試製・転生請負トラッカー日月抄~撥ね殺すのがお仕事DEATH~【18禁版】 作:珍歩意地郎_四五四五
メンド臭い回だったので時間がかかりました。
毎回の字数も、とくにご意見が無いようなので
7000文字近辺/1投稿、更新頻度は現状とします。
さいごの小声には、わざと聞こえないふりをした。
――まったく……。
もう女に
かつての結婚生活で、さんざイタい目をみている。
仕事から疲れて
「結婚は――こりごりサ」
オレはわき上がる苦い想いを残り少ないビールでごまかしつつ、
「もう“女性サマ”の理不尽なワガママに振りまわされるのは、
「……」
「独りで生きて――独りで死ぬさ。朝から女房にガミガミと重箱のスミつつくような小言を聞かなくて済む。そのクセ自分は(文字通り)ヤリたい放題のふるまいしやがるクせに」
――ワタシは!
詩愛が一瞬、声のトーンを高めた。
「わたしは……そんな女じゃありませんわ」
「同じだよ」
すぐさま一刀両断、オレは斬り捨てる。
「シオらしいことを結婚前は言っといてサ、いざ一緒になりゃ不満の固まりに早変わりだ」
「それは!……その、お互いご夫婦でよく話し合いをしたなら……あるいは」
――話し合い、か。
そういえば、あの
互いの憤懣が、いつのまにか積もり積もってあんな醜態をさらすことになった。
オレが仕事でボロボロだったというのもあるが、あるいはもう少しヤツに気をかけてやれば、
こちらの沈黙を
彼女はエプロンで手をふくやこちらに向きなおり、顔色をうかがうように、
「もう一度――もう一度だけ」
「……あぁ?」
思い詰めた様子で歩み寄り、
「もう一度だけ、試してみる気にはなれませんの?」
「もう一度ったって……」
だが、その時だった。
真珠のネックレスが飾る艶めかしい首もと。
ブラウスのボタンがワザとらしく外されて谷間がチラ見えるそこから、くしくも女の生あたたかい空気とともに、いかなる悪魔の計らいか(まぎれもなく!)元妻のつけていた香水が薫ったのだった。
オレは思わず身を引いた。
それは仕方のない条件反射だったと言っていい。
しかしそれを見た彼女は、期待した愛撫を手ひどく裏切られた、物に怖じやすい繊細な動物のように、少なからずこころを傷つけられた面差しで顔をそむけ、ノロノロと台所にもどっっていった。
どうしよう。
その反面、そう思うはしからオレの
・ナ~イス!ここで彼女にキラわれて関係をフェード・アウト。
・『美月』――もとい、美香子も首根っこを引っつかまえて高校に叩きもどす。
・“大人の責任”を果たしおえたオレは、もはや後くされなく彼女たちとの関係を断つ。
・晴れて自由な独り身となったあとは、休日の朝酒を、朝風呂を、心ゆくまで楽しむ……。
……などと、一種きわめてつごうの良い情景を考えている。
だが、その手前勝手な願望は天罰
「……そうですわよね」
いきなり湿っぽくなる声。
台所に立つブラウスの背中が
「こんな、身も心も汚れた女……イヤですわよね」
「おいおい、カンベンしてくれよ」
まったく。
コッチは小男との丁々発止で疲れてるってのに。
さすがにオレはウンザリした声を出して、多少イライラと、
「いったいナニ言いだすんだね。そんなコトだから――」
「ええ!そんなことだから、誰にも相手にされないんですわよね!」
彼女も挑発的な勢いで応戦した。
「こんな……犯され、
「――はぁ……っ」
これ見よがしにオレは盛大にため息をついてみせた。
「まったくどうしたんだァ?――今夜は」
『キミともあろうものが』と続けたところ、彼女は強姦された時の事を思い出したのか、それともこちらの煮えきらなさに腹を立てたのか。
ダン!
いきなり
成熟した背中から、目に見えない凄絶なものが煮え立つ気配。
その豹変ぶりには覚えがある。
元妻の逆ギレ。
あるいは異世界の妻が、ときおりみせた理由の見えない憤り。
共に共通するのは、うなだれた首すじに観るメロドラマを演じた主人公めく自己憐憫と、そこにほの見える凄惨さ。
「もう、誰もこんな!
