ぼくがビッチになったワケ 作:ピジョン@アスクラピアの子一巻発売中!
路面にへたり込むぼくの前を、観光バスが通り過ぎて行った。
……今は、まだユキナが頑張っているんだと思う。ぼくに残された時間は……
「ど、どうしたん御影。あ、やっぱり陽に当たりすぎたんやな?」
座り込んだぼくの肩を支えるように抱き、智は慌てだした。
「も、もうすぐそこやけんな? 部屋でゆっくりしよう? きっとようなるよ?」
日光に照り返り、焼け付くような熱気を放つアスファルトの上をそよ風が流れて行く。
「智……」
「ああ、うん。聞いとる。ちょっと抱っこしてええ?」
智は過保護。そういったところは三年前と少しも変わらない。彼女は、ぼくの為ならなんだってしてくれる。どんなに悪いことだってしてくれる。
それが怖い。溺愛の性分。
「智、ぼくの話を聞いてほしいんだ……」
「うん、勿論ええよ? でも今は、少しごめんな?」
眦を下げ、困った表情で智は言って、ぼくをおずおずと抱き上げた。
「ごめん、ごめん……。怒らんとってや? な?」
「……」
ぼくは智の首筋に顔を埋めるようにして手を回し、小さく頷いた。
彼女との関係は古い時のまま。扱いづらいぼくの性分も理解している。気恥ずかしく、ちょっぴり鬱陶しいはずのその部分が、この時は何故か有り難かった。
◇◇
小さな雑居ビルの小さなエントランスを抜け、やはり小さなエレベーターホールに入った。
ビル内は空調が効いていて涼しげ。居住用のマンションとは違う雰囲気。
やはり小さなエレベーターで六階までは一直線。
ぼくを抱いたまま、智は通常より狭い通路を突き当たりまで進み、黒いドアの前までやって来て、そこでぼくを下ろした。
「……ここ、普通のマンションじゃない……?」
ここまでの雰囲気を、分かりやすく例えるなら、ホテルの内部という表現が一番合う。
智は頷いた。
「ここな、元はこのビルの警備会社の人が利用しよってんけど、住めんこともないし、その……」
「……?」
急に歯切れ悪くなった智は、何かを誤魔化すようにポケットから取り出した鍵でドアを開けた。
狭い玄関口。目の前にトイレ付きのユニットバス。小さな空間を扉で区切ったビジネスホテルのような部屋。生活感のないそこはまるで、急拵えの『隠れ家』という印象。
「……本当に、ここに住んでるの?」
「あ、うん。まだ、越してきたばっかりやけど……」
「ふうん……」
先を行く智の後に続き、目の前の扉を抜けると、そこはもう寝室だった。
「…………」
びっくりして、ぼくは黙り込む。
壁際にダブルサイズのベッド。壁掛けのテレビの他に小さな机があって、ビジネスホテルのような簡素な造り。
ぼくは言った。
「智、台所がないよ。洗濯機もないし。どうなってるの?」
「……」
頭の痛い問題を抱えるように、智は黙って眉間に皺を寄せた。
◇◇
智は難しい表情で頭を抱えている。
「……べつに洗濯も自炊もできん訳でもないんよ。給湯室は三階にあって、そこでしかできんだけで……」
「…………」
それは住居としては欠陥品だと思ったけど、ぼくは何も言わずにいた。不服を言える立場じゃない。ただ気になるのは……智が、ぼくの為だけに、ここを用意したのではないかと、一瞬だけ感じてしまったこと。
住めないこともないけれど、長く居れば、ここは必ず負担になる。住み続けるには向かない。家事も得意なしっかり者の智が、こんな場所を選んだ理由はなんだろう。
智は気まずそうに頬を掻いた。
「……本当は仮住まいやん……」
「そう……」
素っ気なく言って、ぼくは少し考える。
そもそも、なんで智は、ぼくの家の近くに居たんだろう。最初から、ぼくをここに連れてくるつもりだったんじゃないだろうか。
