ぼくがビッチになったワケ 作:ピジョン@アスクラピアの子一巻発売中!
翌日、教室にシュウの姿はなかった。
実に平和。二時間目のチャイムが鳴るまでは。
休み時間。頬を赤く紅潮させた葛城と一緒に校舎裏に向かった。
先を行く葛城は早く二人きりになりたいようで、殆ど小走りで目的地に急ぐ。
「葛城、急がなくても、最悪放課後があるよ」
「ああっ! はい……はいっ! そうですね!」
そして目的の校舎裏に着くと、今度はモジモジして葛城は黙り込んでしまった。
「……」
葛城は気の毒なくらい赤面して、胸の前で両手の指先を合わせている。
「あ、あの……!」
「うん、なに?」
「…………」
活発な印象を受ける葛城らしくない態度。
意を決したように、顔を上げた葛城が言った。
「昨日の御影さん、素敵でした……!」
「どうも」
これで緊張が取れたのか、葛城は堰が切れたように話し出した。
「すごかったです! エッチって、あんなに素敵なものだったなんて知りませんでした!」
それはカオルに感謝しないといけない。
今のところ、ぼくにはカオルと葛城の二人としか経験がない。こういう商売をする以上、それなりに経験を積む必要がある。
葛城が、はふぅと艶かしい溜め息を吐き出した。
「……全然痛くなくて、天国にいるみたいでした……」
大股開きで微睡んでいたあれか。
「最初は怖かったけど、すごく優しくしてくれて……」
「うふふ、いいよ」
手放しの誉め言葉に、ぼくはちょっといい気分になった。
「今度の週末が楽しみです!」
葛城は普通の恋愛っぽくしているけど、これは歴とした売春だよね。
「わっふるわっふる」
等とやってる葛城には、正直、苦笑いしか出ない。そこでぼくは、一つ釘を刺しておくことにした。
「でも、お金は大丈夫?」
「…………」
夢は覚めるもの。
葛城は水を掛けられたみたいに素の表情になった。
「……自分、結構金持ちなんで」
それは結構。
「足りなかったら言ってね。相談に乗るから」
「相談……?」
理想は生かさず殺さず。
カオルのようになられてもしょうがない。逃げ道を作っておいてやる。
「誰か紹介してくれたら、そのときはサービスするから」
「……!」
眉を寄せ、葛城の表情が苦しそうに歪んだ。
校舎間に予鈴のチャイムが鳴り響いた。
◇◇◇◇
なべて世はこともなし。
シュウのいない一日は何事もなく過ぎて行く。
早くもカオルはバイトに行っている。コンビニのバイトで、就業時間は8時~17時のフルタイム。昼休みに届いたメールには、
――今日も逢いたいよ。
とあった。
――やだワン!
送信っと。
放課後は貴重な営業時間でございますが。
――リベンジしたい。っていうかさせろ。
――また泣きながらしゃぶる羽目になっても知りませんよ。
っと、送信!
――上等!
むぅ……カオルのヤツ。あれを吹っ切ったみたいだ。
その後、少しのやり取りを繰り返し、学校まで迎えに来てもらうという線で決着した。
そして放課後。
もちろん、ぼくは営業目的で食堂に行くことにする。
放課から活動開始までの短い時間、食堂には運動部の連中が集まる。それらの女子に当たってみるつもりだ。
自動販売機でもちろん『よいこ』を買った後、辺りを確認する――いた!
シュウの子分Cだ。
部活動開始までの時間、ここで寛いでいるのだろう。袴姿で椅子に腰掛け、文庫本を読んでいる。
ぼくは二つ離れた席に腰掛け、Cに一枚の紙片を丸めて投げた。
Cがぼくに気付き、一瞬、はっとして、それから思い出したように少しムッとした表情になった。
ぼくは目礼して、Cのすぐ側に転がる紙片を指差した。
「……?」
怪訝な表情のCが丸まった紙片を開くのを確認して、ぼくは食堂を後にした。
紙片にはぼくのメールアドレスと秘密厳守の文言のみ。後はCが勝手に決めるだろう。
ぼくがどんなヤツかは、シュウが既に説明してくれている。待つだけでいい。
Cはカタギのお客さんになってくれるか。
最初が一番肝心。
葛城のように搾り取ったり、カオルのように馴れ合った関係にはしない。黒いのはなし。安全、信用が第一のビジネスライクの関係で行く。
それを糸口に新たな顧客を開拓するのが狙い。
「ハマりますように、っと」
校門に着いたとき、ちょうどカオルもやって来た。
カオルは大きい単車の二人乗りで、後部座席に座っていた。
少し離れた路地で停車して、ライダーがフルフェイスのヘルメットを脱いだ。
ベリーショートの金髪。カオルに負けないくらい気の強そうな三角目の女の子。
カオルは、そのライダーの女の子と少し会話した後、ぼくを見付けて大きく手を振った。
「ユキ~~~~!」
でかい声で、あの馬鹿。
ぼくは顔を覆った。
◇◇◇◇
それから、ぼくとカオルは手を繋いで一緒に帰宅した。
カオルは少しバイトの疲れがあるのか、ちょっとしんどそうだった。
「お疲れさまでした」
ぼくが言うと、カオルは微笑んで、一つ頷いた。
指と指を絡める恋人繋ぎ。
クラスの女子たちの話では、これは『もうヤってます』って言うのと同じらしい。