つぎの瞬間。
ふるえる涙声は、マゾ的な、自虐的なものに豹変していた。
小刻みにゆれていた背中も、いつのまにかその調子を引きつるような仕草に換えて。
それが意味するモノを悟ったオレは(ヒィッ!)と腹の底が冷えてゆくような感触を味わう。
――
忘れていたわき腹の
その上彼女は突き刺した包丁を、板の上でグリグリと動かして鬼気せまる。
『紅いウサギ』の影響か“汚れたメス”などという本人らしからぬ単語まで飛び出して。
「クックックッ……そうですわよ、ねェ?」
「……」
「こんな勝手なクズ女。ダレももらっては下さいませんわよねぇ?」
マズい雲行きだった。
ただでさえ、オレと刃物は相性が悪い。
また同じところをブッ刺されたのではタマらない。
しかも今度は銃剣ではなく、殺傷力バツグンの幅広な出刃だ。
女がもつ爆発的なヒステリーに特有な『噴火の前の静けさ』ってヤツ。
さんざ元妻で修羅場的な哀しい経験値を重ねたから、ワカる。
そして、こういった場合にとるべき路はただ一つだった。
ヒラリ、闘牛士のように。怒りの意識を別方向ヘ。
あくまでもカル~く。そしてさりげなく。
なるべく気安い感じのまま……。
「――おいおい……
オレは、ワザとあけすけに
「とくに、だ。
「……」
詩愛の動きがとまる。
しばらく手元の包丁を眺めて。
ややあって、彼女は流し台から振りかえる。
左右の手で出刃包丁の柄をしっかり握ったまま。
ヤバい!と一瞬、ヒヤリとするが、すぐにホッとした。
なぜなら彼女の顔は、申し訳なさそうな表情でいっぱいだったからだ。
「あの……あの……」
「ナンだナンだァ?――どうした」
オレは椅子を立つと詩愛に歩み寄り、汗のにじむ手でさりげなく出刃包丁を取り上げた。
――なるほど……。
彼女がカーペットに粗相をしてしまった室内犬みたいな顔をするのも道理。
よく見れば、出刃の
突き刺した場所を確認すると、除菌
オレは物騒な包丁を流し下の開きにあるスロットに差し込みながら、
「みろ。そんなヒネくれた考えをするから」
「だって……だって、わたし……」
またもや泣きそうになる彼女の肩を軽くたたき、
「キミが汚れているなんて、ダレが言った?自分でそう思っているだけで――」
「ウソよ!」
またしても彼女がヒステリックに叫んだ。
「キレイごとを言って!アナタも心の底では――ぁぅんむ……おぅん……んむっ……」
気が付けば。
オレは詩愛を手荒く抱き寄せ、口づけをしていた。
言うことを聞かないベルギー人の娼婦を平手打ちしたあと、強引にキスをしたように。
あれは……どこだったか。ポート・ハーコート?レオポルドヴィル?あるいはシディ・ベル・アベス……。
くぐもった悲鳴は、やがて抑えきれない
弱々しく
* * *
その晩は――なにか奇妙な夜でした。
買い物をしたレジ袋を下げ、密かに好意を寄せる殿方のお部屋に向かう途中のことです。
とうに陽もおち、わずかに西の空が藍色がかった気配を残す頃あいを、寂しい街灯をたよりに坂道を歩いてゆきますと、気のせいでしょうか
そのうえ何の連想がそうさせるのか、かつてわたしの身体を慰み
お留守の部屋にお邪魔して、あの方のためにお夜食を作ってる最中にも、心のモヤモヤは晴れようとせず、それどころか自分がもはや「二重に
いま“二重”と申しました。
えぇ――そうですとも!
一度目は、精鋭読者の皆さまも御存じのとおり、口にするだに汚らわしい獣たちに代わる代わる暴行され、凌辱という手段で尊厳を
そして二度目は――そう、血のつながらない妹がアルバイトをするという妖しげなお店に付き添った時、そこの妖しげな踊り子から“女性の感覚”を露わにされたときです。
女性の秘所をこじあけられ、そこに指を差し入れられたあとは、なにかを植え付けられでもしたかのように、
あれ以来、まるで身を隠すコートを剥ぎ取られたかのように、わたしの――こう申してはたいへんに恥ずかしいのですが「
ショーツは、すぐにおもらしをしたように濡れそぼり、浅ましい感覚が暖かい渚のように、幾度も幾度も自分を包み込みます。かつて母に見つかり手ひどく叱られて以来、己の中で封印してきた禁断の
……お話が
この呪わしい情念に取り憑かれてからというもの、己がすこしヘンになったとしか思えないような行いをすることが多くなりました。
あの方のお留守に、妹からさりげなく聞き出した合い鍵の場所をつかい、お部屋にお邪魔すると勝手に部屋を片づけ、洗濯をし、お料理をする。
しかも、そんなわたしは
まったく、これでは精鋭読者のみなさまに“
とうとう想いを寄せる“あの方”がご帰宅なさったとき……。
わたしはお留守のあいだに黙ってお邪魔してしまい、あろうことかお料理まで作ったとあっては、お怒りを買うのではないかと内心ビクビクしておりました。
でも、あの方のお腹が鳴ったのを聞いたとき。その嬉しさといったら!
