試製・転生請負トラッカー日月抄~撥ね殺すのがお仕事DEATH~【18禁版】 作:珍歩意地郎_四五四五
明けましておめでとうございます。
本年も珍歩を宜しくお願いいたします。
しばらくは、王朝風の灯火が重々しく垂れる静かな廊下をゆく。
他のスタッフたち──仰々しい“お仕着せ”を着た店員の姿もみない。
どこか遠くで、かすかに哄笑と歓声、それに拍手の気配が伝わってきた。
思うにステージで何かの演目がハネたのだろう。中々の盛況のように思える。
だが廊下に敷かれる毛足の長い絨毯や、壁の
ややあって、マイクでなにやら紹介する声がしたかと思うとバリトンの歌曲が流れてきた。
そうか。ここは『表』の楽屋裏近くか。いつも美香子や『フクロウ』たちが働いているエリアだ……。
「ドコまで行くんだい?まさかオレに、タップダンスでも
「ステッキとトップハット。必要でしたら、いくらでも御用意いたしますが?」
振り向きもせず、さらりと『ホワイト』に言われ、ムカっとオレは鼻白む。
ダメだこれは。「じゃぁ頼む」なんて言った日にゃ、ホンキで踊るハメになりそうな。
ややあって、廊下を先導していた彼女たちは、またも代わる代わるに、
「これから先、貴殿には──」
「当店の“奥の院”に御降臨いただきます」
──やはり……そうきたか。
がぜん興味が湧いてきた。
『小男』の牙城に、いよいよ潜入ってワケだ。
美香子のヤツからも知らされていない“紅いウサギ”の最深部。
俗に言う“鬼が出るか、蛇がでるか”精鋭読者諸兄も期待してるのではないか。
「すると店長じきじきの縄張りである“紅いウサギ”の“ウラ”側ってヤツかい?」
「わたくしどもの口からは──」
「それ以上のコトは何とも──」
今度のジャイアント・プリ○ュアどもは意外に口が重い。
長い廊下をゆくうちに
──ナンだぁ?美香子と『フクロウ』じゃねぇか……。
一方は
もう片方は、白いピン・ストライプが入った仕立ての良さそうな黒服を着ている。
「よぉ、お前ら。こんなトコで──」
だが、オレの言葉を打ち切って、前にいた白黒コンビが硬い口調で詰問する。
「アナタたち!一体、なにをしてるのですか?」
「オモテのフロア・レディ
すると、グロスのはいった美香子のくちびるが開かれ、シューッ!白い歯の間からガラガラ蛇のような威嚇。
そしてすぐさま、
「これは『
サッ!
まるで条件反射のように『白』と『黒』は片ヒザ、片手を床につけて平伏する。
おぅ!『フクロウ』は、そんな腕組みをする美香子の威風に感心するかの様に。
クッ!初代プリキュ○どもが、クヤしげに唇を噛む気配が背中から煮え立って。
──ふぇぇぇぇ……。
気のせいだろうか?
美香子のヤツ、いっそう“夜の側”に染まったような。
おそらく“紅いウサギ”の歌姫役として、
しばらく見ない間に、ドレスからのぞかせる
「へぇぇ、いつの間にか、一丁前になったじゃないか……」
いささか鼻白むオレに、なんと美香子のヤツは、疲れた酒場女のような顔を向け、
「あぁ……
「ご主人サマ」ではなく、なんとオレをハンドル・ネーム呼ばわりしやがった。
そこにいつもの馴れ馴れしさや、甘えきった態度はなく、どこか突き放した冷たさが。
男に
改めてオレは彼女を──“ウサギ”の
豊かな赤毛のウィッグ。
目もとの濃い、扇情的な化粧。
ネコの縦長な瞳孔を模したカラコン。
そこから凄みのある流し目が向けられる。
何かを言わんとするようなグロスの聞いた唇。
首には、喉にバラの造花を模した、光沢シルクの首輪。
JKにあるまじき豊乳は、紅いドレスから乳首がポッチリと……。
そのドレスは腰までスリットが切れ上がり、肉感的な太ももがニュッと出て。
美脚は、光沢ストッキングの上から網タイツが履かれ、形のよさが一目で分かる。
そして毛足の長い絨毯を踏みつける、まるで
──ふぅ……ン。これは……。
商売女、三日合わざれば
年齢のワリには、あまりな変わりように見える。ドレッドの情婦『ナナ』にだって勝るとも劣らない……。おまけに『フクロウ』のほうも、何やら自信ありげな物腰となって。そのことを言うと美香子(いや、いまはもう高校に戻すことは諦めた。今後は『美月』と呼ぼう)も、小憎らしい顔を『フクロウ』にむけて、
「この童て……『フクロウ』くんも、『
「へぇぇ……昇格したわけか。それでその洒落た格好というワケだな?」
彼の着るピンストライプの入った三つ揃えをオレが眺めると、『フクロウ』はソワソワおちつかなげに。しかし、以前の頼りなげな気配は影をひそめ、逆にどこか細いながらも“筋金”が入ったような感じさえ見受けられる。
──ふぅん……あのバニー・ガールと
次いで視線を、彼等が運んできた2台の大型台車にむけ、なんだコリャ?と検分してみる。
上には手術に使われる緑のケープが、載せられたモノを隠して盛り上がっていた。
2台の台車の片側からハミ出たもの。どう見てもバニーの耳のような……。
それに気づいたか、サッ!美香子は緑ケープの覆いをなおして、
「ちょうどイイわ?
