【剣盾】ヤリチン女装トレーナーのガラル♥レポート 作:五十貝ボタン
という仮説のもとに書いていたら、意外と文字数が増えてしまったので、バトルだけで投稿します。
エロのみを求めている場合は、読み飛ばしても問題ありません。
「サシカマス、アクアジェット!」
「ワンパチ、スパーク!」
二匹のポケモンが、フィールドのド真ん中でぶつかり合った。
一方は美しい水の柱を、一方は輝く電撃を身にまとっている。
激しい衝突は水しぶきと産毛が逆立つような衝撃をスタジアムに響かせる。
だいじょうぶ、観客席は安全に十分配慮されているから……一緒に戦っているトレーナーは、この限りじゃないけど。
衝突の勢いはほぼ互角。でも、タイプ相性は……そうそう覆すことはできない。
激突の衝撃が収まったとき、サシカマスは電撃でのびて倒れていた。
いっぽう、ぼくのワンパチはすっくと四本の足で立っている。決闘を制した
「もどりなさい、サシカマス!」
ボールを手に、ルリナさんは叫んだ。ついに、彼女の手持ちはあと一匹。
それでもルリナさんは強気の視線を変えていない。長い睫毛と、水色のアイシャドウは、フィールドで向かい合っているボクにもはっきり見えた。その目はボクを挑戦的に睨みつけている。ボクも、彼女の目を世界でいちばん近いところから見つめている……まあ、ワンパチを除いてだけど。
「強いわね。あなた」
「ご指導のおかげで」
「釣り竿の使い方を教えただけよ」
ルリナさんがくすくすと肩を揺らした。パサつきとは無縁そうな、艶やかな髪が流れるように揺れる。
「次のポケモンは私の隠し玉。いちばん強い子で相手をするわ」
ルリナさんが手に持つボールを変える。スタジアムの熱気は最高潮に高まっていた。みんな、ボクたちに熱い視線を注いでいる。
「いけっ、カジリガメ!」
ボールからポケモンが飛び出した瞬間、ずしん、と腹の底に響くような衝撃。堂々とした巨体が、ワンパチの前に立ちはだかった。
「ヌワ……」
「ワンパチ、かみつく!」
「ヌワ!」
怖じ気づきそうなワンパチに激励を飛ばす。でも、飛びついてきたワンパチに対して、カジリガメは少し首を曲げるだけで十分だった。硬い甲羅が「ガチッ」と音を立てて、牙を阻む。
「かみつき勝負なら、負けないわ」
懐に飛び込んでしまった対戦相手は、カジリガメにとって格好の獲物だ。鋭い牙が、ワンパチのもこもこの首元をがっちりと咥え込んだ。
「こうなったらもう離さない。そういう習性なの」
不敵に笑うルリナさん。たぶん、その言葉に嘘はないだろう……ワンパチが電気を放つより早く、急所を噛み切ってしまいそうだ。
「もどれ、ワンパチ!」
「うおおお、さすが、強い!」
ノックダウン寸前のワンパチをボールに戻した。ジムリーダーの本領発揮の強さに、観客は大盛り上がりだ。
「ルリナさん、素敵!」
「チャレンジャーの子もかわいいけど……」
「かわいいだけじゃねえ。やっぱりエレガントなオトナの魅力がないと」
ガラルのトップモデルと比べられたら、誰だってエレガントには見えないよ、そりゃ。
でも、盛り上がってる。
ジムミッションや野良バトルとは違う。観客がボクを見ている。
ぞくぞくするような熱気が、スタジアムに広がっている。
「このスタジアムは特別な場所。あなたも、そのねがいぼしを通じて感じてるでしょ?」
ボクの対戦相手が、ダイマックスバンドを示してみせた。
「宣言します。このカジリガメをダイマックスさせてお相手するわ」
わっ、と観客が声を上げた。
「それって、あの子をルリナさんが挑戦相手として認めたってこと?」
「くー! 前列をとってよかった!」
ダイマックスはスタジアムで行われるバトルの最大の見せ場だ。チャレンジャーの実力が不十分なら、そこまで追い込むことができずにバトルが終わってしまうことも多いくらい。