わたしが、いそいそとお夜食の準備をする喜びは、新婚の新妻もかくやと言えたでしょう。
新しく追加のお魚料理をつくるため、包丁を握る背後で、愛する……(いいえ、恥ずかしい!)意中の殿方がくつろいでいる喜びは、幸せな女でなければ、お分かりになりますまい。
このときです。
いったいこの晩は、どうしたというのでしょう。
わたしは普段ならとうてい出来ない図々しさを発揮してしまいました。
それとなく、遠回しにあの方が再婚をどう考えているのか。そして(これが何より大事でしたが)そこにわたしの居場所があるかを、探ってしまったのです。
あぁっ!いま思い出しても顔から火が出るような!
ところがです。
あの方は、にべもなく「結婚」の二文字を、撥ねつけておしまいになりました。
もう女性と……なかんずくわたしと一緒になる気は、さらさら無いのだと。
それが証拠に“彼”はわたしが
――もう誰も、わたくしを相手にして頂けない……。
――もう誰も、わたくしを
――もう誰も、わたくしを大事にして頂けない……。
いままで全身を
お嗤い下さいまし。
こんな
さもしい
そして何より……もはや生ける
あとはただ、世間の荒波にほんろうされる泥船のように、波間から消えるのを待つだけ……。
できれば、それは早いほうがいい。
老いて無惨な独り身の姿を、
フイに、胸のなかで引き攣れたような
なにを期待していたんでしょう……もうだれも拾ってくれない、汚れきった
バカな女。
救いようもない、哀れな
まだ自分がどうにかなると思っている、とんでもないおバカさん……。
そんな考えに浸っていると、後から後から。わけもなく可笑しさが胸の中に湧き上がり嗤いを耐えられません。
「――オイオイ……
背後から、そんな声が非難めいた声が投げかけられました。
言われて手にした包丁を見れば。
なんということ!先がすこしツブれてしまっています。
わたくしがモノに当たるなんて信じられません。ましてやお料理道具に……。
「あの……あの……」
いたたまれない思いをするわたしから“彼”は包丁を取り上げておしまいになり、
「みろ。そんなヒネくれた考えを持つから」
「だって……わたし……」
思うに任せぬくやしさ。情けなさ。
なにもワルいことしてない。誰も傷つけてない。
それなのに……なんで自分ばかり、こんな酷い目に遭うのでしょうか。
世の中の理不尽さと無慈悲さ。そしてやる瀬なさが、わたしのなかでふくれ上がりました。
「キミが汚れているなんて、誰が言った?自分でそう思っているだけで――」
「ウソよ!」
カッ!と経験のないほどの怒りが、わたしの内を
どうせ当たり障りなく、この場しのぎで穏便に済ませたいのでしょう。
ふくざつに迷走する出口のみえない憤りが口をわななかせ、わけもなく涙すらにじみます。
「
われ知らず、見さかいもない恥知らずな大声が出ていました。
まるで日頃わたしが白眼視する慎みのない下賤な女にでもなってしまったかのように。
それでも、このダラしなく大きい胸に鬱積した思いは晴れず、どんどん獣のように凶暴になります。
「アナタも!……アナタも心の底では――」
このとき。
グッ!と熱いモノに肩を抱きしめられました。
重い圧力に、上半身の身動きが取れません。
いったいなにを!と叫ぼうとした刹那……。
熱いときめきが。
信じられないほど心地よい
わたしの冷たくマヒした
哀しみに凍り付いた血は“彼”の放つ熱情でたちまち溶け、ドクドクと全身を流れ始めます。それどころか、気体に昇華して軽やかにわたしを巡っているような。
いったいなにを!と叫ぼうとした刹那……。
次いで信じられないことに、柔らかいモノが、荒々しくわたしの唇をふさぎます。
――んぅッ(あぁっ!)
頭の中が混乱してなにも考えられません。
そのクセ心の中では白熱した喜びではちきれそうに……。
弱々しく、わたしは抱擁による拘束をふりほどこうとしました。
いいえ。本当のことをいえば、その甘美な拘束から逃れたくはなかったのです。
ありがたいことに力強い腕はわたしを放そうとせず、それどころか一層強くわたしを抱きしめます。
* * *
――な?言った通りだろ。こういうメンド臭い女はこうした方が良いんだヨ。
――いささか手荒すぎでは無いかね?女性の尊厳を傷つけている。
――ハ!これぐらいでイイんだよ!俺にはピィンとキタね。何のかんのと自分を貶めても、コイツは、こうされたがってると。シディ・ベル・アベスで馴染みンなった
――過去のトラウマから“意中の男”の手で救出されたいと望んでいるんだな……哀れなことだ。
まったく別の人格たち。
熱い抱擁とともに詩愛の口唇を奪いながら、同時に冷静な調子で会話している。
――まて。詩愛はオレの知り合い、女友達だぞ!
