ぼくがビッチになったワケ 作:ピジョン@アスクラピアの子一巻発売中!
ランタンの鈍い灯りの中で、長いキスを交わしている。
馬乗りになったユキナが、ぼくにのし掛かるようにして唇を押し付けて来ると、ボロボロのソファが軋んだ音を立てた。
「……新見、酷かったね……」
耳元で囁くユキナの声は、なんだか少し震えていた。
「……あれは人間のする事じゃない。無茶苦茶だった……」
元の顔の形が分からなくなるほど殴られ、膣も肛門も犯し尽くされ、ゴミ捨て場のように空瓶を突っ込まれていた。
思い出して表情を歪めるぼくにユキナがすがり付いて来る。
「…………あれも、あたしの運命なんだ……」
「……また」
霧島の時も同じ事を言っていた。ユキナには知り合いの不幸を自分に重ねる癖でもあるのだろうか。
「……留置場で、チクったのあたしだって書いた紙が回されてて……」
「……!?」
ぼくの首筋に顔を埋めるユキナの肩は、弱々しく震えていた。
「あたしも、いつかあんな風にされちゃうのかなぁ……」
「なるもんか。そんな事は、ぼくが許さない……」
また考えなきゃいけない事が増える。ぼくは強くユキナを抱き締める事でその意思を示した。
「……うん。ユッキーを信じる……」
相変わらず、ユキナとは危うい関係が続いている。
楽観視はしない。ユキナは狙われている。狙われると考えなきゃいけない。
霧島のようになるか。ニイミのようになるか。そうなってからでは遅い。ユキナの想像は悲観的想像じゃなく、あり得る可能性の一つだと認識を改め、ぼくは強く頷いて見せた。
「ユキナは、ぼくが絶対に守りきって見せる」
何度も何度も頷くユキナの身体の震えが止まるまで、ぼくはユキナの背中を擦り続けた。
◇◇
電池が弱まり、今はもう、ぼんやりとしか灯らない明かりの中で、全ての衣服を脱ぎ捨てたユキナが、ぼくのぺニスを舐め回している。
そういう気分じゃない。でも、ぼくの温もりを求めているユキナの事を思えば、これを断るという選択肢はない。
背中にぽつぽつと汗を浮かべるユキナが漏らす吐息が温い風に流れて行く。
喉奥まで陰茎を飲み込んで吐き出し、カリ首を伝う舌が陰嚢を舐め上げる。相変わらず上手い。上目遣いにぼくを見上げる表情は欲情しながらも、何処かしら不安の陰に揺れていて――
「んふっ、ふっ……」
闇の中、じゅっじゅっと陰茎を吸い上げる音と嵐の叫びを遠くに聞いていた。
ぼくが勃起すると、すかさず馬乗りになってユキナは挿入した。
双子が気になる。
でも、どちらが心配かと聞かれれば、ぼくはユキナだと答える。
「んっ……」
短く喘いだユキナの中は、強い粘りで潤っていた。
「ねえ、ユッキー……」
みるみる内に頬を紅潮させ、身体まで桜色に染めて、ユキナがしなだれ掛かってくる。
囁くように言った。
「ユッキーって、お尻でしたことある……?」
「いや、ない……」
緩やかに腰を前後させながら囁くユキナの声が、徐々に湿り気を帯びて行く。情欲の炎に照らされて、何もかも遠くなる。
「あたしもない……」
白い肌が鈍い灯りの中、妖しく蠢いている。散らばった甘い匂いが鼻に衝くと同時に膣が蠕動して、緩やかにぼくを締め付けた。
「……今度、しようよ……」
掠れる声で言って、小刻みに。時に長いストロークで。ユキナは腰を使い続ける。
「最近、練習してるの……」
熱に浮かされた人のように、ユキナはここ数日の出来事を語った。
留置場に入った辺りから、ユキナはアナルの拡張に努めているらしい。最近では指二本ぐらいなら簡単に入るようになったとのこと。
