フェバル~TS能力者ユウの異世界放浪記~ 4章『I』 R18版 作:レスト / 三端由也
浮力や反重力といった物理現象によらない、超能力自体による自由自在の空中制御。凄まじい脚力と超スピード。
それこそが『加護足』の能力である。
クランシエル孤児院に誰よりも早く辿り着いたアマンダは、そこでアイの姿を纏った分体を目撃した。
だが悲しいかな、彼女には本物と偽物とを見分ける術はない。
分体は本物がそこにいると錯覚するには十分なほど、醸す雰囲気もそっくりだった。
それは己の意思こそ持たないが、アイの意のままに動き、言葉を紡ぎ出す。
「あら。早かったじゃない」
「アイ。ここで会ったが百年目さ。ぶっ殺してやる……!」
怒りのままに神速の蹴りを放とうとしたアマンダを、アイは余裕綽々で制止する。
「おっと。そんなことをしていいのかしらね」
彼女がこれ見よがしに視線を向けると――。
無数の触手に絡め取られ、宙吊りにされ。泣き叫ぶ子供たちが現れた。
人質としての意味を持たせるために、あえてしもべにはしていない。食べるのも我慢した。
アマンダは顔を真っ青にして、それ以上動くことができなかった。
恐れていた最悪の事態が起こってしまった。
「あんた……! 可愛い子供たちを!」
「ふふふ」
アイにはとっくに目星は付いていた。
何がこの『加護足の巫女』にとっての宝であり、最大の弱点であるかを。
だからこそ二カ月近く、力を蓄えつつも辛抱強く待った。
警備ルーティンを見極め、最も配置が弱くなる瞬間を。
助けを呼ぶ間もなく、最速の巫女に先んじて孤児院を掌握できるこのときを。
勝ち誇るアイは、目を細めてくすくすと嗤う。
「ヒトとは弱いものね。たったこれしきのことで、容易に手が出せないのだから」
「くっ……! 卑怯な!」
「卑怯? 卑怯ってなに? こうするのが一番、そうでしょう?」
すべて欲望に忠実、そして彼女なりの合理でもって行動するアイには、人間の価値観がわからない。
アイはヒトの味を知っている。どうすればヒトが困るのか、弱るのかを知っている。美味しくなるかを知っている。
だからそうした。それだけ。
アマンダは怒りを通り越して、寒気がした。
「お前……」
「少しでも動いたらどうなるか。わかっているわね」
獲物を前に舌なめずりしたアイは、さてどうしたものかと思案する。
五体の巫女は至上の糧であるが、【侵食】を始めとする精神汚染への耐性も極めて高い。
現代まで余計なものには変質されないよう、生まれ変わっても強く存在するようにできている。
だから喰らうにはまず、弱らせる必要がある。精神的にも肉体的にも。
実はしっかり根に持つタイプであるアイは、まず意趣返しにとアマンダを蹴り飛ばした。
分体とは言え、常人より遥かに力は強い。
コンクリートの壁へヒビが入るほど強かに打ち付けられたアマンダは蹲り、まともに息ができなくなる。
女神の五体を持つ者は並外れて頑丈なため、それだけで致命傷とはならないが。
「まだまだ。一発では足りない」
アイも心得ている。状況の優位を得たといえ、素の実力では相手が上。ましてこちらは分体なのだ。
以降は不用意に接近せず、触手を鈍器のようにして。かつて自身が蹴られたその箇所のみを執拗に殴り続けた。
「まったく。足の分際で主に逆らおうだなんて。しつけがなっていないようね」
「う゛っ! ご、が。あ゛ッ!」
大好きな育ての親がズタボロにやられていく光景を目の当たりにして、子供たちはただ恐怖と悲しみで泣き喚くしかない。
しかしアマンダも歴戦の戦士である。
執拗な攻めを耐え忍びながら、わずかな隙がないかと必死に窺っていた。
彼女の知る由ではないが、アイは今本体と分体を含めると三体同時に操っている。
それが分体である以上、思考と思考の隙間にはわずかなタイムラグが生じる。
アマンダは優れた直感でそれを掴んでいた。
――今だ!
