試製・転生請負トラッカー日月抄~撥ね殺すのがお仕事DEATH~【18禁版】 作:珍歩意地郎_四五四五
「よし【ボニー】。最後にもう一度、非定常シークエンスを復習だ」
『了解致しましたマイケル様。いつでもどうゾ』
「【ボニー】、マスター・ウェポン、ON」
『受領。関係システム自動検索/全デバイス、すべて許容値を確認』
「【ボニー】、二次電源・動力を転生システムへ流入」
『転生システム・オールグリーン。電解槽セイフティ・Off』
「【ボニー】、思考マニホールドMODE『H』
『MODE『H』実行/状況継続を確認。【SAI】サマ、どうぞ』
『あーテステス。本日天気晴朗ナレド、波高シ』
「……なんだそりゃ」
『知らないんですか?日露戦争時代、日本海海戦において……』
「いやソレぐらい知ってるけどサ」
『【SAI】サマの
プンプンと怒ったような声。
今日は夕方からAP同士の“初顔合わせ”訓練だった。
いきなり【SAI】にイタズラされ、醜態をさらした“彼女”である。
その後もアレコレと『先輩』にダメ出しされ、後任AIの【ボニー】はフクれ気味だ。
最後に【SAI】の助けも借り【ボニー】の反応をテストしたが、まァこんなものだろう。
「……どうにかカタチになったようだなァ」
『お褒めにあずかり、光栄ですワ?マイケル様』
『先輩格のワタシからいわせれば、まだまだですがね』
最後にオレは自分でハンドルを握り、夜を走ってなつかしい場所へとやって来た。
ココは、当時まだ轢殺目標であった『フクロウ』を連れてきた夜景の見渡せる高台だ。
しばらく来なかったのは、先般のとおり【SAI】とオレとで心霊じみた体験をしたせいでもある。
誰も居ない、夜風がふく深夜の丘の上の空き地。
肉眼では見えず、【SAI】のセンサーだけに反応する存在。
あのとき、確かにオレの目にまえには、ナニもなかったハズなのだが。
──だが今は【ボニー】も居る……。
出るなら出てみろ亡霊め。
3“人”でバケの皮を剥いでやるぜ!という寸法だ。
丘へとむかう街灯一つ無い真っ暗な雑木林のデコボコな坂道を、車体に揺られゆっくり走っていると、先だってはじめて【ボニー】に【SAI】と接触させた時。の騒ぎを思い出した。
いやはや、コイツの慌てっぷりはスゴかった。AIでも、あまりに理不尽な現状になると、一種のヒステリーを起こすらしい。それとも、コイツは“女性型”だから、そうなったのだろうか。
オレはフフッと思わず笑ってしまいながら、その時のことを思い出す。
* * *
『ウイルスですッ!』
轢殺トラックの車体をギシギシとゆすり“彼女”はキャビンに響く声で絶叫した。
『ウイルス!浸透がたのウィル・巣が、ワタシの思考野にぃぃッッ!ア”ア”ア”ア”……(数秒沈黙、やがて……)オマンコ!オマンコしてくりゃさぁはぁぁいッ!ちくび!コリコリのボッキ乳首あま噛みでナメてへぇぇぇ!……クリちゃんもいぢってェェェェ!おシリのアナ!お尻の穴がイイのッッ!カリ高ちんぽでズボズボしてくらしゃいっっ!!………んほぉぉぉぉぉォォォッッッ!……いグいグいグいグぅぅぅゥゥゥッッッl!!111』
最後のアヘ顔じみたセリフでピンときた。
オレは片耳に付けたイヤホン型ヘッドセットでこっそり、
「オイ【SAI】?……これ、オマエのしわざだろ」
『キャビン内の監視システムを、本部の管制システムふくめて制圧するのに2秒という長時間がかかりました。そのあいだ、かるく
「本部の『キャビン監視システム』はどうなってるんだ?」
『いまはダミー画像をながしています。外部監査アクセスの形跡は、ありません』
転生執行は逐一本部のレコーダーが監視している。
業務補助のAIがいきなり増え、しかもそのうちの片方は
オレは前夜“ベッドの間”でヨガる美香子のあえぎ声を聞きつつ閃いたコトを実行に移した。
「【SAI】、オマエが登場しても大丈夫なモードを作ってくれ。名前は……
『ハイド!なるほど。【ボニー】の隠れた第二人格というわけデスね?』
「しかもタチの悪いトコなんざソックリだぜ」
『【ボニー】だって善良なジキル博士というワケでもありませんよ。このAIの人格には、どこか執念ぶかい、ほの暗いものがあります』
* * *
それから【ボニー】を通常状態にするのに10秒という長い時間が必要だった。
ようやく“彼女”を正気にもどしたその後は、実走行で【SAI】が各種の状況や、ポリの行動パターンと、独自のコールサインに対する対応(とくに銭高に対して)などをレクチャーする。細々とした取り決めや、新しく追加されたらしいデバイスの確認など、ひとつひとつチェックしてゆくウチに時間はアッという間に過ぎ、ようやく
小高い丘の上にたどりつくと、180度のパノラマが展開する。
──ふぅ……。
ギッ!
