冒険とファンタジー、好きなもの詰めてみました。
部屋の中は薄暗く、メイドはベッドの上に横たわった主に声をかけた、起きて下さい、朝ですよ、太陽はとっくに昇っています。
だが、返事はない、ベッドの上には白骨が横たわっているが、メイドは朝がくる度に声をかけるのだが、返事はない。
お疲れなのだ、ひどく、何故なら、あんな大仕事を終えた後なのだから無理もない、ゆっくりと休ませてあげないといけないと思いながらメイドは部屋を出た、その時、訪問者を告げるメッセージが聞こえてきた、珍しい事もあるものだ、ここは地下の最下層、ここまで来る者がいたとは驚きだ。
排除しなければ、眠りを邪魔するなど許されない。
「本当に、ここなのか」
最近、発見されたというダンジョンに足を踏み入れたのは冒険者達ではない、城から派遣された元、冒険者崩れのグループだった。
本来なら冒険者、正規の人間が派遣されるものだが、今回に限り、城からの直々の申し出があり、ギルド職員は仕方ないと諦めたのだ。
誰も足を踏み入れたこととのないダンジョンともなれば、どんな宝や鉱石が眠っているかわからないとギルドの職員は憤慨した、何か他の理由があるのではないかと疑い、こっそりと自分たちも密偵を出す事にしてはとギルドマスターに進言した。
「おまえ達の言うことは分からんでもない、だがな、今回の探索、魔道士が率先して動いているんだ城の、最高位のな、命を落とすことになってもいいのか」
その言葉に冒険者達は黙りこみ、互いに顔を見合わせた。
ギルドの規定を守らず違反を犯した冒険者の末路は決して楽なものではない、他人の獲物を横取りしたり、仲間内での妬みや嫉妬から相手を殺してしまったり、挙げ句、投獄されることになるのだが、運良く免れた者もいる。
やはり自分たちは運が良かった、暁の一団、リーダーのクロードは若い頃から冒険者に憧れていた、若さに故多少の失敗もあったが、順調にランクを上げて上り詰めてきた。
だが、人生どこで何があるかわからない、半年前の出来事で投獄された、どんなに言い訳をしても誰も聞いてはくれない、仲間達は自分を疑いの目で見る事に耐えられなかった。
そして、今、寄せ集めのグループでダンジョンに踏み入ろうとしている。
下された命令は聖典と呼ばれる書を探すことだ。
書というのだから本かと思ったが、それどんな形をしているのか分からないのが困ったところだが、そんな事は構わなかった、今の現状から抜け出したいというのがクロードの願いだったのだ。
(侵入者ヲ発見しましタ)
メイドはスクリーンに映し出され数人が人間であることを確認すると少し考えた、以前の侵入者は人ではなかった、魔物、モンスターだった、今回は人間だ。
あれはもう随分と昔のことだ、あのときは、ただ、迷いこんで来たのだと思っていた、放っておけば出て行くだろうと思っていたが、その気配がないので殺したのだ。
だが、今回は人だ、何か目的があって侵入してきたのだろうか、いや、ここに入って来れる様な入り口は封鎖した筈だ。
もしかして綻びが生じたのだろうか、あり得ない事ではない、それとも何か他の原因がどちらにしても主は眠っている、だとしたら自分のなすべき事は一つだ。
なんだ、ダンジョンに、どうしてメイドがいるんだ、クロードは驚いた、いや、正確にはメイド服を着たゴーレムだ。
顔や袖から出ている手は人間の形をしている、しかも髪は金髪だ、だが人間でない事は明らかだ。
「機械人形かもしれませんね、旧型の」
そう言ったのは魔法使いだ。
「機械人形だと、昔、貴族が使っていた奴か」
クロードは呆れた様にメイドの顔を見た、人間に似せているが、あんなものに愛情を持つことができるのか、いや、欲情できるのだろうか。
「何故入って来たのです、すぐに出て行きなさい」
メイドが話しかけてきたことに冒険者達は驚きの表情になった、だがそれとは別の思惑が胸の中に沸いてきた、この機械人形を捕まえて売れば金になると考えたのだ。
自分たちに下されたのは聖典だ、機械人形ではない。
魔法使い、勇者、怪力自慢のモンスターと人間の亜人を入れた五人が一人の機械人形相手に負ける訳がない、剣を、弓を、身体強化の呪文を唱え、魔法をすぐに発動できるように準備して冒険者達は身構えた。
「やはり愛玩用の機械人形でしたね」
魔法使いが拍子抜けしたように地面に倒れた人形を見て呟いた。
機械人形は攻撃を躱すのに必死で自分からは殆ど攻撃を仕掛けてこなかった、いや、その余裕がなかったのかもしれない。
「もう動かないのか、だとしたら鉄くずか」
「古いものなら価値があります、それに、今まで動いていたのです、一体何を動力にしていたのか興味がありますね」
「もしかして、ミスリルとか、なんて」
「だとしたら大変です、聖典がどんなものなのかわかりませんが、ミスリルと比べるなど」
「聖典、と、言っタ、のか」
それが誰の声なのか、クロードも仲間もすぐにはわからなかった。
「お、おい、動いたぞ」
怪力自慢の亜人が地面に倒れてる機械人形を見て叫んだ、だが、その瞬間、地面が揺れ、冒険者達は驚いた。
倒したと思った筈の機械人形がゆっくりと動き立ち上がろうとしている、慌ててクロードは剣で人形の体、足を切ろうとした。
鈍い音がしたが、それは人形ではなく、剣の折れた音だった。
「ジェニーナ」
呼ばれたメイドは振り返った、闇の中にぼっかりと浮かぶのは白骨だが、それはゆっくりと近づきながらその姿を変えていった。
銀色の髪、白い肌、長身の人間は手を伸ばしメイドに触れた、するとメイドの銀色の顔も、まるで人間の様な柔らかな肌と色と姿に変わっていく。
「ようやく、お目覚めになって」
「ああ、随分と眠った気がするわ」
メイドは微笑むと地面に倒れている冒険者達を見下ろした、皆、気を失っている、どうしましょうと尋ねるまでもない。
「この者達、聖典」
「馬鹿馬鹿しい、またそんなことを、とりあえず、空腹を満たさなければ、私もおまえも、そして、我が家も」
ぐるるるーっ、暗い洞窟内に不気味な音が響いた、それは生き物の様な声といってもいいだろう。
「たくさん、食べなさい」
メイドの言葉に地面にポカリと穴が開いたが、その時、偶然にもクロードは目を覚ました。
うわわわあっー、絶叫が響きわたった。