ぼくがビッチになったワケ 作:ピジョン@アスクラピアの子一巻発売中!
徐々に強くなる風が、雨戸を揺らしている。
すっかり力が抜けてしまったミサキの膣からペニスを引き抜くと、吃驚するほどの血が溢れてシーツを汚した。
慌ててティッシュの箱を引き寄せたぼくはミサキに動かないように命じ、少し唾で湿らせたティッシュで血塗れの膣を拭いて行く。
「大丈夫……?」
処女としたのはこれが初めてじゃないけど、こんな不始末は初めてだ。今も滲む血を拭き取りながら、ぼくは悔しい気持ちで一杯だった。
両膝の下に手を回し、足を開いた姿勢のミサキは赤面して、何度も首を振る。
「だ、大丈夫です。その……ちゃんとイけましたし……」
そんな事は聞いてない。ぼくは少しイラッとした。
「あ、大丈夫っす。自分で出来るんで……」
「……」
ミサキには処女を失った喪失感や痛みによるぼくへの抵抗はないようだ。
でも……智やミサトとした時だってこんなヘマはやらなかった。シュウとだってスマートにやった。造りの小さいカナメだって、こんなに出血はしなかった。
血の匂いに胃がムカムカして吐きそうだ。血塗れになったぼくのペニスも拭かなきゃいけない。
「あ、ユキさん。お掃除フェラしますか?」
ミサキの高揚はまだ続いているようで、あまり痛みは感じていないようだ。ヘラヘラ笑う彼女を見て、ぼくは泣きたくなった。
「動かないで!」
鋭いぼくの制止の声にも、ミサキは考えなく笑って答えた。
「ユキさん、まだ
ミサキの血塗れになった膣に再び挿入する場面を想像して、ぼくは恐怖に悲鳴を上げそうになった。
馬鹿なミサキの頭を張ってやりたい気持ちだったけど、今は労らなきゃいけない。見下ろすと、ぼくのペニスは罪悪感で縮み上がっている。
「……ごめん。まだ本調子じゃないから……」
なんとかそう言ったぼくに、ミサキは少し不満そうに唇を尖らせた。
「……でも、シオリとはしたんですよね?」
不公平だから、自分にも最後までしてくれというのがミサキの言い分らしい。ぼくは呆れ、がっくりとへこたれる思いだった。
「……シオリとはしてない」
「え、マジっすか? ははん、あいつビビったんですね?」
ぼくとヤった事で、ミサキの緊張と口調は随分解れて来た。Hの魔法は不思議だけど、これは何だか良くない働きのような気がする。
調子に乗ったミサキが、呟いた。
「フフン。チョロいっすよ、こんなこと」
「……」
軽い目眩がして、ぼくは小さく溜め息を吐く。遠慮して先を譲ったシオリが可哀想だ。徹底的に懲らしめてやりたいけど、ミサキの膣は結構な重傷だ。
そして、当のミサキは破瓜の痕跡で痛々しい自らの股間を指で拡げて覗き込んでいる。
「……」
未だかつてなく萎えたぼくは、ベッドの上のミサキに暫く動かないよう言い含め、その場を後にするべく浴衣を羽織り、居間に繋がる襖を開け放った。
「…………!」
襖に耳を当て、中の様子を窺っていたと思わしきシオリと、ばっちり目が合った。
「あはは……」
愛想笑いを浮かべて見せるシオリを冷たく見つめ、言った。
「何をしてるのさ……」
こんな事だろうと思った。
シオリは優しいし、よく気が付く。世話焼きだけど決して押し付けがましくなく、物静か。そんな彼女がぼくに抱く心情は複雑。
ぼくが好きだから、ミサキの言うがまま一緒にお風呂に入ったけど、ミサキの事を思うと自分が先を越すことは憚られる。でもでも、ぼくが気になって仕方がない。
「……シーツ汚れたから、替えておいて」
「は、はい。すみません……」
本当、ミサキとシオリは肝心なとこがよく似てる。
やることが中途半端。突き抜ける事が出来ない二人じゃ、カナメは勿論、カオルにも敵わないだろう。
少し恥ずかしそうに、シオリが伏し目がちに言った。
「あ、あの、何処に……」
