※この作品はR-18です。

ぼくがビッチになったワケ   作:ピジョン@アスクラピアの子一巻発売中!

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第62話

 その日の昼休み、シュウが言った。

 

「御影、目の前に指で小さい輪っか作ってみて」

「うん?」

 

 言われた通り、目の前に小さい輪っかを作って見せると、笑顔のシュウと目が合った。

 

「それじゃ、その輪っかを片目で覗き込んでみて」

「ほいっとな」

 

 ぼくは右目で輪っかの向こうにいるシュウを見詰めた。

 

「御影の利き目は右だね」

「利き目?」

「そう。つまり、御影は主に右目で物を捉え、左の目でそれを補助している訳だ」

「ふうん、初めて聞いた」

「……今日の体育、ソフトボールだったろ?」

 

 三打席三振。かすりもしなかった。だから、その話はしたくない。

 ぼくがおもむろに目を逸らすと、シュウは面白そうに笑った。

 

「騙されたと思って、今度は左の打席に立ってみて。少しは違うと思うよ」

「……うん」

 

 右の打席では左目でボールを追ってしまうから、逆の打席に立って『利き目』でボールを追えということ。

 

「それでね、御影」

「……まだあるの?」

「左手、見せて」

 

 正面からシュウを見詰め返す。

 

「バット……二回も、すっぽ抜けたよね……?」

 

 シュウは、もう笑ってなかった。

 

 …………………………

 ……………………

 ………………

 …………

 ……

 

◇◇

 

 ……

 …………

 ………………

 ……………………

 …………………………

 

 ぼくの上で、カオルが激しく腰を振っている。

 

「フッ、フッ、ぅぅぅぅううううう……!」

 

 獣のような呻き。

 お風呂から出て、ぼくらはすぐに交わった。

 夜這いプレイのことは言わない。それは不意打ちですることで、予告してすることじゃない。無論、その願望は既に受理しているから、早晩カオルは悶え狂うことになる。もしくは別の誰かが割を食う嵌めになるのかも。

 

 そんなことを考えながら、腰の上で喘ぐカオルに視線をやる。

 

「ぐぅっ! ううううう……!」

 

 激しく腰を振りたくって、それから苦しそうに動きを止めるカオルはもう死に体。

 

「くひっ! ふぅぅぅぅぅぅっ!!」

 

 馬乗りになり、ぼくを抱き締めるカオルは、ぐしゃぐしゃに泣いていて、鼻水やら涎やら垂れ流して必死だ。何度も口付けを交わし、舌を絡めてぼくの唾液を吸い上げる。

 カオルは少し焦っているように思えた。でも、腰を振っている時間は段々短くなっている。イき過ぎて緩くなってるし、濡れ過ぎてペニスに伝わる刺激も鈍い。

 

「んん……フッ、フッ、……ツッ!」

 

 キスに夢中だったカオルの腰が大波を打ち、膣が痙攣した。――駄目なヤツだ。

 

「ストップ」

 

 身体を起こしながら、カオルの腰を抱き寄せ、引き付けるようにして動きを止めた。

 

「ぐうぅっ!!」

 

 瞬間、亀頭がコツリと膣奥に当たって、やっぱり苦しそうに呻いたカオルは、両手で宥めるように下腹を擦っている。

 なんのおまじないだろう。ちょっと、ぼくには分からない。

 

「ふぅぅぅううううう!」

 

 鋭い呼気と共にカオルの腹筋が盛り上がって、膣肉がギリギリとぼくを締め上げた。

 

(うわ……すごい、耐えてる耐えてる!)

 

 一動作。ほんの少しのアクションで、カオルを奈落に突き落とせるという確信がある。一突きくれてやってもいいし、乳首やクリトリスを弾くだけでもいい。それだけで、カオルの我慢の全てを台無しに出来るけど、ヤらない。

 ぼくは首を振って、それから長い溜め息を吐き出した。

 

「カオル、何をそんなに焦ってるの。もう少し、ゆっくり――」

 

「……いやだ」

 

 鼻水と涎でぐしゃぐしゃになったカオルは、目を合わせるなり、ボロッと大粒の涙を流した。

 

「な、なに……?」

「ユキと……」

 

 琥珀の瞳から涙が伝う。吐き出す息は熱く濡れていて。

 

「……一緒にイきたい……」

「あ……そうなんだ……」

 

 さっき、お風呂場で射精したばかりのぼくは絶賛賢者タイム中。でも、一緒に果てたいというカオルの想いは健気で好ましく感じる。

 

(まいったな……)

 

 ぼく自身、早くイく練習をした方がいいのかもしれない。でも、それはそれでとても失礼なことなのかも……

 

 そこまで考えて、ぼくは不思議な気持ちになった。

 一ヶ月くらい前のぼくなら、カオルの気持ちなんて無視して思うまま蹂躙しただろう。けど、今は――

 

(まいった……)

 

◇◇

 

 

 あと一時間は余裕なんて、口が裂けても言えない。

 

 

◇◇

 

「何を焦ってるの?」

 

 優しく問いながら、カオルを引き寄せて額に軽くキスをする。

 

「……ちくしょう……畜生……なんで……」

 

 琥珀の瞳が流した涙を舌で舐め取る。

 頬、首筋、肩。口付けを落とす度にビクンと震えるカオルと繋がったまま見詰め合う。

 

「大丈夫」

 

 ぼくはそう言って、未だ大きく上下する胸に耳を当てた。

 カオルの心臓は早めの鼓動を刻み、膣内は未だ冷めやらぬ快楽に戦慄いている。

 

「ぼくはここにいるよ」

 

