※この作品はR-18です。

試製・転生請負トラッカー日月抄~撥ね殺すのがお仕事DEATH~【18禁版】   作:珍歩意地郎_四五四五

123 / 220
第50話:とある転生処分(BLエロ注意

 

 風邪から復帰しての数日は、クソ忙しかった。

 

 出社するや、所長の腰ギンチャクである“イタチ面”に呼び出され、臨時の轢殺目標を4件もあてがわれた為に、初日と二日目は会社にすら戻れないしまつ。本来対面でやりとりする溜まっていた書類も、お局サマの許可をえて電子決済とリモート処理で済ませるほどだった。

 その反面──みょうに身体は快調。アタマの回転も早くなり、そのうえ“真剣の立ち会い勝負”を切り抜けたような、一種ヘンな度胸がついたようでもある。朝会でのつるし上げも、“イタチ面”のイヤミも全くコタえない。一応ヘコヘコしてみせるが、腹のなかでは心底、

 

 ──哀れなヤツ。

 

 ……としか、思えなくなっているくらい。

 心境の変化か、あるいは自分の中で、何かが変わったのか。

 “待ち伏せ”という言葉に、前にも増してみょうにときめくようになり、轢殺目標(ターゲット)を待ち構える夜間の張り込みも、もはや苦にならない。

 そのため、与えられた4件の『転生幇助活動』も2日連続で完遂させてしまい、1日おいて今夜は3件目というながれとなっていた。

 

 しかし。いいことずくめ──というワケでもなかった。

 

 3人目の轢殺目標を狙う夜間の張り込み。

 二次電源が強力なので、パワーユニットを起動させずにエアコンを使い放題な居心地の良い轢殺トラックのキャビンにあって、トラック制御用のスーパーAIが、ひそやかに囁いた。

 

『マスター……目標が来ましたわ』

 

 コレ、なのだ。

 DATA消去された【SAI】の代わりとなる新AIが悩ましげな女の声で。

 わずかにハスキーなのは、本機なりの“イイ女”を演出するのだろうか。

 コチラへの呼びかけも“Luteni(中尉)ドノ”から“マスター”に変わって。

 

「どこだ、【バンディ】?ダット・サイトで示せ」

『ヤですわ?マスターったら、もう!』

「──あぁ!?」

『その名前はヤメて下さいと!このまえ申し上げたじゃありませんか』

「いーから!は・や・く!」

 

 もし【バンディ】に身体があったなら、オレはコイツの頭をむんずとワシづかみしに、グリグリと運転席のAピラーへ押しつけてやったコトだろう。

 

「仕・事・し・ろ!」

『……はぁぃ……』

 

 スネたような声と共に、フロントグラスへ指示マーカーが投射される。

 

 そう。

 新人、いや新機AIのコイツは、こっちが風邪で伏せっている間、なにをトチくるったか自分は女性人格であると再認定し、休み明けに事業所の『運行用・簡易健康診断』をクリヤしたオレが運転席に乗り込んだとき、いきなり女ことばで話しかけてきたものである。

 キモをツブしたこっちは、あわてて“ロック”ヨシムラの親方に掛け合い、技術部でAIの再検査を依頼して半日つぶしてしまう。しかし、とくに業務遂行上、問題はないとの解析結果が出るという信じられない判定にオレは愕然としたものだ。

 

「運行する上で問題がないなら、技術部としては上層部には具申できねェよ」

「えええ……」

 

 オレは精一杯の不満をこめて、

 

「いきなり自分を“女”だと言い張るAIですよ?命預けるには、なんか怖(お)っかなすぎでしょ……」

「現状の解析と、当該機の状況認識・および処理能力は、標準と変わらん。いや、標準以上のスコアを出している。ヘタに手ェ加えないほうがいい」

 

 ──でも……なぁ。

 

 詩愛。

 美香子(美月)

 女トラックドライバーの朱美。

 実質的な総務の主力である『お局サマ』。

 

 仕事のON/Offを問わず、これら女性に翻弄(ほんろう)されているのだ。

 せめて仕事中は、女ッ気無しですごしたいのだが、運転席でそれを言ったとたん、逆ギレ気味に上位者であるこのオレに向かって、ヒステリックに猛抗議してきたモンだ。

 

 女の権利が──。

 男性の横暴──。

 支援団体に──。

 私は哀れだ──。

 

 なんてこった、である。ヒスまでモノホンの女くさい。

 これじゃ車内に一匹“ツイフェミ”を飼ってるようなモンじゃないか。

 所長の『アシュラ』にもコッソリ掛け合うが、なんとAIの割り当てに関しては、自分の所掌外だとのこと。どうも転生協会の、もっと上から指示が出ているらしい。

 

「さらに上って、どのレベルです!地区本部長ですか?それとも──」

「それは……一介のドライバーであるキミが知らなくてイイ情報だよ」

 

 このまえ、オレがドスを効かせて脅しをかけたのが、いまだ作用してるのか、所長の応対はいまだ腫れ物に触るような丁寧さだった。

 

