結論から言うと、シルヴァンは紳士だった。食事を共にして中庭でお茶を一緒に飲んだ後、
「貴女とはぜひまたご一緒したいな」
などと、ベルナデッタの手を取り、目を見つめながら語りかけた。そしてそれ以上は特に何もせずに優雅に歩き去って行ったのである。
「うーん、シルヴァンさんがあたしをナンパなんかしたら絶対に反射で逃げ出している所ですけど……今はむしろ、肩透かしっていうか……手を取られた位じゃ全然物足りないっていうか……」
モヤモヤ、ムラムラ、ウズウズとしたものを抱えながら、これからの事を考える。先生から与えられた最終試験は、好きに楽しんでというものだった。とは言っても、何をしろというのか……何とはなしにもぞもぞと懐を探ってみると、覚えのない財布が入っている。「一週間、この金を好きに使って生活してくれ。飢え死になどはしないように」と手紙が添えてあった。結構多めで、これで生活の問題はなくなった。
「うーん……人と関われと言われても、自分の事を覚えてない知り合いと会話するのって、仲のいい人相手とかだとちょっと嫌かも……」
まあ、仲のいい人というのも殆ど居ないわけだが、ここに居るベレトは自分と毎日セックスしてくれるあのベレトではないと思うと、さすがのベルナデッタも胸が切なく痛んだ。
「よし、大修道院の外、街に行きましょう! そこなら元から知り合いが一人も居ないから気楽に過ごせるはず!」
むん、と気合を入れてベルナデッタは大修道院の外へと歩いて行った。
ガルグ=マク大修道院の外には、結構な規模の街が広がっている。フォドラを統べるセイロス教の総本山であるため年中人通りが絶えることはないし、そうであるがゆえに商人たちは宿場町を築き、巡礼者などを相手に商売をしている。旅人が多い土地柄、宿酒場などいたるところに存在していた。
「おばちゃん! エールもう一杯!」
そう言ってグラスを高く掲げたのは、ベルナデッタだった。今ならば士官学校の生徒どころか未成年であるとも認識されないことに早々と気づいた彼女は、普段ならばあり得ない事に、気の向くまま散歩を始めたのである。ベルナデッタの好きな読書は、そもそも本というものが高級品であるため貴族の財力を用いて買い求めるか、あるいは大修道院の図書室で読むしかない。ベルナデッタが自分で書いた本も、その羊皮紙の一枚一枚が自腹……実家の財力で調達したものだ。ぶらりと歩いて買えるような本は広く写本が出回り希少価値が薄れたものだけとなる。
それ以前に、絵を描くとか本を読むとかは試験内容からして禁止なので、意図してそれらが眼に入らないようにしていた。外に出られるようになっても趣味が変わった訳ではないので、相変わらずそちらのほうが魅力的に見える。変わったのはただ一つ、ベレトの指導によって、セックスの快楽を覚えたことだけだった。
市場、露店街から離れ、人通りの多い方を行くと、必然宿が立ち並ぶ区画に出る。引きこもりでなくても貴族の子供が一人で宿を取ることはまずないが、今はやらねばならない。意を決して初めてのお使いならぬ初めてのチェックインをすべく、少々裏返った声で宿のおばちゃんに話しかけ、トラブルもなく、ごく当たり前に部屋を取った。その事実に無駄に感動していると、余裕を取り戻したことで小腹が減っている事に気づき、店員はよだれを垂らさんばかりのベルナデッタを席に案内して注文を取り、メニューから何を頼んでも良い状況だとワクワクするベルナデッタが初めての酒を注文するのは、もはや規定の路線とさえいえた。
「んぐっ、んぐっ、んぐっ……っかーーっ! うまーい! げっふ」
「ぎゃっはっは、姉ちゃん良い飲みっぷりじゃねえか!」
最初は苦くて酸っぱくてダメだと思っていたエールだが、出されたものを廃棄する事に抵抗を感じる育ちの良さからジョッキ一杯飲み干してみると、身体が熱くなるようで意外と悪くないと思い、お代わりを注文し……それも飲み干した頃には、すっかりふわふわと気持ちよくなっていた。
