【完結】最愛の真面目な政務官が山賊のお頭と幸せになる話 作:のぶた
※本編1話(魔王討伐後)より前のお話
※アンナ視点
※エロは……ほぼなし(脳内補完でお願いします)
……一体どうして、このような事になっているのか。
外は暗く、夜も深まり始める時刻。
私、政務官アンナは男子用兵舎のとある一室で、大柄の熊のような男……モーティマさんと……何故か二人きりの状態でいる。
椅子に腰かけた私の目の前に佇む彼は、何も言わずに、私の反応を待っているようだが……。
椅子に腰かけた私の頭の位置は、ちょうどモーティマさんの腰あたり。
そのため、ただ視線を前にするだけで、ソレが嫌でも目に入ってしまう。
ズボン越しにでも判る程、ひどく膨らんだ……男性の……アレ。
ソレは今にもズボンを飛び出さんとしており、時々ビクビクと苦しそうに動いているのが判る。
本当に、一体どうして、このような事になってしまったのか。
……話は、数刻前からに遡る。
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日が沈み夜の帳が下り、星明りが地上を照らし出す。
照らされた地上は暗く、地上の多くが魔界と化しつつある中、女神の加護に守られた王城とその周囲は、今はまだ緑の木々や家屋と言ったそこに住まう人々の営みを残している。それも時間の問題でしかないが……それでも人々は希望を捨てず、明日の戦いに備えてと英気を養おうと過ごす。
(皆さんどのようにお過ごしなのでしょうか……)
魔王の住まう城へと向かう決戦を明日へと控えた日。その最後となるかもしれない時を、個性豊かな軍の皆さんは、思い思いの時間を過ごしていた。私はそんな面々の様子を見て回っている。
模擬戦をして過ごすもの
読書にふけるもの。
酒を飲み騒ぐもの。
模擬戦をして過ごすもの。
明日の作戦をたてるもの。
既に眠って明日の戦いに備えるもの。
模擬戦をして過ごすもの。
模擬戦をして過ごすもの。
過ごし方は様々ではあったが……その誰もが、明日の勝利を疑って等はいない。必ず勝てると信じている……当然自分も信じている。なぜなら私たちには、彼が……王子がいるのだから。
……それでも、全ての不安が消えることはない。戦いの最中、怪我をする事があるかもしれない。愛する者を失うかもしれない。命を落とすもしれない……もしかしたらそれは、自分かもしれない。そのような不安をきっと誰もが抱えているはずなのに、口に出す事はなく、皆勝利の言葉を口にする。
そうした皆を見ると、自分の無力さを歯がゆく感じてしまう。前線で戦う彼や兵士の背中を、ただ見守る事しか出来ない自分が……拠点の奥でただ祈り、彼らの無事を願うだけの自分の非力さが腹立たしい……きっと明日の戦いでもそうなのであろう。
これまでに前線を抜けた魔物が拠点へと侵入してきた事も幾度かあったが、その度に何の奇跡か幸運か判らないが、目を瞑っている間にそれらの魔物は蒸発している事があった……だが、魔王相手には流石にそのような奇跡が起きる事を期待しても無駄だろう。
自分に剣の才能があれば……等と思った所で、現状ないものをねだってもどうしようもない。だがやれる事をやろうと、政務官の立場で助けになれるような事があればと、こうして見回りを行っている。
(王子は……どうしているのでしょう)
あらたかの見回りを終えた後、ふと彼の様子が気になってきた。明日はきっと最後の戦いとなる……無事に勝利してくれると信じているが、その時自分は隣にいれるのだろうか。前線の皆よりも命の危険は少ないとは言えるが……それでも絶対ではない。
(王子に会いたい……)
最後になるかもしれないと思うと、その想いが強く胸から溢れてくる。
(王子に……触れたい……っ)
最後の夜になるかもしれないというのに、何と不謹慎な事を考えてしまったのだろう……いえ、最後だから……なのかもしれない。それにもう随分と前から、彼の部屋には呼ばれていない。私はいてもたってもいられなくなり、王子のいるであろう彼の自室へと向かい始めた。
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ランプの明りが灯す廊下を歩く。歩くたびに胸がトクン、トクンと鼓動が波立つのを感じる。
最後になるかもしれない夜を共にする……それはきっと、彼にとっても特別な存在となりうる事に違いない。もしも自分がそのような存在に選んでもらえるのであれば……身体が少し熱くなり、胸がトクトク高鳴っていくのを感じる。
一歩、一歩と踏みしめながら進む。段々と王子の自室へと近づいていき……そして、王子の自室の扉の前へと立って
「スー……ハー……」
大きく深呼吸。そして決意し、扉をノックしようと、手が触れそうになった瞬間
『んッ……! あぁッ……イィッ♪』
(っ!?)
