※この作品はR-18です。

紺瑠璃の愛天使   作:伊倉米磁

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8.最高のデート

 派遣が決まっているためあまり大きな仕事を任せられず、宙ぶらりんのような状態で通常業務をこなし、早めに上がる日々が続く。

 あと1,2ヶ月ほどで、長い間過ごしたこの町を去る。そう思うと、名残惜しさから男にまたがって腰を振ることにも熱が入るのだった。

「いっくぅぅぅぅぅ♥」

 完璧に身に付いた作法どおりに媚びた声を上げて、騎乗位で真上に精液をすするスピネル。根元から先端にかけて膣を順番にうねらせ、まさしく精液を搾り取っていた。

 

 すっきりとお金を払う客に恋人同士の別れのキスをして、家に帰っていく。経血が終わってから10日ほど、毎日欠かさず違う男をくわえ込み、スピネルはご満悦だった。何より、経血を出し切ってすっきりした子宮に受ける精子の熱さは、言葉にならないほどの快楽だった。

 ますます肌に艶の出たスピネルに、フォルスも今日ついにソファの隣に座るスピネルを抱きしめるだけでは我慢できずに、スピネルを押し倒してくれた。

 とうとうこの時が、と思ったが、フォルスはぐっとこらえて、スピネルの頬にキスをするだけだった。

 だが、がっかりしてはいない。あの朴念仁のフォルスに自分の魅力で押し倒すまでさせたのだ。もう、あと一息。

(わたし、セックスを覚えてから綺麗になったよね)

 そう思うのがうぬぼれではない、と確信できるのは、フォルスの態度の変わり方を間近で見ているからだろう。

(今度のお休み、3日後かあ……)

 フォルスから、デートに誘われている。昼はシルターン特区あたりでゆっくりといちゃついて、夜はセイヴァールの繁華街にあるレストランでの食事。ほかの男の精液の熱を子宮に感じながらフォルスとのデートを夢想して、スピネルは上機嫌だった。

 

 

 家に帰って、いつもどおり性器の状態を回復する。胸も尻もむっちりと女になってきたスピネルの体で、ここだけが唯一、処女の佇まいを残していた。

 スピネルの意志と、努力の賜物だ。

 今日のセックスの残滓をすべてエンゼルヒールでぬぐい去ると、ふと子宮の疼きが強くなるのを感じた。精液に満たされているのにもかかわらずだ。

「……あっ、そうか……もう、そんな時期なんだ」

 カレンダーにつけた花丸は、2日後に迫っている。たぶんこの位、とスピネルが勘でつけた印だが、正確にあたっていたようだった。

 セックスを覚えてから、初めての排卵日。とはいえ、孕む確率は高いとは言えない。排卵日に膣内射精したからと言ってすぐできているようでは、この世界は響界種だらけだ。

 しかし……少なくとも卵子が排出され、孕むための準備は、行われるのだ。

(惜しいなあ……あと一日、お休みが早ければ、兄さまと子作りセックスできたのになあ……)

 卵子の寿命は1日ほどだ。子供を作りたいなら、当日かそれ以前に精子を入れておく必要がある。

 逆に卵子のいなくなった直後は妊娠しようのない、安全日と言える。フォルスとの初デートで初セックスもしたいと考えていたスピネルはしかし、艶然と舌なめずりした。

 妊娠の危険のないセックスをフォルスとすることではなく、

(初めての子作りセックス……ほかの人としちゃいますね、兄さま♥)

 ほう、と熱いため息をついて、デートよりもその前日、排卵日を待ち焦がれるのだった。

 

 

 翌日と、さらにその翌日、スピネルは売春をしなかった。子宮を空っぽにして、排卵日セックスを存分に味わうための行いだ。食事を絶ったかのように辛い禁欲だったが、そのおかげで、体中の感度が上昇し、昼間の仕事中に歩いている振動で胸が揺れるのにも乳首がたってしまったほどだ。何食わぬ顔でそれを無視した。気付いていないと思われているのか、外回りで声がけした時にあう男たちにも、フォルスにもチラチラと視線を注がれて、より体が熱くなる。

 今なら街中の相性のいい男がどこにいるか分かる。その中のひとり……昼間から繁華街外れの居酒屋あたりにいる男。その男が凄まじい量の精液を溜めているのを、にこやかに仕事をしながら意識し続けていた。

 ぷつり、とスピネルの卵巣から卵子が旅立つような、そんな感触がした。まさかそんな事を知覚はできないだろうが、排卵日が今日であること自体は、子宮の疼きから間違いないはずだ。今晩のことを思って、スピネルはひとり生唾を飲むのだった。

 

 

