※この作品はR-18です。

試製・転生請負トラッカー日月抄~撥ね殺すのがお仕事DEATH~【18禁版】   作:珍歩意地郎_四五四五

118 / 220
     〃    (7

「キサマ!謀(たばか)りをったな!?」

 

 流血する手首をおさえ、憲兵隊の背後に下がってドレイド卿はうめいた。

 

「耄碌(オイボレ)どころか闘気、剣筋!いずれも衰えておらぬわ」

「ハ!そっちァ長年の美食と飲酒で腑(フ)抜けてンじゃねェのかァ?」

 

 私の言葉ではない、なにか別の勢いが口から勝手に飛び出した。

 

「よく見りゃァ腹ぁダルダルじゃねぇか。ウ(・)チ(・)の(・)中(・)隊(・)じゃ、弾薬運びの補充兵でも失格だぜェ」

「――抜かせ!」

 

 それでも驚くべき膂力で、相手は片手づかいに大剣を薙ぐ――のは見せかけだったか。

 剣の柄が血のりですっぽ抜けたらしく、巨大な手裏剣のようにコチラに飛んできた。

 

「うワッ!」

 

 ステップ・バック!

 だが何かにカカトがけつまづき、仰向けにひっくり返る。

 その反った胸先を、危ないところで大剣がかすめ、背後に飛んでいった。

 

 ギャァッ!

 

 悲鳴が上がった。

 槍を構え、私をニラみ囲む10人ほどの第二憲兵隊。

 そのうちのひとりが、トバッチリで腹に大剣を突き立て崩れ伏す。

 で?自分はナニにつまずいたんだクソが!と体勢を立てなおし横目で見れば。

 なんと……股間を押さえ白目でヨダレをたらして失神している“おサル”のジョージだ。

 

 アヤしい雲行きを察知したのか。

 

 巫術師たちが水を吐く銅像どもの処置を終え、逃げるように撤収してゆく。

 あとには、いまだ生身の女騎士だけが裸身のままナヨナヨと、ピンク色のアヌス《肛門》に剃毛されたヴァギナ(女陰)、そこへ赤と青のケーブルがついた性具をイヤらしく挿入された姿で取り残された。

 

「ものども!敵は老人(ジジィ)だぞ!不埒者(ふらちもの)を討ち取れィ」

 

 ダッ!と右手の一群5人が一斉に槍を突き立てた。

 見れば、ヤツらが装備する槍の穂先は三稜となっている。

 正面から見ると三芒星のかたちをした、キズの治りにくいタイプ。

 

  

【挿絵表示】

 

 

 ――こうなりゃ先手必勝!

 

 私は素早くその槍ぶすまをかいくぐった。

 転瞬、すぐさま一人に狙いをつけ、仕込み杖の白刃をふるう。

 

「覇(ハ)ッ!」

 

 反りを打たせた戦場刀ではない、ただの直刀。

 ゆえに、残念ながら刃筋のキレがとノリがイマいちだ。

 それでもバターのような手応えと共に首がひとつ、勢いよく転がった。

 血飛沫もあまり吹き出ず、まるで粘土細工のようにヤツのブーツに突き当たる。

 

 ――暗殺剣『鎌鼬(かまイタチ)』……。

 

 自分でも驚くほどのワザの冴え。

 怒りと憎しみが身体の不調を吹っ飛ばすのか。

 脚の痛みはウソのように消え、老いた身体がみょうに軽い。

 往年の剣技がそのまま、いや120%増量(当社比)で戻ってきた感覚。

 

「きっ!貴様ぁ!」

「ダレがキサマか」

 

 抜く手も見せずサクッと投げる棒手裏剣。

 もしもの時のために、身体検査もすりぬける位置で隠し持っていた暗器。

 それが『貴様』と叫んだ囲みの一人に刺さり、相手は眼球をおさえ水盤上をのたうちまわる。

 

「口にァ気をつけな?ボウズ……」

 

 ザワっ。

 ようやく囲みに動揺が奔(はし)った。

 狼狽した視線が、小動物めいた色合いで交錯する。

 そういや昔、ガキどもを折檻するため相手のキ○タマをいたぶった記憶が。

 

 ――あれは……どこだったか……?

