【完結】最愛の真面目な政務官が山賊のお頭と幸せになる話 作:のぶた
「あの……正気ですか?」
正面にいる男に、私は呆れた声で返す。
「あぁ? 当たり前だろ?」
目の前の男性……モーティマさんから帰ってきた反応は、いたって平常そのものといった反応だ。
「いくら何でもこのような……いつ誰に見られるかも判らぬ場所でと言うのは流石に……」
「あぁん? それが良いんじゃねぇか。それに遠くからじゃ見えねぇよ」
そう、当たり前のように返してくる目の前の彼。
……おかしいのはもしかして自分なのだろうか?
そう錯覚してしまう程に、今の状況に何の違和感も抱いてない様子。
日が落ちて少し経ち、周囲が暗闇に包まれ始めた時刻。
私とモーティマさんは、兵の皆さんが寝泊まりしている兵舎……その裏庭にいた。
そこは沢山の木々が生い茂っており、小さな林のようになっている。
空からの星明りはそんな木々に阻まれて地上までは届きにくく、
夜の暗闇の中では互いの顔の認識すら難しい。
早朝には自然の空気の中で鍛錬を行う者も見られるが、
流石に今の時間にそのような事をしている人は一人もいない。
確かに、このような場所でなら、遠目からは人がいる事すら確認はできないでしょうが……
「……本当に、本気ですか?」
兵舎の向こう側から聞こえてくる賑やかな声。
そこで開かれている祝宴は、まだまだ終わりそうにないようです。
念のため、もう一度目の前の男に確認してみる。
「おうよ。決まってんだろ」
(…………はぁ)
至って普通だと言わんばかりの男の反応に私は頭が痛くなり、思わずこめかみのあたりを抑える。
(えっと、どうしてこうなったんでしたっけ……)
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──2日前。魔王との最後の戦いは、無事に王子たちの勝利で戦いを終えた。
魔王が討伐された事で世界の魔界化は収まり、瞬く間に元の大地の姿取り戻していった。
王子たちが王国へと帰還してすぐに、王城を開放しての盛大な祝宴が開かれ、その宴は丸一日たった今でも続いている。
魔王という最大の脅威は去ったとは言え、魔物に破壊された大地や家屋など、その被害全てが元通りになるわけではない。
今後の復興についての課題は山積みなのですが……ですが、今はこの喜びを皆で分かち合うのも、良いと思います。
「おぉう! じゃんじゃん酒もってきやがれ!」
ふと、宴の開かれている会場の一つである中庭の中央で、人一倍大きな声で叫ぶ男の声がする。声のした方を見ると、中庭の中央でテーブルに立ちあがった、酒瓶片手のだらしない男の姿……モーティマさんの姿が目に入る。
(……まったく、あの人はまた……)
私は彼の元へと近づくと……。
「モーティマさん。仮にも軍の一人として、恥ずかしくない行動をしてください」
そう伝えるのだが。
「あぁん? こんな時くらい別にいいじゃねぇかよ。うるせぇなぁ」
…………。
「……どんな時であろうと、礼節は忘れないようにと、何度言えば判るのですか。いいですか、仮にも軍に属している身である以上あまり勝手な」
「わぁーったわぁーった。わぁーったからアッチに行ってくれ。酒が不味くなっちまう」
話を聞き終わる前に、そういってシッシとあしらうように手を振る目の前の男。
……その言動には、流石にカチンときた。この人はどうして本当にこう野蛮なのだろうか。
「……判りました。モーティマさんは祝宴が開かれてる期間、飲酒を禁じます。もし酒を飲んでいるのを見かけたら、軍法会議へとかけ処罰します。お酒を飲んでしまうと問題行動が多いようですので、反省されてください」
「あ、あぁん?」「おいそりゃねぇだろ!」という言葉が聞こえてくるが、無視。慌てているようなので良い気味です。
「兎に角、しばらくはお酒禁止です。わかったらテーブルからおりてください」
「……ちっ、わーったよ」
モーティマさんに強く言うと、しぶしぶといった感じでようやくテーブルから降りる。
そうしてそのままどこかへ去っていこうとする彼だが。
「……どこへ行くおつもりですか?」
「べ、別にどこだっていいだろ。じゃ、じゃあな」
そう言いながら、そそくさと逃げる用に去っていくモーティマさんの後ろ姿を目で追う。
……あの人は本当に人の話を聞いていたのでしょうか。
(せめて酒瓶は置いていってください……)
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「だから何度」
「うおっ!」
──王城内のパーティ会場。
「お酒は禁止だと言えば」
「あぁっ!?」
──食堂の調理室。
「わかるんですか!」
「なんでついてきてんだよ!」
──暗く静まりかえった兵舎裏の林。
お酒を禁止だと伝えてすぐだというのに、場所を代え酒を飲もうとする彼を咎める内に、気付けばこんな人気のない所まで来てしまっていた。
「本当に軍法会議にかけますよ」
「ここで飲む気はねぇっつの、あっちいってろ!」
その言葉を信用しろと言う方が無理ではなかろうか。
何度言っても聞こうともしない目の前の男の行動に頭が痛い……少しくらい大人しくなってくれればと思っていたものの、少しも効果はなかったようだ。そんな事を思っていると、彼の身体が少しブルリと震え
「だから飲ま……っ、ああもういいからあっち向いてろ!」
「……はぁ?」
そんな事を言い出す。目を離している間に飲まれては意味がない。そう思い怪訝な目を彼をジっと見ると、逆に彼の方から後ろを振り向いた。ガサゴソと動き、何やらズボンの当たりを弄っているようだが……。
(何をしているのでしょうか……?)
