ぼくがビッチになったワケ 作:ピジョン@アスクラピアの子一巻発売中!
ぼくの足にすがり付くユキナが、うっとりとして呟いた。
「あたし、なんだってするから……」
ぼくは恍惚とするユキナの髪を撫でながら、小さく頷いた。
ユキナが囁く。
「とりあえず、これからどうしたらいい……?」
「そうだね……」
それに関しては、幾つかの危険に対する方策、指針を定めなければならない。
まず、一番大事な指針を定める。
「ユキナは、ぼくを守って。ぼくはユキナを守るから」
「……!」
ぼくの言葉に、ユキナはビクンと震え、目を見開いた。
「それから、二人の間に嘘や誤魔化しはナシ。お互い、最初は難しいだろうけど努力して」
「……」
瞬きすらせず、ユキナは、じっとぼくを見つめたままで頷いた。
「先ずはそこからだね」
もう少し、皆川優樹菜という人間を知りたい。そして、ぼくという『人間』を理解させなければならない。その為に――
「ユキナ、一緒にお風呂に入ろうか」
「……」
ここでユキナは、漸く瞬きをした。
なんでそうなるのか、まるで分かってないみたいだけど、そんなに難しい話じゃなくて。
「ユキナ、行くよ」
先ずは、裸の付き合い。
お互いを理解する上で、そんなに珍しい話でもないように思う。
◇◇
脱衣場でシャツのボタンを外し、脱ぎ捨てる。
ぼくという人間を教えるのには、これが一番手っ取り早い。
「なっ……!!」
ユキナは驚いたのか絶句して、一度、目を擦ってから、ぼくの傷だらけの身体を見つめた。
見られるのは、はっきり言って嫌だったけど、嘘や誤魔化しはナシと決めたのはぼくだ。その約定を自ら違えるのはよくない。
「これ、って……」
ユキナは緊張からか喉を鳴らし、眉根を寄せた険しい表情でぼくを見つめ続ける。
「小さい頃、お母さんに虐待されてたんだ」
「……」
ユキナは、やたら真剣な表情で頷いた。
その表情はパッパラパー子らしくない。口を噤み、ぼくの話の続きを待っている。
お互いの為に必要なことと割り切って話を続けた。
それからぼくは、幾つかの事情をかいつまんで話した。
虐待に遭い、半死半生の状況でいるところを父さんに助けられたこと。今は進学の為に、お金が必要なこと。
取り乱さずに冷静で居られるのは、深山やシュウとの経緯が原因だろう。話すのは、今日はこれが二回目。
「……」
ユキナは雨に打たれた子犬みたいに項垂れて、それでも上目使いの視線の中にぼくを捉えている。
「……それじゃ、御影は、お父さんのために……?」
それは、意外な人物からの意外な質問だった。
「……あ、いや。それはどうだろうね……」
ぼくは少し考え込むことになった。
「……?」
「父さんは、ぼくのやり方は好まないだろうし、知られたら傷付けることになると思う。これは、ぼくの独善なのかも……」
ユキナに問題提起されるとは思わなかった。改めて考えると心が波打つ。
それでも――
「ぼくはやるんだ」
「……!」
ユキナの表情が、くしゃりと苦しそうに歪んだ。
「……そんなんで、幸せになれるワケないじゃん……!」
「……? 幸せ? ごめん、それはよくわからない」
ぼくが首を傾げて見せると、見る見るうちにユキナの瞳に涙が浮かんだ。
「……ばかっ」
ユキナの震える手が伸びて来て、優しくぼくを引き寄せる。
女の子たちは、不思議。
「あんた、馬鹿だよ……」
ぼくを抱き締め、耳元で掠れた声で囁くユキナの声を聞いている。
「そんなんじゃ、誰も幸せになんかなりゃしない……」
ユキナの頬に、大粒の涙が伝う。
「守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る……」
女の子たちは不思議な力を持っていて、本気になったとき豹変する。
カオルは優しくて、シュウは怖くて、トウコは健気で、深山は激しくて。
皆川優樹菜が変わる。
ぼくの為に、流れた涙の価値は……
負債がまた増える。
◇◇
◇◇
安いラブホテルの一室。
こじんまりとした浴室で、ユキナに身体を洗われている。
「ごめんね……無理させちゃったね……」
労るように呟いたユキナの手つきは、シュウよりもやわらか。
でも、元が馬鹿だから――
「腋毛、生えないんだ……」
とか、
「ちんちんはフツーだね」
とか、余計なことを言って来る。
そんなユキナのおっぱいは、形のいいお椀型。ちっぱい。サイズはBとみた。
ちょっぴり濃い目の陰毛は、キチンと整えられていて逆三角形。粘りのある透明な液体が腿の辺りまで垂れ下がっている。
「次、ちんちん洗うね? ごめんね? ごめんね?」
「……」
ぼくはもう、シュウに二回も搾り取られてる。ユキナの思惑通り、こうして一緒に入浴しているからといっても、その後も思い通りという訳にはならない。
絶賛、賢者タイム中。
ボディソープで泡立ったユキナの手が、ぼくのぺニスを優しく執拗に撫で回し、カリ首を擽るように洗い流す。
「あ……」
がっかりしたように、ユキナは溜め息を吐き出した。
「……ユキナ、そんなにしたいの?」
「うん。御影だから、すごくシたい」
ユキナの中で、ぼくはどういう位置付けなんだろう。性欲の対象にはなっているようだけど、ご主人さまではない。
「……頑張れば、一回くらいは出来るかも……」
ユキナは繋がりを欲している。一蓮托生の関係になった以上、当然のことで、ぼくはそれに応える義務がある。
そんな思いから出た言葉に、
「頑張ればって……」
ユキナは絶句して、怒ったような険しい表情になった。
「今日は、あたしが始めてじゃないんだ」
日付は替わり、今日はまだ誰ともしていないんだけど、ユキナが気にしているのはそういう屁理屈じゃないくらいは、ぼくにも分かる。揚げ足をとるのは止めておく。
「新城……?」
心底嫌そうに、ユキナは鼻面に皺を寄せた。
ぼくは首を振った。
「いや、カオルじゃないよ」
「は……? じゃ、誰と……」
「シュウだけど……」
嘘は吐かない約束。
ユキナは半分口を開いて、少しぼんやりした表情になった。
「……シュウって、誰?」
「ああ、そっか……」
彼女……秋月蛍を『シュウ』なんて愛称で呼ぶのはぼくだけだったことを思い出した。
「秋月(あきつき) 蛍(けい)」
「……ああ、剣道部の……そういやアイツって、御影にハマってたね。そっか……意外、でもないか……」
ぼんやりした表情で独り言のように呟くユキナを見て、ぼくは何だかとんでもないヘマをやらかした気分になった。
ユキナが言った。
「売ったの? クンニした? ナマ? まさかとは思うけど膣で出した?」
その声は尖っていて、ぼくは胸の辺りがハタハタした。
嘘は吐かない。
秘密が多い方が損する約束だ。ぼくは少し泣きたくなった。
ユキナは顔を背け、押し留めるように手のひらを突き出した。
「やっぱ答えないで。御影はしっかりしてるし、そういうのは抜かりないよね」
よかった。
よくわかったね、と言わずに済む。嘘を吐かないで済んだ。
そして、もう一度こちらに振り向いたユキナは、真剣な表情。
「あたしの方が、ダンゼンいいよ」
張り合うように言った。
「シよう」