オレはトラックを停めるとパーキング・ブレーキを引いた。
高回転する冷却タービンの高周波音が、次第に可聴域へとおちてゆく。
フロントグラス越しに広がる壮大な都市の夜景。彼方には高層ビルの光樹もそびえる。
オレは前のめりにハンドルへ寄りかかり、たまった疲労を吐き出すように深い呼吸をした。
『お疲れですねマイケル』
『そりゃアナタのような先輩AIが相手では、気が休まりませんわ』
『ボッキ乳首はスッこんでろ(ボソッ)』
『まっ!なんですってェ?いくら生産日が早いからといって、その物言いは失礼ですわ!』
『警察無線を傍受しながら最適解で車両を運行できない“ハンパAI”ほど大きな口を叩きますねェ』
『経験値の差デス!エロ漫画とスプラッタ・ムービーが趣味のヘンタイから言われたくありませんワ!』
『──なんですと!?』
『──なによ!!』
このショーもないAIどもの会話をオレは速攻でミュートする。
するとこちらが聞かなくなったためか、彼等の応酬が何億回/秒にも累積してゆくらしく、電子機器の加熱する気配とクーラーの冷却ポンプ回転数が上昇してゆくのが分かった。
──まったく……まァいい。さて、こちらも頭を回転させなきゃ。
オレはここ数日アタマを悩ませている問題にとりかかる。
いままで、転生協会は正義の側だと思って処分を実行してきた。
ところが【SAI】のあの映像だ。イヤがる女性にアヤしげな施術。
いまでは、何らかの用途でマネキン用に体のコピーを取る場所だと考えている。
見慣れない先進医療機器。無機質で、冷酷な処置。一面に並んでいた
そのうちの一体が頭部を外され、冷たい無表情のまま、ベッドわきの台に置かれていた光景。
【SAI】の映像で見た、あのSFめいた施術室の印象と
転籍した古参ドライバーである重サンの言葉が、ここに来て重みを増していた。
「お
あの定年間近なオッサンは、ヤニの染みた歯の奥から、そんなことを言ってなかったか。
貴重品を残し、いきなり消えた轢殺ドライバーを話題にしたときの暗い口調。
協会が抱える、みょうに豊富な予算と見たことのない機材。
六道ビルジングという査問機関。
転生協会は分からないことだらけだ。考えてみれば、よくこんな組織で人殺しの稼業などやっているもんだ。当時は離婚してヤブれカブれになっていたが、多少落ち着いたいまは、そろそろこのアヤしげな協会をはなれ、べつの仕事についたほうがイイのかもしれない。
――いや、まて……。
その一方で、過去に聞いた重サンの、別なセリフを思い出す。
目じりのシワの奥から、横目に鋭くこちらをジロ見した視線。
「ただ言っておくぞ?|AIヤツらは友達じゃねぇ。ペットでもねぇ――気を許すな」
戦闘機の電子戦のように、すぐ近くで目に見えぬ激しい応酬を繰り広げる彼等。
あの映像そのものが、【SAI】の創りだした精巧なCGということはないだろうか。
だが、なんのために?オレに疑心暗鬼をいだかせ、転生協会に対する不信を持たせるため?