 

 思い出せない。

 そういや輝く建物やみょうに明るい街灯。

 馬も繋いでいないのに走る車があった――ような。

 考え込む私の目前で、オマエ行けよ!いやオマエが!と押しつけ合い。

 

「ハイ、諸君らに質問――」

 

 ビュッ!と刃を一旋させ、私は血のりを払い清めてから囲みを睨めまわし、

 

「さっき、オ(・)レ(・)のわき腹へブッソウな“三稜槍(みつみね)”を当てたのは――どこのクソ野郎だ?」

 

 沈黙。

 

 まるで校長室に呼び出された中坊のようにうなだれ、オレの視線から逃げる。

 

「ナニをやってをるのぢゃ!相手はひとりぞ!」

 

 ドレイド卿は苛ついた声で、猟師が犬をけしかけるように第二憲兵隊をドヤした。

 すると。

 おどろいたことに第二憲兵隊のひとりが、

 

「……じゃぁドレイド卿。お先にどうぞ」

 

 一瞬の空白。

 左手首の出血をおさえる男は、私の方をチラチラと恥じ入る様に盗み見つつ、

 

「なっ!なにをいってをるのぢゃ貴様!命令が聞けんのか!」

 

 しかし、治安維持部隊にしては禍々しい装備をする第二憲兵隊たちは動じることなく、

 

「だって……なぁ?」

 

 恨みがましげな眼を交わしながら、

 

「おれたちの任務は、あくまで市民暴動の監視でしたよね」

「そうだ、そうだ。警戒線の維持と不審人物の尋問、私財没収(カツアゲ)だぜ」

「バカ!しッ!――こんな“化け物”が出てくるなんて、聞いてませんよ」

 

「……直属の上官でもないクセして」

 

 さいごにボソッと呟かれたこの言葉は、ほかの隊員たちの共感をよんだ。

 

「自分ら、労災手当もないし……」

「休業補償だって有給休暇だって……」

「このまえ土日休めたの、もう3ヶ月前だぜ?」

「おれは46連続出勤だよ……こないだ血尿が出た」

 

 と、まるでブラック商会の丁稚小僧めいたグチをたれはじめる。

 

「あ~あ、こうなったら隣国で募集してる武装警備員にでも応募すッかな」

「あそこ支払がイイよなぁ。この国から銅山の権利買い取ったくらいだし」

「経験者や技術者は、とくに優遇されるらしいぞ?」

「ウチにも、移籍した親戚から誘いがあったナ……」

 

 ガン!とドレイド卿は水盤に地団駄を踏んだ。

 

「あー!ワかったワかった!……よいか?コイツを討ち取った者には、褒美として金一封ぢゃ!」

 

 えぇっ!?と第二憲兵隊員たちは色めく。

 だがすぐに勢いは消沈し、疑心(うたがい)まんまんな表情(かお)をうかべ、

 

「ンなコト言ったって、どうせ500ソル(円)とかじゃないんスか?」

「どこかの島国にある防衛隊の、爆弾処理手当じゃないんだから……」

「残業代だって、このところズッと未払いですよ?それにサビ残も……」

 

 不満タラタラな第二憲兵隊たち。

 それを前にして、私は剣を構えたまま呆れ果ててドレイドを見やり、

 

「おまえぇぇぇ。そのうち労基署に訴えられるぞ……?」

「やかましい!こっちも財政難なのだ!!」

「そりゃぁ……なぁ……」

 

 王女の言うとおり、アレだけ懐に入れてたら、給料も払えなくなるだろ。

 皇国の政治を『搾取政治』だなんて、よく言えたモンだぜ。

 よく見りゃ顔も肥太りやがって、ただのブタ野郎だ。

 

 

「オマエ等……よくこんなヤツをガマンしてるなァ」

 

 すると、第二憲兵隊の一人が、

 

「うるせぇ。オレたちだってガマンしてるんだ」

 

 は!?とオレが驚く間もなく、

 

「だいたい前から気に入らなかったんだよな、このジジィ」

「聞いたかよ?さっきの。だいぶタメこんでるらしぃじゃねェか」

「自分のアニキ、西方の砂漠で戦病死しました……アレが本当なら許せない」

 

 不穏な空気。

 