ぼくもユキナの熱に当てられたのか、噴き出した汗が頬を伝わって流れ落ちる。
「……おしりでするのって、大変なんだよ……?」
ユキナ曰く、元々、そういう行為をする場所じゃないから入念な準備が必要らしい。
時間を掛けて拡張して、何度も浣腸して中を綺麗にして、それからローションを使ってぺニスを挿入する。
そんなことを嬉しそうに語るユキナの口元に、涎が一筋伝い落ちた。
「気持ちー……」
ぼくは手抜きしていて、よく喋るなあなんて思いながら、上に乗っかったユキナの腰に手を置いているだけだ。
「……ユッキー専用になりたい……」
「はいはい……」
腰を使いながら、ユキナが本当によく喋るものだから、ぼくは少し呆れていた。
舌を絡め、お互いに唾液を交換しながら長く深いキスを交わす。時折ユキナは腰を震わせて、小さくイっているみたいだ。
不意に――
ズボンの後ろポケットに入れたままにしてあったユキナのスマホが震えた。
「――ひんっ!」
バイブ設定にしてあったから音が鳴る事はなかったけど、微弱な振動が伝わったのか、鼻に掛かった声を上げたユキナの腰が大きく跳ねた。
スクリーンに浮かんだ発信者は――
――委員長――
やれやれとぼくが溜め息を吐く間も、ユキナは腰を振り続ける。
「ぴりってきた、ぴりってきたああああ……!」
ユキナのクラスの委員長の事は知らないし興味もないけど、その委員長の着信がユキナのスイッチを押してしまったようだ。
「あっあっあっあっ……!」
髪を振り乱し、急激にピッチを上げて腰を振り出したユキナが、ぼくの手からスマホを取り上げた。そのまま親指の慣れた動きでスクリーンをスワイプして――
「な、なに委員長。今パコり中で余裕ないんだけど……!」
出るのか。でもユキナらしい。ぼくは思わず笑ってしまいそうになった。
「あぁ……たまんない。もうイきそう! すごいの来ちゃう!!」
髪を振り乱して叫ぶユキナはもうラストスパートだ。腰を擦り付けるようにグラインドさせ、震える膣から粘った愛液を吐き出す。
「あぁっ、委員長! 委員長!! あたしイっていい!?」
きっと委員長も迷惑だろう。
子宮が降りてきて、亀頭に固くしこった感触がある。粘りの強い愛液。でも濡れすぎで、ぺニスに感じる快感は鈍い。
……濡れすぎると、却って良くない。
「ふぐぅぅぅぅぅう♡」
一際高い声を上げ、ユキナが激しく絶頂した。その瞬間、結合部からどろりと暖かい粘液が噴き出して陰嚢に伝う。
「あぐっ、く――」
ギリギリと引き締まる膣がきつくぺニスを握り込む。息を詰まらせたユキナが、おとがいを逸らし、背後に倒れ込みそうになったので、抱き締めるようにして逃げる腰を捕まえた。
狙った訳じゃないけど、思い切りぺニスを突き込む形になり――
「~~~~~~!!」
スマホを床に落とし、ユキナはぼくの首にしがみついた。
「ちょ、待っ、これ……」
膣が愛液を噴き出して痙攣している。深イキってやつ。畳み掛けるチャンスだけど、今はユキナを潰したくない。ぼくは動かないでいた。
「う、ぅぅ……」
ユキナの震える身体と滑る肉の感触だけが身近に感じられる。
「……ちっくしょう……委員長でイっちゃったよ……」
悔しそうに呟いたユキナの膣が、名残惜しそうに、きゅうっとぼくを締め上げた。
床に落ちたままのスマホはまだ通話中になっていて、薄暗い闇の中、スクリーンが明るく輝いていた。
◇◇
ユキナが、ぼくのぺニスを舐め続けている。
時間を確認すると、カナメたちと別れてもう四十分以上が経過していた。
