【完結】最愛の真面目な政務官が山賊のお頭と幸せになる話 作:のぶた
※プロローグなのでエロ無し。エロは3話より
※4話くらいを予定……収めたい
──どうしてこのような事になってしまっているのだろうか。
男は、壁1枚挟んだ先で行われているその光景から、目を離せずにいた。
人差し指一本分程度の穴……そこから覗く室内の様子。
そこでは一組の男女が対面座位の恰好となり、一心不乱に交わりあっている。
『んッ♪ いィッ♪ ……深いィッ♪』
室内に響く女の声……その声の主は、男にとって大切な女性……自身をずっと傍で支え続けてくれた最愛の女性……政務官アンナの甘い声。
戦いの中で……仕事の中で……生活の中で……これまで様々な面で自分をサポートし続けてくれたアンナ。そんな彼女が一糸まとわぬ姿となり、陶器のような真白な肌全てを目の前の男に曝し出し、下から突き上げる男の動きに合わせて身体を激しく揺らしている。
『ぐっ、お、おい……そろそろ……』
アンナを抱いているのは、白髭を生やした大男……アンナとはいつも言い合いばかりしていた筈の男……元山賊の頭モーティマ。
胸と二の腕周りこそ筋肉質である事が見て取れるが、腹回りは酒と肉の食べ過ぎで、ぶよりと肉のついた相撲取りのようなシルエット。そんなややだらしない、まさに野蛮と言った風貌の男が、正面からアンナを抱きしめ、激しく下から突き上げている。
銀髪の美女と、肥えた野獣。そんな似つかわしくない二人が、室内では激しく淫らに交じり合っていた。
『いんぅっ♪ びく、ビクビクってぇ……! んんっ……お、おねがいしますッ! きょ、今日はなか……に……いぃんっ♪ 全部、なか……にィっ♪』
目の前のモーティマを見つめ、そう懇願するアンナ。その顔は恍惚とした表情を浮かべており、その行為が決して無理やり行われているものではない事が察せられる。
──なぜこのような事になってしまっているのか。
考えても一向に答えが出る事はない……ただ室内で行われる行為を、壁の狭い穴越しに、息を荒げてただ見つめ続けることしか出来ない。
これは王子たち王子軍が魔王を討伐してから数カ月。世界は救われ、平和を取り戻しつつある世界で起こった、とある悲劇の物語。
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──晴れ晴れとした太陽の光がジリジリと地面を焼き、熱された地面から湧き上がる熱気が陽炎を作り、より一層の暑さを感じさせる。そんな日差しの熱い日の昼下がり。王子たち王子軍が魔王を討伐してから数カ月。かつては魔界に侵食されかけた地上も、今ではすっかり元の光景を取り戻しつつあった。
王子たちと魔王との闘いは激戦を極めた、一人、また一人と倒れていく仲間たち、そして、希望の王子ですら膝をつき戦線は崩壊、それを嘲笑う魔王。
『まずは先に拠点の連中から皆殺しにするとしよう……絶望を味わうがいい』
そう言い残し、倒れた者に止めを刺すことなく魔王は拠点へと向かった。そして、魔王が拠点に辿り着いた時、王子を含め全ての者が絶望したとき……奇跡は起こった。
『……あ、ああ…予の、魂が……崩れ、壊れていく……』
そう言い残し、何故だか判らないが魔王が唐突に消滅したのだ……そうして戦いは終結し、千年戦争の時代から続いていた、魔王との長きに渡る因縁の戦いは終わった。
だが、魔王を討伐したからと言って全ての戦いが終わったわけではない。新たに魔物が生まれる事はなくなったとは言え、物質界には復活した魔物がまだまだ蔓延っており、それらが起こす被害も当分止みそうにはない。
王国の近郊に現れた魔物が人々を襲っているという話を聞き、今日も王子たち王子軍は急ぎ魔物の討伐へと赴いた。魔物は大して強くもなく、討伐は滞りなく完了したのだが……。
「モーティマさん。勝手に飛び出さないで下さいと、何度言ったら分るんですか」