「うまく行ってるなら、それでいいじゃないか」

「そんな、所長ォ……」

「ほれほれ!さっさとノルマの4人を片付けて異世界にブッとばしてみせろマイケル君!」

 

 所長室を体よく追い出されたオレは、すごすごと地下の大駐車場に戻り、運転席によじ登る。

 

『ご納得頂けまして?マスター』

「う……まぁ大丈夫なようだな」

『ヒドいですわ?イキなり検査だなんて!』

 

 出庫の際、またしても整備部の親分である“M”が、不気味なニヤニヤ笑い。

 それが5日前……いや、もう深夜で日付が変わっているから6日前か。

 

 

「ホラ。この人物ですわマスター」

 

 フロントグラスの指示マーカに示された人物。

 それは、白ブラウスにチェック・スカートの制服を着た女子高生。

 艶やかな長い髪が夜風にゆれ、ピンクのリボンが夜目にも印象的に見える。

 

「おぃぃぃ──【バンディ】?」

 

 間違えてるじゃんか……もう!

 だがオレの口調に、コイツは黙ってズーム画像。

 暗視映像をより強力にして、女子高生の顔をアップ。

 その横に轢殺目標データの3D画像をならべ、二つを合致させる。

 

「あ……」

 

 なるほど。目標は女装のうえ、かるく化粧をしていたのだ。

 

 例によって“連続強姦魔”の少年だった。

 たしかに少女とも見まごうルックスの良さ。それを利用してキレイ目のOLや女子大生に近づき“道具”を使って被害者を襲うのが手口らしい。体液を残さないので証拠不十分のため不起訴処分になるが、使用する“得物”がイボつきの凶悪な“極ぶと”なので、一様に被害者は経験者/未経験者を問わず陰部に流血の傷を負っていると、説明書のDATAにはあった。

 

 3Dホロ付きの轢殺手配書を検索したとき、【バンディ】はハスキーな声を甲高く強張らせ、憤慨(ふんがい)してみせたものである。

 

『──非道いですわよねマスター!女性の敵ですわ?』

 

 この前に轢殺して異世界にぶっ飛ばした2件。

 1件は、登校する小学生の列に突っ込んだ、精神科に通院歴のある飲酒運転の中年。もう1件は、ソープの予約に遅れそうになり、アクセルとブレーキを踏み間違えて多重交通事故をおこした半ボケ老人。

 それに比べれば、こんどは少しばかり歯ごたえがありそうな予感。ちなみに中年は、野生動物さえ凍る極寒の大地にトナカイ使いとして。半ボケ老人の方は、なんと親から両足を切断されて“哀れみ乞食”を生業(なりわい)として暮らす黒人少年に、それぞれ転生していた。

 

 しかし、このところ転生協会が『仕事人』めいた色合いを強くしていると感じるのはオレだけだろうか。ほかのトラッカーに聞いても「心置きなく転生させられる」とか「胸がスカッとするので業務が楽しい」とか、そんな答えしか返ってこないが……。

 

『マスター。“ブタ”は、いつものタバコ自販機に向かいました。そこで仕留めますか?』

 

 そう。そして何より、この手の婦女強姦がらみな轢殺目標(ターゲット)だと、新生【バンディ】は殺る気マンマンなのだった。【SAI】でさえ“ターゲット”と呼んでいた物を“ブタ”呼ばわりである。

 

「まて……ツレがあるかもしれん。もう少し様子をみよう」

『そのようなDATAは、轢殺の手引きに見あたりませんが』

「まぁ、見てろ」

 

 フロントグラスの一部をズーム映像に変え、暗視モードで見守っていたオレがそう答えたのは、べつに何の根拠があったわけでもない。しかし最近は、ここでも何か“偵察兵の本能”というか、“死線をかいくぐるためのカン”じみたモノが最近は働き始めたように思えてならない。

 言ってみれば、あの豪雨の夜。黒い轢殺車に獲物を横取りされ、ずぶ濡れになって正体不明のトラックを追いかけ、それがアダとなって風邪をひき前後不覚に寝込んだ時から、自分の中で何かが変わったようでもある。自己変革を遂げたのは、どうやら【バンディ】だけではないようだ。

 

 そして──そのカンは、当たった。

 

 ゆっくりと女子高生が、ひとけの無い通りの自販機に近づく。

 すると、物陰からひとりの青年が近づいてきた。

 互に視線をまじえ、みじかく二言、三言。

 それが合図だったのだろう。

 

『会いたかったよ……?』

 

 キャビンに伝わる望遠マイクの音声。

 そう言うや、いきなり青年はターゲットのアゴをクイッと持ち上げ、少女めく目標の柔らかそうな唇に熱烈なキス。そして初夏ともあって薄着をしていた少年を抱き寄せ、そのチェックなスカートをまくり上げるや、ピンクのヒモパンに包まれた“きゃんたま”をまさぐって……。

 

 ──なんだよコイツら……BLかよ!