「じゃあ……お休み。明日はちょっと早めに起きるよ」

「はい、兄さま……わたしが寝坊したら、ちゅーして

 起こしてくださいね♪」

 冗談めかしたその言葉に、くすりとフォルスが笑って、スピネルの頬にキスをした。

「そうさせてもらうよ。お姫様を起こすのは、やっぱりキスだからね」

「くちびるに、ですよ?」

 鼻がくっつくほどの距離で見つめあったふたりは、自然に唇を重ねる。

 数秒ほどで離すと、フォルスの顔が赤かった。

「あは……ファーストキス、もらっちゃいました」

 いたずらな笑みを浮かべて、スピネルはフォルスをじっと見つめた。

「あ……そうだね。なんていうか……ごめんね、ムードもなにもなくて」

「そんなことありません。わたしと兄さまが、同じくらいキスしたいって思って……それでキスできたんです。わたし、とっても幸せです!」

 心からの笑みに、フォルスはもう一度、今度はスピネルの肩に手を乗せて、唇を重ねた。

「んっ……ちゅ……」

 スピネルは舌を入れて唇を吸いたくてたまらなかったが、フォルスの優しいキスにされるがままになっていた。

(そういうキスは、明日初めてしたいな……)

 触れ合って、キスをするだけで、スピネルの心は暖かな満足感を覚える。

 これから排卵日セックスを楽しもうとしているとは思えない、純粋な愛をフォルスに向けていた。

「んっ……ファーストキスは済ませましたから、これで目覚めのキスもできますね、兄さま」

「うん……」

 赤い顔で呆然と頷くフォルスに、自分が女として魅了した手応えを感じて、空の子宮がきゅんきゅんと疼いた。

「おやすみなさい、兄さま。……明日、いっぱい楽しみましょう」

「ああ、もちろん。お休み、スピネル」

 こうして、最高に幸せなデート前の一夜は終わりを告げた。

 

 

 ここからは、売春婦の時間だ。

 さっきのキスでフォルスの眠りが遅くなることを考慮して、日付が変わるギリギリまで待つ。十分時間がたってから、静かにフォルスの部屋に忍びこみ、不意打ちで頬にキスをして、ちゃんと寝ていることを確かめた。

 部屋に戻り、いそいそと、うきうきと、売春婦としての身支度を整えていく。

 子宮のたかなりは最高潮で、お目当ての男も色町でウロウロしているのが手に取るようにわかる。

 弾んだ足取りで、スピネルは街娼として出かけていく。

 

 フォルスとの初めての恋人デートの一日は、ほかの男との子作りセックスから始まるのだった。

 

 ベールの下の瞳をキラキラ輝かせながら、まさにデートの待ち合わせのように、息を切らせてその男を見つめる。体格のいい……横幅も太い巨漢だ。顔はいつかの小男より厳しく、後頭部のやや尖った頭は完全にスキンヘッド。服はシルターンの『着流し』を着ていた。

 苛立たしげに、道の隅の方で、商売女を睨みつけている。

「おにいさん♪ わたしとイイコトしましょ♪」

 にっこりと満面の笑みで、声を弾ませて男を誘う。

「……なんやねん、あんた……」

 不機嫌そうに、なまった言葉で返す男。チッと舌打ちをして、

「フン……まあ、エエで。どうせあんたもビビって逃げ出すやろ」

 皮肉げに笑う顔に、なんとなくブルドッグのような愛嬌が漂っている。スピネルは、この男に好印象をもった。

「じゃあ行きましょ♪」

 腕を絡めて胸を押し付けても、あまり反応はない。スピネルは男と連れ立って、ラブホテルに入った。

 

「わあっ……!」

 部屋に入って、男が早速着流しを脱ぎ捨て全裸になる。その股間を凝視して、スピネルが歓喜の声を上げた。男の股間についていたのは、人間とは思えない……いや、実際人間のものではないペニスだったのだ。

 異常に長く、色は全体が赤黒い。先端にカリのない尖ったフォルムのペニスは、犬のそれを人間の体格に合わせて拡大したようなものだった。さらに、長い棒のようなそれは、僅かに螺旋を描いて曲がっている。

 金玉の方も、見ていて痛々しいほどに大きい。片方の大きさがスピネルの握りこぶし二つ分はあり、それがまるで張りのある巨乳のように、皮に支えられて股の間に落ちずに股間の前につき出す形でくっついている。

 スピネルは早速跪いて舐めしゃぶりたくなったが、胸の高鳴りを抑えてまずルールを説明した。だが、男は何も反応せず、じっとスピネルを見つめている。

「あんた……さっきから、ワイのこと……怖ぁないんか?」

 厳しい顔で、スピネルを睨む男。

「? いいえ、怖くないですよ?」

「そのっ……! この顔とか、チンコとか、キンタマとか……気持ち悪いんとちゃうんか!?」

 ああ、とスピネルは得心した。

 苛立たしげに道行く商売女を睨みつけていたのは、男の常識外のペニスと金玉をみて、断られてしまったのだろう。もっとも、それでこんなにイラついているということは、色町に来たことは今までなかったのだろうか。ということは、スピネルが思うよりも若いのかもしれない。

