ライザのアトリエ~床振の女王と秘密のヤリ部屋~ 作:伊倉米磁
(悪いことをしちゃったなあ)
と、ライザは一瞬思った。クラウディアの手は震え、言いたい事を言い出せずにいるような、潤んだ瞳でこちらを見つめている。究極的には関係ないと言えば無いが、親友がろくでなしとセックスしていれば不安になって当然だろう。それを知られた時点で自分の落ち度だ。
では、なぜ一瞬しかそう思わなかったか。
クラウディアの瞳と、そして玄関から出た瞬間ふと匂った甘酸っぱい香り、そしていつもより皺の多い衣服は、そのような心配がメインのものではないと雄弁に物語っていたからだった。
「あ、の……ザムエルさんと、その……ライザは……愛し合ってる、の?」
身を切られるような、血を吐くような言葉。そこに込められた感情に、ライザは気付いた。あまりにも激しい感情で、見落としようもなかった。
「だ、……だったら……私は……お、応援を……ぐすっ……」
唇をわななかせ、涙さえこぼしながら言葉を紡ぐクラウディアに、ライザはゆったりと歩み寄った。
「愛し合ってるって、そんなわけないじゃん。ザムエルさんなんかと」
からっと、場にそぐわない軽い言葉で否定する。
「だったら、どうして、あんな……こ、こ、子どもを、作るようなこと……」
今度は想像してしまったのか、真っ赤になってうつむいてしまう。内腿をこすりあわせていた。ライザは自然と笑みがこぼれ、触れ合う所まで近づいていく。
「気持ちいいから、だよ」
甘く、ひそやかに……ザムエルに射精をねだる時のような声で、クラウディアの耳元で囁いた。
「ひうっ」
ザムエルを相手に散々実践を繰り返したライザの睦言は、声音だけでも行為を想起させるような淫猥さに満ちていた。頭の中を愛撫されたように、クラウディアがぴくんと痙攣する。
「気持ちいいからって、そんな……む、無責任だよ」
「大丈夫だよ。ちゃんと錬金術で子供は出来ないように対策してるから」
そういいながら、ライザは柔らかくクラウディアに抱き着いた。
「あ、う、でも、だって、」
ピンと背伸びして、顔を真っ赤にするクラウディア。
「ねえ、クラウディア」
ライザが抱き寄せる力に、フラフラと身体を預けてくる。
「な、なに?」
「クラウディアも、あたしと、したいの?」
ぎくり、とクラウディアの華奢な身体がこわばった。
「なっ、あ、そんな、わけ……」
先ほどまでと一転、顔を青くして全身を震えさせる。その表情に浮かぶ恐れ、怯えを見て、ライザは申し訳ない気持ちになった。ライザに預けていた身体を、腕をつっぱって離れようとするクラウディアを抑えながら、
「だだ、だって、私たち女の子同士で……」
「別にいいんじゃない?」
背中に手を回して、しっかりと抱きしめる。
「ザムエルさんとも子供を作ろうとしてるわけじゃないんだよ? あたしは、セックスをしてみてすっごい気持ちよかったから、シたいことをしてるだけ。ま、確かにザムエルさんとしかやったことないけど」
「どう、して……」
「ああ、ザムエルさんと初めてした理由? なんかさ、酔っぱらってあたしのお母さんと間違えて犯されちゃった」
「そんなの! ひどすぎるよ……!」
「まあ確かに酷いけど。でもしょうがないじゃん、それであたし、セックスが好きになっちゃったんだもん。それより、クラウディアこそどうなの? あたしと、セックスしたい? あたしは、クラウディアが良ければしてみたいかなあ」
至近距離からクラウディアの瞳を覗き込みながら、ライザは言った。ザムエルとのセックスも慣れてきて、新しい刺激が欲しいと思っていた所だ。
(同性! そういうのも考えてみればアリだよね)
クラウディアのエメラルドの瞳が潤み、動揺に震えている。形がよく瑞々しい唇が引き結ばれ、硬くつばを飲んだのがはっきりわかった。
「わた……私、だって……」
泣き顔に歪む寸前で、必死に口を動かそうとするクラウディアを、ライザは可愛いと思った。
「私だって、ライザの事好きなのに……! どうしてザムエルさんなんかとしちゃうのよ……! ライザのバカ……!」