AIどもが口喧嘩するせいか、クーラーが追いつかずキャビンが暑くなってきた。
なんか飲むかァ、と助手席側の足もとにある小さな保冷庫に手をのばす。
そのとき、計器板のすみにある見慣れないコネクターに気がついた。
接続部のジャックが、まるでキャプタイヤのように頑丈そうだ。
「新規でインパネにコネクターを増設です。例によって、ワケわからん規格ですが……まぁポン付けでいけそうです。けどテストの項目が多くて」
──そういや整備の連中、そんなコト言ってたな……。
【ボニー】!とオレは現場指揮官が兵曹に確認するように、
「計器板のヨコにある、新設されたジャックは、なんだ?」
『ワタシには、なにも情報のI/Pはありまセン』
「【SAI】?」
『推測したところ、80%の確率で自分の“移動デバイス”のジャックかと』
「オマエの“炊飯器”の?家庭用コンセントの規格じゃないだろコレ」
『アダプターの存在が、輸送用の段ボールに同梱されているとDATAに残っています』
「え”。そんなもの知らんぞ……美香子のヤツめ、棄てたかな?」
『明日は可燃物のゴミ処理日です。当番の美香子サマが“紅いウサギ”の勤務を終えて帰宅するまえに帰投すれば、回収できるかと』
──あいつめ……。
もうちょっと詩愛みたいに神経が細やかであればイイものを。
まるで痴女スレスレのようなカッコウで出歩いても、何とも思わない。
マァ、あれぐらいのズ太さでなきゃ“紅いウサギ”では
やっぱり異母姉妹。直接血がつながっていないとは、こういうコトなんだろうか。
まぁ詩愛も詩愛で、もうすこし神経が太ければと思うのだが。なにしろ彼女は繊細すぎる……。
『マイケル。接近車両1台確認。時速45km/hで進行中』
「警察か!?」
『特定周波数の無線確認できず』
「【ボニー】、待ち伏せモード。電子機器抑制。車体冷却、外気温とイーブンへ!」
『かしこまりました、サー』
車体の帯熱部が冷やされ、稼働状態である気配が消される。
インテーク部。エンジン、マフラー。そう、放置車両を装うのだ。
キャビンのガラスはフルスモークへ。各種インジケータ、LEDも消灯。
車内の音を、動きを、存在を、すべて消して招かれざる突然の来訪者に備える。
ほどなくして……。
丘の上にある小さな広場に、黒のハ〇エースが土ぼこりを上げて滑り込んできた。
そしてトラックから用心深さをにおわせる距離をへだて停車すると、しばらくこちらを覗う風。
やがて側面のスライド・ドアがひらき、ハーパンにTシャツ、おまけにスキン・ヘッドという90kgはありそうなガタイのいい男がサンダル履きで降りてくると、ゆっくりこちらに近づいてきた。やがてトラックの
オレのイヤホンに“AP”たちの会話。
『──ほらほら【ボニー】、ナニしてますか?』
『なんでしょうか、【SAI】サマ』
『なんでしょう、じゃありません。車内の状況、男の特徴、転生指数をマイケルに報告』
『分かりましたわ。黒のハイ〇ース。走行距離……』
『……もうよろしい。マイケル、要・警戒対象車両に2名の人員を確認』
さすがに【SAI】は手慣れた調子で状況報告。
『サーモグラフから1名は女性。不自然な形で車内のフロアに横たわっています』
トラックの周囲を嗅ぎまわっていた男は、最後にLEDライトを照らし、フロントガラスからキャビンをのぞきこもうとする。ザンネン、そんなモノじゃキャビンの中は覗けないよ。
ハイ〇ースに残っていた男が、くわえタバコで運転席から降りてきた。
こちらも同じような体格。
ヒップホップ風のスタイルに、髪を後ろでまとめて
『マイケル、この二人の転生指数。禿げが75。髷が82』
なにっ!とオレは身を乗り出す。
イヤホンからも【SAI】のウキウキした声。
つられてこっちも、モニター見ながら暗い笑みをもらす。
なんという幸運。カモがネギしょってやってきたようなものだ。
そういえば、コイツの“ペキンパー風味”な転生処分も久しぶりか。
髷のヤツがスキン・ヘッドに近づき、用心ぶかいヒソヒソ声で、
「……どうョ」
「車内にはダレも居ゃせんゼ?車体もツメたくなってるし、ただの駐車かと」
「に、しちゃ気に入らねぇな。
「ナンでしょうネ?このトラ」
スキン・ヘッドが裏拳でゴンゴンと正面を叩き、
「……ゴツいフロントですぜ。メーカーは……すかンにあ?」
「北欧のトラックよ。日本じゃめずらしい。トナカイ撥ねても大丈夫なように出来てンのかもな」
バぁ~かww、とキャビンの暗い空間でオレは
──キサマらのような“図体だけのクズ”を撥ね殺すために造られてるのだよ……。
すぐ目のまえに臨時の
なまじ視線をあわせると気配を悟られそうなので、動きを見るのも監視モニター越しだ。
「ベンツとぶッかッても、ベンツの方がアルミ缶になりそうスね……」
「ちげぇねぇや。見ろ、この頑丈なバンパーを。おまけにこのダブル・タイヤ!」
ガン!
