試製・転生請負トラッカー日月抄~撥ね殺すのがお仕事DEATH~【18禁版】 作:珍歩意地郎_四五四五
・ひとつ!わたしたちは安全・確実に目標を撥ね殺します!
・ひとつ!わたしたちは笑顔絶やさず目標を撥ね殺します!
・ひとつ!わたしたちは誠意を以って目標を撥ね殺します!
・ひとつ!わたしたちは努力奮闘し、目標を撥ね殺します!
・ひとつ!わたしたちは倫理に
『愛の五ヶ条』を声出しする月曜日の朝会。
電子ホワイトボードの前に立つ業務統括のイタチ
今朝の出席者は多い。
遠征した巻き狩り隊が2,3同時に帰庫しているからだとか。
道理で執行を終えて早朝に帰庫したとき、上を下への大騒ぎだったワケだ。
斉唱が終わると、各ドライバーの受注予算達成率ならぬ“請負転生達成率”が電子黒板に浮かび上がる。
悲喜こもごもの棒グラフ。
初期の頃は血まみれに思えたものだが、いまはカネしか連想しない。
これは件数だけでなく、難易度の高さと転生指数をポイント化して伸びがきまる。
いまさらだが、執行対象は犯罪者だけではない。嫌世の自殺志願者や、闇サイトによる転生志望者も居るのは精鋭読者の諸兄もご存じの通り。
イタチ
そして──最後に、さも何でもないような口ぶりで、
「あ~そうそう。おしまいに……そこにいるドライバー部門の朱美クンだが……」
集団の視線が、胸をあけた薄い革ツナギ姿の女性へ一斉に突き刺さる。
いつ見てもムチムチなエロボディがピッチリとした赤い革に浮き出て。
チャックを下げてチラ見となったブラは、ラムちゃんめいたトラ模様。
イヤリングを揺らし照れたようにうつむく彼女を指さしてイタチ面は、
「今朝、執行を終えて帰庫したのを最後に、転生トラックのドライブ・シートを降り、他事業部での内勤に移ることになった」
おぉう……という轢殺屋たちの声にならないどよめき。
その一部に羨望の響きがあるのを、オレは確かに聞き取った。
イタチ面はキンキン声のトーンをあげて、尊大ぶった上から目線で、
「まぁ事故も目撃者も生まず、運転席を降りれるのは、幸運だったな。朱美クン──挨拶を」
彼女は革ツナギの前をあげ、チラ見させていたムネを隠し、髪を整えると多少緊張した面持ちでホワイトボードを背にしてイタチ面の横に立つた。
「えぇと……本日をもちまして、ドライバーを退職することになりました……わたしは、子供の関係上やむなくハンドルを手放し、事務仕事に移りますが、皆さんはどうか安全運転を心がけて受注目標を達成して下さい。長い間──お世話になりました」
パチパチパチ、と最後の挨拶にしては
「では、朝会はコレまで。朱美クンはドライバー退職手続きがあるから所長室に来るように」
ニヤリ、と朱美に向け意味不明な薄笑いを浮かべる事業統括。
オレは関わりたくないので、さりげなくヤツから距離を取った。
ザワザワした気配を引きずり、ドライバーたちは階段から地下駐車場へと足音を轟かせ降りてゆく。
そんな言葉が、風体も服装も年齢も、そして男女すらバラバラな轢殺ドライバーの集団から声低く、投げ交わされる。
──そうか、老練の轢殺屋も、やはり先行きに不安を感じているか……。
ここに至って先ほどの拍手がまばらなワケに、ようやく合点がいく。
考えれば、自分だって離婚騒動ですさんだ心が
アフリカ傭兵じゃあるまいし、いつまでも人を殺してばかりでも居られないだろう。
おりを観て、
そう考えてみれば、美香子のコトを言えた義理でもない……。
とりあえず“いまいま”は、無事に目標を異世界にブッとばした勤務あけだ。オレは問題を先送りにして、あとは最寄り駅の早朝スーパーでビールを狩って帰ることだけを考えた。あのガランとしたマンションを思うと、すこしばかり憂鬱になるが。
──おっと、その前に……。