中から僅かに洩れ聞こえる女性の声、それにあわせ、ギッギッと何かが軋む音もする。
(……あっ……!?)
その声と音を聞き、胸が高鳴る……先ほどまでとは、全く異質な……胸の高鳴り。
(…………ッ)
扉を叩こうとした手に力が入らなくなり……触れることなく、そのまま戻した。
(……私は、何を期待していたのでしょう)
王子は何も悪くはない。私が勝手な期待を馳せ、胸を高鳴らせていただけだ。
王子を慕う様々な女性を出し抜き、寝室へと忍び込もうとするはしたない女。
もう随分と前から呼ばれてもいないのに、特別な存在などおかしさに涙が出そうになる。
……自分が酷くおろかで情けなく思えた。
『んッ……! あンッ! …………んんん~ッ♪』
尚も中から漏れてくる、その声に、いてもたってもいられず私はその場を後にした。
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あれから人気のない場所を探した私は、王城の中庭にある椅子に座り、何をするでもなく空を見上げていた。
先程まで色々と思うところはあったのだが、外気に冷やされた事で思考は冷え、冷静さを取り戻す。王子が女性にだらしないのは今に始まった事ではない。自身を慕う女性を寝室に連れいるなど、王子にとってはいつも通りの事だ。選んでもらえない事がショックではあるが、こんな時でもいつも通りな事にかえって少しの安堵感も生まれた。きっと明日からもこんないつも通りが続くのだとも思えたから……。
……そう、いつもどおり、これからも私が王子から呼ばれる事はこないのかもしれない。もうずっと寝室に呼ばれていないので、そんな別の不安が生まれてくる。
(もしかして……私に魅力がないのでしょうか……)
胸は人並みには大きいと自負していたし、王子に褒められた事だってある。右腕を自分の右胸へと伸ばし。
ふに。
ふにふにふに。
そこにある丸い物体を揉んでみる。そこそこ大きいし、ちゃんと柔らかい……はず。うーんだったらどうして……などと思い悩んでいると
「……なぁ~にやってんだぁ~?」
(ッ!?)