「それじゃあ、ボクも……」
観客の期待に応えないと。ボクは手持ちのボールをとって、高く掲げる。
「ダイマックスでお相手します。そして……もしもこの子が負けたら、ボクも負けにします」
マイクパフォーマンスで負けるわけにはいかない。できるだけ自信満々に見えるように、ボクは胸を反らした。
「リーダーが言うなら分かるけど、チャレンジャーがそんなことを宣言していいのかしら」
「だってきずぐすりをたくさん抱えて、ダイマックスの時間切れ待ちの戦いなんてつまんないでしょ?」
「たしかに……」
返事はルリナさんからじゃなくて、観客席からだった。誰でも、スタジアムや中継で一度はそういうトレーナーを見たことがあるのだ。
「ただでさえ大きくて強いカジリガメがダイマックスしたら……手がつけられないわよ」
「どうかな。やってみないとわからないよ」
「なら、激しい戦いを見せてあげましょう……カジリガメ、ダイマックスなさい!」
「いけっ、キテルグマ! ダイマックスだ!」
同時ダイマックスはスタジアムバトルの最高潮だ。ボクたちジムチャレンジャーは勝ち進めばいいってわけじゃない……ファンに好かれないとね。
だから、最高のバトルができるように、最高のマッチングをしないと。
それができるのはトレーナーだけだもん。そうでしょ?
「キー!」
ダイマックスしたキテルグマが威嚇の声をあげる。大きさや重量感ではカジリガメにも負けてない。
「サイズで張り合っても、同じ条件になったとは思わないことね……カジリガメ、いきなさい!」
ダイマックスしたカジリガメの全身から、水柱が噴き上がる。怒濤のような水流を身にまといながら、巨大なアゴがひらかれ……
ばふっ!
そのアゴが、キテルグマの片腕をとらえた。「がちん」とか「がぶっ」じゃないのは、キテルグマのもふもふボディのおかげだ。
「キテルグマの体が水を吸って重くなっているわ。動きが鈍いわよ!」
ダイマックスでみずポケモンが繰り出す水の量も普段の比じゃない。観客は安全だから、ご安心ください(トレーナーはこの限りではない)。
ボクたちの頭上でポケモンたちがにらみ合っている……キテルグマの目は、いまいちどこを見ているか判然としないけど。
「噛みつき攻撃への対処を考えていたというわけ……やるわね。でも、一度食らいついたら離さないかみつきから、もう逃れることはできないわ」
ルリナさんは自分のポケモンに絶対の自信があるみたいだ。その自身が彼女を輝かせている。圧倒されて、頭を下げてしまいそうなくらい。
でも、ポケモンへの信頼で負けるわけにはいかない。
「一度噛みついたら離れられないなら……それって、カジリガメも逃げられないってこと、だよね」
地響きと水しぶきで立っているのがやっとだけど、ボクは不敵に笑った。
大きくなったキテルグマに伝えるために、全身で指示を出す。
「キテルグマ!
「キーーーーーーーッ」
高層ビル並みに巨大になってキテルグマが、カジリガメの甲羅を強引に掴む。分厚い甲羅が何トンあるのか考えたくもない。とても片腕じゃ持ち上がらないだろう。
でも、カジリガメが噛みついた腕を放さないなら……両腕で持ち上げようとしているのと同じだ。
「嘘……!?」
キテルグマの怪力も、ダイマックスで超強化されている。はじめはゆっくりと、やがて一気に……米袋を持ち上げるみたいに、かみつきポケモンを持ち上げる。
二体の超重量級――しかもダイマックスした――ポケモンの重みで、スタジアムの床がきしみをあげる。キテルグマの足の形に、床が少しへこんでいた。
「いっけぇ!」
持ち上げたカジリガメを、バックドロップの要領で後ろへ落としていく……
ズガァン!
