※この作品はR-18です。

ぼくがビッチになったワケ   作:ピジョン@アスクラピアの子一巻発売中!

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第8話

 午後の授業はすっぽかし。

 『奥の部屋』を出たとき、時刻は2時半になろうとしていた。

 やっつけ仕事に一時間くらい費やしたことになる。

 部屋を出る時に見た葛城は、全裸で大股を開き、ぱっくり開いた膣口が丸見えで、口から涎を垂れ流していた。

 

 ぶっちゃけ、少し笑えた。

 

 携帯を確認して、カオルのメールには2Kとだけ返信しておく。

 来た道を逆に辿り、玄関口に向かう途中で――

 

 怒りに震えるシュウに遭遇した。

 

「…………」

 

 シュウは俯き、手を強く握り締め、ひたすらぼくを睨み付けて来た。

 どうせ屑だの淫売だの、酷いことを言われるのは分かりきっている。うんざりした。

 

「なんで、私だけ……!」

「あれだけ酷いことを言われれば、普通は嫌になるよね」

「それは御影が悪いだろ!」

 

 もうシュウは、本当にうるさいしつこい。

 

「だからって、こんなところで待ち伏せしなくてもいいよ」

「……少し、話がしたいんだ……」

「お話しは20Kからになります」

 

 シュウの口元が引きつった。

 

「なんでまた値上がりするの!!」

「キライだから」

 

 ぼくがはっきりそう言うと、シュウはビクッと肩を震わせた。でも、一瞬後には肩を怒らせ、圧し殺した声で言った。

 

「あの下級生と、したの……」

「……」

 

 お客さんの秘密は守らないとね。

 

「ぼくが何しようと勝手だろ?」

「……」

 

 くしゃっとシュウの端正な顔が悲痛に歪む。

 

「私、は――」

「サヨナラ」

 

 そこで立ち去ることにした。

 シュウは手を上げ、宙を掻くような仕草を見せたものの、その手がぼくに触れることはなかった。

 

 

◇◇◇◇

 

 

 無駄な時間を食った。

 帰宅してすぐ、ぼくはシャワーを浴びた。それから、歯を磨く。

 洗っても洗っても、身体の汚れは取れない気がした。

 

「悠くん、帰ったのか?」

 

 薄いドア一枚を隔て、父さんの声が聞こえた。

 シャワーを止める。

 それから脱衣室で身体を拭いていると、父さんが下着を持って来てくれた。

 

「ありがと」

「あ、うん。それより悠くん、どうした? 学校が終わるの、少し早くないか? もしかして、身体の具合が悪いのか?」

 

 父さんは矢継ぎ早に質問を重ね、それから軽くテンパり始めた。

 

「ん、サボった」

 

「そうかぁ……」

 

 父さんは、ホッとしたように胸を撫で下ろした。それから、腕捲りして。

 

「よおし、父さん、ご飯作るぞ!!」

 

 まだ4時にもなっていないけれど、施設で夜勤の仕事をしている父さんは、5時過ぎには出勤してしまう。

 

「いっぱい食べて、悠くん、おっきくならないとな!」

「もうすぐ18なんだから、身体の成長なんて止まってるよ」

 

 父さんが固まった。

 

「なる……! 悠くんは、絶対におっきくなる!!」

 

 ぽろぽろと流れる涙を拭うこともせず――

 

「おっきくなるんだ……」

 

 父さんは、早めの晩御飯を作り始める――。

 

 

◇◇◇◇

 

 

 父さんと二人で狭い食卓を囲む。

 母親はいない。この世でぼくと父さんだけが家族だ。

 ウチはすごく貧乏だけれど、ぼくは結構幸せを感じている。

 

「悠くん、このお肉も食べて」

「もういいよ。お腹パンパンだから……!」

「また悠くんはそんなこと言って!」

 

 それから、父さんは暫くゆっくりして、出勤する。このまま朝の9時くらいまで帰って来ない。

 

 父さんは、ぼくを引き取る為に、全財産を投げ出した。それでも足りない分は、勤めていた会社の退職金で賄った。

 その父さんも、今年で57歳になる。

 ぼくは少し泣いて、それから宿題を片付ける。

 

「悠くん、絶対に大学行こうな!」

 

 それが父さんの口癖。

 

 携帯電話に、カオルからの着信があったのは、午後9時を過ぎてからだ。

 

『あ、ユキ? 超逢いたい。今からダメ?』

 

 カオルの能天気な要求に、ぼくは吹き出しそうになった。

 

「……いいよ。逢おうか」

『やったね! ラッキーラッキーラッキー☆カオル!!』

 

 そこで。

 何かの違和感。何かがおかしい。何かが……

 

『じゃあさ、今××のとこの公園にいるんだけど、大丈夫?』

 

「…………」

 

『ユキ? …………おーい!』

 

「あ、ごめん。ちょっと考えごとしちゃった。××の公園なら近くだから5分もあったら行けるよ」

 

『おっしゃあ! 待ってる待ってる超待ってるから急いで!!』

 

 なんだろ……これは……何かが、ちょっとずつ、これは……。

 