 憲兵隊たちの槍先が、スィ、と私をはずれる。

 考えてみれば、まくら屏風で視線をさえぎられた空間。

 足もとの祭り気分な大群衆から隔絶された大噴水の最上段だ。

 ココでは何がおこってもおかしくはない。たとえそれが「高官殺し」であっても。

 

 と――その時。

 

 大噴水広場から、さほど遠くない場所で爆発音が響く。

 足もとの群衆の間からどよめき、悲鳴と怒号。

 ややあって鳴りわたる警笛の音。

 

「な、なんぢゃアレは!」

 

 ドレイド卿のことばに、爆発音!?とカンのいい憲兵隊のひとり。

 屏風をどかし、腰から携帯型望遠鏡を抜き出して彼方をながめる。

 

「どこだ!?」

「旧・火薬塔のほうで煙があがってる」

「おそらく燃焼系の液体が使われたな?黒煙がスゴい」

 

 隊員たちがののしり騒ぐなか、

 

「……そうか、キサマ」

 

 なにをカン違いしたのか、ドレイド卿はオレをギロリとにらむ。

 

「図りをったな!どうりで独り、ノコノコ出てくるワケよ……」

 

 ピン、とコチラも即座にヒラめいた。

 ラッキー!この誤解に乗らない手はない。

 とりあえず余裕綽々“してやったり”な顔をみせ、

 

「ようやく気付いたな――アホが!」

 

 ガッシィィン!

 

 オ(・)レ(・)は剣を握ったまま、両腕を前でクロスさせた。

 なにか新手の剣法だと思ったのだろう。まわりの憲兵隊がザワッ!とたじろぎ、二、三歩退きながら身構える気配。

 

「もうじき爆破工作班がここに着く。そうなりゃ、この大噴水ごと木っ端みじんだぜ!」

「バカな!」

 

 狼狽(うろたえ)をムリに押し殺したような声でドレイド卿は叫んだ。

 

「ハッタリもいい加減にせィ!ならばこの“生き銅像”たちは?どうする!」

「――それがナニか?」

 

 先ほどのお返しとばかり、オレは“鼻ホジ”な勢いでメンド臭そうに応えた。

 

「どうせオレも先行き長くないし、ここで貴様と“相打ち”ができるなら本望だァ」

「え、えぇいみなの者!はやくコイツを始末せい!――って、なんとォ!?」

 

 まさしく何としたコトか。

 第二憲兵隊の面々は、われ先にと最上段にかけられたハシゴをつかい、下段へと逃げ出した。

 

「バカな!ハッタリだというのが、分からんのか愚かモノが!」

 

 一瞬、憲兵隊たちの動きがとまる。

 だが次の瞬間!

 

ドォッ!ゴォォォォォ……ンンンンン!!!

 

 まえよりも一層近いところで爆発音。

 ガラスの小片が飛んできて最上段の水盤に跳ね、こなごなに割れた。

 群衆の騒ぎが大きくなり、女、子供の悲鳴がさらに近くで聞こえるようになる。

 

 ――おいおいマジかよ……。

 

 算を乱した第二憲兵隊たちが、目隠しびょうぶをケリ落とし、ワラワラとハシゴへ。

 こういうときには集団で殺到し、あげくハシゴが倒れて共だおれが“お約束”だが、そこはさすが憲兵隊。訓練されているとみえ、規律正しく、順番に、素早く降りてゆく。あの片目を失った隊員も、皆とおなじく順番に。

 

 あっけにとられるドレイド卿の背中にむけ、

 

「さぁ――のこるは貴様とオレ……」

 

 内心、半分少しアセりつつも、だが半分は実に爽快に、オレは叫んだ。

 

「“サシ”で――勝負だ!」

 

 言われてドレイド卿は辺りをみまわした。

 すでに第二憲兵隊の姿はキレイに影もかたちもない。

 銅像たちが水を吐きつづける中、年老いた2孤の剣士が居るだけだ。

 

 “死”という概念が近づいた時の、神経が研ぎ澄まされる気配をオレは深呼吸。

 

 それは騎馬での突撃であり、

 シンバス(ライオン団)の待ち伏せ攻撃であり、

 トラックを使った目標の轢殺であった。

 

 軍馬の汗と土埃と拍車と剣戟のきらめきと。

 機銃の唸りと迫撃砲の着弾音と兵士たちの悲鳴と。

 そして人工知能トラックのシャレにならぬ殺し方だった。

 

「フン……儂(ワシ)とやろうと言うのか」

 

 ドレイド卿は、落ち着き払って腰に巻く帯革(たいかく)から脇差しを抜いた。

 

 幅広の刀身。

 反りを打たせ長さもある。

 仕込み杖の直剣で相手をするには、キツい相手だ。

 

 ――だが、それがどうした……?