「大丈夫ですよ。貴方の身体に、気持ち悪いところなんてありません」

 むしろ、こんなに素敵なの、あのおじ様以来です……という言葉は、さすがにビッチといえど空気を読んで言わなかった。

「ふっ……フン、そんなもん、口では何とでも言えるわい……ほな、……あれや、まず……」

 少し声が震えている男が、ベッドに腰掛ける。スピネルはすとんとドレスを脱ぎ捨て、その股間に跪いた。

「はい、まずお口で気持ちよくなってくださいね♪」

 ベールの下の目を輝かせ、男への口淫を開始した。

「ああ……こんなに太くて、長いなんて……ぢゅううぅっ!」

 挨拶がわりに、ゆるく螺旋を描く男のペニスの先端に強く口付ける。フォルスとのキスの残り香は吹き散らされ、目の前の男の我慢汁の匂いがスピネルの鼻にまで抜けてきた。余裕で子宮口を貫ける長いペニスを夢中でほおばると、形はそのままにどんどん固くなってくるのがわかる。

「うおっ、おおおっ!?」

 ちろちろと先端の鈴口に当たる部分を舐めまわすと、男が声を上げてのけぞった。厳しい男の、そんな『かわいい』ところを見て、ペニスをしゃぶりながらニンマリと微笑む。頬をすぼめ、きつく吸いながら舌を絡みつかせると、さっそく男の腰が震えてきた。

「ちゅぽっ……ふぅ……これで、気持ち悪くなんてないって、信じてくれましたか?」

 我慢汁で口元をてらてらと輝かせながら微笑むスピネルに、男はあっさりと心を奪われた。

「く、口だけや……最後まで、付き合えるもんかい」

 顔を真っ赤にして強がる男にくすりと笑って、スピネルは紐パンを見せつけるようにシュルリと脱ぎ落とし、つばを飲む男の脇を通ってベッドに寝転んだ。

「さあ、どうぞ……最後まで、たっぷりしてください♥」

 媚び媚びのその声音に、操られるかのように巨漢の男がスピネルに覆いかぶさる。

 周りからはもはや広げた脚と、男の首に回した腕しか見えない体格差だった。

「ほ、ほんまにええんやな? ワイのは……すごいんやで?」

 もとよりわかっている、とばかりにスピネルは頷いて、ぐいっと男の頭を抱き寄せ、キスをした。先程まで自分のペニスを加えていた唇であるにもかかわらず、男はスピネルのキスのうまさに、躊躇を止めて、腰を突き出す。だが、螺旋を描いたペニスは腰だけで挿入するには難度が高かった。

「うふ……こっちです……そのまま、まっすぐ前に……」

 スピネルに優しく導かれ、ついに男の異形のペニスがびしょびしょにぬかるんだスピネルに埋没する。

「う、おおおお……!!」

 男が歓喜の雄叫びをあげる。ずるずると奥まで飲み込まれ、3分の2ほど進んだところで止まった。スピネルの子宮口に、がっつりと突き刺さったのだ。無理やり押し込むこともなく、ぬっちゃ、ぬっちゃと螺旋の形で愛液を掻き出しながらピストン運動を開始した。

 同時に、スピネルの能力が二人の心をつなぐ。男の心は、孤独と拒絶で荒んでいた。同時に、スピネルに向ける崇拝にもにた恋愛感情にも気づく。子作りの相手に好意を持たれて、スピネルも心が暖かくなった。

「あっ、あんっ、素敵です、貴方のチンポ、とっても気持ちいいですぅ♥」

 スピネルの方も、初めて受け入れる犬ペニスを味わっていた。カリがなく、全体につるりとしたペニスは、ピストン運動をしても膣を引っ掻いてはくれない。その代わり、太い上螺旋を描いたフォルムが内部を押し広げ、背筋が粟立つほどの異物感をスピネルに与えていた。太いペニスを受け入れる幸せをとっくに知り尽くしていたスピネルはそれを余すことなく快楽として受け入れる。

 さらに、尖った先端がぴったりと子宮口に突き刺さり、今にも子宮の中にまで侵入しそうな感覚は初めてのことだった。

「もっと、もっと深くついてくださいっ♥」

 根元までこの特別なペニスをくわえ込むべく、膣を蠢かす。少しずつ男の動きが大胆になり、より深く子宮に突き刺さる大きなストロークのピストンになってきた。

 男は射精を必死で我慢して、真っ赤な顔をしながらふうふうと息を荒げ、スピネルの膣を味わうことにだけ集中する。限界が近くなったのか、小休止というように一旦動きを止めた。スピネルと見つめ合うように向き直る。

 何を言われるか、通じ合った心から読み取って、スピネルはぽっと赤面してしまった。

「な、……なあ、あんた。ワイと……結婚してくれ!」

 あまりに唐突な、しかしスピネルにとっては一番効果的でもある、大きなペニスで犯しながらのプロポーズ。とくん、とくん、とスピネルの胸が高鳴る。

 これまでの男たちとも、ハメている最中は恋人として接していたが、これは次元が違った。奇妙な、まったく手順を踏まないプロポーズだったが、初めての求婚を受けて、スピネルの心が揺れる。黙っているスピネルをみてどう思ったか、男はさらに言葉を重ねた。

「ワイは、シルターン特区で料理人やっとる、セヤーデ言うもんや。……ワイの家系は古くからメイトルパに縁のある料理人の家系でな、シルターンに移ったワイの一族にも、犬やら豚やらの獣人の血と、タヌキの妖怪の血が混じっとるんや。せやから、こんなチンコや金玉になってしもて……ずっと誰にも受け入れられんで……あんたみたいな、ワイのことを優しく受け入れてくれるお人は、もう一生巡り会えへんかもしれん! 料理の腕はそれなりにあるんや! あんたが傍で支えてくれたら、