 ぼくは正体不明の違和感を抱えたまま、近所の公園に向かった。

 途中、自動販売機でジュースを2本買った。ここでは、なんと『よいこ』の缶バージョンが購入できる。

 

 街灯の灯りが眩しい公園で、カオルは煙草を吸いながらブランコを漕いでいた。

 

「ユキ!」

 

 ぼくを見付けるなり、カオルはブランコから飛び降りて駆け寄って来る。

 

 カオルの顔を見ると、ぼくはなんだか安心してしまった。抱えた違和感も、夜の帳に覆い隠されて消える。

 

 猛ダッシュのカオルに抱きすくめられる。

 

「うわ」

 

 カオルは頻りにぼくに頬擦りして、髪の毛の匂いをくんくんと嗅いだ。

 

「な、なに?」

「補充だよ、補充。ユキ成分の。あー……癒される」

「煙草臭いし」

 

 ベンチに二人並んで腰を下ろし、ジュースを飲む。

 

「あ、サンキュ!」

「カオルのお金だけどね」

 

 それからカオルは、ぼくの耳を噛んだり、舐めたり。なんだか痴漢される女の子の気分がよく分かった気がした。

 カオルがご機嫌で言った。

 

「今日のユキは大人しくて可愛いな~」

「って、普段のぼくはどんななの」

「すぐ、ウザいとか臭いとか、グサッと来るよ」

 

 言ってから、カオルは失敗したと思ったのか、ばつが悪そうに頬を掻いた。

 

 

 ――御影さんにとって、新城センパイは特別っていうことですか?

 

 

 なんでこんなときに……

 上目使いにカオルを見やり、ぼくはぺろりと唇を舐めた。

 そこに何か嫌な予感を感じ取ったのか、カオルは目を逸らし、これからのことについて話始めた。

 

「アタシ、学校行けない間はバイトすっから……」

「大丈夫なの?」

「ああ、叔父さんが店長やってるところで、結構融通きくし、ちゃんとやってけそう」

「そうじゃなくて、学校。退学とか……」

「……」

 

 カオルは驚いたようにぼくを見つめ、それから、ぼんと頬を赤くした。

 

「心配してくれるんだ……」

 

 

 ――御影さんにとって、新城センパイは特別っていうことですか?

 

 

 カオルは感動したのか、目に涙すら溜めている。

 

「大丈夫。ほら、もうすぐ夏休みじゃん。停学はその期間中に解けるし、全然」

 

 

 ――バレなきゃいいんですよ。

 

 

 ぼくは言った。

 

「カオル、エッチしよう」

 

 上目使いに、ぺろりと舌舐めずりして見せる。

 カオルの喉が鳴った。

 

「あ、いや……今日はそういうつもりで来たんじゃないっつうか……でもでも! それはユキとしたくない訳じゃなくて……ああ、もう……エッチばっかが目的じゃない……」

 

 ……カオルは別に特別なんかじゃない。今日は、そう。あの女――葛城となんかヤったから、少しおかしいだけだ。

 

「ぼくのを舐めて」

 

「あ……」

 

 ぼくが要求するのは初めてのことだ。

 カオルは、みるみるうちに顔を紅潮させて俯き、視線を逸らした。

 

「してくれないの? ぼくの――」

 

 淫乱の癖に勿体ぶりやがって。

 

「ぼくの、カオル」

「……!!」

 

 ばっ、と音がするほどの勢いで顔を上げたカオルの眦は、困ったように下がっている。目元は少し潤んでいて、泣きそうなくらいの切実さを感じる。

 

「する……したい、させて……!」

 

 夜の公園に人影はない。

 ベンチの上で腰を下ろしたまま、下履きをずらし、半勃ちのぺニスを外気に晒す。

 カオルは躊躇わずぼくの股間に顔を埋め、ぺニスを口に含んだ。

 

「んぐっ……ちゅ……」

 

 夜の虫の鳴き声に、淫らな水音が混ざり込み、夜陰に流れて消えて行く。

 

「あぁ……」

 

 ぼくは深い溜め息を吐き出した。

 初めての感触。カオルの口中は生温く、少しヒンヤリしている。

 

「んぐっ! んぐっ……ちゅっ!」

 

 カオルが陰茎に強く吸い付き、舌で亀頭を舐め回す。熱い鼻息が陰毛を擽るように吐き掛けられる。酷く興奮しているみたいだ。でも――

 

(舐められるって、こんな感触なのか)

 

 ぼくの頭は、そんなことを考えるくらいには、冷えきっている。

 徐々に勃起を支える力が抜ける。カオルが必死になって奉仕するほど、反ってぼくのぺニスは力を失って行く。

 

 やがて完全に萎えきり――

 

 焦って尚も必死な奉仕をするカオルに、ねぎらいの――そして、今日は最後の言葉を掛ける。

 

「……へたくそ」

 

 カオルは肩を震わせ、ぼくのぺニスをくわえたまま、涙を流していた。

 

 ――葛城がなんて言ってたかなんて、もう思い出せそうになかった。

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