戦いの最中独断行動をとった一人の仲間に、それを叱責する女性の姿。
女性の名はアンナ。顔つきは整っておりルビーのような赤い瞳はパチリと開き、大人の女性というよりはまだ少女の雰囲気を幾何か残す。トレードマークの長い銀髪につけた赤いカチューシャも、少女のような雰囲気を助長しているかもしれない。恰好は黒を基調した上着に下には白字のシャツ。首元にはタイをつけ赤いピシリとしたスカートをはいている。戦場においては違和感のあるややフォーマルな雰囲気を感じる装いだが、彼女の仕事は戦いではなく政務。政務官である彼女は王国における行事やその対応等を行うのが、本来の仕事だ。
「あぁん? あんな雑魚大したことねーだろ。討伐できたんだから、それでいいじゃねぇか」
アンナが叱責しているのは、見るからに粗野で粗暴な、ボサボサな髭を生やした、熊のような大男。かつては山賊の頭をしていた男、モーティマ。
動きやすいよう上半身はほぼ半裸、肩にパッドを軽くつけた程度であり、下半身も鎧などではなく布製でボロボロとなった赤いズボン。動きやすさを徹底的に重視した格好。筋肉質ではあるが、食べる量も多い為腹回りは出ており、相撲取りのような肉の付き方をしている。頭には何かの動物の頭蓋骨をかぶり大きな斧を肩に抱え持つその姿は、まさに山賊といった風貌の男であった。
王子軍と呼ばれる組織に属するにはいささか不相応にも見えるが、彼も立派な王子たちの仲間である。魔物との戦いの最中に出会った様々な仲間たちの中でも、もっとも古くから王子たちに協力してくれている人物でもあり、それ故に王子やアンナ達とは馴染みも深い。普段はあまり怒らないアンナであるが、モーティマにはつい厳しく接してしまうのは、古くからの大切な仲間であり、また旧知故の話しやすさからである。いがみあうのは一度や二度の事ではない。
モーティマを叱責するアンナと、そんなアンナに言い返すモーティマ。いつもの事ではあるが、このままでは埒が明かないと思ったアンナが、背後にいた男へと振り返る。
「……だから……もう、王子からも何か言ってください!」
「……」
不意に話を振られたのは王国の一応の長である男、王子。王子は、困惑した表情を浮かべて……浮かべている?
前髪により目元は暗く隠されており、表情は上手く読み取る事が出来ない。
平和を取り戻しつつある世界にて強い力を誇示するのはあまり望ましくない。そのため強力な武具はタンスの奥へとしまい込み、最近ではもっぱら慣れしたんだ古くからの軽鎧を身に着けている。飾り気もない軽鎧をまとっている事で、ぶっちゃけかなりモブっぽい。
「……(こくり)」
話を振られた王子は言葉を発する事無く、ただ頷いた。
一見会話が成立しているようには見えないが……。
「はい、そうですか……わかりました」
アンナは王子の意図を理解したようで、頷きかえす。そしてモーティマの方を向き直す。
「王子も決して危険な独断行動はしないようにと言っています。くれぐれも今後は気を付けてください。王子命令です。絶対ですからね」
アンナがモーティマにそう告げる……王子が本当にそう言っていたのか。その真意は誰にも判らない。
「……それと、少し怪我をされているようですので治療します。あとで医務室にきてください」
「あん、こんなもん治癒魔法で一発だろうがよ」
「……モーティマさんが勝手に飛び出して出来た傷に、治癒師の皆さんの力を使わせるつもりですか?」
そういってすごむアンナ。大した怪我でもないので「ちっ、わかったよ……」と言い、モーティマはすごすごと引き下がった。
──
────夜。
「お疲れ様でした、王子」
柔らかな労いの声とともに、コトリと机の上におかれた、湯気を立てる茶葉の入ったカップティー。
昼の魔物討伐を終えた後、王子は王国へと戻り、溜まっていた書類仕事や今後の復興についての会議、復興中の施設の査察などを終え、ようやく執務室へと戻りついた頃には既に日が暮れていた。椅子にギシリと腰かけ一息つく。そんなせわしなく働く王子に寄り添い、傍らにたち、アンナはいつでもサポートする。