「ほれ、姉ちゃん! こいつは俺のおごりだ!」
この町で肉体労働でもしているのだろう、筋骨隆々とした壮年の男だった。いつの間にか隣に座り、一緒に呑んでいる。なんでだか思い出せないし、別にいいと思った。
「えっへへー、ありがとうございまーす!」
さっき自分で作ったエポニーヌのキャラなどこの時点で既にすっぽ抜けている。普通に素のベルナデッタとして酔っ払い、酒をおごられていた。
「ささっ、おじさんもどーぞ!」
「おっ、こりゃどうも。アンタみたいな美人にお酌されると気分がいいねえ!」
「やーだもーおじさんったらー!」
特段中身のない会話をしてけらけらと笑う。父親に抑圧されて人と関わることを忌み嫌い、引きこもりになった自分とは全く別人になった気分だった。
「んぐっ、ごくっ、ふいー……この塩だけの茹で豆と、エールって合いますねえ!」
「ほらほら、嬢ちゃん。また酒が口元にこぼれてるぞ。……へへっ、なんかこうしてると故郷に残してきた娘を思い出すぜ」
「えー? あたしおじさんの子供じゃないれふよー! あっはっは! んー。」
ベルナデッタは初対面とは思えない至近距離で、口元を無防備に男に突き出す。それを拭った男に、にっこりと微笑みかけた。
「はー、ふわふわしてきもちいー。っと、なんかおしっこしたくなっちゃいましたー。おトイレどこれふかー?」
「年頃の娘がおしっことか言うな……ほれ、あっちの通路突き当りだ」
千鳥足でトイレに行き、滝のように小便をしてまた戻り、さらに飲む。段々とろれつが怪しくなり、目が据わっていく。話す内容も愚痴っぽくなりつつあった。
「ほれでえー、あたしは言ったんですよおー! そんなことはしたくなーい! って!」
「お、おー、そうだなあ。嬢ちゃんが正しいよ、嬢ちゃんが」
一回りも二回りも体格の大きい男の首に腕を絡めて肩を組みながら、口元をこぼれた酒で濡らしてなおも飲み続けた。健康的に発育したベルナデッタの胸が、尻が、太ももが、男の筋肉で柔らかくつぶれ、密着する。男も鼻の下を伸ばしてされるがままに任せていた。
「お? なんか静かになったと思ったら、他のお客さん殆どいないらないでふか」
気づけば夜も更け、ベルナデッタと男以外の客は家に帰るか宿で寝る時間となっていた。
「あー、しゃーねーな、今日はもうお開きにすっか」
「えー? もうれふかあー? あ、そうら! ベル、今日はここの宿に部屋を取ってるんれふよ! 貴方もいっしょに泊まっていきましょうよ!」
年頃の娘にあるまじき提案だった。返事も聞かずに席を立ち、宿屋の人に話をして飲食代と二人泊まる分の金を渡すと、壮年の男にニッコリと微笑みかける。
実の親子のように年が離れた相手とはいえ、これで期待するなという方が酷というものだろう。男は体格に見合った大きなテントを何とかなだめて目立たないようにしながら千鳥足で階段を上るのも覚束ないベルナデッタの細くもしなやかな腰を馴れ馴れしく抱き、手でまさぐっても拒絶されないのをじっくり確認しながら連れ立って部屋まで
歩いて行った。
部屋に入ると、粗末なベッドに文机と椅子だけがある部屋だった。修道院とはいえ、貴族の子女を受け入れるような士官学校の寮とは大違いだが、今のベルナデッタはそんな事を気にしなかった。腰を撫でまわす男を拒絶するどころかしな垂れかかり、ベルナデッタのからも筋肉を確認するように男の胸板に指を這わせ、汗でむせかえるような
男の体臭を胸いっぱいに吸っている。端的に言って、客を取った娼婦よりも分かりやすい牝の顔をしていた。
「んふふ……♥ おじさんの臭い嗅いでたら、なんだかあたし、もよおして来ちゃいましたあ♥ 事情があってえ、前はダメなんですけど……お・し・り♥ の穴でシませんかあ?」