「あはは。ごめんごめん。いや、ザムエルさんのチンポってすっごくて……」
「やだ! そんな話、聞きたくないよ……!」
「えー? でもさ、クラウディア。……あたしとザムエルさんのセックスを見て、自分でシてたんだよね?」
「! あっ、そ、それは……」
クラウディアの両手をヒョイと顔の前に持ってきて、指先の臭いを嗅ぐ。右手から酸っぱい匂いが、左手から汗の匂いが濃く感じられた。今度こそクラウディアが真っ赤になって、バッと反射的にライザから離れる。
「ごめ、ごめんなさい……」
叱られた子供のように背を向け、しゃがみこんでライザに許しを請うクラウディア。ライザは苦笑して、同じくしゃがみこんで背中から抱きしめた。
「構わないよ、それくらい。誰にも言ってないんでしょ?」
こくんと頷きで返事が返ってきた。
「いつから知ってたの?」
「ライザが、散歩って言って島に帰って行ったとき……いつもみたいに採取に出ないのかなって、一人で散歩するのかなって、寂しくなって、付いていったら……ザムエルさんの家に入って行って……ライザの、気持ちよさそうな声が聞こえて……私……羨ましくて、しょうがなかった。どうして、私は男の子に産まれなかったんだろって。そうしたら、もしかしたら、ライザとそういう関係に……」
涙声でぽつぽつと気持ちを吐露するクラウディアを、ライザは優しく抱き続ける。
「ごめんなさい、女の子同士で、気持ち悪いよね、こんなの」
「ううん。気持ち悪いわけないよ。別にいいじゃない、女の子同士でも」
「そんないい加減な事言わないで! 私は、本気で……! いえ、ごめんなさい。許される事じゃないのは分かってるの。でも、あんな、見せつけられたみたいで……」
背中越しにも、クラウディアがぽろぽろと涙を流し始めたのが察せられた。
「ねえ、クラウディア。どうして、女の子同士だと許されないの?」
「それは、だって……子供とか、作れないし」
「作ればいいじゃん」
「…………え?」
思わず驚きで涙が引っ込むほど、予想外の答えが返ってきた。
「ごめんね、クラウディアがあたしのこと、そこまで好きでいてくれたなんて、思ってなかった。言い訳になっちゃうけど、ちょっと前までならそんな発想もなかったし。……でも、いいよ。クラウディアが相手なら」
「ライザ……? 何を……」
「あたしとクラウディアで、子ども、作ろう? セックス、しよう?」
あまりにも甘美なその誘いに、クラウディアの心の根っこの部分がぐらりと揺れ、ライザの望む方向にへし折れた。震えながら振り返ると、甘くとろけるような笑みを浮かべたライザが腕を広げて待っている。その胸に飛び込むと、濃い汗の匂いがした。ザムエルの体臭、精液臭、ライザの愛液の匂いも混じった、情事の後の臭いがするライザの胸に顔をうずめて、それでもクラウディアはライザを抱きしめるのだった。
「タオルとか持ってくるから、先に行って待ってて」
ライザはそう言って、クラウディアを砂浜に行くよう指示した。しばらく待っているとライザが現れる。緊張しすぎて、どれくらいの時間が経ったかまるで覚えていない。ただ、湖の上に月が輝いているのを眺めていた。
「さ、脱いで脱いで。……今日はとりあえず、ここでしよ?」
夜も遅すぎ、今からライザやクラウディアの家に泊まると言い出すには遅すぎた。だからライザは、夜に水遊びをするという体裁で……ここでレズセックスをしようと言ってきたのだ。
「だ、いじょうぶ、かな……」
緊張のし過ぎで、一糸まとわぬ身体になったクラウディアが震えている。親友の手を引いて、ライザは波打ち際に歩いて行った。
「大丈夫だよ、暗くて見えないし、海が隠してくれるよ」
その手の温かさに、本当にこれからライザとするのだという自覚が染み込んでいく。股下までつかった所で、くるりとライザが振り返った。ピンと勃起した乳首が、ライザの性的興奮を示している。
(私と、するって思って、興奮してくれてるんだ)
むくむくと、クラウディアの中の獣性が頭をもたげ始める。ザムエルに組み敷かれ、ベッドの上であられもない声を上げさせられていたライザを思い出す。
(私だって、ライザを……!)