 いくらでも頑張れる! 働けなんて言わへん、ワイが一生面倒みたる! せやから、頼む! ワイの嫁さんに、なってくれんか!」

 ラブホテルで、ベールで顔を隠した商売女に、ペニスをハメながらの情熱的なプロポーズ。

 嬉しい、とスピネルは思った。それが相手に伝わり、ぱっと顔をほころばせる。

 このまま、今すぐにこの男の精子で孕んで、フォルスとの響友を解消し、料理人の嫁として第二の人生を歩む。そんな将来を本気で夢想した。

 セックスの快感で遠のいていくフォルスへの思いが、即座に頷くことをかろうじて止めていた。

「……ひとつだけ、条件があります」

 ごくり、と固唾を飲んで、男はスピネルの言葉を待った。

「今、この場で……私と貴方とのあいだに、赤ちゃんが出来たら。その時は、貴方のお嫁さんに、なります」

 スピネルは、真性のビッチらしく……子宮で、卵子で、自分の男を選ぶことにした。

 

 危険日真っ最中、排卵した自分の子宮と、

 常人の何倍にも膨らんだ相手の金玉を考慮に入れての、

 それがメスとしての結論だった。

 

「わ……分かった。今すぐ、あんたを孕ませたる!」

 火が付いたように、男は力強くピストン運動を再開する。

「あっ、あんっ、あんっ♥」

 スピネルも、媚をたっぷり含んだ甘い声を上げて、男の興奮を助長した。

 同意の上の子作りセックスをしているというスピネルの興奮が、男から流れ込んでくる孕ませるという強い意思と混じり合い、ふたりはひたすらに腰を振り、子宮と金玉の準備を整えていく。

 条件も何もあったものではない、夫婦で家族計画を立てた末のような、濃密な受精前提の交尾。

 異形のペニスの新鮮な快楽と、男から感じる激しい愛情に、スピネルは身も心も満たされてとろけるようなセックスを楽しんでいた。

「ふーっ! ふーっ! ふーっ!」

 やがて、ペニスを根元までずっぽりと突き刺したまま男の腰使いが小刻みになる。射精の気配を感じて、スピネルはぴったりと突き刺さったままのペニスの位置を調整し、子宮口に直接刺して射精が直接子宮に届くように調整する。

 ぶくっ。

 胎内でそんな音がした気がした一瞬後、スピネルの子宮を男の精液が激しく叩いた。犬の精液とは違う、人間と同じように粘つく、スピネル好みの濃厚な精液。それと同時に、男のペニスの根元がコブ状に膨らみ、スピネルの子宮を圧迫したままにがっちりと固定される。

「ふああっ!? こ、こんなっ、ひゅごいぃ、中から押し上げられちゃってっ、い、イクぅ♥」

 スピネルは知らないことだが、犬の特性を持つペニスは射精の時に膨らみ、抜けないように固定される。そこから大量に射精して、より確実に雌を受精させるのだ。

「まだまだ、ずーっと出るで……! 出し尽くしたる! あんたを孕ませて、嫁にして、一生添い遂げる!」

 心を通じて愛を交わす経験は毎晩しているが、言葉でこうもストレートに求愛されることは少ない。スピネルはビッチとしての自分も、少女としての自分も、どちらも満たしてくれる目の前の男を優しく抱きしめた。

 

 そして、腰をぴったりと密着させたつがいの二人の、受精するための濃密なひと時が始まった。

「ああ……すごいぃ……子宮のなかに、直接……びゅーびゅー来ちゃってます……♥」

 すでに男の精液はスピネルの子宮を隙間なく満たしているが、それでも全く止まることはない。

「そうや……! ワイの本気の射精は、1時間は続くで……全部注ぎきって、孕んだみたいなボテ腹にして帰したるからな……!」

 それを聞いてスピネルは、とろけるような笑みを浮かべた。子宮が膨張するのに備えて、もっと股を開き、下半身からすべての力を抜いて、男の尋常でない量の精液を注がれる、どく、どくという脈動に意識を集中する。

 ベール越しに見つめ合う二人は、どちらからともなく顔を近づけ、優しく口づけを交わした。

 これから一時間以上精液を注がれる快感が得られるスピネルは、完全にリラックスしきって男の体をなでてやり、キスの時も自分から舌を差し入れて男をリードする。ときおり、膣をきゅっと締めて、Gスポットを圧迫するピリピリした快感を味わい、男を震えさせる。