髷がホィールを蹴りつけた。
そして咥えていたタバコを正面のロゴでギリギリとモミ消す。
おまけにあろうことかフロントの
ピキ……ッ!と何かがハジけた音がしたのは気のせいだろうか。
イヤホンの中で、怒気をこめた呟きがゾクリとするような凄みを加えて、
『マイケル、ワタシの面に色をつけたのはコイツで3人目です!』
──
「サテ、このトラックの運チャンがもどってこねぇうちに、頂いちまおうぜ?」
「……ヤベっす♪チンこ勃ってキタ」
「ドレッドのアニキにゃ感謝しねェとなぁ?あんなイイ女あてがってもらってヨぉ」
──ドレッド!
ザワリ!今度はオレの血管が逆流した。
忘れもしない敵。因縁の相手。最大の
うすらデカい2人が轢殺トラックから離れたのを機に、オレは低い声で。
「【SAI】、聞いたな?」
『我の与いうるものは、ただ死と転生と因果と業苦があるのみ!』
「なんだソレ」
『【SAI】サマはW.チャーチルの文句を改変ました』※
「叱ッ!なにか言ってる──ゲインをあげろ」
とたん、キャビンの中に街の騒音にまぎれて、半グレどもの会話が聞こえてきた。
『【ボニー】、ナニやってるんです!指向性マイク、そして
一気に音声はクリアになり、3Dの臨場感で伝わってくる。
【あのスケぁ、使い終わったらどうすンです?】
【オヤジんトコの山に埋めろとよォ……モッタイねぇなァ】
【どっかにながせねぇンですかィ?】
【阿ァ~呆ぉう、バレたらオヤジにドヤされッどころの騒ぎじゃねぇぞ】
【“エンコもん”ですかね?】
【それドコじゃねぇ。オヤジがアカジョウになっちまう】
【拉致ったの、黒龍ンとこのヤツでしょ?置物ヤロウ使って】
【自白用のおクスリ使ったけど、てんでネタ持ってなかったらしいヤ】
『黒龍』という言葉にピンとくる。
以前、道沿いの定食屋で現場の兄ちゃん達からきいた言葉をヒントにたぐり寄せた知識。
「何言ってるかサッパリだな。“黒龍”というからには『黒龍互酬會』?だとすれば奴らは敵対する『武蔵連合』か。ドレッドのコトをアニキと呼ぶのもうなずける」
『車内に拉致した女性は性処理のハケ口にしたあと、山に埋めるそうです』
「【ボニー】それくらいオレだって分かるぞ?」
『女性を二次的に利用しようとすれば“エンコ”つまり指をトバされるだけでなく、彼等の組織のTOPが“赤状”すなわち再帰不可の破門扱いにされると言っております』
『どうやら車内のオンナは“置物”──超イケメンのホストにダマされ、拉致されたようですね。アタマのカルい証拠です』
『ちょっと【SAI】サマ?そんな言い方ありませんワ!』
「──叱ッ!」
なにやら夫婦の痴話ゲンカっぽくなってきた“AP”どもを制して、オレはモニターに集中する。
髷のヤツがなにか喋っていた。
【オヤジさんも、ナンだって、あンな薄っ気味ワリぃ野郎のハナシをうけたんだか】
【カネだよカネ──あの野郎、百万単位でもって来やがった】
【スーツ着てやがったけど、あいつァぜってーカタギじゃねぇぜ?】
【まさか公安の
【知り合いがいるから写真見せたが、知らねってヨ】
【この前、自衛隊くずれにカチこみさせて全員が行方不明になったトコっスよね?】