深酒で酔っぱらったベルナデッタに最後に残ったのは、毎日しているセックスへの欲求だった。素面ならさすがに相手を選んだだろうが、何をしても良いという今の特殊な状況も後押しし、とにかく尻に男の肉槍を受け入れたくて仕方がなかった。
「可愛い顔して、なかなかスキモノだなあ姉ちゃん!」
ベルナデッタの遠慮のないスキンシップにより、娘だなんだと言っていた男はもはやギラギラとした性欲をむき出しにしていた。もどかしげに服を脱いだ男の股間は既にガチガチに勃起しており、ベルナデッタもお待ちかねの肉棒を前に舌なめずりをした。
「わあっ♥ へえー、おじさんのおチンポってこんななんだあ♥ すごーい、右に曲がってる。ほおー、ふうーん。やっぱり一人一人全然ちがうなあ」
しげしげと男の股間を凝視し、無造作に手で握って見せた。男が快感の吐息を吐くのを感じてニヤニヤと笑いながら、ベレトの男性器と想像の中で比較する。体格はベレトのほうがずっと小さいのに、股間は大きさ硬さともベレトのほうがすごい、と感じた。とはいえこの男も捨てたものではない……といっぱしのセックス通のように評価して2,3回しごいてから、いつものようにさっさと服を脱いで全裸になる。
初対面の男の視線が無遠慮に全身を舐めまわす感覚さえ、今のベルナデッタには快感だった。胸が高鳴り、乳首を勃起させてベッドに寝そべる。すぐに、全裸の筋肉質な大男が上から圧し掛かってきた。
「きゃー♪ おかされるうー!」
男は鼻息も荒くベルナデッタの胸にむしゃぶりつく。初めてのベレト以外の愛撫の感覚は予想に反して普通に気持ちが良かった。それどころか、違う体温、違う舌の感触、力加減や必死さも全てが違う愛撫は新鮮味があって普段より感じてしまうくらいだ。それこそ、擦り切れるまで読み込んだ名作と新しい本を読む感覚が異なるように。
「はあっ♥ ああっ♥」
やや乱暴だが胸を揉まれ、手のひらで乳首を転がされてベルナデッタは甘い声を上げた。太ももには男のイチモツが押し当てられ、それが自分を犯すことを想像し、毎日使ってきたアナルが甘く疼いた。
「な、なあなあ、俺のモノをしゃぶっちゃくれねえか? 俺も嬢ちゃんのを舐めるからよお」
ちゅぽん、と男が口を離すと、ベルナデッタの勃起乳首との間に銀の糸を引いた。
「なめるう? んー……いいですよ♥」
実はベレトとのセックスでは、フェラをしたことはなかった。多分初めての時にベレトが自分の股間に顔をうずめて性器を舐めていたら、恥ずかしさのあまり気絶してしまっていただろう。その後も流れで、いつも準備は事前にオナニーして軟膏を塗っており、ベレトの方もベルナデッタを愛撫する過程で勃起させてくれていたので、ベルナデッタは自分から男を愛撫するという経験があまりなかった。
ベッドに寝そべった男の顔をまたぐように膝立ちになり、そのまま倒れ掛かる。むわっと鼻をつく、ベレトとは違う股間の臭いに胸を高鳴らせながら、至近距離で肉棒をじっと見つめた。月明りだけで見づらかったが、ベレトのものとはシルエットもまるで違う。まずは手で握り、硬さと熱さを確かめていると股間に鋭い快感が奔った。
「ほひゅっ♥」
奇声を上げて腰を痙攣させたが、筋肉質な腕でガッチリと抑え込まれている。そのままびちゃびちゃと下品な水音を立ててベルナデッタの乙女の花園とでもいうべき、未使用だがオナニーと愛撫で感度が増している性器を舌で蹂躙した。
「あ゛っ♥ んひいいいっ♥ そんなっ、いきなりい♥」
ベレトのように優しく包み込み、階段を一歩一歩手を引いてくれるような愛撫とは全く違う。絶対に逃がさず、一刻も早く女の穴を使うために、激しい快楽で目をくらますような、強引な求愛行動。ベレトは気遣いでマンコにはあまり手を出しては来なかったが、この男にそんな配慮はない。バチバチと脳裏に火花を飛ばしながら、急き立てられるようにベルナデッタも男の肉棒を咥えた。ベレトでも、ましてや仲を深めた恋人でもない行きずりの壮年の男に初めてのフェラを捧げ、激しいクンニの快楽を味わうかのようにねっとりと舌を這わせて頬をすぼませ、初めてとは思えない堂に入ったおしゃぶりを見せた。