「ちょ、こら、それしたら、勢い付きすぎる……」

「ふふっ、ごめんなさい、あ・な・た♥」

 本物の夫婦のようにからかいあって、受精という一つの目的のためだけにペニスを子宮に突き刺して、抱き合い、唇と舌でお互いの意思を交わし合う。

 下腹部が段々と熱く、張ってくるような感覚がいよいよ強くなってきて、スピネルは笑みを深くした。

「あは……お腹がぽっこりしてきました。これが全部、あなたの精液なんですね……とっても気持ちいい……」

 うっとりと、我が子をあやすように膨らんてきた下腹部をなでる。男のペニスがより固くなり、射精の量が多くなった。

「ああ……好きや。もう、あんたに惚れ込んでしもうた……ワイの、ワイの子供を産んでくれ……!」

 まるで一途な願いそのものであるかのように、スピネルの子宮に暖かい塊が流れ込み続ける。

 それから1時間半程のあいだ、二人はじっと動かず交尾を続けた。唇と舌を絡め合う、くちゅ、ちゅぱ、という音だけが部屋に響く。ラブホテルのギラギラした照明など完全に無視して、穏やかに、しかし全力で、受精のために肌を重ね、抱き合っていた。

 

 夢のようなひと時が、ついに終わりを告げる。スピネルの下腹部はぽっこりと、おそらく普段の服を着たら一発でわかるほどに膨らんでいた。最後のあがきとでも言うべきか、コブが縮んでから男がカクカクと腰を振り、今日一番濃い、どろりとした精液を入口近くと、抜いてからの子宮口にまぶすように射精する。

 ぬぽっ、と2時間ぶりにペニスが抜けたスピネルの膣は、処女のような縦の割れ目を維持している。しかし、それが先ほどまでの行為とのギャップを感じさせ、男を興奮させた。といっても、さすがにもう勃起はできないが。

 今までとは次元が違う、子宮がパンクするほどの精液を収めて、スピネルは常に絶頂しているようなしびれを下半身全体から感じていた。間断なく多幸感がおとずれ、ペニスを抜かれたあとも大股開きのままとろけ切った笑みを浮かべ、虚空に視線をさまよわせている。

 男は愛する女の子宮を征服しきった達成感からにやりと笑い、スピネルに這いよると、自分の精液でパンパンに張った下腹部を優しく撫でた。

「あふぁぁあ……♥」

 虚ろに喘ぎ声をあげるスピネルが愛しくて、唇を奪う。くちゅくちゅと口内を舌でかき回し、唾液をたっぷり流してやると、乳飲み子のようにスピネルはんく、んく、と嚥下した。

 たっぷりと唇を堪能してから、男が唇を話す。

「最後の射精は、入口を塞ぐための液なんや……そのままにしといたら、 1、2日はボテ腹でいられるで」

 やり遂げたという感情を乗せて、つぶやく。

 しばらく経ってようやく正気に戻ったピネルは、恥ずかしげに股を閉じた。

「えへへ……寝坊しちゃいましたね」

 上半身を重たげに起こすその姿に、男はスピネルとの新婚生活を幻視した。仕込みで朝の早い自分に比べて、夜の仕事をしていたこの女は寝坊したりもするだろう。それを、自分がキスで起こしてやる。身重の体を起こすのを背中に腕を回して手伝ってやると、花咲くような笑顔で女が朝の挨拶をしてくれる……そんな、すぐ手に届くところにある未来。

 スピネルは自分からキスをして、よたよたとベッドから降りた。

「あっ……そうや、代金……」

 今更思い出したように、男が言う。

「いいえ、お代は要りません。……だって、未来の旦那様との初夜かもしれないんですから♥」

 ベッドに座ったままの男に、スピネルが立ったせいでより普通との違いがはっきりわかる、妊婦のようにふっくらとした下腹部をなでて示した。

「……ああ。分かった」

 女も、さっき見た未来を掴むために協力してくれているような気がして、男は胸が熱くなった。

「じゃあ……赤ちゃんができたことがわかったら、あなたに会いに行きます。今日、声をかけた場所で待っててください」

 硬い表情で、男が頷いた。

 男の前で、羞恥に顔を赤らめながらスピネルはパンツとドレスを着ていく。さすがに、ゆったりとしたシースルーの布を押し上げるほどの膨らみではないが、薄く透けて見えるスピネルのボテ腹が、膨らみの頂点ほど白く浮かび上がり、淫靡に強調されていた。自分のその下腹部を眺め、愛しげに撫でながら、スピネルは部屋から出ていく。

「ワイの働いてる店、『シアリィ』言うねん。……暖簾分けの暖簾分け、くらいの分店やけどな。よかったら、食べに来てや」

「ええ……お酒を飲んでないで、ちゃんと働かないとダメですよ? 愛妻のように、やんわりと窘めてくるスピネルに、男はバツが悪そうに頭をかき……でれっと相好を崩した。

「また、会えるといいですね」

 ぱたん、と扉を閉じて、スピネルはフォルスの待つ自宅への帰路を歩き始めた。

 ずっしりと重量を感じるほどの子宮を、セックスの最中のような蕩けた顔で撫でさすりながら。

 

 

