ぼくがビッチになったワケ 作:ピジョン@アスクラピアの子一巻発売中!
午後の授業はすっぽかし。
『奥の部屋』を出たとき、時刻は2時半になろうとしていた。
やっつけ仕事に一時間くらい費やしたことになる。
部屋を出る時に見た葛城は、全裸で大股を開き、ぱっくり開いた膣口が丸見えで、口から涎を垂れ流していた。
ぶっちゃけ、少し笑えた。
携帯を確認して、カオルのメールには2Kとだけ返信しておく。
来た道を逆に辿り、玄関口に向かう途中で――
怒りに震えるシュウに遭遇した。
「…………」
シュウは俯き、手を強く握り締め、ひたすらぼくを睨み付けて来た。
どうせ屑だの淫売だの、酷いことを言われるのは分かりきっている。うんざりした。
「なんで、私だけ……!」
「あれだけ酷いことを言われれば、普通は嫌になるよね」
「それは御影が悪いだろ!」
もうシュウは、本当にうるさいしつこい。
「だからって、こんなところで待ち伏せしなくてもいいよ」
「……少し、話がしたいんだ……」
「お話しは20Kからになります」
シュウの口元が引きつった。
「なんでまた値上がりするの!!」
「キライだから」
ぼくがはっきりそう言うと、シュウはビクッと肩を震わせた。でも、一瞬後には肩を怒らせ、圧し殺した声で言った。
「あの下級生と、したの……」
「……」
お客さんの秘密は守らないとね。
「ぼくが何しようと勝手だろ?」
「……」
くしゃっとシュウの端正な顔が悲痛に歪む。
「私、は――」
「サヨナラ」
そこで立ち去ることにした。
シュウは手を上げ、宙を掻くような仕草を見せたものの、その手がぼくに触れることはなかった。
◇◇◇◇
無駄な時間を食った。
帰宅してすぐ、ぼくはシャワーを浴びた。それから、歯を磨く。
洗っても洗っても、身体の汚れは取れない気がした。
「悠くん、帰ったのか?」
薄いドア一枚を隔て、父さんの声が聞こえた。
シャワーを止める。
それから脱衣室で身体を拭いていると、父さんが下着を持って来てくれた。
「ありがと」
「あ、うん。それより悠くん、どうした? 学校が終わるの、少し早くないか? もしかして、身体の具合が悪いのか?」
父さんは矢継ぎ早に質問を重ね、それから軽くテンパり始めた。
「ん、サボった」
「そうかぁ……」
父さんは、ホッとしたように胸を撫で下ろした。それから、腕捲りして。
「よおし、父さん、ご飯作るぞ!!」
まだ4時にもなっていないけれど、施設で夜勤の仕事をしている父さんは、5時過ぎには出勤してしまう。
「いっぱい食べて、悠くん、おっきくならないとな!」
「もうすぐ18なんだから、身体の成長なんて止まってるよ」
父さんが固まった。
「なる……! 悠くんは、絶対におっきくなる!!」
ぽろぽろと流れる涙を拭うこともせず――
「おっきくなるんだ……」
父さんは、早めの晩御飯を作り始める――。
◇◇◇◇
父さんと二人で狭い食卓を囲む。
母親はいない。この世でぼくと父さんだけが家族だ。
ウチはすごく貧乏だけれど、ぼくは結構幸せを感じている。
「悠くん、このお肉も食べて」
「もういいよ。お腹パンパンだから……!」
「また悠くんはそんなこと言って!」
それから、父さんは暫くゆっくりして、出勤する。このまま朝の9時くらいまで帰って来ない。
父さんは、ぼくを引き取る為に、全財産を投げ出した。それでも足りない分は、勤めていた会社の退職金で賄った。
その父さんも、今年で57歳になる。
ぼくは少し泣いて、それから宿題を片付ける。
「悠くん、絶対に大学行こうな!」
それが父さんの口癖。
携帯電話に、カオルからの着信があったのは、午後9時を過ぎてからだ。
『あ、ユキ? 超逢いたい。今からダメ?』
カオルの能天気な要求に、ぼくは吹き出しそうになった。
「……いいよ。逢おうか」
『やったね! ラッキーラッキーラッキー☆カオル!!』
そこで。
何かの違和感。何かがおかしい。何かが……
『じゃあさ、今××のとこの公園にいるんだけど、大丈夫?』
「…………」
『ユキ? …………おーい!』
「あ、ごめん。ちょっと考えごとしちゃった。××の公園なら近くだから5分もあったら行けるよ」
『おっしゃあ! 待ってる待ってる超待ってるから急いで!!』