つい先ほどモーティマの治療にと少しだけ別行動をとった以外には、行動を常に供にしていた彼女も疲れている筈なのだが……そんな素振りはおくびにも出さず、何も言わずそっとハーブティーを用意してくれた。
──ありがとう
そう、王子がそう告げると
「いえ、これは私の当然の務めですから……ふふ♪」
柔らかな微笑みを浮かべる彼女。その笑顔に、王子は思わずドキドキしてしまう……ふと、以前ケイティと交わした会話が思い出される。
『王子……王国の復興は順調です……ですが』
そういうとトレードマークのメガネをくいっと上げ、言葉を続ける
『国には王が必要です。そして、王たるもの民には権威を示さねばなりません。一国の主たるものが独り身などでそれが示せますでしょうか。いずれは即位してもらうのは絶対ですが。その前に、まずは……』
──伴侶となる女性をそろそろいい加減ぼちぼち真面目に考えてください
そんなケイティの言っていたことを思い出しながら、傍らにいる政務官の女性を見つめる。
「あの、王子……?」
見つめられて(る気がして)照れ臭いのか、アンナは困ったような微笑みを返す。
王子を慕う女性は一人や二人ではない。英雄色を好むとも言うが、自身を慕う者達を傷つけまいと、極力王子はその想いに応えようとしてきた。だが逆に、王子からたった一人の女性を……という事はこれまで考えた事がなかった。
かつて王国が魔物に滅ぼされかけた際、命からがらに脱出へと導いてくれた。
その後は政務官とし様々な形で自分をサポートし、尽くしてくれている。
そうして今も隣で、暖かなティーを入れ、微笑みかけてくれる彼女。
もしも選ぶのなら……王子の心は既に決まっている。
「…………王子?」
その真剣そうな眼差しに(まぁ前髪に隠れ眼差しは見えないのだが)何かを感じとるアンナ。今、気持ちを伝えれば……王子はそう思ったが。
──口元に、何かついてる
彼女の口元についていた、糸くずらしきものに気付いて手を伸ばし摘み取る……この気持ちを伝えるのは、もう少し先でも良いだろう。肝心な所で王子はヘタれた。
糸くずだと思い摘んだのは、糸くずよりもやや硬さがあり、何かの毛のようだった。クネクネとカーブしており、少しちぢれた毛……動物の毛か何かだろうか?
「……ッ!?」
そういって指先でクリクリとするその毛らしき物体に、アンナがハっと気付いたような素振りを見せる。そしてかぁーっと頬が赤く染まる
「さ、先ほど王子と別れた際、い、犬がいたものでして……」
頬をピンク色に染めて、恥ずかしそうに応える彼女。仕事を忘れて犬とジャレてきたのが恥ずかしかったのだろう。
──……(ふるふる)
首を振り、気にするなと伝える。
しかしそんな可愛らしい彼女の反応を見てしまった王子は、気持ちを伝えられずとも今夜はと……そう思い彼女に手を伸ばす。思えばアンナとは、もう随分と長く致してないな。やんわりと彼女の手を掴む。当然、彼女は握り返してくれるのだと思ったが……
──スルリ
彼女の手は、握った王子の手から抜け出した。
「あ……す、すみません王子。その、今日はまだ、シャワーを浴びていないので……」
──シャワーを浴びてきても、一向にかまわないが。何なら一緒に……
「え、えっと……ほ、本当にすみません王子。この後友人と予定がありますので……本日はこれで失礼させて頂きますね。……おやすみなさい、王子」
そう言ってこちらの返事も聞かず、アンナは会釈をし、部屋から出ていってしまった。
まぁ、こんな日もあるだろう……予定があるのではしょうがない。
仕方がないのでトランプでもして遊ぶかと、机の中にあったトランプを取り出し、トランプタワーの作成に王子は勤しみ始めた。
続きます。
続きは明日か明後日か明々後日か……できれば早く書きたい。