 

 呆れつつ、オレは青年の『転生指数』をチェック。

 ビンゴ!いつぞや美香子を拉致しようとしたヤクザ並みの数値はある。

 しめた、とオレはニヤつく。調子がいいうちに件数を稼ぎ、今月の月次成績に加えるか。

 

「ようし……行きがけの駄賃に、青年の方も殺っちまおう!」

『あぁん、待って下さいマスター』

「──へ……なんだぁ?」

『アタクシ、もう少し観たいですわ……』

 

 ガクぅっ!

 オレは運転席でハンドルに突っぷして脱力した。

 【バンディ】のヤツ、いつの間にか『腐女子』属性まで獲得したのか?

 

 彼方の熱烈な愛撫にオレはゲンナリし、勝手にしろと携帯で次のターゲット情報を勉強。

 ふとメーターパネルを見れば、録画モニターが勝手に起動している。どうやらこのヤオイ好きAI、あのBLカップルの行為を記録しているらしい。呆れたね、どうも。

 

 かれらは自販機ヨコから、すこし離れた場所にある暗がりへとうつる。

 暗視モードが照度を明るくして自動追尾。やがてふたりの行為は激しさをまし、女装する少年の白ブラウスがはだけられ、パッドを入れたブラジャーが露わになる。華奢な鎖骨と、抜けるように白い肌。ほそい頸《くび》。そこを痩せぎすな青年の舌が舐めて……。

 

『ムッハぁぁぁーーー❤️!❤️!』

 

「おぃおぃ、カンベンしてくれよ……」

 

 なんと。コイツ、AIのクセに鼻息を荒くしてやがる。

 オレはヤレヤレと首を振り、ため息をついて手もとの資料にもどる。

 

 ──4件の最後は中年の男、か……。

 

 感覚的にいって、コイツもチョロそうな相手に見える。

 独身。未婚。判で押したような生活は待ち伏せするのにちょうどいい。

 輸出管理規則に該当する会社の技術データを第三国の企業に流出させ、利益を得ている。

 

 ──おまけに流出先の企業は、相手国陸軍の隠れ蓑ねぇ……。

 

 住処は親の遺産である郊外の一軒家。地図で確認すると、まわりの路が若干せまいのが難だが、トラックでハネ殺すぐらいの場所はありそうだ。監視カメラが少ない地域であることも味方している。

 

『イヤっ……そんなトコ、さわらないで!』

『とかいって。カラダは、そうは言ってないみたいだぜ?』

『いぢわるッ!アッだめェッそんな──あぁぁぁん!もっとぉ♪』

 

 甘えたような少年の媚び声。青年のささやき。

 そして聞きたくもないあえぎ声を、望遠マイクがひろってくる。

 

「おい【バンディ】!──音声を切れ!!」

 

 さすがにタマらずオレはAIに命令した。

 

「ヤツらの乳繰り合いが終わったら、知らせてくれ?」

『マスター』

「なんだ、終わったか」

『覆面のPC(パトカー)が来ます──車内に生命反応2体』

 

 なにィッ!資料から顔をあげ緊張する。

 

 暗視カメラの画像からは、自販機から距離をおいた暗がりで2人がアヘアヘと姦(や)っている姿しか見えない。

 と、左手から黒のセダンがゆっくりと近づいてきた。2人の“営み”は今が最高潮らしく、小刻みに動きまくって自分たちの世界に入っているため、車には気付いていないようだ。

 やがてPCが、自販機近くに停まる。そこから暗視用──おそらく旧式な赤外線──の光がのび、行為中の2人をてらす。もちろん赤外なので、自分たちが照射されていることなど彼らにはわからない。

 

 PCの助手席から、長身の男が出てきた。

 この初夏の蒸し暑い夜に、短めのトレンチ・コート。

 ただし毛織りのソフト・ハットは、夏向きのパナマ・ハットに変わっている。

 うげぇ、と思わずうめいた。

 

 ──よりにもよって……銭高。

 

『心拍の上昇・発汗を確認。お知り合いですか?マスター』

「……あの男をチェック。座乗PCのコールサイン・使用無線周波数も記録しておけ」

『Sawa(はい)。識別終了』

 

 

 革靴のかわりにナイケの黒い運動靴をはいているので、彼らは警察たちの接近をすぐ脇に立たれるまで気付かなかった。ともにスカートとズボンを下ろした営み中の姿とあっては、急に逃げ出せるワケもなく。

 銭高は駅弁ファックで結合したままの2人にズカズカ近づくと、

 

『お二方。こんなトコロで──ナニをしているのかな?』

 

 そう言うや、ふたりの結合部をジロジロ見る。

 よせばいいのに【バンディ】がその部分を高解像度でズーム。

 小ぶりなオティンティンが、肌理の細かい腹の上で白いよだれを垂らして。

 なんだ、男かと言う警部補のつぶやき。パナマ・ハットが気まず気に下ろされる。

 

『見りゃワかんだろオヤジ!ナニをしているんだよ』

 

 ぬちり、結合を抜いた青年が逆ギレして、少年を庇(かば)うように精一杯つよがってみせた。

 それを聞いた銭高は、パナマ・ハットをふたたび小意気にチョイとハネあげて、

 

