ぼくがビッチになったワケ 作:ピジョン@アスクラピアの子一巻発売中!
ダブルサイズのベッドに転がると、脇腹に鈍い痛みを感じた。額の傷よりも重症という智の見立ては正しい。
仰向けになり目を閉じて考えたのは取り調べを受けているだろうユキナのこと。
ユキナは頑張ってる。
インターハイの延期に霧島の事件が深く関わっていると仮定するならば――ぼくへの追求がない事がユキナの頑張りの証明になる。
――ずっと、そばにおいてよ……。
この件は任せるしかない。
ユキナとの関係には溜め息しか出ない。でも、彼女がぼくの想像を超えて戻って来た時は――
その時は、ユキナを受け入れなきゃならない。どういう関係になるのかなんて、想像も付かないけれど。
そこまで考えた所で、智が裸のまま、ぼくにのし掛かってきた。
「……」
智は両手を着いて四つん這いの姿勢。ぼくを間近に捉える色の薄い瞳は困り果てたように目尻が下がっていて、力がない。
「……キスする位、ええやろ……?」
返事代わりにぼくが腰に手を回した所で、智が優しく、でも噛み付くようにキスを求めて唇を寄せてくる。
「……んっ、む……ちゅ……」
舌を絡める間にも、智は大量の唾液を流し込んでぼくを侵食する。
喉を鳴らして受け入れると、しっとり濡れた智の瞳と目があった。
「……止まらなくなるに賭けてもいい?」
智は答えず、ぼくの首筋の匂いを嗅ぐように顔を埋め、腰を押し付けるようにしながら脚を絡めてくる。
耳元で囁いた。
「……私の胸、好きか……?」
何処を重点的に見ていたか、智にはバレバレだったみたいだ。
「……もっと見てええよ……もう見んとか、そんなこと言わんとってや……」
智の言葉遣いは独特な訛りがあってキツく聞こえる時がある。それを気にしているみたいだった。
「あ……今の智、可愛いかも……」
そう言うと、智の顔は見る見るうちに赤くなり、目尻の下がった瞳は殆ど泣き出しそうな位の湿りを帯びた。
「かもって……」
滑らかな肌を撫で、腰の括れに沿って形のいいお尻に触れると、智はもう一度ぼくの首筋に顔を埋め、耳たぶを甘噛みする。
「私の身体、好き……?」
意志の強さを感じる濃い目の眉は下がりっぱなしで、吐息まで熱く震えている。
「うん……好きだよ、智……」
「~~~~!」
傷を気遣って、ぼくに体重を掛ける事はしなかった智だけど、この瞬間だけは身体から力が抜け、僅かな重さを感じた。
好きとか可愛いとか、智はそういうリップサービスに弱いみたい。ぼくに絡ませた肢体が熱を持ち、一気に体温が上がったようにすら感じる。
ちなみに、カオルにこういうリップサービスは殆ど通用しない。というか、自己評価の低いカオルは中々信用しない。
「あぁ、もう……こんなん、我慢できるわけないやん……」
そんなことを言って、智は息を荒くして、ぼくの首筋に噛み付いたり、耳たぶを舐めたりと忙しない。
ぼくにとって、黒岩智は特別な女の子。彼女のやりたいようにさせても悪い気はしない。
Tシャツ越しに固く尖った乳首の感触がして気持ちいい。
身体を滑らせるように移動してパンツをずり下げ、智がぼくのペニスを口に含んだ。
「う……」
ぬるりと滑る感触に呻きながら、ぼくは少し感心した。止める間もない自然な成り行きだった。
◇◇
智が垂れ流した女の子の甘ったるい匂いが揺れて漂っている。
オレンジのスタンドライトが照らす薄暗い室内に、智の漏らす荒い吐息とペニスをしゃぶる粘着質な水音だけが響く。
成り行きは自然だった智だけど、行為の内容は拙い。亀頭に歯が当たり鋭い痛みが走るだけでなく、強く吸い上げるから快感より痛みの方が強い。
「……」
ぼくが黙って首を振ると、智は焦ったように顔を上げた。
「ぁ、ぅ……ごめん……私、こういうん初めてで、その……怒らんとってや……」
ぼくのペニスは元気なく萎れたまま。怪我の不調を差し引いても、これは無理。勃たない。
「…………」
反応を返さないぼくの様子を見て、智はしくしくと泣き出した。
盛り上がった雰囲気が白けただけでなく、自身への落胆や失意みたいなものを強く感じる。
「智……」
「……!」
ぼくが呼び掛けると、智は怯えたように肩を震わせた。
これには、ちょっと驚いた。
智は強いし、頭もいい。度胸もある。家事もこなすしスタイルも抜群。女の子としても欠点が見当たらない彼女の弱点は――
ぼくが好き。
ぼくの存在自体が黒岩智の大きな弱点。
負けん気の強いカオルやトウコなら罵倒の言葉も励ましになるのかもしれないけど、智にそれをやったらフォローがない。きっとトラウマになる。
まいった……。
ぼくは智の手を掴んで引き寄せ口付けた。腰を抱き寄せ、強く舌を吸い上げる。
「…………!」
智は一瞬目を見開き、少し驚いたみたいだったけど、黙って受け入れた。
離れると、オレンジの光の中、銀の雫が糸を引いて落ちる。
「……智、慌てないでいいんだ。ゆっくり行こう?」
「…………うん」
頬を赤く染めた智は、少しポーッとして、それから小さく頷いた。
「……もう一度してくれる? 」
耳元で囁くように言って、頬を伝う涙を舐め取ると、智は恥ずかしそうに俯き、こくりと頷いた。