欲望のままに、貪りたい。自分の欲望を受け入れて欲しい。そんな浅ましい獣欲を、ライザは蕩けるようなセックス用の笑みで肯定してくれている、つないだ手と反対側で、そっと胸に触れる。
「んっ」
手のひらの中央に、ライザの勃起した乳首がこすれてくすぐったい。しっとりと汗に濡れた胸が、吸い付くように手になじみ、むにゅりと柔らかな感触が伝わってくる。
(私が、ライザに、こんな声を上げさせたんだ)
頭の芯が燃え上がるような、激しい興奮。喉がからからに乾き、またつばを飲み込んだ。
「はあっ、はあっ」
「んふふ……クラウディア、あたしのおっぱい好き?」
「す、すき……私より大きくって、形も良くて、羨ましい……」
「ありがと。でもクラウディアのおっぱいも、あたし好きだなあ」
そっと手を離したライザが、今度はクラウディア胸を揉んだ。
「はうっ」
好きな人の手で敏感なところを刺激される甘美さは、すぐにクラウディアを夢中にさせた。童貞ががっつくように、鼻息を荒くしてひたすらにライザの胸を揉むクラウディアを微笑ましげに見つめると、させたいようにさせながら、海面からほんの少し上の金色の茂みに手を伸ばした。
「ああっ♥」
誰も居ない真夜中の海辺に、クラウディアが股間を弄られた時の甘い声が響く。ライザの手つきは愛撫になれた大胆なもので、クラウディアの性器全体を外から満遍なく撫でまわし、好きな場所を探っていく。あっという間にクラウディアが胸を揉む手は止まり、股間を弄られる快感に耐えて身体を支えるためにライザの胸を掴んでいた。
「気持ちいい?」
「そ、そんなこと言うの、恥ずかしい……」
モジモジと顔を背けるクラウディアに、ライザはクリトリスをカリカリと指先で弄び、何度も痙攣させてやる。
「クラウディアの口から聞きたいな。……気持ちいい?」
ライザの、セックスを全肯定する淫猥な視線にからめとられ、クラウディアもまた染まっていく。
「き……気持ちいいっ♥ ライザの手でされるの、自分でするのよりずっと気持ちいいっ♥」
熱い湯につかる前に爪先から段階を踏んで入って行くように、クラウディアは快楽の沼に自ら歩を進めていく。
「えへへ、嬉しいな。じゃあご褒美ね」
ライザのしなやかな指が、クラウディアのぴったりと閉じた陰唇を割り、ぬるりと膣に挿入され、
「ああっ!」
泣いているような、喜んでいるような……艶のある声を上げて、クラウディアはその挿入を受け入れた。
「ふふ、クラウディアのおまんこ、きつきつだね。大丈夫? いたくない?」
興奮のあまり言葉も出ないクラウディアは、必死に首を縦に振った。
「じゃあ、もっとしてあげる」
にちゅ、くちゅ、と膣をかき回され、そのたびに頭の中に火花が散る激しい快楽にクラウディアは悶えた。
「ああっ、ふあああんっ!」
「ほらほら、クラウディア。そんな気持ちよさそうに大声上げたら、旧市街の人たちが起きちゃうよ」
ハッとして口元を抑えるが、それと同時にライザの責めが激しくなり、
「んーーーーっ! んううーーーーっ!」
むしろ声は大きくなってしまう。ライザにシてもらっている悦びと、誰かにばれるかもしれない危機感で、クラウディアはもうパニックに陥っていた。
(もうやめて、許して、ライザ)
目で訴えても、いたずらな少年のような笑みを浮かべて、ライザは膣をぐちょぐちょと音を立ててかき回すばかりだ。ライザの手を伝い、ぽたぽたと海面にクラウディアの愛液が垂れ流されていった。
「しょうがないなあ、クラウディアは。んっ」