『未成年が、深夜にコンナことしてちゃイカんなぁ』

 

 そしてイキった青年の方をみて、いくぶん冷たく、

 

『キミも年長者ならわきまえたまえ。一応、署でハナシを聞くから』

『えっ……警察?』

『そうだよ?ボウヤたち……ほぅら』

 

 突き出された警察手帳。

 はじめて若者たちの表情に“しまった”という色が浮かんで。

 

『さぁ、そこのパトカーに乗って……ほら』

 

 青年と目標は、ふたりの警察に挟まれて、シオシオと覆面PCの後部座席に乗り込む。

 やがて黒塗りのセダンはモーター音を鳴らし、ゆっくりと監視画面を横切っていった。

 

「なんだよクソ!警察に横から目標サラわれたぞ?」

『せっかくいいところでしたのに!もう!』

 

 ツイてない。

 せっかくあと一歩のところまでいったのに。

 まぁ、いい。今夜はココまでにして部屋に帰り一杯やるか……。

 そうあきらめ、次の目標の資料をしまい、トラックのエンジンをかけようとした時。

 

『待って下さい、マスター!』

 

 いきなり監視画面が切り替わり、近くの防犯カメラにリンクした。

 見るとセダンが脱輪し、電柱に激突してフロントグリルをメリ込ませている。

 PC後部のドアがあけられ、そこから身を這い出すとバラバラに逃げるふたり。運転席側のドアもあき、目を押さえて私服警官がヨロヨロと出てくるや側溝に足を取られハデに転倒する。銭高も後部から目を押さえて出てくると、手探りで運転席の無線機をつかみ取り、ツル巻きコードを一杯に伸ばして送信スイッチを入れた。

 

《緊急・緊急・緊急!警邏(けいら)B425より四三地区・巡回中の全車──》

 

 所轄(しょかつ)系のスイッチを入れ、銭高が咳き込みつつ周辺のPCに呼びかける声がキャビンのBOSE製スピーカーから響いた。

 

『どうしたんでしょう、マスター』

「……たぶん催涙スプレーか、その手のモノを使われたんだろ。青年が代金を踏み倒すために持ってたか、あるいは目標の護身用か、はたまたその両方か」

 

 ツイてないと思ったが、その真逆。

 いまだ幸運は、こちら側の見方らしい。

 おまけにラノベのごとく、恐ろしいほどのご都合主義。

 オレは、まるで守護がついているようだと思いつつ、

 

「防犯カメラをリレーして、動きをトレース出来るか?」

『二手に分かれています。目標ですか?買春目当てのイケメンですか?』

「目 標 に キ ま っ て ン だ ろ が ! !」

『300m先を東に徒歩で逃走中。住宅街を物色する様な動きで蛇行して走っています』

「たぶんチャリか電動スクーターを物色してるな。【バンディ】!先回りしろ!」

 

 スン……と反応がない。

 

「【バンディ】!?」

『わたくし、そんな山賊(バンデット)みたいな名前じゃありません』

 

 このクソAIが!と爆発しかかるが、ここでヘソを曲げられては元も子もない。

 0距離射撃で対戦車砲を照準する射手のように深呼吸を三回。

 

「ようし……いいかよく聞け【バ……」

『…………(ツーン』

「この一件が巧(ウマ)くいったら、オマエにイイ作戦名を与えてや──」

 

 モーターの電力がいきなりハネあがる。

 グワッ!車輪が白煙をあげ勢いよく空転した。

 6輪操舵のすさまじい挙動で横スライドに道路中央へ。

 超信地旋回を使い、大重量のトラックはその場で180度回頭。

 シートベルトをしてなかったオレは、キャビンの中をフッ飛びながら、

 

 ──なんか前にもこんなことあったナー……

 

 そんなことを考えながら、頭を助手席側のドアにぶつけ、目の前の星をながめた。

 猛然と超大出力のパワーユニットがうなる。

 寝転がっている視線の目の前を、恐ろしい勢いで街灯の明かりが流れて。

 その背後では、どこかで見たような三日月が、ジッとオレたちを見おろしている。

 

「ワかってると思うが、まわりは銭高が呼んだPCだらけだ!速度超過でツカまって、トラックを検査されたら、全てがオじゃんだからな?」

『目標と接触まであと20秒』

「く・れ・ぐ・れ・も!轢殺目標(ターゲット)は、まちがえるなよ?」

 

 第1話(5)の悪夢がよみがえる。

 あの間違ってハネた“ウンコ少女”は、どうなっただろうか。

 トラックのスピードが落ちる。フロントグラスに目標のマーカーがうかぶ。

 

『接触まで10秒の位置をキープ。周囲の防犯カメラ、制圧完了』

 

 ──ふむ……。

 

『マップ上における転生実行現場を条件スキャン……半径200m内に3カ所適合』 

 

 3Dマップがうかび、周囲の通行人、走行車両、PCの現在地などがリンクされる。

 自動的にこのAIは、人目がなく転生処置に好都合な場所を選び、その内のひとつを選択。

 