 琥珀の瞳を見詰めて言う。

 

「カオル、落ち着くんだ」

 

「……!」

 

 カオルは、一瞬、ぴくりと震え、それから細く長い息を吐き出した。

 言った。

 

「アタシとユキって……どんな関係なんだ……?」

 

 最近のカオルは、暴力的じゃなかっても怖いときがある。今はそのとき。受け答えを誤ると、明確な何かが終わる。

 刹那の熟考、そして。

 

「深い関係」

 

 ぼくは答える。

 

「上手く言えないけど、ぼくは、カオル以上に深く女の人と交わることはないような気がする」

 

「……」

 

 涙に濡れた琥珀の瞳が、ぼくを見詰めていた。

 

 何処までも続く山の稜線を抜けてある大きな石の風車、なだらかな道、金ぴかのお城。

 お金では買えないもの。

 この関係が終わり、十年、二十年後になっても思い出すことが出来る。それはきっと――

 

「……」

 

 ぼくはカオルに謝ろうと思ったけど、それはやめて沈黙を選ぶ。

 

「……つっ」

 

 くしゃりと表情を潰し、カオルは長い足を絡めるようにしてぼくを引き寄せると、膣(なか)がまた苦しそうに震えだす。

 苦しそうに言った。

 

「……ほとんどアタシのもんだ。でも――」

 

「……」

 

「まだ早い。違う……違う……!」

 

 トウコのこともそうだけど、ぼくがシュウやユキナと関係を持ったことは、はっきりとした傷になってカオルの心に残っているみたい。だから、いつも以上に深い繋がりが欲しい。あれこれ掻き回して煙に撒いたつもりでいたけど、カオルが少しも納得出来ていないのが分かった。

 

「……」

 

 カオルと目を合わせたまま、ぼくは内心で息を吐く。

 

 要するに――今夜のカオルには特別なサービスが必要。

 

 

◇◇

◇◇

 

 

 繋がったまま指先で涙を脱ぐってあげて、その後は頭を撫でたり背中を擦ったりして様子を見る。

 カオルは大きな身体を小さく丸め、だんごむしになった。

 時間の流れはいつだって残酷。ふと壁に埋め込まれたデジタルの時計を見ると、時刻は夜更け過ぎになっていた。

 

「カオル、お仕事は……?」

 

「……」

 

 カオルは答えず、ぼくの胸に顔を埋めたままイヤイヤと首を振って今度は甘えんぼさんになった。

 やれやれ、とぼくは内心で呆れながら丸まったカオルの大きなお尻を撫でる。

 カオルは益々小さくなって、触って欲しそうに身体をすり寄せて来た。

 

「……今日……いや、もう昨日になるね。お仕事、休んじゃった?」

「……」

 

 カオルは小さく頷いて、ぼくは少し申し訳ない気持ちになった。

 

「ごめんね。今度、バカをやるときは、カオルの休み前にするね」

 

 そこで、カオルが噴き出した。顔を上げて。

 

「それ、なんかオカシイからな!」

「うん、冗談」

「……」

 

 カオルはキョトンとして、それからムッと険しい表情になった。

 

「バイトは今週いっぱいで終わりにする」

「そうなんだ」

「……高校生活最後の夏休みだしな……」

 

 就職組のカオルが夏休みを満喫するのはこれが最後。おそらく、これが人生で最後の夏休みになるだろう。

 カオルは感傷的になったのか、少し寂しそうに笑った。

 

「……だから、そこから後は、うんと遊ぶ。その、……ユキと……」

 

「……」

 

 ぼくは黙って頷いた。

 

◇◇

 

 ゆっくりとした抽挿を再開する。

 

「う……っっ」

 

 その刺激に少し呻いたカオルの膣は無駄な力が抜けて緩くなっていて。

 膣肉がぼくの形になって、ぺったりと張り付いているのが解る。白く濁った淫液が太い筋になって糸を引いている。

 

「……っく」

 

 子宮まで震えている。カオルはコントロールできないようで、不随意の運動を繰り返す膣肉が、時折、引きつるように痙攣していた。

 ぼくは寝そべって動かないまま、さっきカオルがやってたみたいに優しく下腹部を撫でてみる。

 

「頑張って……」

 

「ん……んん、ッ」

 

 カオルの下腹に『の』の字を書きながら、耳元で囁くように言う。

 

「……今度、お薬なしでしてみる……?」

 

「……え?」

 

 ぼくに馬乗りになって、必死で腰を上下させていたカオルの動きが止まった。

 膣は微弱な震えに痺れていて、びくん、びくん、と心臓のように鼓動を続けるカオルの『そこ』に言ってみる。

 

「ワンチャンス」

 

「……!」

 

 その瞬間、カオルの『そこ』が勢いよく弾けるように震えた。

 カオルは泣き笑いの表情。

 

「……だから、冗談でもそんなこと言っちゃ駄目だっての……ッ……」

 

 ビクッ、と下腹が大波を打った。

 カオルは衝撃に耐えるように、ぼくの上でまただんごむしになった。途端に膣が熱くなり、ジワッと新しい粘液を分泌する。

 

(重症だね……)

 

 こんな勘違い野郎のリップサービスにも反応してしまうほど、カオルはぼくに参ってる。でも――

 

「本気だよ。カオルなら」

 

 もしくは、深山楓。

 ぼくはその言葉を飲み込んだ。

 

「あああ……ウソウソ、ツッ……くぅぅぅう!」

 

 動いてない。それでも、カオルの子宮は弾けるようにして絶頂を繰り返した。

 

 世界で一番、ぼくのことが好きな女の子。

 

 ――おそらく。

 

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