総務部のカウンターに寄って、かなり前に頼んでいた備品が経理を通過したか聞いてみようと思いついた。いいかげん、もう購買許可は出たんじゃないだろうか。
忙しげに事務員が行き交う、ざわついた空気をすかし、無機質なオフィス・デスクがズラリ並ぶ空間に『お局サマ』をもとめて視線を泳がせるが……。
制服ベストの胸ボタンを酷使する、メリハリの効いたブラウス姿……。
鎖つきメガネのフレームを光らせ奥から投げかけられる冷たい視線……。
そのクセちょっとした隙に女らしい弱みを見せる、アンバランスな存在……。
そんな、いつもならキビキビと働いている彼女の姿は、今日に限って見えなかった。
席は空っぽで、デスクの上に山と積まれたキングファイルも無く、今朝は更地となって。
そのとき、偶然通りかかった顔だけ知っているソバカス
「ちょうど良かった。おつぼ……いや、課長代理……主任は」
「あぁ、マイケルさんお疲れサマです。お局サマですかぁ?」
どこか脳みそがユルそうな、ぽややん風味であるこの若い娘は、最近
ガヤガヤしたオフィスの雰囲気と、本人が居ないことをイイことに彼女は、
「お局サマならぁ、きょ~は有給でェス。なんでもォ、お仕事のシフトかえるとか」
「シフトを変えるって?出勤日でも変更するのか?」
「ココの仕事へらして、ほかの場所でも働くみたいですよォ?アミュェーリカの警官みたいに」
びみょうにアメリカの発音がネイチャーっぽかった。
赤毛の髪といい、鼻筋のとおった面差しといい、ハーフの帰国子女かもしれない。
「え……この協会って内職、認めてたっけ?」
「昨今はやりの“ボーダーレス”?“
そしてこの子は声をひそめて顔をよせ、舌っ足らずな口ぶりで、
「なんでもぉ、妹サンがホストに借金作ったらしいんですって、ププ♪。おまけに私学の
「──な・に・が・ザマァ、なのかしら……?」
ヒギぃッ!とエロまんがのような悲鳴をあげて、このソバカス娘は固まった。
ふり返れば、私服のお局サマが腕組みをし、三角にさせた目で新米女子事務員をニラんでいる。
「あのっ!あのあのっ!──そのっ!」
「いいから、ハヤく仕事にもどりなサイ」
「これはァ、単なるぅ、
「おハナシは、後日休憩時間にゆっくりと」
「…………ぴえん」
端正な顔をひきつらせたまま、彼女はパンプスを鳴らし、足早にその場を去って行く。
制服のスカートから浮き出るショーツ・ライン。
小柄でムネはイマイチだったが、細い腰もあいまってお尻はボリュームがあるな……と思っていると、
「──ド!コ!を!見てるのかしら?」
「うっ、いやナニその……ちょっとあのベリショっ娘に似てたと思って」
「若宮サンのこと……そうね」
どうしたことか、また若い子が良いだの何だのと、イヤミのひとつでも飛んでくるのを予想して身構えたが、このときお局サマは怒気をふいに消して、
「チョッといいかしら?──マイケルさん、こっちへ」
「ドコ行こうってんだい?」
「シッ!……黙って」
そう言うと、彼女は先に立ってフロアを歩き出す。
* * *
案内された先は、「地下3階の文書倉庫」だった。オレは入るのは初めてだ。
背表紙の黄ばんだファイルが天井まで届くスチールラックに延々と並べられている。
電子化された後の紙書類は、3年の保管期限が過ぎるまで、ここに仮置きされるという。
しかし、それすらもあふれ気味で、中にはラックが微妙に崩壊をはじめている所すらあった。
密閉された空気と、そこにしみこんだ古い紙の匂い。
あと塩素剤でも撒いたのか、プールのような異臭が鼻先に。
それと気のせいか、香水のような薫りすら感じるような気がする。
背の高い書架で作られた迷路のような空間を奥へと進みながらお局サマは、
「ココならイイでしょう」
「……どうしてこんなトコまで?」
「管理側の盗聴を心配してのコトなの」
忘れかけていた協会の不吉な印象がよみがえる。
「盗聴……?協会の建屋で……?ダレが」