アイの意識がほんの少し逸れた瞬間。彼女は瞬時に『加護足』のギアを最大に引き上げた。
音速をも遥かに超える、神速の蹴りを今度こそ繰り出す。分体ごときではまったく反応する間もない。
哀れ分体は再生限界など容易く超えて、粉々に爆散した。そして二度とは復活しなかった。
子供たちを縛っていた触手も、はらりと解けて崩れ去る。
見事な逆転勝利だった――そう、傍目には。
アマンダは無事守れた宝物たちを見つめ、ぼろぼろの身体でほっと胸を撫で下ろす。
しかし、執念で勝利を掴み取ったと安堵した。
――その瞬間。
彼女の背後より、ピンク色の液状体が滑るように侵入した。
ユウを封じたアイの本体が帰還する。
分体を殺るように仕向けたことも。くたばり、子供たちを解放したように見せたことも。
すべては演技だったのだ。
液状の肉体を一気に展開し、油断したアマンダに後ろから覆い被さり。
はっとした彼女の脳内に、ねっとりと艶めかしい歌姫の美声が響く。
『人は勝利の瞬間こそ、最も油断するもの』
隙 を 晒 し た な。
ほんの一瞬。アルシアと溶け合っていたために有していた愛欲の奥底から。
まったく無感動な、純粋そのものなるアイ自体の本能が剥き出しとなって。
人ならざるモノの深淵に触れ、アマンダの身が心底竦んだ。
次の瞬間にはもう。
再び歌姫と混然一体となった化け物は、情感いっぱいの肉欲を顕わにしていて。
『いただきます♡』
ぐちゅん。
くぐもった、ぬめり気のする水音とともに――至上なる融合の時間が始まった。
***
「アマンダお姉様……。子供たちのことになるとすぐ見境がなくなるんですもの!」
アマンダのスピードは、この世界において他を遥かに凌ぐ。
いかにイプリールが優れた肉体を持つ巫女であっても、専門分野で遥かに遅れを取るのは致し方ないところであった。
それでも今は、乗用車を用いて「常人のふりをする」ことすらせず、自らの足のできる限りで駆けている。
彼女にも嫌な予感がしていた。
相手は人の弱みにこそ付け込む怪物。アマンダお姉様は子煩悩だからこそ、そこを付け狙われはしまいかと。
ユウもわたくしも、それを心配しておりましたのに。一人先走ってしまっては、台無しですわ。
そうして彼女から遅れること十数分。その遅れが致命的だったとようやく気付いたのは。
孤児院の大部屋から、聞き慣れた者の聞いたこともない悲鳴を耳にしたときだった。
「あ、ああ゛! うう゛んっ! お゛っ! んんぅ゛!」
「お、おお、う。お……。ん、ああ、あ」
一人の苦しそうな喘ぎ声と、もう一人の感動に満ちた喘ぎ声が。
一つの重なった人型から漏れてくる。
敬愛するお姉様が――化け物と徐々に融け合っている。
イプリールも知る普段のあっさりした「食事」とは、まるで様子が違う。
それは真なるアイの女神の五体――巫女を取り込む際のみに発生する、長く特別な進行様式だった。
「あ、あ……」
イプリールは恐怖とショックのあまり、その場で動けず放心してしまっていた。
今見ているものが現実と信じられなかった。信じたくなかった。
アマンダの全身にピンク色の肉がもごもごと纏わり付き、ほとんど隙間なく絡み付いて、全身がうねっている。
二人を新たな一つの形に創り変えようとしているのだ。
未だ左半分はかつてのアルシアの歓ぶ顔を、右半分はアマンダの苦しみもがく顔を貼り付けて。
だが互いの顔の境界は、徐々にぼやけて交じり合おうとしていた。
イプリールは何度も首を振り、苦悩する。
このままでは、アマンダお姉様が喰われてしまう。助けられるのは自分しかいない。
涙と恐怖に足を震わせながらも、決死の一撃を放つ。
「この! お姉様から離れなさいっ!」
全開の念動力で肉片を引き剥がしにかかるが……ぴくりとも動かない。
無防備を晒す融合中は特殊な防御力場が発生するのか、あらゆる能力を退けているようだった。
あ、あ。だめ。お姉様が。
大好きなお姉さまが。いなくなってしまう。
「アマンダお姉様ーーーーーーっ!」
イプリールは何もできない己の無力さに、その場で泣き叫び、崩れ落ちてしまった。
***
全身を侵されながらも必死に抵抗しようとするアマンダに、アイの甘い誘惑が何度も囁きかけられる。
『わたしはアイ わたしとひとつになりましょう』
洗脳を仕掛けながら、彼女のいたるところに執拗な攻めが繰り出される。
体表を絡み付く肉片が這いずって舐め回し、液状体がもごもごと蠢きながら、柔らかいところを丹念に揉み上げる。
受け入れやすいように、胸から手足の先端までをしっかりとほぐしていく。
カラダの内側までもいたるところ肉が侵入し、這い回り。徐々に体組織を融かして沁み込もうとしている。
触手がおっぱいを絞り上げ、先端をきゅっとつまみ上げると。
アマンダの口からは、面白いように情けない声が漏れた。
そうしたすべての行為を、ひとつの感覚として共有していく。
攻めながら攻められることを同時に味わい、アマンダはもう気が狂いそうだった。
「お゛っ……うお゛っ……あ、うあ゛あ……♡」
「はあ……はあ、はああ……っ♡」
アマンダは苦しみに満ちた声から、徐々に悩ましげな嬌声に変わりつつある。
彼女の快楽と壊れゆく感情を存分に味わって、アイもまたよがり狂っていた。
アマンダはまともな思考ができなくなっていく。抵抗ができなくなる。
――ううぅ。
これ……これは……!