普段からイきやすいベルナデッタは手馴れた男の性技で何度も軽く絶頂し、男の我慢汁が漏れてくるのも分からず焦点の定まらない目でごくり、ごくりと精液混じりのその液体をほっそりとした喉で嚥下する。
「んっご♥ お゛む゛っ、ごくっ♥」
これもベレトとは違って、この男はセックスに没頭するにつれて疼いてくるアナルを弄ってくれない。そのもどかしさが自然とベルナデッタを焦らすような形になり、余計必死にチンポをしゃぶってしまう。もうそろそろ再度の絶頂が見えてきた……と思ったところで、不意にクンニが止んだ。
「ふえっ?」
あとちょっとでいけそうだったのに、と男を振り返ると、目を血走らせて身体を起こし、ころんとベルナデッタを仰向けに転がして組み敷いてきた。
「はあっ、はあっ、いいよな、もういいよなっ?」
男は前からベルナデッタの膝を掴み、がぱっと開いた。股間は濡れそぼり、名前も知らぬ男に受け入れ準備を整えている。はしたなくクリトリスは勃起し、小陰唇も充血して花開いたようだ。控えめに開いた膣口からは女の蜜がとろりとこぼれている。
「おじさあん♥ ベル、さっきからお尻の穴が疼いてたまらないんですう♥ おじさんのカチカチな右曲がりチンポ、ベルに食べさせてくださあい♥」
拒絶しても意味がない事を直感的に悟ったのかどうか、ベルナデッタは自分からさらに股を開いて腰を浮かせ、ほとんど真上に向けるように尻を高々と上げて両手で尻たぶを掴んで肛門をぐいっと開き、日々のアナルセックスで柔軟に伸びて縦に割れた卑猥なアナルを見せて誘い、男の興奮の矛先を逸らした。
男はごくりと喉を鳴らし、慣れない角度でもどかし気に尻穴に肉棒を押し当てて真上からずぷんっ、とベルナデッタと結合した。
「ん゛おっ♥ きっ、たああああっ♥」
パン、パン、パンとベルナデッタの白い尻が真上から筋肉質な男の下腹部に打ち据えられて淫猥に歪む。
「あ゛ーーっ♥ これ、普段と違うとこ当たって、気持ちいいーーっ♥」
ついにベルナデッタは、男のセックスを食べ比べる悦びを知り、ろくでもない大人の階段を一歩上がってしまった。初対面の男に合わせてベレト相手とは違う腰の動きを自分から模索し、必死で括約筋を締めて右曲がりの肉棒が直腸をひっかく感触を味わいつくそうとするその姿はただ淫乱としか表しようがなかった。
ギッシ、ギッシ、ギッシ、という安いベッドのきしむ音。
「はっ、はっ、はっ」
「んっ♥ お゛っ♥ はひっ♥」
歯を食いしばって射精をこらえながら親子ほども年の離れた少女の肛門を犯す男の吐息と、初対面の名前も知らない男を自分から誘って大好きな先生と食べ比べながらアナルセックスを全力で楽しむ、見た目だけは垢ぬけない純朴そうな少女の、尻穴に突き込まれるたびに絞り出されるような快楽の媚がたっぷり乗った嬌声。
少女の柔らかな尻が男の下腹部と打ち付けられる破裂音。
そんな二人の汗と愛液と精液の入り混じったむせかえるような性臭。
宿屋の粗末な部屋の中で、ロウソクの明りもつけずにベッドの周りに服を脱ぎ散らかし、必死で快楽を貪っている。
頭がガンガンと痛むほどに激しく興奮し、ベルナデッタは自分の立場の一切を忘れて行きずりセックスを心から楽しんでいた。
「ぐっ、おお……! もうだめだ、でちまうっ!」
やがて、男が値を上げた。普段ならまだベルナデッタが満足する頃合いではないのだが、状況が状況だけに激しく興奮しており、男の絶頂に合わせるのも苦ではなかった。
「いいですよっ、だしてっ、中にだしてっ♥」
にち、にち、にちと深く挿入したままの小刻みなピストン。ベレトとは違う、射精前の癖。舌なめずりをして、ベルナデッタは肛門をぎゅっと締めた。
「があっ……!」
獣のように吠えて、男が精を解き放つ。