 翌朝。

「んっ……んふぅ……」

 唇に感じる、優しい感触。昨日の男とも違う……しかし、昨日も感じた、愛しい唇……

「おはよ、スピネル」

 朝日の中で微笑むフォルスが、視界いっぱいに広がった。

「えへへ……寝坊しちゃいましたね」

 ふにゃ、と幸せに緩んだ笑顔を返すスピネル。

「さ、朝ごはんにしよう。昼夜と外食だから、軽めにしといたよ」

 ほんの少し照れで赤い頬を隠すように、フォルスは部屋を出て行った。スピネルは、のっそりとベッドから身を起こす。

 いつもとは違って、ワンピースのゆったりとしたパジャマだ。言うまでもなく、未来の夫かもしれない男の精液で膨らんだ下腹部を目立たせない服装だった。

 男の精液は、昨日言ったとおり一滴も漏れ出さず、スピネルの子宮にとどまり続けている。腰を突き出さない限り、傍目からは分かることはないだろう。

 子宮の中はぐるぐると蠢き、今まさに全力で幾億、幾兆の精子がスピネルの卵子に受精しようと挑みかかっているはずだ。いや、もうとっくに受精したかもしれない。そんな想像をして優しく微笑みながら、スリッパを履いてペタペタと自室からでる。

 適当に寝癖を手ぐしで直しつつ、フォルスの待つリビングへ向かった。にこやかに挨拶を交わし、今日のデートの展望を語らうそのさまは、新婚夫婦のようにさえ見える。

 食事を終え、シャワーを含め身奇麗にしたスピネルは、普段とは違う、やはりこれもゆったりとしたワンピース。いつもは白、青、紫などサプレスゆかりの服を着ているが、今日は暖色系だ。大人びたといってもパッと見の外見はまだ少女であるスピネルには、文句なく似合っている。胴回りに、胸の下で結ぶようにリボンが巻かれたデザインで、それが豊かになったスピネルの胸だけを強調し、少女と女の両方の魅力を兼ね備えたものにしていた。逆に胸より下のラインがわからないことが想像の余地を産み、毎晩抱きしめているスピネルのきゅっとくびれたウェストラインをフォルスに思わせた。

 実際のスピネルのウェストラインは今、くびれていながらも精液で押し広げられて膨らんでいたが。

 

 そうして、ほのぼのとして、冒涜的なデートが始まった。家を出てすぐに、スピネルが遠慮なく腕を絡めて体を密着させる。フォルスも照れながらそれを受け入れ、エスコートしながら歩いた。

 もしもフォルスが、スピネルがつかみやすいように腕を軽く曲げずに、だらりと下げたままで歩いていたら。何かの拍子で、スピネルの膨らんだ下腹部にふれて、気づいたかもしれない。

 そんな危ない橋を渡るスピネルは、溺れるほどの精液を溜め込んだ幸せで、大胆になっていた。

 見た目には、そして二人の心の中も、相思相愛のカップルが、午前のセイヴァールをゆっくりと歩いていく。スピネルのワンピースに隠された下腹部だけが、どうしようもなくいびつだった。

 

 ユクロスのある島から放射状に伸びる水路の橋をいくつか超えて、住宅街、繁華街、そしてまた住宅街を、時折短い言葉を交わしながら歩く。繁華街以外には大した娯楽施設はないし、それ以上に、見慣れたこの街では『兄妹』の時にすでにやったものばかりだ。幼い頃からの思い出がいっぱいに詰まったこの街を、恋人として二人寄り添って歩く……それが、今のフォルスとスピネルにとって一番の幸せだった。スピネルが売春に利用している能力を使わなくても、響友である二人は誰よりも心を通わせあっていた。

 

 幸せを噛み締めながら、時間をかけてシルターン特区にたどり着く。暖かな日差しに、二人は軽く汗をかいていた。スピネルの首筋が赤いのは、精液に内側から子宮をゆすられる性的な快感からだったが。

 観光客相手の土産物屋も兼ねる、アクセサリーショップを二人で見て回った。オニビなど、実在のシルターンの住人をそのまま小さくしたような精巧なフィギュアは、ニッポン人の末裔の一族しか作れないという。型をとって大量生産する技術があるので安価だが、そんな来歴を店員に聞かされ、二人して仲良くふんふんと頷いていた。

 そうやってイチャイチャと散歩していると早くも昼になり、スピネルが

「あのお店に入りませんか?」

 と言った。フォルスが頷いて、まだ少し早い時間だがすでにほぼ満員の店に入る。『シアリィ』という、シルターン特区なのにシルターンの言葉でない屋号の店だ。しかし新しい訳ではなく、フォルスも学生時代に何度かスピネルと食事をしたことがある。その思い出から選んだのだろうとフォルスは思った。

 店に入ると、ギリギリで待たずに席に着くことが出来た。この店独特のノリというのか、調理場から怒号のような荒々しい声が聞こえてくる。

「オラァ! 心を入れ替えたんだろうが! キビキビやらんかい!」

 そんな言葉が聞こえてきて、ふと見るとカウンターのようになって少しだけ覗ける調理場で、目にあざのある巨漢の料理人が手際よく料理を仕上げていた。

「あの人は初めて見るなあ……新しく来たのかな?」

 フォルスがつぶやきながら、すぐにお品書きに視線を移す。スピネルは優しく微笑みながら、その男を見つめていた。

 

 