例えば、ぼくを『閉じ込め』たり、『隠したり』するつもりなら、ここは充分過ぎる空間。『その為』の準備が整ったのが、偶々今日だっただけ。偶々、ぼくがトラブルに巻き込まれていただけ。
ぼくは、一歩だけ退いて智から距離を取る。
ここは壁が厚く、ちょっと位の物音なら外に響かない。通路は建物の内部にあって、狭く要り組んでいる。居住用でない為、他に住人はいない。
エアコンのスイッチを入れた智は、小さく溜め息を吐いた後、ぼくの方に向き直った。
「どしたん……?」
ぼくは、また一歩退いた。
「あ……」
小さく呻き、智は、ハッとしたように固まった。
「ま、待ってや。そんな、警戒せんとって……?」
「……」
ぼくは油断なく、背後のドアと目の前の智の位置を確認して、更に一歩引き下がる。
智は焦ったように周囲を見回し――
でも、何故か、一歩下がってぼくから距離を取った。
「そ、そやな、私、怪しいな? で、でも違うんよ。酷いことはせんけん、話だけでも聞いてや。な?」
「もっと下がって……」
「分かった。分かった……」
制止するように、ぼくの方に手のひらを向け、智はゆっくり後退して、それから腰に差した警棒のホルスターを取り外し、ベッドの方に放り投げた。
「待って……絶対、そっちに行かんけん、逃げんとってや……」
苦しそうに表情を歪め、智は床に肘と膝を着き、両の手のひらを上に向けて這いつくばる。
殆ど泣き出しそうな掠れ声で言った。
「私、そんなに信用ないか……? 確かに久し振りやけど、一編も酷いことしたことないし、これからもそのつもりやん……なぁ……」
足を止めて言った。
「ウソつくな」
泣き出しそうな瞳だけはぼくの方に向けて、踞った智は完全降伏の姿勢。
「ウソやないって……」
「ぼくのこと、ずっと無視してた癖に、今さら何を言ってるのさ」
「……そんなん、しょうがないやん……!」
ぼくは鼻を鳴らした。
聞く耳持たない。彼女は怪し過ぎる。
智は力なく、言った。
「だって、御影、歌うんやもん……しょうがないやん……」
「……!」
『歌っている』ときの記憶は朧気で、あまり覚えていない。ただ、ぼくが歌うと、父さんは悲しそうにする。
智は両手の間に顔を埋め、わっと泣き出した。
「……あのときのこと、覚えてないやろ……? 私、めちゃ怖かってん……このまま戻らんかったら、どうしようって……! あんなん見たら、好きでも怖いやん……!」
智は泣いた。
この三年で溜め込んだ澱を吐き出すかのように、激しく泣いた。
「私、べたべたするし! 結構、嫉妬深いし、怖いやん……!」
嗚咽を繰返し、何度もしゃくり上げる智を見て、ぼくは漸く理解した。
三年前、黒岩智が、どんな気持ちで引き下がったか。
三年間、黒岩智が、どんな気持ちで時を重ねたか。
「色々、待たないかんと思ったら、あかんのん……?」
まいったな……。
ぼくは、軽く髪をかきあげながら、その内心の言葉を飲み下す。
智の思いは深すぎる。時をかけ、積み重ねたこの思いは強すぎる。
多分、これも『あい』。
それが、やっぱり、ぼくを弱くして。
ぼくは歩み寄り、踞ったまま今も咽び泣く智の肩に手を置いた。
「……ごめん」
一瞬、智は身体を震わせて、尚更激しく泣き崩れた。
◇◇
やっちゃった……。
色々と酷いことをするぼくだけど、中には泣かせたくない女の子だっている。
「ごめんね、智」
しょうがなく、涙に暮れる智の背中をさすり続ける。
泣き出した女の子って、すごく面倒臭い。カオルもそうだけど、中々泣き止まないし、扱いを間違えると感情的になって怒りだす。
カオルの場合、Hの後、泣いている時にテレビをつけたら、すごく怒った。
困り果てたぼくは、思い切って一つの質問をする。
「ねえ、智って処女?」
「……!!」
泣いていた智だけど、その質問の直後、ガバッと身を起こした。