「んっ、いっく、うううーーーっ♥」
精液の熱さも、射精の脈動も、ベレトとは違う。それが酷く、ベルナデッタの興奮を煽った。
どくん、どくん、どくん。
お互いに歯を食いしばって全身を硬直させ、絶頂に全身全霊で浸りきる。ほどなく全身を脱力させて男は尻もちをつき、ベルナデッタもくたりとカエルのように股を開いた。
「あー……すっげえ……こりゃとんでもないスキモノだぜ……」
呆けたように力なくつぶやいて、男はベルナデッタに添い寝をするように倒れ込む。ベルナデッタのほうは、余韻を長持ちさせようと自分の股間を弄りながら、
「ふうーーーーっ♥ さあ、おじさん。後2,3回……って、あれ?」
「んごーーーっ……んごー……」
夜はこれからだと言わんばかりに身を起こして男の顔を覗き込んだベルナデッタは、ぽかんと口を開けてしまった。男は射精したらすぐに寝入ってしまったのだ。
「ええーっ……そりゃないですよお……」
初めての経験だから何もかも刺激的だったが、ありていに言えばベレトの方が大きかったし、ベレトの方が愛撫が上手かったし、ベレトの方が何発もしてくれて、終わったら優しく頭を撫でてくれた。特に回数は致命的だ。イッたとはいえ、もっとがっつりと楽しめるかと思ったのに、これでは酷い肩透かしだった。
「むぐぐ……はあ。まあ、いいか。お酒飲んで眠いし。もうねよ……」
そして、ベルナデッタも裸で半勃起の男の隣で、肛門から精液を垂らしながら汗も拭かずに全裸で大の字になって眠った。
「うっぎゃああああああああああああ!」
一夜明けて、ベルナデッタは昨夜の自分の乱行の記憶がバッチリと残っていた不幸を呪った。
「くああああ……おお、嬢ちゃん。げへへっ、人は見た目に寄らねえなあ。アンタのケツ、すげー良かったぜ」
朝の陽ざしが差し込む部屋の中で、お互いに全裸である。ベルナデッタの裸体が、昨夜会ったばかりの男の目の前で白日の下にさらされている。控えめな乳房にぽっちりと大きく実った乳首は、ベレトにせがんでしごきたててもらった結果サイズアップしたものだし、引きこもりで無精だったがベレトと毎日セックスするようになって綺麗なハート型に整えて剃った陰毛もバッチリと見られている。
「ぐわあああああああああああああああ」
「おいおい、何だよ。昨日の事は同意の上だろ? むしろ俺より嬢ちゃんのほうが楽しんでたくらいじゃねーか」
頭を抱えたまま、ベルナデッタは
(そうか)
と閃いた。ああ、ベレトだってこう言っていた。好きに楽しんだらいい。人と関わることなら何をやっても良い。良い事も悪い事も、自分の身一つで収まる話。
とくん、とくん。
まるで、世界の真理を暴いたかのように。
ベルナデッタの世界が、急速に広がっていった。好ましい方に。気持ちいい方に。
全裸の男ににっこりと笑いかけ、
「それもそうですね! あはは!」
からからと笑い飛ばす。
「でもおじさん、一発だしたら寝ちゃうのはひどいですよお。あたしあの後モヤモヤしながら寝たんですからね!」
「いや、はは。申し訳ねえ。嬢ちゃんの搾り取り方がすごいからよお、一発で精魂尽き果てちまった」
学校でクラスメイトに挨拶するのより気軽に、お互い全裸で昨夜のセックスの話題を交わす。それが、今の彼女だ。宿酒場で出会った初対面の飲み友達と流れでセックスする事も、この異界ならば、誰にも知られていない自分ならば……『やって良い事』だと理解したベルナデッタだ。
そそくさと服を着て、宿屋の人に声をかけて水桶と布巾を借りる。部屋に持ち帰って、身体を拭いた。
「なーに見てるんです! ほら、もう出てってください!」
「へーい。なあ、嬢ちゃん、またこの店来たら会えるか?」
「別に、良いですけど。今度また一回で寝ちゃったら、もうお断りですよ」
「うっ! きっついねー。しゃーねえ、しばらく溜めてから来るからよ、またな!」