「ふうーっ、やっぱりこの店は安定して美味しいよなあ……昔食べたよりも美味しかったかも?」

 食事の後、腹いっぱいに食べたフォルスが笑顔で言った。

「ええ……とっても美味しかったです。わたし、お腹いっぱいになっちゃいました」

 スピネルは、場違いなほどうっとりと微笑み、下腹部をなでた。

「うん、僕もお腹いっぱいだよ。お昼はゆっくりしようか」

 二人は立ち上がる。会計をしにいくフォルスに遅れて、スピネルは厨房の方を見た。

「…………」

 一瞬だけ、いかつい顔をした巨漢の料理人と目が合う。

 もちろんスピネルの正体には気づくこともなく、料理を再開した。

 

 昼からは、貸釣竿を二つ使っての川釣りをした。自前の竿は、さすがに持ってきていないからだ。

 満腹になって、日差しも暖かく、程よい風が吹く。

「「くぁ……」」

 フォルスとスピネルが、全く同じタイミングであくびした。顔を見合わせて、クスクスと笑い合う。

「ちょうどいい木陰もあるし、昼寝しようか?」

「はい、そうしましょう」

 木に背を預け、肩を寄せ合って座る。指を絡め合った手が汗ばむのが、スピネルは少し恥ずかしかった。

 言葉も交わさず、お互いに目を閉じて木々のざわめきだけを聴いている。隣にいるフォルスの暖かさと、子宮の中の精液の暖かさで気持ちよくなったスピネルは心地よい眠りに落ちていった。

 

「んっ……ちゅ……」

 唇に感じる、フォルスの感触で目を覚ました。

 日は傾き始め、空はオレンジになり始めている。

「わたし、これから毎日寝坊しちゃいそうです」

「それは困るなあ……むしろ僕を起こしてくれないと」

「あ、それも良いですね。じゃあいつもどおり、兄さまよりも早起きします♪」

 幸せいっぱいの笑顔を交わしあって、ぱんぱんと尻についた草を払って二人は歩き出した。

 今日のこと、食べに行った店の、学生時代の思い出、シルターン自治区にすむ知り合い……ライジンなどの話。とりとめもない話題で笑い合いながら、セイヴァールへ歩いていく。

 目的の店に着く頃には日が落ちていた。店に入る前に、フォルスが

「ちょっとトイレ」

 と言って、トイレによる。スピネルも女子トイレに入り、用を足すことにした。個室に入って、鍵をかける。

 念のためナプキンと、さらにタンポンをつけていたが、目で確認してみてもそこにはスピネルの愛液しかついていないようだった。ワンピースの上から子宮のあたりをなでさすると、よだれを垂らすように愛液が滴り、ぴちょん、という音をトイレに響かせる。

 昼に満腹食べたことは嘘ではなく、それなりに出すものを出して、念入りに手を洗ってから、スピネルは先に出ていたフォルスと合流して店に入った。

 お互いに若者らしいというか、ラフな格好であるため、さすがにノーネクタイお断り、みたいな高級店ではない。むしろそんなところに連れて行かれたら、完全に共有している懐事情を心配してしまうだろう。

 小さな店ながら、こざっぱりとした内装は上品で、どこか風格を感じさせる。イタリアンレストランという、ニッポン人の住んでいた世界の、さらにニッポンとは違う外国というややこしい出自の料理を出すその店は、300年以上もイタリアンの命脈を保ち続けていた。

 個室に案内され、小さめのテーブルに座る。ノンアルコールのシャンパンで乾杯した。

「個室のレストランって、わたし初めてです……緊張しちゃいますね」

「だよね。もちろん僕も初めてだけど……まあ、コース料理だからこのまま座って待ってれば大丈夫でしょ」

 洒落た店に似合わない情けない会話をしながら、二人はテーブルの上で手を伸ばし合い、指を絡める。

 今日一日おしゃべりしたから、今更新しい会話もないが、愛し合う二人には、見つめ合っていることが今一番の幸せだった。

 料理を運ぶウェイターがきても、慌てることなくそっと手を離す。仲睦まじい恋人という、よくある客に対してウェイターはにこやかに微笑み、いつものように給仕するのだった。

 

 食事中は、あれが美味しい、これが美味しい、今度真似して作ってみようか……など、優雅さの欠片もない、所帯じみた幸せな会話が続く。

 甘いチョコレートのデザートにスピネルがほわほわした笑みを浮かべ、フォルスはそれを幸せそうに眺めていた。

 