あいかわらず彼女を愛撫するふたりに向かい、胸の中で思わず叫んだ。
だがしかし。そう思うハシから、こっちの下半身は心ならずも甘ボッキして。
――ううむ……コレって
――なにガタガタ言ってやがンだ!お前ェは俺じゃねぇか。
――と、同時に私でもあるがね。
ふたつの記憶からの突っ込み。
――よく分からん……オレの深層意識だろ?
――なるほど。頭もワルいや。
――ンだと……?
――まぁ、止したまえキミ……現在の状況は、多層意識による緊急避難的な回避方策にすぎない。
――そーだそーだ!またブッ刺されたくはないだろが?
――しかし、そうは言っても……どうすんだコレから先。
――それはキミの仕事だよ。とりあえず軟着陸させたんだから、あとはどうにかしたまえ。
――は!?キレそう。
――しかし……こうしていると、喪ったシーアを想い出すなぁ。エルフ族らしいトガった女だったが、いいヤツった。
――奥さん、かわいそうにナ。俺の中隊が王都に駐屯してたら、反乱兵のスキにゃァさせなかったのによ。オークなんざ
――
――でもサ?胸はオタクの詩愛みたく、こんな大きくなかったろ?
――うむ。なかなか
――あッ!コラ!そんなに激しくモムな!品位ある騎士団長だろう貴様は!
――白人の女ァ
* * *
いきなり!
ブラウスの服地ごしに、わたしのおチチが激しくモミしだかれます。
まるで幾人もの手で変わるがわる愛撫されるように、さまざまな強弱をつけて。
首筋にも熱い息がふきかけられ、肌をスリスリと愛おしくさすられて夢見心地な気分に。
(そんな!――でも、嬉しいッ!)
うって変わったような“彼”の荒々しい振るまい。
わたしのカラダに、ちゃんと浴場……じゃない、欲情して下さっている!
わたしを魅力ある女だと……メスだと、チャンと看てくださっている。
とろ…ッ。
あぁっ!
今わたしの
なんというコトでしょう!!
もっと妾を観て!もっと触って!もっと愛撫して!もっと気持ちよくさせて!
いままで過去の惨劇に囚われて
そしてそれは同時に、傷つけられ、辱められたアソコが「もう大丈夫だよ」とわたし自身を赦してくれたようにも思えてなりません。
愛撫に身を任せたまま、ウットリと閉じるまぶたから、涙が幾筋もながれるのを感じます。
やがて。
軆の奥から女の高まりが急激に押し寄せたかと思うと、目の前が幸せな閃光で充たされました……。
* * *
「ハデにイッたなぁ……どうすんだコレ」
お姫サマ抱っこで失神した詩愛をベッドに横たえたオレは、伸ばした腰をトントンと叩きつつ、スカートから濃く染み出した愛液を情けない思いでながめた。
「スカートとか下着とか、換えてやった方がイイのかな……なァ?」
返事がない。
「――団長さん?……中尉どの?」
やっぱり返事がない。
――あいつらめ……。
さんざヒトを焚きつけといて、あとは知らんぷりかよ!
しかし着替えさせてやったとして、いざ目を覚ましたとき自分のショーツが男物に替わっていたら、彼女はどうおもうだろうか。
――まさかハダカを見た責任を取れだの何だの、メンドくさいこと言って来やしないだろうな……。
結局、考えるのを放棄して そのまま上から毛布をかけてやり、寝室の電気を消した。
部屋に籠もる濃厚な女の匂いとくちびるに残る柔らかな感触すらなかったら、先程の光景はオレの疲れた脳が生み出した幻覚かと想ってしまうくらいだ。
台所に行き、作りかけの魚料理を皿に移してラップをかけ、冷蔵庫に。
返す刀でいつもの銘柄の缶ビールを引き出すと、リビングに籠もった艶めかしい香りを追い出すため、ベランダのガラス戸をひらいた。
雨の気配を
高台にあるこのベランダから見る都市の夜景。
――そういや今この瞬間にも『美月』と『フクロウ』は、あの店で働いているんだな。
またミョーなコトにならなきゃ良いが、とオレは飲み慣れたビールを味わった……。