背後から聞こえた野太い男の声に全身がビクリと警戒し、急いで胸を揉んでいた腕を下ろす。振り向くと酒瓶を片手に持つ大男がそこにはいた。
「あぁ~ん……なんでぇ……政務官さんじゃねぇかよッ……ひクッ」
「……お酒は程々にしてください、モーティマさん」
その頬と鼻頭が真っ赤に染まっており……どうやらだいぶ酔いが回ってるようだ。明日は戦いだというのに、そんなに飲んで大丈夫なのだろうか。
「まったく……戦いは明日ですよ。わかってるんですか」
「けちけちしてんじゃねぇよぉ……ひッ」
「だから……お、お酒臭ッ! あ、あまり近づかないでくださいっ!」
「あぁん? 別に良いじゃねぇか……ひくッ」
そういい片手にもった酒瓶に口をつきグビっと中身を飲むモーティマさん。この人とはいつもこうして、ついつい言い合いになってしまう。決して嫌いというわけではないのだが。
「とにかく、あっちで飲んでください!」
と適当に自分と離れた方向を指さしてみると「ッち……わぁ~ったよ」等とボヤきながら指さした方向へと去っていく。
……まったく、あの人はどうしてこうなのだろう。元々は山賊のお頭という事もあり、粗野で粗暴で人のいう事を聞かず、自由気まま。幼いころから将来は王国に尽くすべく、政務官としての礼節を学び、あまり自由を知らずに育った自分とは、真逆の生き方。そんな彼とはどうにも馬があわないようで、あの人にだけはいつもキツく当たってしまう
だが少し……ほんの少しだけ、そんな自由に生きる彼に、憧れを感じなくもない。少しだけ。ほんのちょっと……ミジンコ程度に。
少し彼の様子が気になり、去って言った方向をチラリとみる。モーティマさんはおぼつかない足取りでフラフラと去っていき、徐々に方向が変わっていき……そのまま進めば、川だ。
「はぁ……もう……しょうがありませんね」
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「……ここで良いのですか?」
「あ? あぁ、あぁ~間違いねぇ~。俺の部屋だぁ。わりぃなぁ」
顔の隣から酒臭い男の声が届いてくる。流石にあのまま放っておいては明日の戦いに支障が出そうだと思い、モーティマさんに何とか肩を貸し、ようやく部屋までたどり着いたところだ。途中誰かに出会えれば協力をお願いしようと思ったのだが、残念な事に誰とも出会う事なくここまで一人で運ぶ事になってしまった……。
「入りますよ?」
「おぉ~ぅ」
扉をあけ部屋に入る。部屋は多少モーティマさんの私物が転がっている程度であり、ほぼ貸し与えられた部屋そのままと言った状態。あまり装飾には興味がないらしい。モーティマさんの持っていた酒瓶をテーブルの上へと置かせ、備え付けのベッドへ向かう。そのままモーティマさんを腰掛させると、自分は反対にあった椅子へと腰掛け「ふぅ」と息をつく。肉の塊のような重量の彼に肩を貸すのはかなりの重労働で、だいぶ肩が疲れてしまった……。
「わりぃなぁ、運んでもらっちまってよぉ……おぉそぅだ、ちょっとまて」
そう言ってモーティマさんが立ち上がる。足取りはまだフラリと危ないが、少しはマシになっているようだ。食器棚の方に向かい底の深いカップを取り出すと、テーブルの上に置いてあった保温効果のある容器を持ち、中身をカップの中へと注ぎ入れる。トクトクトクと暖かそうな液体が注がれていき、カップの中からは暖かそうな湯気が立ち上がる。最後に、テーブルの上にあった酒瓶の中身もトクトクと注ぐ。
「ほれ、飲めよ」
そういって差し出されたカップ。中からは暖かそうな湯気が立っており、美味しそうな香りが漂ってくる。疲れた身体が口に入るものを欲しがっていたので、素直に受け取り口を付ける。口の中に広がるスープの甘い香り、そのすぐ後喉をすぎた当りでカッとアルコールが広がる感覚がする……美味しい。注がれた酒は結構アルコールの度数は高めだったはずだが、意外にも飲みやすい。元からこうやって飲む為に用意していたのかもしれない。身体に熱が満たされていき、ホっと一息をつく……というか、先ほどのお酒はモーティマさんが口をつけていたものでは?