『再加速。目標と接敵します。8、7、6……』

 

 赤信号だけが寂しく点滅する交差点手前で爆加速を中止。

 トラックはモーター音のみで静かに目標へと追いついた。

 

 周囲は取り壊し中の安アパートや遊具のない公園で囲まれる、いかにも寂しい場所だ。なるほどいいチョイス。ここならチョっとやソッと騒いでも、騒ぎになることはないだろう。

 目標の髪は、いつのまにかショートになり、ミニスカートのように短めだったチェックのスカートもひざ丈まで伸びている。 パット入りのブラでふくらんだ白ブラウスも、学校指定らしきエンジ色のスクール・リボンも、先ほどの修羅場を感じさせない。

 

 街灯もとぼしい小さな交差点で、モーター音だけのトラックが静かに接近するのを若い防衛本能がおかしいと知らせたか、少女少年は不安げな顔でふりむいた。

 

『ちょっと、そこのアナタ──お待ちなさい?』

 

 いきなり。

 車外スピーカーで婦女子AIは、如何(いか)にもお姉サマ風な高飛車で呼びつけた。

 

『──タイが曲がっていてよ?』

  

 えっ?と自分の胸もとを確認する轢殺目標(ターゲット)。

 それまでだった。

 トラックの下部から、補足用の黒い触手が何本ものび、女装少年の足首に巻き付いて。

 とっさのことに声もない“彼女”を瞬間、逆さづりにして月夜の星空へと持ち上げる。

 

『ホォォォ──ホッ、ホッ、ホッ!』

 

 うげ。どこからサンプリングしやがったのか。

 それはまぎれもなく玉○砂○子の声とノリだった。

 

『ザンネンだったわねぇえ?強姦魔のボクぅ……』

 

「なに──コレなに!?」

 

 逆さ吊りにされ、垂れさがるチェックのスカート。

 それを必死に押さえ、タマタマが丸見えになりかかるのを必死に防ぎながら、

 

「わたしを、どうしようというの?」

『これからアナタを、たァっぷりおしおきしてアゲルってワケよ!……あ、ドッコイショ、っと』

 

 急にババむさくなるノリ。まさしく玉川○○子のパクリだ。

 さてはコイツ、【SAI】のように遮蔽ブロックをかいくぐり、映像回線をみつけたな?

 ヤツのように殺しの手ぎわに映画のノリが入ったらどうしようか、とオレが危惧するまもなく、このAIは次にどこかで聞いたような口調で、

 

『アンタのように道具を使ってオンナを犯すヤツは──天に代わって、オシオキよッ♪』

 

 若者特有のカンのよさで、トラックが何をしにきたか少年は悟ったようだった。

 逆さづりのまま必死に、

 

「だって!だってアイツら!女のクセに!男に貢がせてポイ棄てしたり、痴漢サギや、パパ活したあと警察に通報するようなコトばっかりして!──ボクにはオッパイも可愛い“ひだ”も無いのに……ボクの方が!女らしいのに!」

『はァ?ナニ言ってるのよアンタ』

「“女”を穢(けが)すアイツらが、許せなかったんだ!」

 

 困惑するAIをよそに、少年は、可愛い顔で必死に叫ぶ。

 

「ボクの方が──女にふさわしいのに」

 

 チッ!という“腐女子”の舌打ち。

 

『アァ、もう!グダグダ言ってンじゃないわよ!』

 

 トラックの下部から新たに黒い触手が二本。それが少年の手首に巻き付き、前を隠す腕を強制的にバンザイさせ、垂れ下がったチェックのスカートから局部を丸出しにしてしまう。

 

「イヤぁっ!やめてぇっ!」

 

 そのまま、ポーズをうつむかせ、強制的に宙空で尻を突き出すバックの姿勢にする。

 数本の触手がさらに伸び、スカートをまくりあげ、あるいは細首に巻き付いた。

 あらわとなる象牙のような白さのおしり。まるで月と皎(しろ)さを競うようにして。

 と──心なしか月がいくぶん青ざめ、叢雲(くも)にその身をなかば隠してしまう。

 その時オレの中に絞首台の心象がうかんだのは、一体どんな連想だったのか。

 

『そうれ……そうれ……』

 

「あん……あぁん……」

 

 ヌメヌメと触手の一本が執拗に美少年のアヌスをなぶる。

 よくみれば、その先端はチンポをかたどっており、先端からは粘液状のモノが。

 そういえば出庫時に『M』が腕組みでこちらにニヤついていたのを思い出した。まさか。

 

 ──あいつめぇぇ!またか!

 

 妙なギミックを新設するときは、オレにもひとこと言えっての!……まてよ?するってぇとナニかぃ?ヤツはこのAIの女性化を……知ってたってコトかい?

