七月中旬。喜美江がデザイナーとして働いているインナーメーカーの社員一同が慰安旅行に行くことになった。一泊二日で熱海だ。土曜日の朝に出発して、日曜の夜に帰ってくる。留守中の食事の仕度は和奈と娘の理恵が受け持つことになった。理恵は中学二年で明るくひょうきんな性格だ。理恵の他愛ないジョークで和奈はしばしば和まされていた。
土曜日の夜。叔父の武郎は、和奈と理恵がつくったレバニラ炒めとシーフードサラダに舌鼓をうちながら、ビールをグイグイと飲んだ。
「和ちゃん、誕生日は3月のはじめだったよな」
「はい。3月6日です」
「魚座生まれは情が厚くて、自己犠牲の精神が強い。和ちゃんの柔らかな笑顔は俺の希望だよ」
武郎に褒め称えられた。和奈は照れながら苦笑した。
「叔父さん。褒めてもらっても何も出ませんよ」
「何もいらない。和ちゃんがいればいい」
はしゃぐ武郎を見ながら、理恵は「お父さん、飲みすぎ。もうおしまいにして」とあきれかえった。武郎は善良だ。理想の父親ではないかと、和奈は思った。
食事の後、理恵と食器を洗った。武郎は隣の居間でテレビを見ている。
「和奈さん。同級生の男子と交際してないの?」
「えっ、してないけど」
「和さん可愛いから、男子がほうっておくはずないと思うのに」
「私はまだ、誰とも付き合えない。居候の身だから」
「そんなこと関係ないよ」
実際、荻窪高校で和奈にアプローチしてくる男子生徒は多かった。だけど和奈は、世話になっている叔父と叔母にために、家事や吉澤家の食材の買い物などを優先していた。高校を卒業してから彼氏ができるかもしれないと、今は未来に期待することにしている。
午後8時をまわり、理恵がお風呂に入り、次に和奈が入浴した。からだをボディソープで洗っているとき、脱衣場のドアが
「だれ?」呼びかけても返事がない。やがてドアがそっと閉められた音が聞こえたように感じた。理恵が忘れ物を取りにきたのだろうか?
お風呂から上がって、新しいブラジャーとパンティを身に着けたとき、異変に気づいた。きょう一日穿いていたパンティを脱衣篭のいちばん下に置いたはずなのに、そのパンティはきょう着けていたブラの上に置かれていた。変だ。脱衣篭の中にある洗濯前の下着に触れる人はいない。気のせいだろうか?
ブラウスとスカートを身に着けた和奈は離れになっている自室に戻った。時間は午後9時半すぎであった。
部屋でネグリジェに着替えた。本を読もうと思ったが、疲れていた。明日も早い。眠ることにしようと思った。週に一度ならいいと自分にいいきかせている自慰のしらべは今夜はやめておこう。
机の上のデスクライトを就寝用に切り換えて、布団にはいった。目を閉じる。
すぐに眠った。
深夜。深い眠りから引きずり出されるようにして目を覚ました。ぼんやり目をあけると、武郎の顔が真上にあった。
和奈の顔をじっと見ている。
何か用事があって、ここにきたと思った。だが、薄暗い灯りのなかの男の顔は異様なものがあった。
「どうしたんですか?」
頭を少し上げて、声を出した。武郎は充血した目をぐっと見ひらき、顔を近づけてきた。
本能的に危険を感じた。飛び起きようとした。が、武郎は和奈のかけていた上布団を腕と足で跳ねのけながら、素早くもぐりこんできた。
「な、なにを」
おどろきと恐怖のなかにありながら、まだ和奈は武郎が何をしようとしているのかわからなかった。
逃げようとする和奈に叔父はのしかかってきた。息が荒い。
「叔父さん、いやです」
「しっ、静かに。じっとしていて」
武郎の声は上ずっていた。和奈はもがいた。
抱きすくめられる。
「可愛い子だ。なんて可愛いんだ」
和奈は抗ったが、圧力は強い。
抱きしめられながら、セミロングの黒髪を撫でられる。
「いいことを教えてあげる」
「やめてください」
和奈の声はふるえていた。
武郎は顔を和奈の顔にぶつけてきた。
くちびるを奪われると思い、顔をねじった。
武郎は頬に吸いついてきた。強く吸われた。頬から悪寒が広がる。
つづく
次回も宜しくお願いします。