そう気になっていると
──ジョボ……ジョボボ……ジョボボボボ……
目の前から水が流れ落ちる用な音……そして、彼の下腹部辺りから流れ落ちているかのような液体…………まさか。
「ッ!? な、なななな、何をしてるんですかっ!! そ、そういう事はトイレに行って」
「う、うっせーな! テメェがずっと追いかけてくるから行く暇なかったんだよ!!」
「ッ!!」
私は思わず後ろを振り返る。
──ジョボボボ……
「…………」
「…………」
私もモーティマさんも無言になり、なおも続く、モーティマさんの排出行為。
──ジョボボ……
「…………」
「…………」
私は一体何を聞かされているのでしょうか……。
──ジョボ……
「…………」
「…………」
……………………。
──ピチャ
「…………終わったぞ」
「…………」
……そんな報告はいりません。
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ガサゴソと、背後から聞こえる衣服をただすような音が聞こえる。
(まさか、こんな所であのような事を……ッ)
先程のモーティマさんの排出行為を思い出し、思わず顔が熱くなる。本当に目の前の男はあまりにも野蛮で、私の想像もつかないような事ばかりする。そして、チラリと見えてしまったモーティマさんの下半身の男性のアレ。ほんの数日前、私はアレに……。
(い、いけない、私は何を考えて……!)
三日前、魔王との決戦を控えた夜。私はお酒の勢い余ってというか、雰囲気にのまれてしまってというか、一度だけという約束で……彼に身体を許してしまった。
何故あのような事をしてしまったのか……これから彼とどう接すれば良いか……凄く悩んだものの、彼の態度は以前と特に変わらなかった。彼があの夜の事を口に出す事はなかったので、私もあの夜の事には触れないよう、忘れようと過ごしてきた筈なのに……。
(王子のより……大きいのでしょうか。……ッ!?)
……また変な事を考えてしまっている自分に気付く。いけない、気持ちを切り替えないと。
「おい」
後ろから声がかけられる。どうやら終わったようですね。
「……終わりましたか。モーティマさん、今後二度とこのような場所でそのような事は……」
そう言いながら振り返ると
「…………はい?」
目の前の予想外すぎる光景に、思わず疑問の言葉がそのまま口をつく。
排出を終え、衣服を整えていた筈のモーティマさんは、しっかりとズボンをはいて……いない。
いないどころか、ズボンを脱ぎ去り、その下半身の男性のアレを……男性器を隠す事なく私の前に晒している。
「な、な、一体何を考えてっ!?」
「ば、ばか、声でけぇよ!」
(むぐっ!?)
叫びだしそうになった私の口を彼の手が塞いだことで、それ以上の言葉を続けられない。
ちょっと待ってください、あなたその手は先ほど何かを触っていませんでしたか!?
その後も何度か声を上げようとしたものの、口を遮られていては何を発する事もできない。まさかこのまま……と思ったものの、それ以上特に何かしてこようという気配のない彼に、徐々に心が落ち着きを取り戻し、一旦叫ぶのを諦める事にした。
そんな気配が伝わったのか、彼の手が私の口から離れる。
「ぷはっ…………ど、どういうおつもりですか」
警戒心を込めた声で彼に尋ねる。
「いや、なんつーかそのよ……二人きりだなとか気付いたら、思い出しちまってよ」
そう言い放つ目の前の男は、自身の下半身を見る。その視線を追うと彼のアレが、既に興奮した状態にある事がわかった。つまりモーティマさんは……そういう事がしたいという事なのだろう。
「あの……正気ですか?」
「あぁ? 当たり前だろ?」
「いくら何でもこのような……いつ誰に見られるかも判らぬ場所でと言うのは流石に……」
「あぁん? それが良いんじゃねぇか。それに遠くからじゃ見えねぇよ」
今王城には沢山の人がいる。この兵舎を一つ挟んだ向こうからも、
勝利を祝う賑やかな声が聞こえてくる。
例え人目にはつきにくい場所とは言え……。
「……本当に、本気ですか?」
「おうよ。決まってんだろ」
(…………はぁ)
彼のそんな言葉に、私は──
本番は後半で……