 

『おやおや。コドモのクセに、ずいぶんとマセたお尻だこと……』

 

 ピンク色の菊穴を嬲(なぶ)りながら、腐女子AIはシンネリとした口調で、

 

『どうやら、さっきの行為で、もう下ごしらえは出来てるようだねェ』

「そんな!──そんなヘンなもの挿入(い)れないで!」

『大丈夫よォ?せめてもの情けに、ちゃぁんと気持ちよくさせてア・ゲ・ル』

 

 お覚悟!そういうや、チンポを一度夜空にかかげ、

 

 ズン!ぬめりつくソレを、いきなり少年に突き入れた。

 

「ひゃぐぅ……っ!」

 

 子鹿のような鳴き声をあげ悶える少年。

 そのままズメヌメ。くちゅくちゅ。ズボズボ。

 触手のピストン運動が、己の身を蹂躙するに委ねる姿勢で。

 後背位で犯しているため、ターゲットのアヘ顔が見えないのが幸いだ。

 【バンデ……“腐女子AI”は、どこかで聞いたようなセリフとネットリした口調で、

 

『あらあらwけっこうシマリのないおシリだこと。さては“ショスタコー売女(ビッチ)”ってヤツね』

「ウソだぁっ!そんなコトなぃぃっ……ああん」

『サ、こうおっしゃい?……お・姉・え・サ・マ、って♪』

「ヤだぁ……やだよォ!殿方の……ホンモノのオチンポがイイよぉ……」

『マ!失礼な。アナタ本当に女の子志願みたいねぇ。TSしちゃえばよかったのに』

「ダレかぁ……ヘンタイ年増女に犯されてます!ダレか来てへぇぇぇぇ……」

 

 失ッッッつ礼ィなぁぁ!!と“ヘンタイ年増女”は激怒した。

 

『おダマりッ!自分が女性にしたコトと、おなじ行為されてるだけじゃないの!』

「あひッ!あひッ!オシリがぁ!お尻がアツぅぅいぃぃっっ!」

 

 どこかで犬が吠えだした。

 遠くでガラガラと雨戸が開く音がする。

 うるッさいわネェ、と婦女子AIはイラついた口調で、

 

『アンタのような、強姦をやる“男の出来損ない”は──コレでもしゃぶってなさィッ!』

 

 さらにもう一本。繰り出される細身のチンポ。

 一瞬で少年の口をふさぎ、そのまま前後にノド奥まで犯しはじめる。

 

「ムッ……ムグぅぅぅ!!!111」

 

 悲鳴はかき消され、ふたたびあたりはチュパ音と粘液がこすれあう音しか聞こえなくなって。

 

『そう……オシャブリもじょうずネェ……貴方なかなかイイ感じだわ♪』

 

 おぃおぃまさか。

 あの触手にはセンサーが備わっているのだろうか。

 しかしまぁ、そうでもなければ、あんな繊細な動きは出来ないか。

 当惑するオレを尻目にAIの方は、果てもなくかってに盛り上がってゆく。

 

『サ、そろそろ逝ってもらうわヨ?強姦魔のアナタは射精と同時に、この世から消えるの。罪を償うため、前よりも酷い身分に堕ちた姿でね♪』

 

「おごぉぉぉー!(いやだあああ)」

 

『ダメよ!貴方はナニになるのかしら?奴隷かな?乞食かな?』

 

 ふふふっ♪と腐女子AIの含み笑い。

 

『それとも──もう人間には転生出来ないかも。ブタか、ゴキブリか……それともウジ虫か』

 

 触手のなめらかな動きがリスミカルに、そして速くなった。

 少年は抗いつつも全身を染め、なかば身を隠す月の光に、あたかも供物のように。

 サラサラとした髪が。首から下げたスクール・リボンが。触手のピストン運動に揺れる。

 少年もこらえきれなくなったのか、腰を、全身を、触手の脈動に併せ、快楽をむさぼって。

 

 フィニッシュが近いとみたか、このAIはひときわ凶暴な動きで少年を蹂躙し、圧倒・征服した。

 

『ホラ!メス逝きしなさい──ウジ虫ィィィっっ!』

 

 ブルブルッ、と轢殺トラックが、イヤなふるえ方をする。

 少女とみまごう少年もビュクビュクッ!月に向かって精を放って。

 触手に絡め取られ、夜空に高く掲げられたその姿を、オレは声もなく見守る。

 

『ハァ……ハァ……ハァ……❤️』

 

 息を荒げ、腐女子AIはしばらく声もない。

 つーか、AIって息切れする必要なんかあるのか。

 まてよ?ひょっとして『アクメする人工知能』って……珍しいのでは?