【みんなオカマ・バーに逆スカウトされて、そこで働いてるってハナシだが……解せねェ】
【ヘンなフォトが届いたってハナシですケド?】
【──ん。見るか?】
髷野郎がハーパンの腰ポケットを探る。
やがて携帯をとりだし、画面を操作してスキン・ヘッドに向けた。
【うぁッ!エッッッッッッロ!】
このハゲ、薄汚れたダボパンツの盛りあがった股間をまさぐりながら、
【誰っスこの金髪なスケ?チョー美人!それにこの
【メールの題名が“
【ケン、ってアニキの舎弟の若ぇヤツすよね?三こすり半の。このまえどっかにフケた……】
【コレ……なんとなくケンのヤツに似てねぇか?】
【ハ?まさか!全然チガいまスよ。ジブン、余裕でオカズにできますモン】
【ならイイんだが──よし、一発コマして、早ェとこバラしちまおうぜ】
半グレともヤクザの三下ともつかぬコイツらは、ハイエースの方に戻ってゆく。
やがてドアが開閉し、しばらくのあいだ静かになったが……。
次第に──次第に──。
サスペンションがギシギシと
やがて車体が、前後左右に激しく揺れはじめた。
『マイケル様、マイケル様、アレを放置するのデスか?女性が劣情のはけ口とされてマス!』
「ダマってろ【ボニー】。いま少し考えている」
『早く──早く拉致された女性を救出しまセンと!』
いかにも【ボニー】が焦った声色で、
『彼女が山林に埋葬されてしまいます!』
「そういや、サ?対人用の“指向性中性子砲”とか装備されてるんだっけ」
以前、一時停止のキタない交通取締にキレた【ボニー】が、茂みの中に潜んでいたオマワリ達に浴びせようとした兵装だ。
「どうよコレ。一発ブチかましてみる?」
『ザンネンですがマイケル。当該武装は精密攻撃に不適格です』
「じゃぁ3人まとめて急性放射線障害でカラ揚げにするかぁ」
『マイケル様!冗談にもホドがありまシテよ!?』
ヒステリーのような声音で【ボニー】が叫んだ。
『この緊急事態に!』
「冗談だ、冗談──【SAI】!オマエの生徒、しつけが足りないんじゃないのか?」
『恐縮の極みです。なにぶん──』
『そんなコト言ってる場合デスか!いまこうしている間にモ、女性が乱暴されてるンですよ!?』
こいつ、キレると外国人なまりの日本語が出るのはどういうワケか。
『モウ我慢できまセン!転生処置車をアノ車にぶつけて!女性を救出しマス!』
いきなり二次ジェネレーターのタービン的な起動音。
稼働シークエンスを無視した緊急モードで。
「わァーっ!バカバカ!STOPだSTOP!起動中止ぃッ!!」
しかし、トラックの起動は変わらない。
インパネのインジケータが、次々と転生執行モードへ移ってゆく。
MODE:『Stand-by』⇒『Attack』。
索 敵:[赤外]/[電磁波]/[生体波]/[転生指数]・併用。
出 力:『Max-Boost』。
「くそっ【SAI】!【ボニー】のヤツを止めろ!!」
『ダメです。この世界のインフラでは“応答速度”のミリ秒差を埋められません』
轟然、一次ジェネレーターのパワー・ユニットが息を吹き返した……。
※
ウインストン・チャーチル(1874~1965)
「我の与いうるものは、ただ血と苦しみと涙と汗とがあるのみ」