゲームで出会い、共に戦ってきた日々は私にとってはあまり良い出来事ばかりではない。でも、そこには私を大きく変えてくれた何かがあった事は事実だ。
キリトくんと出会い、彼との付き合いの末に恋人となり、ゲーム内とはいえ結婚までしている。身体の付き合いだって少なくはない、キリトくんのことを全面的に信頼しているつもりだし、疑うことなんてありえないと思っていた。
──なのに今、自分は他の男とホテルにいる。
「先にお風呂入っても大丈夫よー。なんなら、一緒に入る?」
「いいえ。一人で大丈夫です」
「そっか、恋人じゃないし抵抗あるよね。お湯は貯めて浸かる感じ?」
なれなれしい言葉、テンポよく弾む会話はこういった行為に慣れているのだなと感じつつ、そんなわかりやすい手口にワザととは言え引っかかった自分に苛立ちを感じる。こんな時は、長風呂でもして気持ちを落ち着けたい。
「ええ。それなりに長く入るつもりなので、帰ってもらっても大丈夫ですよ?」
「そんなさびしーこと言わないでよ。でも、凄いね! 自分、暑いのニガテだからさー。長風呂できる人羨ましいよ。もしかして、お風呂好き?」
「……まぁ、多少は」
「やっぱりね。この部屋選んで良かったよ」
自分のことは少なめに、常に会話のメインを私に置こうとしてくる計算高い男。それはこちらへの気遣いなどではなく、私とあわよくば一夜を共にするために少しでも情報を集めようとしているに過ぎない。女の子の気持ちを無視して、どこまでもキリトくんとは正反対な人である。
お風呂好きという私のために選んだと彼は言うが、ここは別にオシャレなところでもない。この部屋からお風呂場の様子は丸見えだし、所々の形状も卑猥だ。湯気で曇るだろうが、身体のラインはわかるだろうし、彼の目的もわかりやすいほど見えてる。
強いて言うなら、シャンプーやリンスとかの質が良いぐらいかもしれない。一度、キリトくんと来たからよく知っている
じゃあ、私はこれで。言葉とともに白いコートを足元に脱ぎ捨てて、タオルなどの道具を手持ちのカバンから取り出して、その場から逃げるように脱衣所へ向かおうと足を進める。──着替えは、今の服をそのまま着るし必要ないだろう。
これ以上、あの男と一緒の空間にいることなんてゴメンだった。怖かったのかもしれない、私の好みや嫌いなところも、話しているうちに全て言ってしまいそうで。
「いってらっしゃーい。楽しみにしてるよ」
私は、ベット(クイーンサイズというらしい)に座り込むいやらしい背後の男の言葉を無視し、ガラス張りの扉を力強く開く。
キリトくんは私を信じてくれるだろうか? 信じてくれるかもしれないが、今の私は彼を信じられない。だってあの時、彼の位置情報はこのラブホテルを指していた。
メモデフとブレイディングでアスナさまが出ましたね。
皆さんは当たりましたか?
自分はダメでした。