ちゅ、と唇を突き出し、顔を寄せてくるライザ。クラウディアは、瞬時に意図を理解した。そして、一瞬の動揺の後、ライザと唇を重ねた。ちゅぷ、ちゅぷと赤子のように唇を吸うクラウディアに、ライザはつうっと唇の内側を舌で舐めてくる。おずおずと口を半開きにすると、ぬるりとライザの舌が入り込んできた。
「んむっ、ちゅるっ」
身体を密着させて、ライザとクラウディアの乳首が押し付けられる。口内を舌で蹂躙され、膣の気持ちいい所を激しく刺激され、クラウディアは夢見心地でされるがままになっていた。
「ん゛ふうぅっ♥」
がくん、とひときわ大きい痙攣と共に、クラウディアが潮を噴いて絶頂する。パタパタ、と体液が海面を打つ音が二人にだけ聞こえ、クラウディアは無性に恥ずかしくなった。しかし、あまりにも気持ちよすぎて、本気で絶頂しすぎて、ぼーっと月を見上げたまま微動だにする事が出来ない。
「あは、クラウディアきもちよさそー。そんな顔、初めて見た」
よほどだらしない顔をしているのだろうと思っても、そんな恥辱すら絶頂の余韻が幸福に変えてしまう。ライザの想い通り、クラウディアは性欲に従順になりつつあった。
「そだ、桟橋に行こうよ」
フラフラのクラウディアの腰を抱いて、軽く乳首を愛撫しながら桟橋に歩いて行く。へたり込むクラウディアをね転がして、ライザは股間に顔をうずめ、自分の股間もクラウディアの目の前に持っていった。
「じゃあ次は、舐めっこしよう」
花の蜜に誘われる虫のように、クラウディアがライザの膣に舌を這わせ、ぺろぺろと可愛らしく舐め上げる。大して、ライザはクリトリスの根本を舌を尖らせて刺激したり、膣口に吸い付いてクラウディアの愛液を吸ったり、ザムエルの真似をした中年男性のねちっこい責めを行った。
「んあっ、ふあああっ♥」
舌を伸ばしたままで、ライザの手管にまた悶えるクラウディア。
(さっきから、ライザに気持ちよくしてもらってばかり……私も、ライザを!)
ザムエルは、ライザにどんな声を上げさせていたか。もっと切なげに、ザムエルを求めるような声ではなかったか。激しい嫉妬が、されるがままの自分を鞭うつ原動力となった。
「じゅるっ、じゅぱっ」
舌にピリピリと刺激的な、ライザの愛液。人生で初めて味わうそれを、夢中で飲み下す。
「あっ、いいっ、気持ちいいよっクラウディア!」
甘く粘つくような、普段とはまるで違うセックスの時のライザの声音。燃料をくべたかのように、さらに必死にライザの性器を吸い立てる。しかし、やはり経験が違った。クラウディアに呼応するように激しくなるライザのクンニに、まるで腰から下が溶けてしまったように気持ちよく……ライザを絶頂させる事が出来ないまま、またもクラウディアの意識は絶頂に白んだ。
「あうっ♥ んひいいっ♥」
夜の桟橋で、堅い木の感触を背中に感じながら、限界まで股を開いて絶頂する。これ以上ない醜態。極上の快楽。クラウディアの価値観がライザの性欲に蝕まれ、野外レズセックスに幸福を見出し始めていた。
「今日はそろそろ帰ろっか」
全裸でカエルのようにひっくり返ったまま動けないクラウディアの頭をそっと撫でて、ライザが言った。ハッとして慌てて身を起こす。
「あ、あのライザ、私……」
結局、全然ライザを満足させられなかったクラウディアの泣きそうな表情を察し、ライザは優しく唇を重ねて言葉を遮った。
「もうそろそろ夜明けだよ? それとも皆に見せつけちゃう?」
「あう……」
でもそれもいいかも、という欲求が沸き起こってくるのを押し留めて、クラウディアは了承した。
「次はもっと気持ちいい事しようね。あたし、ちょっといいこと思い付いちゃった」
そう言って、クラウディアが見慣れたいつもの顔で朗らかに笑うのだった。