「……ばかにしとんか、コラっ……!」
泣き腫らした目でぼくを睨み付ける智は、眦を釣り上げて物凄い形相だった。
相手が他の女の子なら、少し触って黙らせるんだけど、深山みたいに処女だと注意しなきゃいけない。そういう意図からの質問だったんだけど、外したみたいだ。
今回、Hの魔法(ごまかし)は使えないことが分かった。多分、テレビをつけても駄目で、お菓子を食べたり、トイレに行ったりするのも駄目なんだと思う。
女の子って、すごく面倒。
結局、智は一時間以上も泣き続けた。
その間、ずっと背中を擦り続けた。飽きて投げ出すこともなかったから、父さんがいたら褒めて貰えたと思う。
ぼくの疑念は晴れたけど、智は、ご機嫌ななめになった。
智は涙で濡れた顔を上げ、ぐすっと鼻を啜った。
「ようやっと帰った思たら、なんで泣き入れるとこから始めないかんのん……」
お決まりのパターン。女の子の『愚痴』がはじまった。
このまま言わせると、また泣きだすか怒りだすかのどちらかなのは分かってるから、ぼくはすかさず口を挟む。
「智、お腹すいた」
「あー、はいはい……店屋物でええやろ?」
がしがしと袖で涙を拭って、それから智は困ったように目尻を下げて笑った。
◇◇
智の話では、商店街と繁華街に近いこの場所では、店屋物は何でも注文可能だとのこと。しかも、他の階層に事務関連の会社が軒を並べていることもあり、部屋まで持ってきてくれるそうだ。
「最近、めちゃ美味しいカレーの専門店にハマっとってやな……」
「むっ、専門店のカレー?」
「そう、欧風とインド風が選べて、結構本格的なんよ」
「インド風、食べたい」
「ああ、いかん。御影は欧風の甘口にしとき。インド風は辛口からがデフォやからな。お奨めはチキンカレーやん」
そんなやり取りの後、智は携帯電話を取り出して早速注文を始めた。
「ええ、はい。一つはポークカレーで、もう一つは……」
智はチラリとぼくを見て、それから何故か背中を向けた。
囁くように、呟いた。
「……もう一つは、チキンカレーのお子さまセットで……」
ぼくは智の背中に躍りかかった。
脇腹がズキンと痛んで辛かったけど、ここで黙っているのは男の沽券に関わる。
「やあっ! 堪忍や! 御影のためなんやって……!」
…………………………
……………………
………………
…………
……
数分後。
脇腹を押さえて悶えるぼくと、慌ててパニクる智がいた。
「暴れるけんやん! ああ、どうしようどうしよう……」
脇腹を襲う痛みに耐えながら、何とかベッドに辿り着いたぼくは、ころりと横になった。
額の痛みも強くなってきたから、痛み止めが切れてきたのかもしれない。
智は右往左往している。
「湿布湿布! いや、痛み止めが先か!? そや! 救急車救急車!!」
もう、智は大袈裟煩い。でも、放っておくと本当に救急車を呼んでしまうので、それは止めさせる。
ベッドの隣をポンと叩いて言った。
「智は煩い。救急車はいいから、ちょっと膝枕して……」
「――えっ、膝枕!? ああ、うん、ええよ……」
それからのぼくは、智の膝枕で安静にしていた。
そして智は落ち着きがない。
「うわっ、頭ちっさ……!」
とか、
「髪の毛、ほそっ!」
とか、
「睫毛ながっ!」
とか、呟いていたかと思ったら、次は無口になって、今度は膝をモゾモゾと擦り合わせる。
「智、動かないで」
「あぅっ、ごめん……」
やがて痛みが治まり、ぼくが軽い眠気を感じるようになったとき、智がポツリと呟いた。
「……私、処女なんよ……」
何故か分からないけど、そう聞いて安心しているぼくがいる。
「御影が、もろてくれんかな……」
「それは……」
止めた方がいい、と言いかけて、ぼくは口を噤む。
