※この作品はR-18です。

ぼくがビッチになったワケ   作:ピジョン@アスクラピアの子一巻発売中!

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第38話

 楽しかったドライブが終わり、家に帰って来た。

 父さんは、もう仕事に行っている。外泊のことも、帰りが遅くなることも説明しているので全然問題ない。

 ぼくくらいの歳の男が、女の子との間に武勇伝の一つ二つなくてどうする。というのが父さんの持論なので、むしろ頑張れとすら言われた。

 カオルは近所の公園に車を停めて。

 

「……今日も泊まって、いいよな……?」

 

 ぼくはカオルに侵食されている。

 

「いいよ……今日も泊まって行って……」

 

 カオルのは、あくまでも『お願い』だ。でも、断れない。その事実にぼくは困惑している。

 すっかり陽の落ちた公園の駐車場で、ぼくとカオルはキスをした。

 舌を絡め、唾液を交換して、カオルが荒い息を吐きながら、ぼくの身体をまさぐって来る。

 

 お昼は遠くのゲレンデでバーベキューを食べた。

 美味しかった。

 帰りは高速道路のサービスエリアで買い物もした。

 

 今は、真っ暗な車中で、カオルにアレを舐められている。

 

「カオル……家に帰ってからにして……」

 

 カオルは答えず、ぼくの股間に顔を埋めて、ぴちゃぴちゃと音を立てて口淫に夢中になっている。

 茶色の髪を撫でる。

 カオルは袋の部分に舌を這わせながら、唾液にねとつくペニスを扱き、うっとりした表情で笑っていた。

 

 携帯が鳴った。

 ぼくのは電源を落としてあるから、必然的にカオルのものということになる。

 カオルは着信をガン無視で、フェラに没頭している。

 

「カオル、鳴ってるよ?」

 

「んん……ちゅ……っ」

 

 向かいの通りを、車が走り抜けて行く。

 ヘッドライトの光が照らすカオルの顔は頬が紅潮していて、琥珀の瞳は目尻が下がっていた。

 やれやれ、と身を起こし、ダッシュボードの上に置いてあるカオルのスマホを手に取った。発信者は――

 

 ――葛城瞳子――

 

 その着信音は、ぼくを責めているように聞こえた。

 

「…………葛城からだ」

 

 カオルは後れ毛をかき上げながら、

 

「ごめん……ちょっと出て……」

 

 ついでみたいに言って、またぼくの股間に顔を埋める。

 トウコからの着信は、益々怒り狂って聞こえる。出る。

 

「はい、カオルの携帯だけど……」

 

『……!!』

 

 沈黙。

 

『……なんで、悠希さんが出るんですか……?』

 

 無視。

 トウコにも聞こえるように、フェラに夢中のカオルに言った。

 

「葛城が代わりたいって」

 

「出らんなぃよぉ……」

 

 ペニスを頬張ったままのカオルの声は情欲に蕩け切っている。これは確かに出れそうにない。

 

「カオルは出られないから、ぼくで良ければ聞くけど……」

 

『……』

 

 また沈黙。

 携帯の向こうから、とてつもない怒りの波動を感じた。

 トウコが、言った。

 

『……見つけた。新城センパイにそう伝えて下さい。それで全部分かりますから』

 

 見つけた? 何を?

 余計なことは尋ねず、情報を咀嚼しながらカオルの頭を撫でる。

 

「カオル? 葛城が見つけたってさ」

 

「……!」

 

 カオルは真っ赤になった顔を上げ、涎まみれの口元を拭うと、ぼくからスマホを受け取った。

 

「トウコ? アタシだ」

 

 凄い変化。

 さっきまで色ボケてたはずなのに、もう素面に戻ってる。

 

「うん……うん……そうか。ソイツはアタシが――」

 

 そこまで言ってカオルは止まり、ハッとしてぼくを見つめ、素早く抱き寄せて額にキスしてから車の外に出て行った。

 ぼくに聞かれたくない内容。

 車はエンジンが掛かったままになっていて、エアコンも動いているため、カオルの声は聞こえない。

 

 こちらに背を向け、カオルは腰に手を当てた姿勢で話を続けている。

 

 暫くして、通話を切った。

 

 振り返ったカオルの表情は、唇の端が残忍につり上がっていて――

 

 ぼくは、ゾッとした。

 

 カオルは車の外で煙草を一本吸った。

 ここでワンクッション置くのは、今の心理状況を多少なりとも落ち着けるためだろう。

 ぼくを近付けたくない、ささくれ立った状況。

 

 最近は、すっかり丸くなったカオルだけど、少し前までは荒れていて、運動部の連中とよくやり合っていた。

 暴力的で、喧嘩っ早く、ところ構わず唾を吐く。何時だって苛々としていたカオルを思い出した。

 怖い新城馨を思い出した。

 

◇◇

 

 家に帰ってからのカオルは、冗談ばかり言っていた。

 

「……実はアタシってさ、24時間以上エッチしないと処女に戻っちゃう病気なんだ。だからこれから……」

 

 少し呆れて、ぼくは言った。

 

「何を企んでいるのかしらないけど、その理屈じゃあ、今のカオルは処女じゃないから安心だね」

 

「ああ!」

 

 カオルは驚いて、指折りして何やら計算している。ああ! じゃないよ。本当に馬鹿なんだから。

 

 それから、ゆっくりして。

 ぼくたちは一緒にご飯を食べて、お風呂に入る。

 カオルは働いているし、外泊で疲れが溜まったのか、少し眠たそうだった。

 

「大丈夫、カオル? しんどそうだよ?」

 

 カオルは、にっこり笑ってご機嫌。

 

「……へへ、これから一晩中でも出来るっての」

「だからさ、すぐそっちの方向に行くのやめようよ……」

 

 バスタブの中で、カオルは長い足を組み、その間にぼくを座らせた。

 こうすると一緒に入れるから、カオルのお気に入りのポーズ。

 カオルは言った。

 

「……ユキ、ちょっと聞いていい?」

 

「なに、改まって」

 

「クロイワ トモって、知ってるか?」

 

 黒岩智。ぼくにとっては懐かしい名前。

 

「ああ、うん。同じ中学校だったけど……」

「ソイツのこと、全部教えて」

「……うん、いいよ」

 

 トモのことは別に隠すようなことじゃない。だから、ぼくは全部、喋った。

 同じ中学校。父子家庭。告白されて断ったこと。それから口を利いてないこと。そして、今はもう何も思っていないこと。

 ぼくにとって、黒岩智は昔のクラスメイトだった人。それだけ。

 

 全てを話し終えたとき、カオルは意外そうな表情だった。

 

「……ありがと、ユキ」

「何が?」

「……いや、アタシはてっきり、嘘吐かれるって……」

「おかしなこと言うね」

 

 都合が悪いことならともかく、無意味な嘘は言いたくない。

 嘘は真実に混ぜて使う。

 それが効果的な嘘の使い方。

 しかし何故、今、トモの名前が……

 

「ああ、なるほど……葛城にそれを探らせていたのか」

 

「……」

 

 カオルは湯船のお湯を掬って、ぼくの肩に掛ける。身体を冷やさないように、そういう気遣い。

 少し考えて、それから言った。

 

「カオル……ぼくを試したの?」

 

 これに、カオルは反応した。ビクッと震えた。

 

「ちがっ、違う! あぅ……ちょっと、うぅ……そうかも……ごめん……」

 

 なるほど、大体分かった。

 つまらない嫉妬だけじゃない。

 

 カオルは、トモについて重大な何かを隠している。

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