次第に理性の溶けゆく中、彼女は奇妙な感覚を覚えていた。
すっかり萎えていたはずの性欲は今やむくむくと膨れ上がり、濡れぼそった膣を熱さが満たしていく。
齢34を迎え、女として熟し、一般に性欲の高まる時期であるとされているが。
しかし一つの恋もなく、子供たちの世話を生き甲斐とするうちに、女としてはほとんど枯れていた。
そのはずだったのに。
まさかあたしが……このあたしが、こんな……! 生娘みたいに……!
一度意識してしまうと、もう止まらない。
下のお口がきゅんきゅんと切なくて。どうしようもなかった。
『あの子が感じていることを おまえも今感じているのよ』
くっ、そうか。これは、アルシアの……あの子の……!
年下のアルシアの瑞々しい性欲が、今やまったく自分のもののように感じられる。
新鮮な驚きと感動に満ちて、アマンダは目を剥いていた。
ああ、まずい。きもちいい。きもちいい……。
このままじゃ、あたし……。
『そうよ わたしたちは混ざり合って ひとつになるの この子もあなた そしてわたし』
だからね。もう我慢しなくていいの。
好きなだけ、存分に味わっていいのよ?
アイは赦しを与え、ともに浸ろうと呼びかける。
――あ、あ。いいのか。もう、あつくて。たまらないんだ。
『いいのよ みんなで気持ちよくなりましょう』
脳の深くまでを侵され、徐々に記憶と感覚が混じり合ってくる。
アイの化け物としての当たり前の感覚が、その通りだと確かに思えてくる。
あれだけ大切に想っていた子供たちが、もう美味しそうに見えて仕方がない。
食べてあげることが、ひとつになることが正しいことだと。心から思えてくる。
いよいよ個の境界は決壊し。アルシアの記憶がどっと流れ込む。
ユウを想って、こっそりと毎日自分を慰め続けたあの日々が。まるで我が事のように思い起こされて。
どんなに秘め事を繰り返しても。切なくて。足りなくて。
ずっと目の前にいるのに、余計な理性と常識が邪魔をして。
せめてもと、無理にでも一緒に寝た。お風呂に入るなどした。
いたずらと称して身体のあちこちを触った。いっぱいに抱き締めた。匂いを嗅いだ。
あの美しい【器】と、どんなに貝合わせをしたかったことか。
ユウ……ユウ……! ああ、好きだ……!