「さてねぇ。実働部隊を監視したい人がいるんでしょう。あるいは、組織全体を」
「管理側が?ドライバーがトラック使って反乱でも起こすってぇのか」
「しらないの?似たような事例が過去にあったって」
「人間が?AIの反乱っていうのなら
「あのおデブちゃんも、ときどきキョロキョロしてるから盗聴される側なのかも」
「ふぅぬ……」
技術顧問の『ロック』吉村が言っていた、転生協会は一枚岩じゃないという不気味なセリフ。
仲の悪い技術部と営業部。この事業所には存在していない上級組織……。
トラッカーの鬼門である六道ビルヂング……査問委員会……。
「分からんなぁ……組織といい、規模といい。妙に先進的な装備もそうだけど、なんかウチは入ったときから得体が知れないよな。第一、ウチらのトラックに装備されているAIだって、世間からすればSFレベルだぜ」
吉村のオヤっさんが言っていた
「今更ながら言うけど、よくそれで仕事を続けようと思ったわね?」
「あのときはNTRれて離婚したばっかりだったし。親権も盗られて破れかぶれだったから、あとさき考えなかった……給与の良さに目がクラんだのサ」
それでオレはふと思いつき、
「失礼ながら……事務の給与って安いのか?」
「そりゃドライバーよりは、ね。諸手当の量がチガうもの……なんで?」
「いや、ホラ。仕事をもう一つ、増やすようなコト言ってたから」
「……あの
「借金の額──多いのか?」
一瞬。
彼女の疲れた横顔に、ためらいのようなモノが
血の気のない、うすい唇をかみしめる風情のうえにわずかな色がよみがえる。
しかし、やや久しい沈黙の後。気丈にも、この女は体勢を立てなおして、
「いいわよ……余計な心配しなくて」
もし。
ここでオレが、いくらかの援助を申し出ていたら。
おそらくあんなコトには、ならなかったのかも知れない。
だが運命の分かれ道は、いつでも牙の生えた
「身内のハジだもの。姉としてなんとかするわよ。あんな買い物して男に
しばしの、ぎこちない沈黙。
打ちのめされたようなお局サマが痛々しい。
あ!──と、オレは雰囲気を変えようと、ワザと大声を出し、
「買い物!そういえば」
「……なによ、いきなり」
「ほら、運転席に載せるダミー人形。あれ経理通ったのかよ!」
「あぁ……そんなモノもあったわね。忘れてた、ってかアレ
パチリ!と手を打ち鳴らすお局サマ。
「ワタシ、まえに『そのうち、アナタに調べ物をお願いするかもしれない』と言ったコトあったわよね」
「あぁ。たしか“第43話:還ってきた現実世界もヤバ気です(1)”の最後あたり?」
「……そういう具体的な内輪ネタはイイから」
お局サマは鎖つきの角メガネをチャラり、ゆらしてニラんでから、
「そのコトなんだけど……前に言ってたプラチナ・ブロンドの娘ね?どんな場所でもいい、見かけたら知らせてちょうだい」
どんな場所ったって……。
「ね、どんな場所でもイイの。この協会の中でも、あるいはどこかの施設でも。あるいは町中でも」
「なんでまた」
「とくに
見かけたと言えば、
協会の中で、あるいは“紅いウサギ”でのリサの幻。
それに【SAI】が消去処置されたあと入れられた
──あ……。
揃いの髪型といえば……技術棟の事務フロアで端末をたたく制服OLたちの印象も、似たようなモンじゃなかったか?それに『六道ビルヂング』にいた、お高くとまる受付のクソ女ども……。
そのことをお局サマに言おうとした時だった。
入り口の方で物音がして男女が言い争いながら入ってくる。
『いいかい、ほなみクン!ボクの言うことを聞かないと、
そのイラつくカン高い声の覚えがある。
ヒャま岡ァ~~~!と言い出しそうな口ぶり。
明らかに所長の太鼓持ちであるイタチ面の野郎だ。
もう1人は若い女性のキンキン声で、なにごとか争う気配。
(なに……なんなの?)
(──叱ッ!)