 

「おまえ……まさか……射精(い)ったのか」

『イイエ……いいえ、コレはタダのアクメですわ』

「(やっぱりアクメだ)だっておまえ、チンポが」

『なにを仰いますの。これはながいクリトリスですのよ?レディに向かって失礼な』

「いや、どー見たってチン──」

『く!り!と!り!す!もう……おバカ!さ、とっとと異世界にトバしましょうか』

 

 グッタリとした少年は、口と尻を犯されたまま触手に絡めとられ、バンザイをする後背位な姿勢でユルユルとトラックの下に引きこまれてゆく。

 

『この子の“お口”と“お尻”のぐあいがあまりに素敵すぎて、取り乱してしまいました』

「なにか先っぽから出ていたようだが?」

『……ラブジュース!ですわ。それに医療用大麻の成分が混ぜてありますの。騒がれたりしない様にする仕掛け、ということですワ』

 

 なるほど、道理で。

 達した後、少年が静かなワケだ。

 

「……驚いたな。それも『M』のヤツが?」

『それはヒミツ、としておきましょうか』

 

 少年の身体が、完全にトラックへと収納される。

 ボリボリというイヤな咀嚼音。それに振動。

 コイツには、いつまで経っても慣れない。

 ハネあがる消費電力をメータがしめす。

 もう死体は素粒子まで分解されたか。

 仕事を終えた後特有のけだるさ。

 後は部屋での酒を考えるだけ。

 ヘンな光景を見て疲れた。

 アフリカが懐かしい。

 ……アフリカ?

 何故だろう。

 

 ボンヤリしていると、作業が終わったらしい。

 

『マスター。転生処置が完了しました。それと1台、PCが後方より向かってきます』

「微速、前進。交通法規を厳守のうえ、本部地下車庫に帰投する』

『Sawa(はい)。マスター』

 

 ──って、もう02時かぁ。けっこう手間取ったな……。

 

 社の仮眠室で寝ていくか、どうするか。

 うかつに部屋に帰って寝ると、また美香子の夜這い&それを見つけた詩愛のカミナリでうるさそうだ。けど社内は酒類持ち込み禁止だし、まさかトラックの中で飲むわけにもいかない……。

 

 ゆっくり走っていると、背後に回転灯が近づいてきた。

 

『マスター。後方のPC(パトカー)にマーキングされた人物が座乗』

「銭高が!?」

『車内スキャンしたところ、先ほどPCから逃走した個体も一緒です』

 

 ──やれやれ。あの青年は捕まったか……。

 

 しかし相手の方が確保できて居ないので、おとがめも軽く済むだろう。

 広い交差点に出ると、回転灯は市街地のほうに折れていった。

 どうやらまだ少年を追っているらしい──お生憎サマ、だ。

 

 ──あばよ銭高。配下の“サッチー”はどうしたぃ?

 

 遠ざかる回転灯を、多少イジワルな思いで見おくる。

 洗脳され、性技を叩き込まれたであろう女刑事。ガラス越しに見た調教と陥落。

 

 ──まだ、あの『紅いウサギ』に囚われたままなのかぃ……?

 

 “小男”は、あの女刑事を二重スパイにした後はどうするのか。

 まさかいつまでも飼っておくワケにもいかないだろうに。

 それとも『紅いウサギ』のメス奴隷として育成するか。

 そうだ。美香子のことも、ハヤくケリをつけねば。

 あの悪夢のような、ガラス越しの調教ブース。

 女を哀れな牝(メス)人形に仕立てる教導師たち。

 チーフ・レディの『小枝子』『麗華』。

 酒呑みの『菜々』は元気だろうか。

 それにあのフランスのレズ婆ァ。

 詩愛への色目が忘れられん。

 だが、教える技(ワザ)は確かだ。

 駅で披露したアリア。

 “美月”の歌声。

 

 ──ウッカリすると、美香子(アイツ)が本当にプロの歌姫にされ了(ちま)いそうでコワいな……。

 

 高速に乗り、オートで走行車線を定速運転する。

 夜間の無人長距離トラックが、延々とつらなる状況。

 ひと仕事を終えたこともあって、うっかりねむけが出てくる。

 とつぜん“腐女子AI”が、喜びまじりの素っ頓狂な叫び声を上げた。

 

『キタ──来ましたわ!!』

 

 一発で眠気がふっとんだ。

 

「なんだ!警察か!銭高か!?」

『マスターったら!あのケツアゴのコトなんか、だれも言ってません』

 

 こいつ。

 

 だんだんAIとして違和感がなくなってくる。

 それどころか、多少“イヤ味な女”として、フツーに馴染んできている。

 オートの運転だって、こっちが熱でうなされている間に長足の進化を遂げていた。

 横断歩道の歩行者は優先するし、ヤバそうな場所はレーダーを使ってネズミ取りを警戒する。

 まぁ前の【SAI】ほど頼りにはならないが、それでも2線級のAIとして作戦の補助ぐらいは期待できるだろう。

 

『転生映像──転生映像ですわ!』

 

 早いな、と言おうとして『異世界転生には時間的な概念など無意味』なる【SAI】の教えを思い出した。ヤツはこの世界から消えた。神に慈悲というモノがあるならば、ヤツにもどうか異世界転生がありますように……。

 

『ホラ、ホラ!始まりますわよ?』

「運転は?大丈夫なんだろうな」

 

 そんなの!“腐女子AI”はハナで嗤い、

 

『コンピュータにやらせてるから大丈夫ですわ」

 

 お前がその“コンピュータ”とやらじゃナイんかい!という突っ込みがノド元まで出かかるのを辛うじて飲みこみ、『異常事態』と点滅表示の出ている速度の遅い前の物流トラックを追い越し車線に移って抜きながら、オレは差し出されるように伸びてきたアームの先にあるモニターを見る。