ぼくとカオルはその恋人繋ぎで歩いた。
道中、カオルはバイト中のことを話した。あれをやった。これはやらなかった。そんな内容。
30分も歩いた頃、ぼくと父さんが住んでいるアパートが見えて来たところで、カオルは急にソワソワと落ち着きを無くし始めた。
「あ、あの……アタシ……」
「ぼくの家、そこだよ。どうしたの?」
「え、あ、そうなんだ。どうしよう……」
「おいでよ」
父さんはもう、仕事に行って居ない時間だ。カオルには外で待てという話はないだろう。
「ぼくしか居ないし、気を使わなくていいよ?」
「…………」
少しの間があった。
カオルは胸の前で小さく拳を握り込んだ。
「……っしゃあ」
「なにそれ」
カオルはご機嫌で言った。
「ユキも大分ユルくなったな~って」
――なに言ってんだ。知ってる癖に。
◇◇
古い木造のアパート。間取りは3DK。
リビングで座蒲団に正座のカオルは、がちがちに緊張して、額に汗を浮かべていた。
「ぼくとカオルだけだから、足、崩しなよ」
「あ、はい」
などと言ってるカオルは、なんだか挙動不審だった。
その後、ぼくが軽くシャワーを浴びている間も、カオルは借りてきた猫みたいにお行儀よく、じっとしていた。
楽な部屋着に着替える。
「カオル、シャワーは?」
「……! 後でいい」
「する?」
「…………ぅん」
カオルは期待していたのか、目が既に潤んでいた。
寝室に移動して、ぼくが布団を敷く間に、カオルは待ちきれないのか、ストレッチパンツと肩口が大きく開いたシャツを瞬く間に脱ぎ去り、全裸になった。
目元まで赤くして、ぼくの下半身にすがり付いて来る。
「リベンジ、する?」
カオルは黙って頷くと、ぼくの下履きをパンツごと引き下ろした。
たちまち半勃起のぺニスが口に含まれると、昨夜とは違った感触があった。
カオルは口内に滴るほどの唾液を蓄えていて、それが潤滑をスムーズにしている。
「う、く……」
背骨を引き抜かれるような感じがして、ぼくは思わず呻いた。
カオルはもう、最初からトップスピードだ。舌で亀頭を舐め上げ、空いた手で陰嚢を軽く揉む。素早く上下する唇の端からは、唾液が溢れ出していた。
家に居るのが不味かった。鍵の掛かった部屋で、完全にプライバシーが守られる。安心して行為に集中できる。
「んムッ、ちゅ……」
唇と手の両方で陰茎を強くしごかれると、ぼくは強い射精衝動に駆られた。
「カオル……飲んで……!」
頬を真っ赤に上気させたカオルが、笑みを浮かべて頷いた瞬間、ぼくは強かに射精した。
カオルは、ゆっくりとぺニスを唇で絞り上げ、一滴残らず精液を飲み下すと、ぼくを見上げて、にっこり笑った。
それでいいよ、ぼくのカオル。
もっと堕ちて。
ぼくだけになって。
――めちゃめちゃに壊してあげるから――
ぼくと目が合って、暫くして、カオルは俯き、少し気まずそうな表情になった。
「どうしたの?」
昨夜のリベンジというなら、カオルはやり遂げただろう。でも、納得できないのか、弱々しく首を振った。
「昨夜、ゆっくり考えたんだ……」
カオルは眦を下げ、大きな身体を小さくした。
回復には時間が必要だ。ぼくは、カオルを押し倒して軽くキスした後、琥珀の瞳を覗き込んだ。
「ユキって、あんまりイかないよな……」
セックスは、なんだか生々しくて、少し嫌悪を感じてしまう。
「アタシ一人でヨガってたんだと思うと、すげー悲しくなってさ……」
カオルは、少し泣いているみたいだった。
「ユキに詰られるのも、無理ないって……」
「……」
ぼくはカオルの首筋に抱き着き、囁いた。
「好きだよ、カオル……」
「~~~~~~~~!」
その瞬間、ゾワッとカオルの身体が震え、その痺れまでぼくに伝わった。
さあ、始めよう。
「お金は抜きだよ……」
それがオマエを狂わせるから。
回復したばかりの陰茎を、カオルの膣に押し込んだ。
「あぅッ、く―――――」
遮二無二腰を振り立てる。
粘性の水音が煩いくらい響き渡り、カオルの腰が大きく跳ね上がった。
始めは浅く。徐々に深く。変化を付けて、カオルを激しく責め立てる。
「うぁ、あ! は、はげしい……! はげし、すぎる……!」
膣口から噴き出した蜜液が、小さな飛沫になって散って行く。
カオルは少し洩らしたみたいだった。それでもぼくは、攻め手を抑えることはせず、全力で腰を振りたくった。
「ひんッ! ひんッ! ひんッ! ひんッ!」
腰を振るリズムに合わせ、カオルが息も絶え絶えな喘ぎを上げる。
鍛え上げられたカオルの腹筋がきりきりと盛り上がり、膣全体が僅かに痙攣を始めた。
Gスポットを擦り上げ、ポルチオを全力で連打する。
「ぎぃ! ぎぃ! ぎぃ! ぎぃ!」
やがてカオルは、獣のような嬌声を発するようになった。
だらだらと涎を垂れ流し、涙を流して悶え狂うカオルの耳元で、そっと囁いた。
「膣(なか)に出すから」
「……!」
その瞬間、カオルは最後の力を振り絞り、長い脚をぼくの腰に巻き付け、精液を子宮で受け止めながら――
「あ" あ" あ" あ" あ" あ"ーーーッ!!!」
全力で、絶頂した。