バタンとしまった扉を見て、ベルナデッタはニヤニヤと笑った。名前も知らない男とセックスして、名前も知らないままに次のセックスの約束をする。あまりに自由過ぎて、自然と笑いがこみあげて来る。
水桶は回収に来てくれるらしいので放っておいて外に出る。宿は朝食もやっているようなので、オートミールの粥を頂いた。いかにも安宿で、大修道院の食堂のグルメぶりとは比較にもならないがまあ我慢の利く範疇だ。
もくもくと食べていると、なんとなく周囲に視線をめぐらせた。すると、幾人かの男がベルナデッタのほうを見てニヤニヤと笑っている。普段なら
「ぴいいいいいいい! なんですか!? なんでベルをそんな目で見るんですか!? すみません
ごめんなさいもうしませんもう来ませんんんんんんんん!!」
とか叫んで逃げだしている所だが、今のベルナデッタは無敵だ。ボケっと視線を受け流して再びもくもくと食べ続ける。食べ終わって食後の白湯を飲んでいると、男たちがのそのそと歩み寄ってきた。
「よ、おはようさん」
昨夜の男よりは若く、職業は同じようなものなのか体格は立派だ。どことなく軽薄な顔立ちで、女相手に遊び慣れていそうという印象を受ける。
「あ、おはようございます。あたしに何か用ですか?」
「昨日はずいぶんとお楽しみだったみたいじゃないか?」
ぴくりと、ベルナデッタの動きが止まった。
「あー……すみません。迷惑でした?」
「おお、迷惑だったぜ。アンタが良い声で鳴いてくれるからよお、ムラムラして眠るどころじゃ無かったんだわ」
そこまで聞いて、ベルナデッタは全て理解した。つまり、この軽薄そうで、昨夜の男より若く、性欲が有り余っているような男たちは……ベルナデッタとセックスがしたくて声をかけてきたのだ。
「それはすみませんでした。以後注意します。それで、用はそれだけですか?」
二コリと目を細めて笑う。相手も手馴れたもので、それだけでベルナデッタの意思は伝わったようだ。相手もニッコリ笑って、手や肩をベタベタと馴れ馴れしく触ってくる。
「これからすぐに『お詫び』した方が良いですか?」
「そうしたいのは山々だけどな。残念ながら日中は仕事があるからよ。今夜、日が暮れる頃にこの宿に戻ってくるから、そしたら頼むわ。……俺たち全員でいいよな?」
「いち、にい、さん……えっ、あたしも入れて4人でいっぺんにするってことですか?」
昨夜はベレトの下位互換という感じだったが、これはさすがに想像したことさえなかった。4人同時! そんなものもあるのか。
「あ、でも、あたし前の穴は使っちゃダメですから。それに同意していただけるなら」
「おう、オッケオッケ。俺たちも気兼ねなくヤれるし、ありがたい」
「やっぱ一目見た印象の通りスキモノだったな! 今夜、よろしく頼むぜ!」
「ちゃんと水桶もってくからよ、一晩中楽しもうな!」
ぱあっと一転快活そうに微笑んで、男たちは朝日の中に消えていった。
背中から宿屋のおばちゃんの冷たい視線を感じつつ、文句は言ってこないので多分こういう事も宿屋ではあることなのだろう。修道院のお膝元だけに、娼館がやりづらい分を行きずりの相手で補っているのかもしれない。
でもそんな事はどうでも良かった。行きずりの男と寝たその翌日に、セックスの声を聴かれていた男たちに囲まれて3人全員とまた今日中にセックスする約束をする。
ベルナデッタの読んだ如何なる物語の悪役端役だって、こんな淫蕩な者は見たことがない。それくらいに無茶苦茶で、自由な事をしている。最初はどうなることかと思ったが、すっかりとベルナデッタは『自由』というものを満喫していた。これから一週間もこんな事を続けていたら帰る頃には一体何人の男の味を知る事になるのか。興奮のあまり、朝食を食べたばかりだというのに身体が熱く甘く疼いてくる。
さあこの疼きを我慢して今夜を楽しもうか、それとも……と、産まれて初めて一日の予定を立てるのが心底楽しみな自分を自覚して、ベルナデッタは笑った。