オレはお局サマをおしとどめ、迷路のような書庫を足音もひそかに声の方へすすむ。
やがて、スチール・ラックの列二つ分を挟んで、書棚の横板とキング・ファイルの背の隙間から、口論をする2人を側面にうかがう位置にまできた。
間をおかず、女の脂まじりな香水が濃く匂い、二つの柔らかいものが背中に押し当てられる。
(ちょぃ!大きいモンが当たってるよ!)
(当ててンのよ!……バカね)
やれやれ、ボクは|勃起した……とはならず、まずは目先に。
イタチ面と言い争っているのは、なんと先ほどのソバカス娘だ。
ヤツの息が臭いのか、背を仰け反らせてイタチ面の顔から遠ざかって、
『いやですぅ!ワタシ、男性のオモチャなんかに、なりたくありません!』
『ひゃにおゥ!じゃぁ、キミがサーバー・ルームに入って、なにか情報を吸い出そうとしていたことを、所長に言うぞ!そうなればドウなると思う!警備部門に送られて懲戒処分だ!!』
『誤解ですぅ!ワタシ、そんなことしてません』
『じゃぁ、ナニをしてたんだ!』
『それは……』
『マイクロ・メモリは何に使うつもりだったんだ!しかも64ゼタバイトも!』
赤毛なソバカス娘の事務員は言いよどむ。
業務統括は、取り上げたらしい記憶媒体をチラつかせ「それみろ!」という勢いで、
『おまけにザンネンでしたナァ?あのサーバー・ルームは下位のOA系システムにしか繋がっとらんのダョ!転生執行の上位・広域FA系
くっ!と彼女が唇をかむのが見えた。
オレの方は『ゼタバイト』なる記憶容量の単位に?マークを浮かべて。
のしり──お局サマの胸が、さらに押し当てられるのが分かった。
すると……ここでイタチ面は、ふいにヨダレをたらした
『しかぁし!……チミが
開いた口が塞がらない。
ナニを言ってるんだ、このバカヤローは。
お局サマもおなじ気持ちなのか、背後から身体を支えるためにつかんだオレの肩を、ギリギリにぎりしめる……アイテテテ。
『
『なぁニ、たいしたコタぁない。上司に対して従順になるような……いってみれば“秘書研修”みたいなモンだァな──どっちにしろ』
と、ココでいかにも卑しげなニッタリとした笑みをうかべ、
『チミにもう選択枝は無いんだよぉぉッ!』
そう言うや、一丁前にも制服のベストのふところに手をいれて彼女の胸をもみしだく。
『いやぁッ……You!
『キミさえ黙っていれば、すべてマルく収まるんだ!このワタシも──事業部もねぇ!』
──こンの、クソ野郎が……!
カッ!とオレは憤然、立ち上がろうとする。
だが驚いたことに、その動きをお局サマが押さえた。
首をねじって上を見れば、なんとこの女、修羅場を動画撮影している。
見上げる角度のせいだろうか、口元には薄笑いを浮かべ、携帯撮影に余念がない。
『おりゃッ!最近読者さまに「エロが雑だ」って言われてるんだよキミぃ!』
ナニやらゴソゴソとするイタチ面
目線を棚一段分下げると……ボロン。
イタチ面が高級そうなスーツのズボンから意外にデカイちんこを出すのが見えた。割礼されたような太い亀頭だが、詩愛を犯した半グレどものように淫水焼けをしておらず、妙に
プッ──頭の上で吹き出す気配。
おぃぃ……オッパイの下で冷や汗をかくが、修羅場のふたりは気づかない。
イタチ面は彼女をムリヤリひざまづかせると、顔面を自分のイチモツの前にあてがい、
『おりゃッ──しゃぶりたまへぇ!!』
『いやッ!イヤイヤそんなァ……おボォ!』
いきなり勃起した自分のイチモツを突っ込むイタチ面。
彼女の髪をわしづかみにして、小さな頭をオナホールのように前後運動。
『いいかァ、歯をたてるんじゃ……あひぃん!』
すぐにぷるるッ、とチワワのように男の身体が震える。
そして(……ふぅ)とため息をして満足げにムスコをしまった。
しばらしくてペッ!ソバカス娘が顔をそむけ、なにかを吐き出す気配。
塩化水素のような臭いが、かすかに漂ってきた。そうか、書庫に漂っていたのは……。
『ンだよ……てんッッッで早ぇぢゃねェか、
こォの────クサれチンポが!』
カミナリのような怒声!