「……ゆっくり……そう、歯が当たらないように……」
小さく身体を畳み、智が踞ってぼくのペニスを口に含む。
「あんまり強くしないで。ぼく、そういうの駄目なんだ……」
言って、ぼくの頬も熱くなった。
なんで、ぼくがぼくに効果的なフェラチオのやり方をレクチャーしなきゃならないんだろう。
……でも、智を傷付ける訳には行かないし、泣いてる彼女をそのままにしておけない。
他の娘と勝手が違う。
踞り、ぼくに奉仕する智は健気でひたすら可愛らしく見える。
ぬちゅり、とペニスを頬張り、奥まで飲み込んで吐き出す。鼻息がお腹に当たって少し擽ったい。
他の人は知らないけど、ぼく自身は激しいのよりスローな方が感じる。つるつるした舌や、滑る唾液の感触が敏感に伝わって気持ちいい。
「う……」
ぼくは呻き、むくりと欲望が鎌首をもたげる。ペニスが固くなり、その変化に気付いた智が上目遣いに見上げてくる。
「……っ、智……すごく、いいよ……」
ゆっくりと頭を上下させ、智は濡れた瞳でぼくの様子を伺っている。口腔内にたっぷりと唾液を溜め、ねっとりとねぶるようにペニスに舌を絡める。
快感に腰の奥が熱くなってくると、ぼくはなんだか頭が、ぼうっとしてきた。
少し熱が出てきたのかもしれない。エアコンが効いているはずなのに、何故か部屋の温度が上がったような気がした。
眦を下げ、智は恍惚とした表情。時折、音を立てて垂れ落ちそうになる唾液を啜り、唇と舌での奉仕を続行する。
はっきり言って体調は良くない。頭の奥がズキズキして、ぼんやりする。ペニスは勃起しているけど芯が入ってない感じ。
「んふ……っ、ちゅ……」
室内に発情した女の子の匂いと、いやらしく粘ついた水音が漂う。
顔を紅潮させた智の表情は蕩けていて、初めての口淫に夢中。完全にコツを掴んだようで、僅かに微笑んでいるようにすら見える。
止まらなくなる方に百万円賭けたっていい。
智がロケットおっぱいで、ぼくのペニスを挟み、亀頭を擽るように舐め回してくる。唾液で濡れたセピア色の乳首は固く勃起していて、とても淫ら。
「あは……顔、真っ赤やん……」
エロ剥き出しの今の智に言われたくない。
すごくしんどい。
完全に勃起していないのに、腰の奥にむず痒いような射精衝動を感じてちょっと戸惑った。
「あ、ぅ……出そう……」
智は蕩けるような笑みを浮かべ、鼻息を荒くした。
奥深くまでペニスを飲み込み、茎に舌を絡ませ、ゆっくりと長めのストロークを開始する。
ぼくは、あんまり強くない。
喧嘩とか運動とか、そういうことじゃなくて、アッチ方面のこと。Hはとても便利な魔法だけど、必要ないならあまりしたくない。
身体の不調からか、ぴりぴりと迫る射精衝動は痛みに似た感覚。酷く息苦しく、運動してないのに動悸がする。
「……つっ」
快感が滲み出し、ぼくは射精した。
目の前がチカチカする。
勃起したペニスは力なく、やっぱり芯が入ってない感じ。いつもより精液も少なくて、それがぼくの不調を強く訴えている。
「んふふっ……」
目元まで赤くして、すっかり肉欲に蕩けた表情の智は、嬉しそうに、ぼくの体液を飲み込んだ。
「……昼より少ない……」
少し不服そうに言って身体を起こし立ち上がると、内腿に透明な愛液の筋が幾つも垂れ下がっていた。
薄明かりの中、眦を下げ、唇を舐め回す智は酷く淫蕩な笑みを浮かべている。
まだ止まらない方に、もう百万円賭ける。
にっこり笑って、智が言った。
「シャワー浴びてくる」
「…………」
返事を待たず、踵を返した智を見て、ぼくは感心した。
凄い。あそこまで行ってまた止まれるなんて。これがカオルやトウコなら、ぼくは100%逆レイプされてるところだ。
嫌な負債が増えた。
◇◇
帰ってきた智の身体は、キンキンに冷たかった。
智は我慢の女の子。
ぼくの中で、大きく智の株が上がった。
「もう寝た?」
声の調子はいつもの智。飄々としていて、ちょっと惚けた感じ。ダブルサイズのベッドでシーツにくるまって背を向けるぼくの隣に入り込むと、大きな胸を押し付けるようにして抱き着き、足を絡ませてくる。
背中越しの感触でも、智が何も着てないのはすぐ分かった。
「あぁ……」
智が深い溜め息を吐き出して、ぼくの髪に鼻を押し付けて匂いを嗅いでいる。
「充分。充分やん……これでええ、もう何もいらん……」
智の身体から力が抜ける。腰に手を回し、足を絡ませ、全身でぼくに張り付くと落ち着いてしまったのか、すぐさま眠りに落ちる気配がした。
熱で少し火照った身体に、智の冷たい身体が心地いい。眠気の侵略は圧倒的で、尚且つ魅力的。我慢強い智だけど、これは堪えきれず膝を屈した事は痛い位に分かった。
僅かに鼻を衝いたのは水の匂い。
カーテンを透過して射し込む朝陽は薄暗く、外の窓ガラスを雨が打つ音が聞こえる。
智の体温に包まれ、その雨音が心地いい。
眠りに落ちる刹那、考えたのは智のこと。馴染み過ぎる智のこと。他の女の子とは、何もかも違う。
連想したのは魔女の大釜。
じっくり、ことことと、煮とかされそうなぼく。
意識に、眠りの帳が降りる。