※この作品はR-18です。

ぼくがビッチになったワケ   作:ピジョン@アスクラピアの子一巻発売中!

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葛城 瞳子2

 窓越しに朝焼けのオレンジの陽光を受け、ベッドで寝転んだままの瞳子は、僅かに目を細める。

 

 瞳子は一晩中、眠ることもせず、どうやってこの現状を打破するか、そのことばかりを考えている。

 

 自分と馨の差があるように思えない。

 いやむしろ、『女の子』としては自分の方が上だという自負がある。

 馨のように大き過ぎず、身長はそこそこ。顔立ちも愛らしい。気立ても……まぁ悪くない。少なくとも、馨のように暴力的ではない。

 仕事中毒の父は不足する愛情を金銭で埋めるため、お金は使い切れないほどある。

 それなのに、瞳子と馨では、扱いは天と地ほども差が開いている。

 

 ……本当は、お金の問題じゃない。

 

 本物は何時だってそう。お金では手に入らない。でも、自分に足らないピースが分からない。

 

 中性的な印象は、男嫌いの瞳子には、どストライク。

 小さく、繊細で儚げ。既に傷付いていて、全力で守ってやりたくなる。

 内面は、天使と悪魔。

 悪魔のときは快楽で翻弄し、冷たい言葉で突き放す。

 手加減しないと言われたが、正にそれを実践されている。瞳子には全く遠慮というものがない。

 本当は身体を売って喜ぶタイプじゃない。お金で買い求めたことを軽蔑している。

 

 瞳子の知り合いには、援交なんていう馬鹿なことをやっているヤツが何人かいるが、そういうのとは全然違う。

 大事なものは、何一つ売り渡してない。売り渡さない。

 

 ――そのための、悪魔の仮面――

 

 天使のときは――

 長い時間、膝枕をしても文句を言わない。素朴な味のするおいしいごはんを作る。

 真面目で家庭的。

 布巾の絞りかたが縦で、お母さんを連想させる。三角巾を被り、エプロンをしている姿はハマりすぎていて押し倒したくなった。

 無駄遣いすると怒る。エコな天使。

 

 ……瞳子と居ると辛そうにしている。浮かべた笑顔はハリボテで、中身はがらんどう。

 自分より大切なものがあって、そのために自分を切り売りしている。

 だから綺麗なままでいられる。美しく映る。

 

 心の貧しい瞳子には、絶対に手が届かない、羽根の折れた天使。

 

 深山楓は大嫌い。

 一目見た瞬間、悠希とお似合いだと思った。思ってしまった。

 三つ編み眼鏡の容貌は、瞳子にはダサく映る。

 でも、地味な三つ編みは清潔感がある。眼鏡の奥の垂れた瞳からは包容力が滲み出していて、日向の暖かさがある。

 瞳子のように求めるだけじゃなく、当たり前に与えることも知っている。

 ――敵わない。

 深山楓が本気になれば、瞳子だけじゃなく、馨も、あの秋月蛍も敵わない。

 脳みそまで筋肉で出来ている馬鹿二人は理解せず、同種で歪み合っている。

 ――勝手に潰し合え。

 悠希はいつか去る。そのときになって、二人は愕然とするだろう。ぴったりと隙間なく繋がった悠希と楓の姿に呆然とするだろう。

 そこから先は出来レース。

 どんな困難にも、悠希と楓の二人は負けない。馨と蛍が足掻けば足掻くほど、二人の繋がりは強くなる。恋に狂えば狂うほど、悠希は離れる。そして楓は強くなる。手が付けられないほど強くなる。

 

 ――直感。

 閃きにも似た、確信を伴う予感。

 

 瞳子は成長しなければならない。

 新城馨も秋月蛍も、瞳子の手には負えないほどの怪物だ。

 悪魔になれ。

 鬼になれ。

 それが出来なければ、取り柄のない瞳子は真っ先に捨てられる。

 

 でも、悠希にはよく見られたい……。

 

 その辺りは馨を見習うべきだ。本当に上手くやっている。羽根の折れた天使は偏屈で気難しいことをよく理解している。

 

 瞳子は固く目を閉じ、勝利のイメージを思い浮かべる。

 

 悪い想像は悪い結果にしか繋がらない。良い結果をイメージし、自らの行動をそこに結び付ける。

 

 ……馨も蛍も楓も全員、沈めてやる。集っている虫けらも見付け次第、処分する。

 そして瞳子は優しい膝枕と美味しいご飯を手に入れる。

 心が満たされ、お腹いっぱいになったあと、三角巾にエプロン姿の悠希を押し倒す。

 

 瞳子は、にひっと笑った。

 

 必ず、現実のものにして見せる。

 

 差し当たっての急務は――

 

 黒岩智。

 コイツだけは確実に処分しなければならない。

 今は馨と歩調を合わせる。それ以外にも手を打って、二度と立ち上がれないように打ちのめす。

 悠希のため。

 それが一番大事。

 それを忘れたとき、瞳子はこの恋を唄う資格を永遠に失う。

 

 葛城瞳子は本気で恋愛をやっている。

 

◇◇

◇◇

 

 8月1日。

 瞳子は制服を着て、学校に向かった。

 半キャップのヘルメットを斜めに被り、原付に股がってアクセルを捻りながら、最近はオナニーしてないなぁ、なんていうことを考える。

 

 悠希の指は細長く、つるりと瞳子の中に入って来る。あれを知ってしまえば、一人でするのは馬鹿馬鹿しい。

 胸を揉むにしろ、あそこを愛撫するにしろ、力加減が絶妙で痛みは全くない。自分でするより、ずっといい。

 終わった後も暫く抱いていてくれるので虚しい気分にならずに済む。

 翌日、子宮の辺りが痛んだり、オリモノが多くなることもない。

 入浴中、膣に残っていた精液が溢れたときも惨めな気持ちにならない。むしろ、目に映る情事の残滓に胸が熱くなる。

 決めた。

 

 今日は呼び出そう。

 

 にひひっ、と瞳子は笑みを浮かべた。

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