 

 おぼえず上半身が身震い、口もとに笑みがうかんでしまう。

 久しく忘れていた感覚。命を遣り取りする、このギリギリな恍惚感。

 生きるか死ぬかの瀬戸際は、乾いた砂が水を吸うように、老身に驚くほど潤いを与えて。

 

 脇差しを構える相手の顔が、一瞬ゆがむのが見える。そこには無残と荒涼と。

 べつの形とはいえ、ヤツもまた確かに老いているのだと、オレはそのとき悟った。

 ドレイドは宮廷服の肩章にある止め金をはずし、漆黒のマントを脱いだ。

 おそらく動きのジャマになるので、

 

 ――いいぜェ……最高だ!

 

 オレの笑みが深まっちまう。

 対してドレイドほうは、またもやしかめ面。

 オイオイ、そんなカオすんなよ。目一杯愉しもうゼ?

 ジリっ、と含み足で。相手に気取られぬよう間合いをつめる。

 互(かたみ)に剣を背側に配し、左足を前に出す構えをして。

 おそらく勝負は一撃で決まるにちがいない。

 片手剣となった相手の動きを読む。

 

 ――右か、左か……。 

 

 卒然!

 

 相手は大マントをコチラに向けて投げつけた。

 それは投網のようにブワッ、拡がりオレを幻惑する。

 一瞬、視界が真っ暗になったかと思ったその瞬間、真ん中を脇差しが突き抜けた。

 自分でもおどろくほど即座に身体が反応し、ドレイド卿のマントごと脇差しを跳ね上げる。

 颯(サ)ッ!視界が急にひらけた時。

 相手の殺到を予期して身構えた自分のまえに、人影はなかった。

 

 ――クソっ!どこだ!?

 

 跳ね上げたドレイドの剣が下の水盤に落ちる音。

 首をめぐらすも、見えるのは水を吐き続ける哀れな銅像の群れ。

 そしてチンコを千切られ失神する“おサル”とオレが手にかけた憲兵隊員たち。

 

 と……。

 

 水盤のはしで、ガチャガチャ金属音がした。

 駆け寄ってみれば、ドレイド卿が最上段にかけたハシゴを外している。

 

 ――しまった!

 

 ヤツはこちらがマントに気を取られている間、最上段の水盤から一段下へと飛び降りたのだろう。それが証拠に、ドレイド卿はビッコ(ってこれ差別用語か?)を引きながらしてやったりとコチラを見上げ、

 

「ははははh!明智クン!また会おう!ハハハハハハ…………!」

 

 そう言うや、これ見よがしに最上段にかかるハシゴをオーバーな仕草で下段へポイッ、と投げ捨てた。そしてさらに下段の水盤へつづくハシゴを、突き出た腹をこすりながら危ない足つきで降りてゆく。

 最後はすっかり人通りの減った通りを、独りヨタヨタ逃げてゆく後ろ姿。やがてそれがスィッ、と大通りの曲がり角、引き倒された荷車(アルパ)の陰に消えた。

 

「……なんだァ?明智クンって」

 

 そう呟いたわたしに、頭の中で、

 

(――そういう“読みもの”があったんだよ)

 

 という心のなかの“呟き”が心象をまじえて説明する。

 なんだ?20の顔を持つ男?ワケわからん……。 

 

ドカーーァ!……ンンンンン!!!

 

 爆発音が近づいてきた。

 これは、もはや無差別テロだ。

 アフリカでの爆弾攻撃を思い出す……いや、アフリカだって?

 

(――うるせぇ!さっさと撤収だ、このウスノロが!)

 

 また別の気配。

 私を口汚く罵っている。

 なんなのだ、いったいコレは……。

 

 私は、自分の足もとを見おろした。

 四肢を淫らに拘束され、気絶している女騎士。

 股間に、赤と青のライン付き張り型を挿入されたまま。

 口字のワクから伸びて彼女がはめられる手足首の枷につながる金色の鎖。

 わたしは、その拘束用の鎖をちょっと確かめる。持ち重りする感覚と、表面の呪文。

 

 ――この重さ……まさか純金か?