なんだろ……これは……何かが、ちょっとずつ、これは……。
ぼくは正体不明の違和感を抱えたまま、近所の公園に向かった。
途中、自動販売機でジュースを2本買った。ここでは、なんと『よいこ』の缶バージョンが購入できる。
街灯の灯りが眩しい公園で、カオルは煙草を吸いながらブランコを漕いでいた。
「ユキ!」
ぼくを見付けるなり、カオルはブランコから飛び降りて駆け寄って来る。
カオルの顔を見ると、ぼくはなんだか安心してしまった。抱えた違和感も、夜の帳に覆い隠されて消える。
猛ダッシュのカオルに抱きすくめられる。
「うわ」
カオルは頻りにぼくに頬擦りして、髪の毛の匂いをくんくんと嗅いだ。
「な、なに?」
「補充だよ、補充。ユキ成分の。あー……癒される」
「煙草臭いし」
ベンチに二人並んで腰を下ろし、ジュースを飲む。
「あ、サンキュ!」
「カオルのお金だけどね」
それからカオルは、ぼくの耳を噛んだり、舐めたり。なんだか痴漢される女の子の気分がよく分かった気がした。
カオルがご機嫌で言った。
「今日のユキは大人しくて可愛いな~」
「って、普段のぼくはどんななの」
「すぐ、ウザいとか臭いとか、グサッと来るよ」
言ってから、カオルは失敗したと思ったのか、ばつが悪そうに頬を掻いた。
――御影さんにとって、新城センパイは特別っていうことですか?
なんでこんなときに……
上目使いにカオルを見やり、ぼくはぺろりと唇を舐めた。
そこに何か嫌な予感を感じ取ったのか、カオルは目を逸らし、これからのことについて話始めた。
「アタシ、学校行けない間はバイトすっから……」
「大丈夫なの?」
「ああ、叔父さんが店長やってるところで、結構融通きくし、ちゃんとやってけそう」
「そうじゃなくて、学校。退学とか……」
「……」
カオルは驚いたようにぼくを見つめ、それから、ぼんと頬を赤くした。
「心配してくれるんだ……」
――御影さんにとって、新城センパイは特別っていうことですか?
カオルは感動したのか、目に涙すら溜めている。
「大丈夫。ほら、もうすぐ夏休みじゃん。停学はその期間中に解けるし、全然」
――バレなきゃいいんですよ。
ぼくは言った。
「カオル、エッチしよう」
上目使いに、ぺろりと舌舐めずりして見せる。
カオルの喉が鳴った。
「あ、いや……今日はそういうつもりで来たんじゃないっつうか……でもでも! それはユキとしたくない訳じゃなくて……ああ、もう……エッチばっかが目的じゃない……」
……カオルは別に特別なんかじゃない。今日は、そう。あの女――葛城となんかヤったから、少しおかしいだけだ。
「ぼくのを舐めて」
「あ……」
ぼくが要求するのは初めてのことだ。
カオルは、みるみるうちに顔を紅潮させて俯き、視線を逸らした。
「してくれないの? ぼくの――」
淫乱の癖に勿体ぶりやがって。
「ぼくの、カオル」
「……!!」
ばっ、と音がするほどの勢いで顔を上げたカオルの眦は、困ったように下がっている。目元は少し潤んでいて、泣きそうなくらいの切実さを感じる。
「する……したい、させて……!」
夜の公園に人影はない。
ベンチの上で腰を下ろしたまま、下履きをずらし、半勃ちのぺニスを外気に晒す。
カオルは躊躇わずぼくの股間に顔を埋め、ぺニスを口に含んだ。
「んぐっ……ちゅ……」
夜の虫の鳴き声に、淫らな水音が混ざり込み、夜陰に流れて消えて行く。
「あぁ……」
ぼくは深い溜め息を吐き出した。
初めての感触。カオルの口中は生温く、少しヒンヤリしている。
「んぐっ! んぐっ……ちゅっ!」
カオルが陰茎に強く吸い付き、舌で亀頭を舐め回す。熱い鼻息が陰毛を擽るように吐き掛けられる。酷く興奮しているみたいだ。でも――
(舐められるって、こんな感触なのか)
ぼくの頭は、そんなことを考えるくらいには、冷えきっている。
徐々に勃起を支える力が抜ける。カオルが必死になって奉仕するほど、反ってぼくのぺニスは力を失って行く。
やがて完全に萎えきり――
焦って尚も必死な奉仕をするカオルに、ねぎらいの――そして、今日は最後の言葉を掛ける。
「……へたくそ」
カオルは肩を震わせ、ぼくのぺニスをくわえたまま、涙を流していた。
――葛城がなんて言ってたかなんて、もう思い出せそうになかった。