「シャワー浴びて来る」
ミサキの色々な体液で身体中べとべとだ。こんなんじゃ落ち着かない。
「お風呂なら、今は葉桐が入ってます。後であたしが……」
「シオリは、もう入ったでしょ。カナメに洗ってもらうからいい」
今朝は
「……」
唇を尖らせ、恨みがましい視線を向けるシオリを残し、ぼくはその場を後にした。
◇◇
シオリはいい娘だし、ミサキは馬鹿なとこが放っておけない。でも、こんなことにならなければ二人共相手にしなかっただろう。無視するのは難しいぐらい、二人には世話になった。
「カナメ、入るよ」
「……!」
返事を待たず、無遠慮に浴室の扉を開け放つと慌てて湯船に顔を沈めるカナメと目が合った。
「な、なんだ。ユキくんか……」
ほっとしたように息を吐き、カナメは浴槽の縁に足を投げ掛け、濡れた髪をかき上げた。
ぼくは蛇口を捻り、冷たい水のシャワーで全身を洗い流した。
「……赤瀬とヤった?」
真水に身体を打たせるぼくに、にやけ面のカナメがそんな言葉を投げ掛けて来たけど、それは無視した。
「あっ、あっ、ユキさん♡ ユキさぁん♡」
からかうようにミサキの真似をして、けらけら笑うカナメは立ち上がり、浴槽の縁に腰を下ろした。
蛇口を捻りシャワーを止めてしまうと、浴室内には静けさが漂う。
「水なんか浴びて……気持ち悪いんだろ?」
「……」
カナメには妙な鋭さがあって、時折ぼくの本心を看破する。巡り合わせ。相性のようなもの。
「……30点ぐらい。赤瀬は良くなかったんだ」
「……」
この時もズバリ。ミサキの初体験を採点したら、その程度の得点しかやれない。
「ワタシが口でしてあげようか? 口だけに口直し」
「つまらない」
「あら、ご機嫌斜め」
そんな事を言いながら、カナメは手招きしてぼくを浴槽に引っ張り込んだ。
瘡蓋が張ったぼくの額の傷を確認して、カナメは真剣な表情になった。
「……痒みが出ても、絶対に掻いちゃ駄目だよ」
ぼくは黙って頷き、カナメの膝に腰を下ろした。
「赤瀬と神木が考えてること、ちゃんと分かってる?」
「……」
そこでぼくは考え込んだ。
ミサキとシオリの狙い。願望。ぼくに期待している事。改めて考えると、よく分からない。
「知りたい?」
面白そうにぼくを覗き込むカナメは悪魔の笑顔。口元を釣り上げ、でも眼は笑ってない。
「……あの二人、ユキくんのペットになりたいんだ」
「……」
「ユキくんが、皆川さんを奴隷にしたって言った時の二人の顔ったら……」
カナメには妙な鋭さがある。
悪の資質。根本的な所で腐っているカナメを、カオルは自分のグループに含めない。
「ユキくん。今の自分がどう見えてるか、まるで分かってない」
――傷が入って、益々力が上がった。黒岩英雄の言葉。
「今回は手酷くやられたねえ。痩せちまってまあ……今にも消えちまいそうに儚くて……」
耳元で、カナメが悩ましい吐息を吹き掛けて来る。
「……キレイなだけならさ、皆、見向きもしないんだ。でも
「…………」
「――それがワタシらの胸を掻き毟るんだ。何でもしてあげたくなる」
――魔性。
ミサトはそう言って、黒岩英雄も同じ事を言った。
「皆、狂うよ。赤瀬と神木なんて、まだマシな方さ。カオルさんと瞳子はどうなるだろうねえ……」
「……」
うっとりと言うカナメに額の傷を舐められ、ぼくは全身に鳥肌が立った。
――気持ち悪い!
「あは、ごめん。でも、ワタシはワタシなりに本気なんだ。それだけは忘れないで」
カナメは喉の奥で嗤った。
「……もう少しだけ休んで、そうしたら帰してあげる。ユキくんが、皆破滅させたら、迎えに行くよ」
「ぼくを何だと思っているのさ」
一瞬、きょとんとして、カナメはクスリと笑った。
「とんでもない
「……」
「ワタシに、ぴったりさ」
どうやらぼくは、どうしようもない悪魔に魅入られたようだ。