 

 だとしたら――イケるかもしれない。

 私は水盤に転がったままの戦斧をひろいあげた。

 そしてホナミ副長を“ダルマ”にしないよう、狙いを慎重に定める。

 2回……3回目に鎖めがけて振り下ろした斧が、意外にたやすく鎖を断ち切った。

 そこでこんどは欲が出て、この緊急時にもかかわらず、すこし長めに黄金の鎖を打ちきる。

 

「あ……あァ……おまんこぉぉ……」

 

 鎖を切るために女騎士の身体を動かしていると、汗と愛液にまみれた裸体がヌメヌメと動き、トロンと惚けた女の顔が私を見上げた。

 

「アヌスを……おしりを……もっと犯してへぇぇ……イイイイ!!」

 

 そういって自由になった手で、ふたたび自慰をはじめようとする。

 

「ホナミ副長、ホナミ!」

 

 私は女騎士の尻を割ってずぬりと挿入されている青ケーブル付きの張り型。

 それをかなりのチカラでグイグイと揺すってみる。

 

「あひっ!あひぃぃぃ……おシリぃぃのぉぉぉ……」

 

 ガッチリとハメ込まれているのか、抜ける気配すらない。

 青コードを斧で叩き切ろうとするがおもったが、ドレイド卿の言うとおり皮膜が防刃仕様らしく文字通り刃がたたないのだ。

 なんとなく前後にうごかしていると、口が勝手に、

 

「エエかぁ……エエのんかぁ……んぅ?」

 

 などというエロおやじのような、妙なしゃべりをはじめてしまう。

 もしかしたら邪術の名残などもあるのかもしれない。

 

 ――おや?コレは何だ?

 

 よく見れば、張り型の根もと、ケーブルとの接続部にボタンのようなものが付いている。

 

「なんだろう……ポチッとな♪」

 

 シュン!

 圧空(エア)が抜ける気配がして、心なしか膨らんでいたアヌスまわりが少し収まる気配。

 すると。

 

ぬろろろろろろろろろろろろぉぉぉぉぉぉ~~~~~~~

 

 女騎士が腰を猥(みだ)らにグラインドさせるや、ミント臭のあるローションにまみれた30cm以上はある銀色の張り型をひ(・)り(・)だしてきた。

 こんなものを仕込まれていたのか……と私は人体のふしぎに瞠目する。

 ゴロン、と水盤上に転がったその性具のボタンをもう一度押すと、張り型は、

 

 ボッ!

 

 いきなりキノコ型にふくらんだ。

 なるほど、どうりでコレでは抜けないワケだ。

 ムリに引っ張らなくて良かった。ヘタしたら腸ヘルニアになるところだ。

 私は前に挿入されている性具もスイッチを押し、中で拡張されているであろう傘をとじてからユックリひきぬく。

 

「はふぅううううう……んんんんんん……」

 

 なかば気絶しているホナミ副長が、よがり声を上げながら身悶えした。

 ヌメヌメとピンクに上気した肌。そこにうかぶ汗。なよなよと、余韻を楽しむように。

 私は同じようにボタンを押してみる。

 

 ボッ!!!!! 

 

 傘が開くと同時に、太チンの胴体からも得体の知れないイボイボや突起がとびだしてくる。

 それらの先端から、ピンク色の粘液がにじみでてくるのは……これは媚薬の類か?

 

 ――習慣性のあるアルカロイドでなきゃいいがな……。

 

 そんなコトを考えつつ私はあたりを見まわし、ドレイド卿が棄てた黒マントに目を付けた。

 ヘリは玉縁仕上げで縫い目も緻密な、クリップ式の肩章がついた天鵞絨(ビロード)の上物。

 みょうに重たいそのマントを、私は女騎士の裸体にかけた。

 ついでに死んだ第二憲兵隊からブーツをはぎとり、彼女に履かせる。

 おまけにコイツの持つ戦場刀を、黒漆(くろうるし)のサヤごと徴発。

 刀身をチェックすると、黒刃紋でなかなかよさそうな代物。

 仕込み杖は、その場で棄てる。

 さきほど鞘に戻そうとして、その細身の刀身がすっかり反り返っているのが分かったのだ。ドレイドの大剣を大上段からの打ち下ろしからしのぎ、オマケに若い奴の素ッ首を斬りおとしたのである。 鍛えはイイはずだったが、さすがに細身の直刀には荷が重すぎたとみえる。