巫女同士は惹かれ合う。
本能的に秘めていた好意は、今解き放たれようとしていた。
「「あ……あ、せつない、せつないよ……」」
バラバラだった二つの声が折り重なり、ひとつの快楽を求めて動き出す。
イプリールが見守る中、彼女は一心不乱に自慰を始めてしまった。
既に混ざりつつあり、まだら模様になった指先が夢中であそこを貪る。
ぐちゅ。ぐちゅっ。ぐちゅっ♡
くちゅくちゅくちゅくちゅくちゅくちゅくちゅくちゅ。
「「ん、んんっ、うん、んんんん……!」」
もう片方の手は豊かな胸へと添えられ、丁寧に円を描いて気分を高め、存分に愛し合う妄想に浸る。
アマンダの色黒で少し垂れかかった乳は寄せ上げられ、内側から作り替えられていく。
アルシアの乳腺組織が奥底から膨れ上がり、アマンダのそれを絡め取って繋ぎ合わせていく。
先っぽまで乳管が通り、圧し拡げられて。ひとつの新しい胸になろうとしている。
「「うあっ♡ あっ♡ やば……すごい、すごいぃ……!」」
それが気持ちよくてたまらないのか、融合体は身をよじりながら一際大きな嬌声を重ねている。
少しずつだが着実に、アマンダのおっぱいとアルシアのおっぱいが融け合って。徐々に艶めかしいピンク色に変じていく。
「本物の」胸はまだメリッサのもの。不完全ゆえに、どこか「欠けた」切なさを二人は胸いっぱいに共有しながら。
ひとまずの融合は成り、よがり狂いとともにアルシアをベースとした胸へと上書きされる。
役目を終えた触手の支えがするすると引いていくと、緊張を失った胸はぼいんと弾けた。
「「お゛お゛♡ ん゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛っ♡」」
アマンダの勇ましさに溢れた、獣のようなよがり声が。アルシアの艶めかしい響きを添えて轟く。
視界がぐるんと回り、首を天に向かって突き上げ、ぴくぴくと全身が震えている。
母乳の代わりにと、生暖かいアイの液体をびんびんに勃った先端から撒き散らして。
すっかりアルシア寄りに変じつつある顔を恍惚に歪め、理性を失った彼女の痴態は、なお留まることを知らない。
さらなる快楽を求めて、執拗な手はまったく止まることなく。
まだ物足りなくなったか、指先から触手を膨れさせ、丁寧に押し込むような動きへと変わっていった。
ぐちゅんっ♡ ぐちゅんっ♡ ぐちゅんっ♡
卑猥な水音が繰り返し彼女の膣から漏れ、それがさらに興奮を高めていく。
「「う゛ん゛♡ んんん゛、うあ゛ああっ♡」」
最後まで抵抗していた『女神』の足が、燃えるような熱を帯びて融けようとしていた。
自分の自分たるゆえんを『女神』様に差し出すことが、アマンダにはたまらなく幸せだった。
「「お、お゛お゛♡……もう、少し。わ(あ)たし、ひと、つに」」
記憶のすべてが混じり合い、まるで生まれたときからアルシアであったような。
わたしたちは最初からひとつのアイであったような、至上の幸福に満たされて。
――ああ。女神様。今、実りを捧げます。
「「あっ、んああ゛♡ んはあああ♡ ふおっ、んほおおおおお゛お゛お゛お゛♡」」
いよいよ二つの女性器も融け重なり合い、クライマックスを迎える。
アイに導かれ、アルシアが募り、アマンダが呼応する形で。内側から二つの女貝がぴたりと重なった。
切なく腰を前後にくねらせながら、互いを貪り求め合うようにして。皆ユウを切なく求めて。
枯れていた三十路女の膣から、乙女のごとく止め処なく溢れ出す。若き歌姫の情愛を共に謳歌して。
二人分の愛が混じり合ったとろとろの蜜を、存分に吐き出して。ついに果てた。
「っっっ~~~~~~~~~~~~♡♡♡」
まともな声にならない喘ぎ声は完全に混じり合い、アルシアのものへ――ひとつの『響心声』に統合される。
アルシアの胸がぷるぷると震え、全身をがくがくと激しく痙攣させて。
絶え間なく続くオーガズムとともに、新たなるアイは艶めかしい産声を上げた。
***
夢のような共演を経て、完全に融合を遂げたアイは。
徐々に果てたほとぼりから醒めて、現実に舞い戻ってくる。
「ああ……とっても気持ちいい……」
すっきりしたアイは、五体を広げてひんやりとした外気を受け、火照ったカラダを冷ましつつ。
真なる五体の欠片を受け入れ、生まれ変わった気分を存分に味わう。
再びアルシアの外見となった秘部は、べっとりと愛液に塗れている。
そして素晴らしき恍惚から一心地つくと。忌々しげに自らの翼を見やって。
「こんなものはもう要らない。だって――美しくないもの」
異形の翼を自らの手でぶちりと引き千切り、天高く放り投げた。
きゃはははははははははははははははははははははははははは。
舞い散る半透明の羽の中で、彼女は舞台女優のように両腕を高らかに広げ。狂ったように嗤い続ける。
未だ大部分は薄桃に変色したままのぬめ肌。なお寂しきは空っぽの手と、胸と、お腹。
だが奪い取ったアルシアの顔は常にヒトらしい美しさを保ち。
そしてアマンダのものだった足は、今やアイ自身の女神の足として。
完璧な白さを湛え、しかと大地を踏み固めていた。
かくして『不完全なる女神』は、また少しヒトの形へと近付き――『完全なる女神』へと一つカウントを進める。
これで二つ――あと三つ。