(まぁ……いいでしょう)
……折角振る舞われたスープに、野暮なことは言わないでおくことにした。
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コクリコクリとスープを飲み進め、スープを飲み干しそうになった頃。
その間特にモーティマさんが口を開くことはなかったのだが。
「……それ飲んだら、さっさと出てけよ」
と、ぶしつけに投げかけてくる。それがここまで運んできたものに対する態度なのでしょうか? と少しムっとしたが、まぁモーティマさんの部屋でこれ以上することもないので、言われなくとも……と、ふと今自分がいる場所を思う。
夜に男の部屋で二人きり。
そんな何かが起こってもおかしくない状態ではあったが、モーティマさんはベッドに腰掛けた状態で窓の先をボーっと見上げ、私の方には微塵の興味もなさそうな態度。もし酔ったモーティマさんが迫ってきたならば、大声で兵舎にいる誰かしらを呼ぼうと気構えていたものだが……そんな心配は杞憂に終わり、既にモーティマさんの酔いは冷め始めてるようだった。
(やっぱり、私に魅力はないのでしょうね……)
先程中庭で抱いた不安は、最早確信のようになりつつあった。だが、自分で思ってるだけでは不安は確信には至らず不安なままで、モヤモヤグルグル。いっそハッキリと誰かにそういってもらった方が諦めがつくというものだ。度数の強いお酒を飲んでしまったせいか、身体の奥からホカホカとした火照りを感じ、頭が少しボーっとする。
「私に魅力はないのでしょうか……」
自然と言葉が漏れてしまった……あぁ、聞かれてしまったかもしれない……こんな事を気にしてる等と人に知られては……後で、絶対他言しないように言わなければなりませんね。モーティマさんの方を見やると「はぁ?」といった表情を浮かべている。
「私の身体に……魅力はありませんか……?」
再び言葉を紡ぐ。今度は自然とではなく、自分の意志で尋ねる。「な、なんだそりゃ。し、知るかよ!」などとそっぽを向いて吐き捨てられる。確かに……何を魅力的と感じるかは人それぞれかもしれません。大きいだけでなく、小さい方が良いという人がいると聞いたことはありますし……。
「……私を抱きたいとは……思えないのでしょうか?」
もっと明確に、そういう事をしたくなる身体なのかを尋ねる。言ってる事の恥ずかしさに、悲しさに、瞳が潤むのを感じる。……あぁ、私は一体、何を言ってるのか……モーティマさんが、ボリボリと頭を書く。困らせているかな? とも思ったが、モーティマさんなら別に構わないか……俯いて少しの間沈黙する彼。
「んなわけねぇだろ……」
そう言うとにベッドから立ち上がり、こちら側へと向かって歩き、椅子に腰かけた私の横に立つ。
「部屋にいるって気付いただけで……やべぇんだよ」
(ぇ……? ……ッ……!?)
椅子に腰かけた私の頭は、立ち上がった彼のちょうど下半身くらいの位置にある。私の横に立つモーティマさんの下半身の中央……男性器の位置のあたりが目に入り、今にも何かが飛び出そうなくらいに出っ張っているのが判ってしまった。
「わ、私は一体……そ……そんなつもりは……ッ!?」
そういって否定する……モーティマさんは私の横に立ち、そこから私に何かをしてくる気配はない。ひたすらに、私の次の行動を待つだけだ。もし私が叫び声を上げようものなら、当然彼は捕まる事になり何かしらの刑に処される事となるだろう。一体どうして、このようなことに……。
(お、王子……私はどうすれば……っ)
頭の中で、自分が最も信頼する男の声を聞こうとするが……。
『んッ……! あぁッ……イィッ♪』
頭の中に浮かんできたのは、先ほど扉の前で聞いた声。
(あっ……そうだ、今頃王子は……)
そう思うと、胸のつっかえが少し取れるように感じた。
これは決して、自分が思うほど特別な行為ではないのだと。
(そうですよね……これはそんなに特別な事では……ないのですよね……ッ)
改めて目の前を見やる。モーティマさんは依然として特に何もしてこないが、破れんばかりに張り詰めたそのズボンの奥にある物体は、苦しそうにビクビクとしている。確か、この状態になった男性は凄く辛いと聞いた事がある……その苦しみから、開放してあげるには……。