 

「うぅ~~ん……おまんこぉぉ……」

「こら、あばれるな」

 

 私はどうにか女騎士を抱え上げると、

 

 ――さて……この大噴水からどう降りたものか……。

 

 そう考えたときだった。

 

 ――あのクソ豚が「斧じゃ切れない」っつー頑丈なケーブルがあるじゃねぇか。

「……えぇ?」

 ――『懸垂降下』だよ!ほら、マウ・レン(いそげ)!

「“けんすいこうか”……ってなんジャイ?」

 

 身体が、操られるように勝手に動く。

 慣れたしぐさで、私の手は青ケーブルをホナミ副長のカラダに巻き付けて。

 それは見たことのない結び方だった。だがなるほど、理にかなっている。

 ついで情けない格好のまま水を噴出する王女の台座にケーブルをくぐらすと、ゆっくり女騎士を下の水盤に下ろしてゆく。

 つぎに自分も手ばやく胸にケーブルを巻き付け、相変わらず失神したままの“おサル”を一瞥(いちべつ)し、最後に王女を見あげた。

 

 秘部をさらけだし。

 おのれの胸をモミしだき。

 各部から水をふきだすミジメなポーズ。

 そこにかつての可憐さや清楚さは、みじんも残っていない。

 アヘ顔で宙空にむけ水を吐き続ける銅像は、なにかの悪夢のなれの果てのようにも見えて。

 

 「さらばです……殿下!」

 

 意を決してそういうや、自分は驚くほどの身軽さで宙空に身をおどらせ、ケーブルのゆるめ加減で、ものの数秒もしないうちに下段の水盤へと降り立った。

 

 チョロっ、と首を出し、水盤から地面をチェック。

 大噴水の根もとでは騒乱が酷くなってきたような気配。

 のぞき見るその前では、バラバラと市民が一方へ逃げている。

 そのあとを、見慣れない格好の市民が、山刀や弓を持って追いかけて。

 

 ――なんだァ、ありゃ。レジスタンスの決起とも違うようだぜ?

 

「……見た目、今回の騒擾(さわぎ)に便乗した第三勢力に見える」

 

 頭の中の自分のセリフに、もはや驚くことをあきらめた私は、そう応えた。

 

 ――いずれにせよブッソウだよ。この娘を安全な場所に隔離しないと。

 

 もうひとりの心象が、私に退避をうながした。

 青ケーブルをひっぱり下ろし、おなじ作業を数度繰りかえす。

 どうやらコッソリ大通りに降り立ったころには、辺りに人の姿は無かった。

 

「おぃ――歩けるか?」

「うぅん……マイケルさまぁ……ホナミのおシリを犯してへぇぇ……」

「……ダメだこりゃ」

 

 私はモジモジとみじろぐ女騎士を背負うと、なるべく目立たない路地裏の方へ向かう。

 

 不思議なことだった。

 

 あれほど体力が衰え、ヨボヨボだった自分が、いまは全盛期の気力を取り戻したかのようにハツラツとしている。この動乱のせいだろうか。だとしたら、やはり人間つねに何かテンションをかけられていないとダメなんだなぁ、と実感せざるを得ない。

 

 ウラ路につぐウラ路。

 左右を気にしながら小路をわたり。

 下水の流れる暗渠(あんきょ)わきの側道を通って。

 哨戒ポイントに歩哨の消えた警戒用の柵をすりぬる。

 

 その時だった。

 

 行く手のほうで剣戟(けんげき)の気配。

 かけ声や、はやし立てる言葉がつづき、騒がしい。

 雰囲気では、どうも一人の目標を大勢が取り囲んでいるようだ。

 

 ――ッち!