 美味しいものを食べて、笑顔で店を出る。

 月を見上げながら、二人は手をつないで夜道を歩いて行った。

 シルターン特区からと比べれば3分の1に満たないその道程は直ぐに終わってしまう。

「……そうだ、久しぶりに屋根上に登ろうか」

「大家さんにバレないように、ですね」

 視線を交わし、共謀していたずらをするように微笑んで、二人は屋根に登った。

「ふう……涼しくていい風です……」

 月を見上げて佇むスピネルに、フォルスが後ろから抱きつく。その腕は胸より上に回されていた。子宮の膨らみには気付かず、フォルスがスピネルの首筋に顔を埋める。

「今日……やっと、兄さまと本当の恋人になれた気がします」

 ポツリとそう言った。

「ん……ごめん、もっと早くこういう時間を作るべきだったね」

「いいんです。告白していきなり態度を変えられるような兄さまじゃないって、わたしが一番よく知ってますから」

 微笑んで、フォルスに顔をよせ、頬を触れ合わせるスピネル。

「あはは……なんでもお見通しだな、スピネルは。僕はスピネルの心を読み切れた試しがないけど」

 苦笑するフォルスに、スピネルは首を巡らせてすぐ横にあるフォルスの顔を見つめる。

「ふふ……女の子には、秘密が多いんですよ?」

 処女を失ってから、数え切れない程の秘密を抱えて、スピネルは美しく成長した。そして今も、ほかの男の精液で満たされた子宮が、より美しくスピネルを微笑ませている。

 それはまた、フォルスのもとから永遠に去るかもしれない、危険な賭けを毎日しているようなものでもあった。

 だが、何も知らないフォルスは、純粋に今のスピネルは最高に美しいと思った。

 月明かりにキラキラと輝く紫の瞳に吸い込まれるように、フォルスはスピネルと唇を重ねた。

(ああ、今、最高に幸せです……兄さま、ありがとう……)

 スピネルの夢……ロマンチックな告白と、素敵なキス。産まれてからずっと抱いてきた思いが理想通りに成就した感動に、スピネルは一筋喜びの涙を流した。

 今こそ、そうするべきだという思いに突き動かされ、さらに一歩踏み込む。

 ちろりとスピネルの舌がフォルスの唇を撫で、伺いを立てる。ぴくりと動揺が伝わってきたが、一瞬の後にフォルスからスピネルの口内に舌を入れてきた。

 その瞬間、スピネルの全身に電撃が走る。

 まるで極太のペニスで激しいセックスをしている時のような快楽を、いきなり不意打ちで感じたスピネルは、フォルスを驚かさないようにぐっと声を我慢して、乳首もクリトリスも勃起させながら絶頂した。満足していたはずの子宮がきゅうぅ、と切なく震える。その瞬間、

 

 ぴりっ。

 

 決定的な決壊が、子宮口のあたりで起こった音が、スピネルの体を通して聞こえた。ちょろちょろと、粘度を失ったあの男の精液が、タンポンに吸い込まれていく。

 ちゅぽん、と糸を引いて、スピネルはそっと唇を話した。

 まるでセックスの後のような照れくささで、言葉少なにそそくさと二人は屋根から降りた。

 

 自室の前で手をつないで、じっと立ち尽くす。すぐそばに住んでいるのに、今日の甘い雰囲気の残り香を、まだ味わっていたかった。その思いを、二人は等しく抱いていた。名残惜しげに、未練がましく指先で最後まで触れ合って、

二人は手を離す。

「……兄さま」

 明り取りの窓から漏れる月明かりだけが、スピネルをわずかに照らしていた。その目の輝きに見とれる。

「うん……」

 なんだかこの頃、スピネルに見とれてばっかりだな……とフォルスは思った。

「セイヴァールを発つ前に、もう一日だけ、休暇を取りましょう」

「ん……出来ると、思うけど……」

 何度でもデートしたい、というのはフォルスも思っていたが、それを今言い出すだろうか?

 ――やっぱり、スピネルの心は読みきれないな。

 苦笑して、次の言葉を待った。

「次の休暇は……一日中、兄さまのお部屋の中で……ふたりっきりで、過ごしたいです」

 暗闇の中でもわかる、スピネルの赤らんだ顔をみて、ゴクリと唾を飲んでしまった。

「あ……その……うん。分かった。絶対に、休暇を取るよ」

 スピネルの方から、OKのサインが出たのだ。これ以上みっともないところは見せられない。

 力強く目を合わせて、フォルスは断言した。

「はい……楽しみにしています」

 きぃ、とフォルスに向き合ったままドアを開け、するりとその向こうに身をすべり込ませる。頭だけをにゅっと出して、暗闇でも唇を読めるよう、大げさに口をパクパクさせた。

 

 コ・ン・ド・ー・ム。

 

「いーっぱい、用意してくださいね?」

 顔を真っ赤にしたフォルスに、してやったりと微笑みながらスピネルが部屋に入っていく。

 いそいそと着替えて、フォルスが部屋に入ったことをドアの音で確認してから、消臭スプレー片手にトイレに入った。

 

 便座に座って下腹に力を入れると、

 

 ごびゅっ! びゅぶぶぶぶうぅぅ……

 

 と、滝のように昨夜の受精セックスの残滓がこぼれ落ちていく。腹をへこませて出し切ると、体が軽くなったのを感じるほどの重量だった。

 もはや排出されて泡立つばかりの精液の海に、男とスピネルの愛の結晶……受精卵が混じっているのを、幻覚のような、虫のしらせとでも言うべき直感で感じた。

 何かを惜しむように、天井を仰ぐ。濃密に立ち込めた酸化した精液の匂いを鼻でいっぱいに吸い込んでからため息をつき、股間を拭って下を穿いてから、水洗で流し去る。

 消臭スプレーを個室全体に振りまくと、全ての男の残滓はスピネルの前から消え去った。

 スピネルの子宮は、雌として、最愛の男を選んだ。

 

 

 こうして、スピネルの人生最高の一日は終わりを告げるのだった。

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