(一度……だけなら……)
だが、本当に良いのだろうか? 王子以外の男性と……。
目の前にいる粗野で粗暴で自由な……。
話すといつも、言い合いばかりまってしまう……。
でもそれは、嫌いだからとかではなくて、話しやすいからで……。
王子以外だと、きっと唯一自分を取り繕ろうことなく接する事ができる……。
そんな彼と……。
(身体が……あつぃ……)
アルコールが回ってきているのだろうか……胸がトクトクと鼓動をたてはじめ……身体と頬が異様に熱い……少しの間瞳を閉じて悩み……決心する。
「……………」
「………………………」
「…………今日だけ……ですからね」
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──チュン。
──チュチュン。
──チュチュチュチュン。
窓の外から聞こえる小鳥の囀りと窓から差し込む光で目が覚める。
背中には慣れない、固いベッドシーツの感覚、視線の先には見慣れぬ天井。
(…………ここは)
──さらり
自分を包み込むシーツの感覚を地肌で感じる。どうやら自分は、下着も含め一切の衣服を纏っていないようだ。
「ここは……確か…………ンんっ♪」
そうやって上半身を起こすと……股の奥から、トロリと液体が流れだす感覚に、自然と変な声が漏れてしまった。そうしてその原因となった、同じく一糸まとわぬ状態で、隣でガーガーと眠るモーティマさんの姿を見る。
「夢……なわけないですよね」
昨晩の事を思い出す。一夜限りの関係と決め、隣で眠る男へと身体を許した昨日。そうして交わり続けた昨日……いや、つい先ほどまでの記憶。
(いっそ……お酒のせいだと思えれば良いのですが……)
何をしたかも、何を言ったかもハッキリと自覚している。酒のせいとして流すには、あまりにも記憶は鮮明に残りすぎている。とてもそのような理由で流せそうにも、忘れられそうにもない。
「中には出さないでって、言ったんですけどねー……」
行為の最中の事を思い出し、隣で眠る男の顔を見る。ガーガーと幸せそうなイビキをたてて眠っている……少し憎らしさが湧いてきたので、頬をツン、ツンとつついてみる。起きる気配はない。
(大丈夫ですよね……)
流石に万が一があっては困るので中に出さないよう伝えたが、興奮した男が聞き入れてくれる事はなかった。昨日は安全な日だから……絶対ではないが、きっと大丈夫だと思う。今日は世界が滅ぶかが決まる世界規模の危険日であっても、自分の周期とは一切関係ない。
(次からは気を付けて貰わないと………………っ!)
ふと、いたって自然に、次がある事を考えてしまった事に気付く。
最初こそはこの時だけの関係だと思い始めた行為ではあったが、そのような事は行為の最中にどこかへ吹き飛んでしまった。彼との交わりはその……気持ちがよく、最後には終わってしまうのが惜しい……という気持ちが生まれつつあったのも、自覚している。こういうのが身体の相性が良いと言うのだろうか。言動はいつだって、相性最悪なのに。
(ち、違います。今回だけ、今回だけですから……ッ!)
誰に言い訳するわけでもないが、そう自分へと言い聞かせる。自分からもう一度なんて、絶対に言わない。言うもんかと心に決める……だがもし、目の前の男からもう一度求められたら? ……それは……その時に考えれば良い。無理に今決めておく必要はない。
(皆さんが起きだす前に、戻ろうと思っていたのですが)
気付けば既に日は登り始め、外からは朝の鍛錬に励む兵の声も聞こえる。今この部屋から出ていく所を見られるよりは、いっそもう少し日が高くなった所で何食わぬ顔で出て行った方が良さそうだ。この関係を怪しむものなどいないだろう。そうと決まればもう少しだけ……。
──ボスンっ
起き上がらせていた上半身を再びベッドの中へとうつぶせでダイブし、枕に顔を埋める。枕に染み込んだモーティマさんの汗の匂い……と、コレは自分の匂いなのだろうか。少し甘い匂いを感じる。クッションに沈み込まれたことで、睡眠を求める身体が自然と瞼を重くする。
(お昼までには……起きない……と……………………おやすみなさい……♪)
隣にいる幸せそうな男の顔を見つめながら、私はもう一度ゆっくりと目を閉じた。