「御影がええんよ……あかんかな……」
膝枕の姿勢でぼくを見下ろす智の瞳は潤んでいて、本気で言っているのが伝わってくる。
深山のときみたいに、ちょっと触ってあげたら納得するだろうか……。
そんなことを考えていると、カレーが届いた。
昼食中も、智の瞳は潤んだままで気もそぞろ。ぼくがポークカレーを取り上げ、お子さまセットを押しやっても、黙ってそれを食べていた。
デザートのゼリーを取り上げても無反応。ちょっと……いや、かなりの重症。
旗の立ったお子さまカレーを食べている智は、すごくシュールで面白かったけど、笑うと怒られそうなので、ぼくも黙って食べた。
結局、ぼくはカレーを半分以上残した。
智が注文したポークカレーの辛さは『中辛』だったけど、ぼくにはすごく辛く感じた。
嫌気が差したぼくは、智の食べかけのお子さまカレーとやはり食べかけのポークカレーをすり替えたけど、智は潤んだ瞳でぼくの行動を追うだけで、やっぱり黙って食べていた。
淡々と食事が続く。
お子さまカレーは食べやすい。辛さも合っていて、智がぼくの為だって言った理由がよく分かった。
智が掠れた声で言った。
「あーん、してあげようか……?」
子供扱いに、ちょっぴりイラッとしたので、意趣返しにぼくがお子さまカレーをスプーンで掬って差し出すと、智は迷わず口に含んで食べた。
「……」
ぼくが白い視線を送っても、智は平然とカレーを咀嚼している。
何度もよく噛み、音を立ててごくんと飲み込んだ後、唇の回りをぺろりと舐めた。
「んふ……おいし……」
熱に浮かされたように濡れた瞳は、片時も離れず、ぼくを逃がさない。
多分、カレーの後はぼくを食べるつもりなんだろう。
気の重い昼食が終わり、智は紙のナプキンで口元を拭った。
「ベッド、行こ……?」
呟くように漏れた声まで濡れているような気がして、ぼくは小さく頷いた。
部屋の中は無音。
商店街と繁華街を結ぶ位置にあるビルなのに、この部屋までは何の喧騒も届かない。高まった雰囲気を逃がさない。
ぼくは痛み止めの錠剤を二つ飲んだ後、先にベッドに腰掛けて待っている智の後を追った。
◇◇
ベッドの端に腰掛けた智は俯き加減。頬は少し赤くなっていて、緊張の度合いを伝えてくる。
ぼくは少し考えた後、立ったまま、正面から智の顎を持ち上げて、キスした。
「んっ……」
微かに震える唇に、合わせるだけのキスをする。
離れると、銀の雫が糸を引いて落ちて行く。
「…………」
智は赤く染まっていた頬を、それこそ火が点くんじゃないかと思う位に赤くして、恥ずかしそうに俯いた。
その智の頬を両手で支えるようにして、ぼくは二度めのキスをする。
首筋まで赤くなった智が、すごく期待しているのが分かった。
「ん……ちゅ……」
囗腔に舌を挿し込むと、待っていたと言わんばかりに智が舌を絡めてくる。
無音の室内に、お互いの吐息と唾液を交換し合う水音が響いている。
また離れると、智はやっぱり俯いて、羞恥に潤んだ瞳を隠してしまう。
智の腰を抱き寄せながら、ぼくもベッドに腰掛け――
「――つっ!」
突如、脇腹に走った鋭い痛みに、ぼくは苦痛の声を上げた。
「あっ!」
智が弾かれたみたいに立ち上がった。
ぼくを気遣うような声色とは裏腹に、濡れた瞳は宙をさ迷う。キスで湿った唇は期待に震え、火照った身体は熱を持ち戦慄いている。
躊躇いは一瞬。
智はサイズの大きなTシャツを剥ぎ取るように脱ぎ捨て、続いて下のジャージまで、瞬く間に脱ぎ捨てた。
「じ、自分で脱ぐけん、続けよ? な?」
「……」
ぼくは脇腹の痛みに苦しみながらも、智の見せる執念のようなものに息を飲んだ。
智は、引き攣った表情で笑った。
「アはっ、やっぱり無理?」
きっと、理性が自制と欲望の間で揺れているのだろう。無理矢理浮かべた智の笑顔は、表情が割れているように見えた。