「……ユキナ、もういいよ……」
「…………ふぇっ?」
真っ赤になった顔を上げたユキナは口の回りを涎まみれにして、とろりと目尻を下げていた。
「まだ、できるよ? っていうか、もっとしたい……」
そう言って、ユキナが再び陰茎を喉深く飲み込み、頭を上下させる。
「……んん、困ったな……」
ユキナのフェラが良くない訳じゃないけど、この日のぼくはある意味不調で射精には少し程遠い。
こんなところで全裸になったユキナの身体には、あちこち埃や細かいゴミが汗で引っ付いている。
不意に――
「あ、あの……っ、ふ、二人が待ってますから……」
背後から、シオリの情けない声が聞こえた。
未だフェラにご執心のユキナの髪をかき混ぜながら、ソファの背凭れに手を掛けて振り返ると、こちらも顔を赤くして、目元を潤ませるシオリと目が合った。
「……いつからいた?」
「えぅ、その……その……」
ユキナの熱に当てられ、内股で腰をくねらせる様子から察するに、シオリは結構前から近い場所にいたみたいだ。
「この覗き屋め」
ミサキの時もそうだけど、シオリには悪い癖があるようだ。
のろのろと顔を上げ、涎まみれになった口元を拭ったユキナがシオリを睨み付け、短く言った。
「ころすぞ」
ぼくは思わず笑ってしまった。
でもまあ……切り上げるにはいい機会だ。もう一度、ユキナの髪を撫でズボンを引き上げながら立ち上がった。
「……」
ぼんやりとしたユキナは、ぼくとシオリとを見比べ、酷く気分悪そうに眉間に皺を寄せている。
「……てめー、まじぶっころすからよ。ほんと、二年はごみばっかで、あたしとユッキーの邪魔ばっかして、すっげーウザい」
まだ発情中のユキナさんは、大層ご立腹のもよう。目が潤んでなかったら迫力あったけど、顔真っ赤で呂律も怪しい調子で言っても怖くない。
「分かった分かった。それじゃあ……」
甘酸っぱい女の子の匂いがすごい。ぼんやりとしたランタンに照らされたユキナの肢体は、汗やその他の体液、ゴミなんかでぐちゃぐちゃだった。
「ユキナの着替え手伝ってあげて。これじゃ連れて行けない」
「「えっ?」」
シオリとユキナは異口同音に声を上げた。
シオリは死刑宣告を受けたみたいに顔を真っ青にして、ユキナはそこで漸く酷い有り様になった自分に気付いたみたいで、慌てて立ち上がった。
「あたしも行くって――って、わたっ!」
ユキナは立ち上がろうとしてよろめき、埃まみれの床に思い切り尻餅をついた。
「……何をやってんのさ」
「~~~~! なんだこりゃ!?」
ユキナを潰すつもりはなかったけど、腰が抜けているのは一目瞭然。ぼくは呆れて肩を竦めた。
「先に行ってるから、後で来な」
「……!」
それでも膝を支え、無理に立ち上がろうとするユキナは、自分の具合がよく分かってない様子だった。
「お尻、真っ黒になっちゃったね」
「~~~~!」
猛烈に苛立ったユキナが、自分のお尻を引っ叩くみたいにして埃を払ったので、ぼくはまた笑ってしまった。
「クッソ、なんなんだ!?」
「ああ、皆川さん、無理に立たないで下さい……!」
あたふたとシオリが駆け寄って、ふらつくユキナの腰を支えた。その瞬間――
「あたしに触るな! てめーは最初からキモいんだよ!!」
怒ったユキナが、シオリのお尻を思い切り膝で蹴飛ばした。
……何をやってんだか。
ぼくは短く溜め息を吐き、コントを続ける二人を置いて、その場から立ち去った。
こうして、ぼくは新しい過ちを犯す。
床に転がったユキナのスマホが、未だに通話中になったままなのが、ほんの少しだけ気掛かりだった。