※この作品はR-18です。

ぼくがビッチになったワケ   作:ピジョン@アスクラピアの子一巻発売中!

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第19話

「……うん、今晩は自分の家でちゃんと寝て。……何言ってんの、カオル、夏休みになってから、一日も家に帰ってないじゃん……大丈夫? そんな訳ないでしょ。……なら、ぼくがカオルの家に泊まる」

 

『ダメだッ! あんなバカ共のるつぼにユキを放り込める訳ないだろッ!!』

 

「でも、そろそろ一晩くらいは帰らないと……」

 

 ホンの少し、困ったように言うのがポイント。

 

『うがっ……! ぐぅぅぅ……』

 

 携帯電話の向こう。

 カオルは暫く唸り続けていたけれど。

 

『……わかった……ユキの言ってることも分かるし……今日は帰る……』

 

 がっくりとしなだれて、カオルは、まるでお葬式みたいに声のトーンを下げた。

 しょうがないな……。

 

「明日、コンビニまで迎えに行くし」

 

『…………』

 

 一泊の間があって――

 

『……しゃあッ! ヤバい、アタシら超ラブラブ……』

 

 状況終了。

 

◇◇

◇◇

 

 テーブルの上に携帯電話を投げ出して、ぼくは溜め息混じりに肩を撫で下ろす。

 

 今日は一日、泊まりありで葛城とフルコース。

 この前の資料室では失態だったことを思い出し、ぼくはもう一度溜め息を吐く。

 

(葛城の膣に出しちゃったもんな……)

 

 念のために薬を持ってなかったら大変なことになるところだった。

 そこまで考えたとき、携帯に着信があった。

 掛けて来たのは――

 

 ――深山楓――

 

 あれから5日ほど連絡がなかったから、終わったと思っていたけど、もう立ち直ったんだろうか。

 

 ぼくは一度携帯の電源を切り、深山を着信拒否に設定した。

 

「小銭稼ぎするほど暇じゃないんだ。残念だったね」

 

 今は葛城に集中したい。もう一日、後か先なら電話に出たかもしれない。

 これも運命。

 メールも、きっちりブロックする。未練がましいのは嫌いだ。これでもう深山のことを考えないで済むと思うと、清々しい気持ちすらする。

 

 ――バイバイ、小銭女。

 

◇◇

 

 寝ている父さんに、ご飯はいらないと書き置きをしたため、お昼前に家を出た。

 ぼくは少し考え、葛城に電話を掛けることにした。

 普通ならメールの一つも入れてから電話するところだけど、クソ度胸の葛城には必要ないだろう。

 登録だけしてあった番号に電話する。

 

『はい、葛城』

 

 ホントにすぐ出た!

 

「あ、葛城? 御影だけど……」

『…………』

「今、家出たんで、それだけ。30分くらいで着くから、じゃあね」

『ウソっ! みか――』

 

 携帯の電源を切った。

 これで葛城にも電話番号を知られてしまった訳だけど、特に問題ない。彼女の重要性を考えれば、むしろ遅すぎるくらいだ。

 

 葛城の家は、街の中央部にある大きな駅を挟んで向こうにある。

 取り合えず繁華街の方へ自転車を走らせる。商店街を抜け、大通りに出て、後はひたすら北に向かった。

 既に住所は分かっているので、携帯のナビを頼りに進む。

 

「あった……」

 

 閑静な住宅地の奥にある白い一軒家。『葛城』の標札が掛かっている。

 家格はミドルアッパーといったところ。これからは、ちょくちょく来ることになるだろう。

 そんなことを考えながら門戸を抜け、玄関のインターホンを鳴らした。

 ドアの奥から駆ける音がして、扉が開いたとき。

 

 ――あの下級生の子は、すごく悪い子です――

 

 何故か、深山の言葉を思い出した。

 

「御影さんっ、いらっしゃいませっ!」

 

 満面の笑みで飛び出して来た葛城が、ぼくの顔を見るなり抱き付いてくる。

 

「電話、ありがとうございましたっ!」

「いいよ」

 

 実は比較的簡単に教えていることは黙っておく。

 葛城はスパッツにタンクトップというラフな格好だ。猫のようにぱっちりとした瞳は黒曜石。ご機嫌で言った。

 

「ヨシコさんには、ご飯作ったあと上がってもらったんで、二人きりですよ!」

「ヨシコさん?」

「ヨシコさんはヨシコさんです!」

 

 よく分からない返事をする葛城に促され、家の奥に進む。

 

 システムキッチンと繋がった広いリビングに、二人分の食事が用意されてあった。

 

 葛城は……生意気だけど、ぼくに良くしてくれる。それは初対面の時から変わらない。

 

「葛城、ありがとう」

 

「……はい」

 

 後ろに手を組んだ姿勢で、葛城は照れ臭そうに笑った。

 言った。

 

「葛城は、ぼくのことが好きなの?」

「す、ストレートですね……」

「ごめんね。実はぼく、そういうの、よく分からないんだ」

「……はい」

 

 頷いた葛城は、何故か嬉しそうだった。

 

「御影さんは、綺麗なんですよ」

「ぼくが? とても汚れていると思うけど……」

 

 葛城は首を振った。

 

「……部室に来た頃の御影さん、全然、笑いませんでした。でも新城センパイは浮かれていて……」

「……」

「御影さんが好きで売ってるんじゃないって、みんな知ってます」

「……そう見えるんだ」

「はい。どうしようもない事情があるんじゃないかって……」

 

 ぼくは首を振った。

 

「自分を切り売りしてる馬鹿なだけだよ」

「……だから、あなたは綺麗なんですよ」

「ごめん、よく分かんない」

「キスしますよ」

 

 唐突に、葛城が唇を重ねて来る。

 このとき交わしたキスは、何故か、嫌な気分がしなかった。

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