彼女の声と仕草が、ふいに一変する。
まるで
『あ~ァ。チッたァ楽しめるかと思ったら。トンだ期待外れだよ。この、
目つきはおろか、雰囲気まで鋭いモノにかわると、彼女はひざまずいた姿勢から立ち上がり、ズイ!と相手を威圧する。思ってもみない相手の豹変に、イタチ面は射精の余韻がのこるヨダレを浮かべた唇をパクパクせるだけ。そういや初めて会ったときの朱美が、ちょうどこんな風だったようなことを、なんの繋がりかフト思い出す……。
『テメぇ、ヒトの口を便所代わりに使いやがって。そのデカチンはハッタリかよ!』
『ひぇッ!……なッ、なんだねキミはぁ!』
『あーあ、
『ひゃっ、ひゃっ……ひゃにオゥ!?』
『ちな胸ポケットの携帯で、いまのセクハラ行為を撮ったから』
『おッ!オドしたってダメだよキミぃ!情報を吸い出そうとした行為は業務妨害に……』
へぇえ?と鼻で
『ンじゃぁ、アンタがマイケルさんの
こんどこそイタチ面の顔が愕然とした物になった。
目の前の、たかだか20台前半の娘を、まるで信じられないようなモノを見る目つきで。
オレの方も、さすがに驚いた。
今回の相手は、たしかに近頃になく殺しあぐねた目標の1人だったからだ。行動パターンを絶妙に変えられ、そのたび轢殺ポイントでの待ち伏せに肩透かしをくう。そういえば、オレが処分しそこねた目標のポケットから、転生執行を警告する紙切れが出てきたと、巻き狩り隊の親分であるフィヨードルから注意されたことがあったっけ。※そういえば、前にもたびたび、目標が奇妙な回避をするコトがあったような……。
【おまえはトラックに狙われているぞ】
【決して一人にならないよう注意しろ】
【夜間に路を歩くときは明るい場所を】
【昼間でもひとけの無い場所は避けろ】
クリーン紙に印字された文字。
出所はこの事業所だと、
──まさか……その震源が、このクソ野郎だった!?
そもそもなぜこんな新米が、そこまで情報を握っているか疑問だったが、そんなコトはドウでもイイ。現場に殴りこみをかけるべく中腰の姿勢から立ち上がろうとするが、相変わらず上に載るお局サマが、背中に押しつけていたオッパイの圧力を強めてジャマをした。
(……なんだよッ、ヤツをブチのめしてやる!ジャマするな!)
(待って。もうすこし様子をみましょう……あの
メガネ越しの目を光らせ、部署の新人に視線を注いだまま、お局サマはささやく。
オレたちふたりが見守るなか、ファイル棚二つを挟んだむこうでイタチ面は激高して、
『なッ……ボクがそんなコト、するハズないじゃないか!』
『証拠もアガってんのよね?アンタがログインしたコピー機の文書メモリー……』
『ダレかが……その、ボクのIDカードを使って操作したんだ!』
『紛失届けは出てないけど?』
『あるいは……回線のバグでIPが重複して、ボクが印字したようになったとか!』
『当該時間にアンタがコピー機から印字物を回収する業務モニターの映像、見せようか』
『……』
“詰み”である!