「だい、じょうぶ。ちょっと、そう……」
ぼくは、細く長い息を吐き出して気を強く持つ。
ぼくにとって、彼女は……黒岩智という女の子は、そんな表情をさせていい女の子じゃない。
出来る限りの笑顔を浮かべ、言った。
「そう、ちょっと吃驚しただけで、大したことないから」
「ほ、ホントか? 無理せんで、ええんよ……?」
智の白と黒のボーダーのお揃いの下着は、ブラジャーの上からでもはっきり分かる位、乳首が固く尖っている。パンティはクロッチ部分に大きな染みが広がり、透けて陰毛の色を映し出していた。
「大丈夫、智、おいでよ」
多分、無理をしているのは智の方で、ここで止めたら、智は本当におかしくなってしまうような気がする。
だから、ぼくは、にっこり笑って見せた。
◇◇
智は、くしゃくしゃになった表情で笑っていた。
割れた笑顔。
その痛々しさに、ぼくは軽く首を振って、手招きして見せる。
「智? ほら……」
「あ、う、ん……」
ぎこちない笑みを浮かべ、智はまたぼくの隣に腰を下ろす。
マットレスがギシリと鳴って、僅かに伝わる振動ですら鈍い痛みになってぼくに伝わる。
倍の量飲んだ痛み止めが効いてくれば、もう少し楽になる。
そんなことを考えるぼくの横で、智が慌ててブラジャーを外そうとしていたので、その手を掴んで制止した。
痛々しくて見ていられない。
「智、そこまでしなくていいから……」
「あっ、あっ、あっ、そうか? アはっ、がっついてみっともないな、私」
卑屈。
きっと、そこまでしなきゃならない位、智にとっては大事なことなんだと思う。
「ごめんね。そこまでさせて」
これからぼくがすることは、カオルやトウコに対する裏切りだ。でも、今こうしなきゃ、智は滅茶苦茶になる。
「な、なん言いよん? そんなん御影のせいやない――」
最後まで聞かず、ブラジャーのホックに指を滑らせると、急に緩くなった胸の締め付けに、智は身体を硬直させた。
言葉は、時折、陳腐になる。
黒岩智は、ぼくにとって大事な人。だから行動で推し通る。
あっ、と悲鳴を上げそうな唇はキスで黙らせ、勢いのまま押し倒してブラを剥ぎ取った。
「んふっ! ふ……ぅぁ……!」
まろびでた双球は目算ではDカップ。素肌の触り心地は滑らかで、いつまでも撫で回したくなる。
舌を吸い上げ、大きな乳房をセピア色の尖りごと優しく揉み込むと、色素の薄い智の瞳がとろりと蕩けた。
「あ、あぁ……」
続いて、そっと乳首に吸い付くと、普段の智からは想像もできないような艶のある喘ぎが洩れだした。
うっすらと汗が浮かんだ肌は、しっとりと吸い付くように感じる。
不思議な感覚。
智は、ぼくに嫌悪感を感じさせない稀有な存在の女の子。
眉間の傷が熱くなる。
乳首に強く吸い付きながら、なだらかな腰のラインをなぞって行く。
「あ、はぁ……」
溜め息と共に、智はくてりと脱力して、寝そべった身体の緊張を解いた。
パンティの上から、盛り上がった土手の部分に触れると、そこはもう、漏らしたみたいに愛液が溢れだしていた。
「ぅンッ!」
嬌声を上げ、びくんと大きく身体を震わせたのも一瞬のこと。糸が切れたように太股から力が抜け、身体が開く。心が開いて行くのが、手に取るように分かった。
智が切なそうに息を吐く。
「……なぁ、もう、ええよ? その……あの……」
頷いて、パンティに指を掛けると、智は腰を浮かせることで答えてくれた。
脱がせたパンティを投げると、べしゃりと大きな音がして、智は恥ずかしそうに両手で顔を隠した。
ズキンズキン、と早鐘を鳴らすように脇腹が痛んだ。痛み止めは全く効かない。
ぼくは平然を装って身体を起こし、長袖のシャツとズボンを脱ぎ去る。
痛い。押し倒した姿勢より、立っている方が楽だ。