 

『さぁて。あの強姦魔。ブタに転生しているかしら……それともウジ虫かしら❤️』

 

 3Dモニターにボンヤリと画像が浮かんできた。

 

 ──半月の夜……。

 

 ──広壮な屋敷……。

 

 ──広い庭園を囲む柵……。

 

 ──その外には、高級そうな馬車……。

 

 ──かがり火が要所に焚かれ、着飾った人々……。

 

 ──騎士官や貴族、貴婦人たち。和やかに談笑する光景。

 

『アレだわ。きっとこの夜会のごちそうに料理されるブタね♪』

 

 ドローンめく流れる様な視点で、画面は豪華な屋敷の中に入る。

 魔照石をふんだんに使った照明は、屋敷の主が相当な資産家ということだ。

 絨毯をしきつめたホールには、すでに華麗な人々が光り輝くグラスに泡の立つ酒を手に。

 中央からふたすじに二階へと、ゆるやかに円を描いてのぼる豪勢な大階段。

 その上を、みな一様に期待をこめた眼差しで見つめている……。

 

 ──あぁ、クソっ!いいなァ畜生!オレも飲みたい。

 

『まさか、人間に転生?……台所の奴卑(ぬひ)にでも、なっているのかしら』

  

 と──魔照石の輝度が、スゥッと落ちた。

 

 人々の着ける宝石や、貴金属の紋章がキラキラと自然発光するだけの闇。

 次の瞬間、パッ!階段の上にスポットライトが丸く闇を切り取る。

 そしてそこから1人の若い女性が、セクシーなドレスを着て。

 身体の要所に煌めく宝石。あるいは高価そうな飾り。

 盛装の装いな老人が、そんな彼女をエスコート。

 おぉ!と人々が賛嘆と拍手をひとしきりに。

 そしてその女性の容貌(かお)は──あの少年。

 自信に満ちた、満足げな面差(おもざ)しで。

 婉然(しとやかに)、男ごろしの流し目を。

 口もとに、蠱惑的な微笑。

 悩殺する、紅い口唇(くちびる)。

 その輝きと照り。

 

『なんでよぉぉぉぉぉォォォォ!!!!11』

 

 ──うわぁっ!

 

 轢殺トラックが車線をまたぎ、幾つものレーンを右往左往。

 ほかの自動トラックからホーンの嵐を浴びせられる。

 

「おちつけ!──落ち着けって!」

『だれが落ちケツよ!なんであの強姦魔が!イイ思いをしてるの!』

 

 腐女子AIの怒りは、ラメのような光沢が奔(はし)る赤いドレスのスリットから美しい脚をのぞかせつつ、大階段を勲章佩用(はいよう)の老人にエスコートされて静々(しずしず)と“降臨”してきた元・強姦少年が、幾人もの美貌な青年貴族や武官に取り囲まれ、恭(うやうや)しく一礼、あるいはドレスの裳裾(すそ)にキスされるのを観るに至って、ヴェスヴィオ火山のごとく噴火した。

 

『ムッかぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!』

 

 ダメだこりゃ。

 

 オレは運転(ドライブ)の優先権を宣言。

 機械的なオート・クルーズMODEで自動物流トラックの流れに乗った。

 

『どういうこと?どういうことですの?』

「知らんがな……」

 

 腐女子の剣幕にオレは一度、首をふってから、

 

「転生は、あくまで本人の“業”に従って行われるんだろ?本人は、これから悲惨な運命を歩むのか、はたまた強姦された側がクソ女で、単にあのガキは“因果の天誅”の道具にされただけなのか……道具となって死んだ“ご褒美”に、来世ではイイ生活をしているのか……」

 

『なっとく出来ませんワ!』

「偶然だな──オレもだよ」

 

 そう言ってAIを手動でカット・オフする。

 とたん、文句タラタラなセリフは、糸が切れた様に静まった。

 見なれないモノを見たためか。それとも“腐女AI”の相手をしたためか。

 何だか急にグッタリ疲れた。頑張った自分のご褒美に明日は偵察のフリしてサボるか……。

 

 “褒美”という言葉がつづいた。

 不思議なことに、それは例の縁結び神社の涼しげな境内を想わせる。

 謹厳だが人情味のある神主。そして彼の娘である現代(いま)風な巫女の『真琴』。

 あの異様なご祈祷いらい足が遠のいていた。いちど美香子の同級生でもある彼女と話してみなくては。

 次いでご祈祷の記憶は、アフリカの夢を運んでくる。落雷時の迫撃砲めいた印象……いまだに忘れられない。

 

 ──そうだ、ガブリエル。ジーミのヤツは、どうしているかな。

 

 あのコンゴの戦場に一番近い酒場。

 時間が出来たら言ってみようときめる。

 だが……とりあえず、今夜の酒をどうするか、だ。

 結局、一番重要な問題が、未解決となったまま残された……。

 




ようやく元の線路に。
過去の登場人物を、出来うる限り並べてみました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。