……と、ふたばの株スレに、例のサムライ画像が貼られるような勢い。
ぐぬぬ、イタチ面が血色の悪いくちびるを噛みしめるのが見えた。
後退したひたいに青筋をうかべ、恨みがましい目で彼女を。
『アンタが何の目的で
ぐぬぬ、と、今度はオレのほうが、くちびるを噛みしめる。
フフっ……お局サマの含み笑いが、押し当てられたオッパイを通じて伝わって。
『ねぇ……ココにいた“若宮リサ”って女のコの事務員がいたでしょ?その子どこいったか、アンタ知ってるかィ』
『……』
『言わないんなら、アンタのやったコト、ほかの転生ドライバーにバラすけど』
『まっ!チョっ……ホントに言わないなァ?』
『アンタの心がけ次第だねェ』
『わかった、わかりマシタ!若宮だァ?あぁ、所長のお気に入りだった娘だナァ』
『所長のお気に入り……』
『いまは秘書課に移って、他事業部にいるんじゃないのォ?』
『──ソレって、どこの事業部?職員名簿には、アタシの権限じゃ見れない』
『ボクが知るもんかィ!そにかく』
イタチ面は彼女から取り上げた記憶媒体を掲げ、
『キミのメモリーは、ボクが持っているんだからね。これでおあいこだ』
『それ、中身はゲスな男の好きそうなAVだよ。見たかったら見れば?』
目を剥くイタチ面を前に、この女はプロフェッショナルな冷たい目で、
『サーバー室に入ったところをアンタに見られるこのサル芝居自体が、アンタを呼び寄せるためのモノだったし。アンタのチンポがデカいって女子の間で話題になってたんで、余録がタノしめるかなと期待したら、早漏なのは計算チガいだったけど』
『ボクを呼び寄せるだトォ?と……さいしょッから、職員の名簿が目的だったのか!』
『若宮リサの居場所……あの子が、ドコの事業部に配属されているか、調べてよね』
『事業統括であるボクの権限でも、全部は見れないよ。所長ならベツだけどネェ……』
『なら所長に聞いてよ──今すぐ!』
ここで、なぜかイタチ面は含み笑いをもらす。
相手より優位に立ったときの、余裕の笑み。これが彼女のカンに障ったらしい。
だが、何か言いかける相手を制してイタチ面は余裕をぶっこいて、
『いま、すぐゥ?──そりゃァ、ダメだァ』
『なんでよ』
『いま所長は転籍手続きにかこつけて、ドライバーの朱美クンを口説いてるからだョ』
『はぁ?──あのヒキガエルが?』
『本来はボクがネラってたんだ!それを、マイケルのヤローのほうがイイとかヌカしやがって』
『あはぁ♪なァんだ。それで、あのおッサンに執着して、イヤがらせしてんだ?』
──なん……だと……。
そんなクソくだらない理由で、あのイタチ野郎はオレにカラんでたのか。
朱美も朱美だ!そんなことがあったなら、オレにひとこと言ってくれたらイイのに!
──しかし……まぁ。
オレは、すぐさま考え直した。
いずれにせよコイツの人間の小ささから、軋轢がおこるのは必須だったか。
すると偶然にも、この新米はオレの言いたいコトを代弁してくれて、
『まえまえから思ってたけど、アンタってケツの穴がちっさいンだねぇ──ダッサぁwww』
『あの“あばずれ”には!もっと辛辣なコト言われたんだよ。キミにわかってタマるかァ!』
『ハイハイ。そのフトちん、すこし鍛えたらマシになるのにね……じゃ、リサの居場所、タノんだよ』
シッシッ、この新米はイタチ面を追い払う手マネをする。
『キミはどうすんだィ、こんなトコに残って……』
『あァほ。この事業所で“隠れ姦り部屋”扱いの第三書庫からガン首そろえて出てったら、周りから何ウワサされるか!!アンタから先に出てってよね』
『ボクは……ウワサになってもイイけどねぇ……?』
『アホぉッ!チンポ、キタえて出直してきな!』
げぃん!新米事務員は業務統括のうすい尻をケリあげた。
つま先が平らなスクエァ・トウのパンプスとはいえ、意外に素人ばなれした切れ味スルドイ横蹴りだったので、イタチ面の顔はゆがませてのけぞる。あるいは痔持ちなのかコイツ。
尻をさすりながらヒョコヒョコ書棚迷路を歩み去ってゆく業務統括。
それを見送り、入り口の金属扉が閉まる音がしてからおもむろに彼女はコチラを向き、
「居るのはワカってンだ──出てきな」
※:ボイタチ:ボーイッシュな『レズビアンの男役』
※2:第59話:バカが帰って来やがった!(後
※3:第60話:転生屋は考える……。
いきなり作者も知らない間に出てきたソバカス娘の扱いに苦慮して
更新が遅れました。なんなんだこのキャラ?