ぼくがビッチになったワケ 作:ピジョン@アスクラピアの子一巻発売中!
疲れた……。
射精後の気だるさの中、ぼくとトウコは抱き合っていた。
呂律の回らない口調で、トウコが言った。
「悠希ひゃん……ありがとぅござぃました……」
「どういたしまして……」
深く繋がったまま、暫く黙っていた。
カオル程ではないとは言え、ぼくよりトウコの方が背が高い。ちょうど顔の前にある胸に耳を付けると、心臓が張り裂けんばかりに鳴っている。
その鼓動が落ち着くまで、ぼくはトウコの背中をさすり続けた。
◇◇
◇◇
トウコの身体は、体温が少し高いのか、抱いていると温かい。微睡みがちでいると――
「悠希さん」
はっきりと意思の籠った声。
快感の余韻から抜け出したトウコが、厳しい面持ちでぼくの顔を覗き込んでいる。
「真面目な話なんですけど、いいですか?」
「……」
返事をするのも億劫で、ぼくは黙って頷いた。
「自分も新城センパイと一緒で、悠希さんはもう、客取らない方がいいと思います」
「そう……」
それはぼくの勝手だ。そこに議論の余地はない。
「新城センパイは……しょうがないです。悠希さん連れて来たの、あの人ですから」
トウコとは、まだ繋がったままだ。エアコンの冷気に冷えた結合部分が冷たかった。
「あの眼鏡女……あれはなんですか? 新しい客ですか?」
「眼鏡女……ああ、小銭女のこと……?」
ぼくは緩やかに腰を使い、トウコの奥をかき混ぜた。
「んんっ……っ、だ、大事な話なんですって……」
トウコは鼻に掛かった声を上げながらも、ぼくの肩を押さえて動きを制止する。
「……小銭女って、なんですか……?」
深山の話はしたくなかったけど、もう終わった話だ。
ぼくは、深山との間にあったことをかいつまんで話した。
なんとなく暇潰しの相手をすることになり、その際、小銭を貰っていたこと。
うんざりしたので、深山の頭にジュースをぶっかけて、小銭を突き返して帰ったこと。
トウコは笑うと思っていた。――思っていたんだ。
「なんですか、それ。あの女、悠希さんのこと馬鹿にしてるんですか?」
「……落ち着いて、トウコ」
ぼくがゆっくりと腰を引くと、萎えたペニスと一緒に、トウコの膣から、ごぽっと精液と愛液の混ざった白濁が流れ出た。
トウコはブルッと身震いして、慌てて膣口に手を当てた。
「後始末、するね」
実のところ、ぼくは、この後始末という行為が割と気に入っている。
愛液や精液の入り雑じったあの匂いは好きになれないけど、これで一つ仕事が終わったって気持ちになる。
そんなことを考えながら、箱ティッシュを引き寄せると、トウコが慌ててぼくを制止した。
「だっ、大丈夫です! 自分でできますから!!」
「いいよ、気を遣わないで」
カオルは、いつもぼくに後始末をさせる。曰く、避妊と後始末は男の責任というやつらしい。
起き上がろうとするトウコの身体を押して、もう一度ソファに座らせる。
「あぁ、もう……」
赤く頬を染めたトウコは、恥ずかしそうに両手で顔を覆った。
◇◇
しっかり後始末を終え、服を着た後で、トウコを甘やかすことにした。
恋人みたいに。
ソファの上で、またトウコに膝枕をしてあげる。
その後は一緒にテレビを見たり、適当なお話をしたり。
これが恋人同士のすることなのかよくわからないけど、トウコは納得しているのか、文句は言わなかった。
トウコはぼくの膝で寛ぎながら、頻りに深山のことを口にした。
「あの女、秋月の後ろで影が薄かったですけど、何か引っ掛かりますね」
よく知らないけど、シュウを引かせるくらいだから、武勇伝の一つや二つ持ってそうだ。
「深山のことは、もういいよ。ぼくらの話をしよう?」
ちょっとウザくなって来たので言ったところ、効果は覿面だった。
「あっ……すみません!」
トウコは深く頷いて、それ以上、深山のことを言及するのをやめた。
夕陽が射し始めた頃、ぼくはトウコと連れ立って近くのスーパーに向かった。
道中、自分から『恋人繋ぎ』をやってみると、トウコは口元を緩め、むふぅっと鼻息を吐き出した。
二人で晩御飯の買い出しをする。
トウコは何故か興奮して、あれやこれと必要ない雑貨を買い漁ろうとしたので、それはやめさせた。
晩御飯のメニューは、トウコのリクエストで、鳥の唐揚げにする。
お嬢のトウコは、スーパーに行ったことはあるものの、お菓子やちょっとした雑貨以外のものは買ったことがないらしく、野菜を品定めするぼくの様子に興味津々だった。
結局、買ったのはカットサラダとホウレン草。後はお菓子を少し。肉や卵などは冷蔵庫に入っていたので問題ない。
無事に買い出しを終え、葛城邸に帰った後も、トウコは興奮してはしゃいでいた。
「次は何をするんですか!?」
「……晩御飯の準備だけど」
「ごはん!!」
その後の流れは、まるでおままごとだった。
ぼくらは二人でカットサラダを皿に盛り付け、ホウレン草をボイルしてお浸しを作った。
トウコの手際は、カオルより随分悪かったけど、懸命な様子は素直に好感が持てた。
唐揚げの味付けは塩コショウと醤油のシンプルなものにした。というより、家ではいつもこれだ。
結局、一人でやるよりも倍近い時間が掛かったけど、トウコは楽しそうだったので良しとした。
カット野菜の盛り合わせに、ホウレン草のお浸し。鳥の唐揚げに、とき玉子の中華スープ。
出来上がったメニューを食卓で囲み、トウコは感動していた。
「すごい……できました……」
「すごくない。食べるよ」
ぼくが手を合わせると、トウコも慌てて手を合わせた。
食事が始まると、トウコはやけに静かになった。
暫くすると、トウコの目尻に大粒の涙が溢れ、頬を伝って、テーブルの上に落ちた。
「……お、おいしいです……」
「そう」
ぼくは、ヨシコさんをクビにするよう進言するかどうか悩み……結局は止めておいた。