重い衝撃がスタジアムに走る。あとで聞いた話によれば、その衝撃は周囲の海さえ揺るがしてた。あの防波堤にいた釣り人が戦いの余波(文字通り)を浴びて、ずぶ濡れになったらしい。
それでも、カジリガメはタフに耐えていた。まだ戦意を失わずに、キテルグマの腕に噛みついている。でも……鮮烈なバックドロップで、上下が入れ替わってしまっている。
「ひっくり返ったまま……続ける?」
カジリガメは一度ひっくり返ると起き上がれない……っていう俗説がある。実際には、そんなことはない。
実際には、長い首を器用に使って起き上がる。その様子を撮影した動画がバズって拡散されてたから間違いない。
でも、それは自由に動けるときの話だ。
いまカジリガメの首はキテルグマの腕に噛みつき、手足を動かそうにもキテルグマにのしかかられている。おまけに、キテルグマの体は水を吸っていつもよりもっと重い。ダイマックスしてるから、もっともっと重い。
そして、キテルグマの片腕はフリー……となれば、勝負有りだ。
「自慢の最強メンバーだったのに!」
頭を抱えて、ルリナさんが悔しそうに叫ぶ。でも、さすがアスリート。すぐに感情を切り替える。
「ふぅ……わかりました。あなたたち、ジムチャレンジを勝ち進むに足る素晴らしいスピリットがあるみたい」
カジリガメをボールに戻して、ルリナさんが歩み寄ってくる。ボクも、キテルグマを戻して、再びフィールド中央へ。
……ボクから見て後ろ側がベコベコになっている気がするけど、ポケモンバトルとはそういうもの。しつこいようだけど、観客は安全です。
「ジムバッジを受けとるのにふさわしいのよ!」
ボクはルリナさんからみずのジムバッジを受けとって……そして、固く握手を交わした。
「……ん?」
その手のなかに、何かが握り込まれていた。ルリナさんの手から、観客に見えないよう何かが渡されたのだ。
「裏で見て。ほら、ファンに答えてあげなさい」
ボクにだけ聞こえるように囁いて、ルリナさんは颯爽と去って行った。
「いいぞー! 未来のチャンピオン!」
「エレガントじゃないけど、とってもダイナミック!」
「今年のジムチャレンジは盛り上がりそう!」
顔を上げると、たくさんの観客がボクの名前を呼んでいる。ヤンチャムじゃないけど、自然に笑顔が浮かんで来た。
「応援ありがとう!」
手を振ってファンに応える。バトルのあとの充足感は、なかなか収まりそうにない。
*
「お、おめでとう……」
フィールド脇の入場口には、ジムトレちゃんが待ってくれていた。次のジムチャレンジの準備はいいのかな……と思ったら、今日もボクが最後のチャレンジャーだったらしい。
うーん、ちょっと遅れてるかも。
「ありがとう。キミのおかげだよ」
「もおっ。解き方を教えたなんてバレたら大変なんだからね」
「ルリナさんにも褒められちゃった。あのミッションをクリアするなんてすごいって」
「どんな顔して聞いてたのよ……」
「ボクの顔はもう覚えてくれたでしょ?」
「そういう意味じゃなくて」
あきれ顔のジムトレちゃん。ボクはクスクスと笑いながら、彼女の肩を抱いた。
「疲れたぁ。ちょっともたれさせて」
「あ、も、もう……♡」
バトルの後の熱くなった体が触れて、恥じらうような声が漏れる。
「ボクのバトル、どうだった?」
「ルリナさんに勝つなんて……ちょっとかっこよかったかも」
「ありがとう。濡れちゃった?」
「変な言い方しないでよぉ……♡」
嫌がってる、というよりは羞恥の反応。ほっぺが赤くなって、ますますツヤツヤだ。
「聞きたいことがあるんだけど……」
「な、なに?」
「第2シャワー室って、どこ?」
「だ、第2シャワー室って……ルリナさんの専用のシャワー室よ。どうしてそんなこと聞くの?」
「だって……ほら」
ボクは手の中に握り込んでいたものをひらく。それは小さなメモで、きっちり折りたたまれていた。それを広げると、力強くも端正な筆致で、こう書かれていた。
『バトル後、第2シャワー室で ルリナ』
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