「……御影、ぁの、その……」
心配そうに見つめる智の手を引っ張って、ベッドの端に座らせる。
「智、脚開いて……」
「……ぅん」
羞恥と期待に濡れた瞳を伏せ、智が脚を開くと、ねちゃっと大きな音がして、粘った愛液が太い筋になって両足の間に橋を作った。
寝ているより、立っていた方が楽。開いた智の脚の間に入り込み、ぼくは秘密の部分を覗き込もうとしゃがみこんだ。
「あっ……ちょ、うそ……」
この世の終わりのような悲鳴を上げ、『そこ』を覆い隠そうとする智の手を払い除け、ぼくはじっくりとそこを覗き込んだ。
「あ……」
智のそこは、陰唇がぷっくりと腫れ上がり、襞が捩れて開いていた。
その痛ましさに、ぼくは思わず首を振った。
クリトリスは赤く充血して包皮から半ば以上、顔を出している。膣囗からは白く濁った粘液が溢れ出し、物欲しそうに涎を垂らしていた。
ついこの前、カオルに寸止めの拷問を喰らわせたけど、智の『そこ』は、カオルのよりずっと酷い。ぼくを待ちわび、震えながら、今も健気に頑張っている。
深刻なぼくの表情に気付いた智が、困惑したように言った。
「あ、ぅ……私の、おかしいか……?」
ぼくは首を振った。
「我慢し過ぎだよ……。これ、すごく辛かったでしょ?」
「……」
見る見るうちに智は項垂れ、潤んだ瞳から涙を流した。
「……ぅん、もう、切なくて死にそう……」
「ごめんね……。もう、我慢しないでいいよ……」
優しく左右の襞を押し開くと、膣囗に待ったを掛ける処女の証が目に入る。
ぼくは、そっとそこに口付けた。
「ひっ――」
その瞬間、引き攣ったような声を上げ、智は背筋を反らして絶頂した。
それに構わず、ぼくは固く勃起した智のクリトリスを強く吸い上げながら舌で舐め上げ、周囲の土手ごと揉むようにして愛撫する。
「あっあっあっあっ……!!」
膣囗から熱い潮を噴き出して、智は続けざまに激しく絶頂した。
「そ、それ、だめ! ぁぁ、イくイくイくイく……!!」
続いて、膣囗の中心部に狙いを定め、中指を深く膣内に挿入した。
「あぐうっ!!」
普通なら痛みを感じる行為だけど、これだけ仕上がっていれば痛みより快感の方が強い。
ぎりぎりと柔肉が中指を締め付ける。
「智、痛くない?」
「いっ、いたくないけど……ふっ、深い……!」
智はガチガチと歯を鳴らし、全身を酷く緊張させていた。クリトリスが激しく収縮を繰返し、膣囗はビュッと音を立てて濁った汁を吐く。
ぼくの指が細いこともあるけど、智の処女膜は膣囗をなぞるような形だから、出血はない。
膣内部で中指を鍵状に折り曲げ、ぐりっと手首を返す。
「~~~~~~!!」
声にならない悲鳴を上げ、智がまた絶頂した。
そこで――
かくっ、と智の身体から力が抜けた。
口元から垂れた涎が長く糸を引いて床の絨毯に染みを作っている。
「智……?」
見上げると、半目の智は項垂れるようにして失神していた。
ちょっとやり過ぎた。
膣から指を引き抜くと、粘った愛液が肘の辺りまで何本もの筋を作って流れ落ちて行く。
とん、と身体を押すと、無抵抗の智は仰向けになってベッドの上に倒れ込んだ。
痛む脇腹を擦り、ぼくは小さく息を吐く。
智は膣囗を痙攣させて、完全に脱力していた。立て続けにイったお蔭か、痛みを感じるんじゃないかと不安だったクリトリスの膨張も治まり、今は包皮の中に隠れてしまっている。
「智、大丈夫?」
「あ……う……」
微かな反応を見せる智の髪を、優しく指で梳きながら、その耳元で囁く。
「続けるけど、いいよね?」
「……ぅ、ん」
僅かに頷いた智は笑っていた。
絶頂の余韻に震え、未だ荒い吐息を吐き出し、それでも後に訪れる快楽に期待しているのだろう。半ば以上意識を飛ばしながらも、智は、確かに笑っていた。