 

 “荷物”を背負ったままでは、ワキを通り抜けることすら出来ない。

 とりあえず迂回路をさがすために状況を確認しようと、物陰から首をのばす。

 

 もはや見慣れた感のある重装備。

 またも第二憲兵隊。その数――ザッと15人ほど。

 

 思ったとおり、一人の剣士が小さな広場でまわりを囲まれ、刺叉(さすまた)やトゲ付きの棒などで絡めとられつつ、剣でジワジワとなぶられている圧倒的に不利な状況。

 だが、遠視ぎみな私の老眼は、そこに驚くべきものを見た。

 

 ――あれは!

 

 信じられない。もはや進退きわまったように見える、満身創痍な平服姿の長剣遣い。

 それがかつての旧友、特殊騎士団『風虎隊』団長の顔にそっくりだった。

 しかし――若すぎる。おそらくヤツの息子か縁者だろう。

 だとしたら、見棄てる理由などあるはずがない。

 かつて、裏庭で決闘をした記憶……。

 それがありありと甦えって。

 

 カッ!

 

 全身の血が、熱くたぎった。

 とりま、いそいそと背中のメス臭い荷物を下ろす。

 そして長めの脇差しとも言える、徴発した戦場刀の鯉口をきった。

 いまや完全に、第三特殊騎士団・龍騎隊のマイケル団長は復活していた。

 この老体のドコにこんな気迫が残っていたかと疑うほど、私の胸は戦いの予感で沸き立つ。

 

 とうとう長剣遣いがよろけ、片膝をついた。

 それを機に、私は物陰から雄叫びをあげて一群のなかに飛び込んだ。

 まったく考えもしない、衝動に支配されての行動。闇雲な突撃本能だった。

 

「おらおら、おゥるぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!111 」

 

 ギョッとする間もなかったろう。

 たちまち二人ばかり、首と胴が泣き別れとなり、辺りに鉄臭い血けむりがただよう。

 

 ――局地・制圧剣『烈風(れっぷう)』!

 

 二つの首が地面に落ちる前に、変化する刃筋でオレの切っ先は三人目の頸動脈を喰らった。

 声にならない声をあげ、この第二憲兵隊員は鎧のすきまから血しぶきを上げ斃れ伏す。

 

 おぅ、という捕り手たちの声。

 

 しかしこの一群は、ヴォルド卿を警護していた連中より骨があるらしい。

 たちまち態勢を立て直し、凶刃をそろえむかってきた。

 訓練された波状攻撃。そうとう手慣れた動き。

 

「しゃらクセぇ!命のイラねぇヤツぁ――どいつだァ!?」

 

 戦場刀を肩にかつぎ、見栄を切りながら周囲をにらむ。

 

「生命保険かけてあるヤツから、かかってきな?」

 

 そして脇であっけに取られる血まみれな男に向かい、

 

「ヨォ!お前ェ“虎の字”……レスコーフ家のせがれだろ?」

 

 驚いたような緑色の瞳が、オレを凝視する。

 

 まちがいない。

 

 この顔――あの砂漠の特殊騎士団・団長のせがれだ。

 

 憲兵隊の一人が怒声をあげ横殴りに斬りかかってきたが、他愛もない。

 『烈風』の変化技『鎧(よろい)斬り』で脾腹を存分に断ち切ってやった。

 金属音を響かせ、砂袋のようにくずれおちるガタイのいい第二憲兵隊員。

 

「オヤジはどうしたァ!――セルゲイのヤツは?」

 

 またひとり、血気さかんな命知らずが剣を振りかぶってきた。

 すると、こんどはオレが動くより先に、血まみれなこの若者が先に動く。

 

 オレは確かに見た。

 

 一の太刀を陽動とし、二の太刀に軌道の読めぬ必殺の刃筋をこめる、砂漠の陽炎(かげろう)めく剣。

 風のように剣が唸(うな)り、たちどころに愚か者は深々と逆袈裟に斬られ、ぐうともいわず骸(むくろ)となる。

 

 ――まさか……風塵剣(ふうじんけん)!?

 

 残心をとりながら瞠目(どうもく)するオレに対し、この青年は見知った皮肉な笑みを浮かべ、

 

「あんた……マイケルか?」

 

 




さぁ!
いよいよ次回では、この世界の理由と関係が語られます。
剣と魔法の異世界へ、あるいは1960年代のコンゴへ。
主人公が彷徨するのは、何故なのか。またその理由は?

仕事もますます忙しく!
また海外に池という話もチラホラ。
(精鋭読者さまたちのためにも、断固拒否!)(フンス!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。