「わたしは
「はぁぁああ!?」
「いいコト?このクソ人形……アタシが『ノワール』っつたら──『ノワール』なの!
すると、もう片方がオズオズと顔をあげて、
「しかし……ディーヴァ『美月』。わたしたちは──」
「M.M.!
まさに平手打ちせんばかりな勢い。
やらなかったのは、おそらく
相手は、さらに何か言いたそうな顔をするが、唇にチャックを縫い付けられたようになる。
オレは半分彼女の勢いにおされながらヒソヒソと『フクロウ』にむかって、
(……ンだよあいつ、エラく威勢いいなぁ。店ンなかでブイブイ(死語)言わせてンじゃないの?)
(えぇ。最近は、とくに。『美月』サマの派閥もできました……)
(ふぇぇ……しかしナンだ?『M.M.』って?)
『美月』の口もとに、ニンマリとした笑みが浮かぶ。
「
クッ!悔しげなプリ○ュアどもは、瞳に露骨な敵意の炎を灯らせる。
それを無視して『美月』は「さ、お行き」とばかり『黒』の尻を赤い靴で蹴り上げた。
ドレスの膨らんだ
両手で2台を押して、廊下の遠近法に消えてゆくFTMだかMMだかを見送りながら歌姫は、
(
いきなり切迫したようなヒソヒソ声。
こんな高音のささやき声は、かえって辺りに通るのだが。
コンゴの野戦で、男たちが低く合図を交わし合った事を思い出す。
つぎに『美月』は、余人に聞かれることのを畏れるように、オレの方へ身を寄せた。
嗅ぎ慣れない、キツい香水と化粧、それに
以前の彼女ならば、こんなロコツな臭いは立てなかった。少なくとも風呂上がりにバスタオルを胸に巻き、しずくの残る上気した肌に湯気を立てて、詩愛の文句を背にして絡みついてきた“美香子”からは……。
(……あのね?これから先、
(なぜだ?今夜に限って、ナニがそんなに特別なんだ?一体どうなってる……店主は?)
それには直接答えず、『美月』は必死な面差しを、もはや隠そうともせずに、
(それともう一つ。『欲望』で落とせなかったら、
(『店主』は──あの『小男』は、どうした?)
(ちびピエロは、今夜の騒ぎに干渉するコトが、許されていないのです……)
なにやら『美月』の口調が、急にオトナびてきた。
白い
「欲望……それに絶望だって?」
「いいこと?決して!決して“ウサギ”の女たちの
「……さもないと?」
だが、そこから先を『美月』は続けることができなかった。
肉感的な赤い口唇が、急に何か見えない手で、上下まとめて抓まれたように変形したかと思うと、今度はそのまま上にひねり上げられ、ちょうど「ヒョットコ」めいた口になってしまう。
「むぅ~~!んぅ~~うゥ~ン!……む!」
痙攣する顔面に手をやり、足をバタバタと地団駄させる『美月』だが、面相の変形はなおらない。『フクロウ』も、『フェティマ』たちも、そしてもちろんオレも、ただ目の前の情景を呆然とみているだけだった。
やがてクルクル、バタリ!顔面を引きつらせたまま『美月』はオレの腕の中に転がり込む。
そこでハッと気づいた。これって……もしや脳卒中では!
「
『フェティマ』が片耳に手をやり、事務的な口調で何ごとかつぶやく。
さほど間をおかず、ストレッチャーを囲んだ一団がやってきて、オレから手際よく『美月』を奪い取ると、見事な連携プレーでストレッチャーにのせ、心配顔な『フクロウ』を引き連れどこかへと拉し去った。
ひと
残ったオレと
相手には、あきらかに(……ザマぁ)の気配がある。
「それでは──参りましょうか、マイケルさま」
思わせぶりな含み笑いを冷たい美貌に浮かべ、ふたたび『フェティマ』はオレを案内しはじめる。長い長い廊下をすすみ、やがて塔の内壁めいた大きな螺旋の階段にたどり着くと、そこを下へ下へと降りてゆく。降りるほどに天井の照明は薄暗くなり、ついにはフット・ライトのみになる心細さ……。
「“ウラ”目当ての客は、いちいちコンナところ通ってないんだろ?」
だが、ビザールなメイド・ドレスをまとう
「失礼ながらキミたちフェティマ?の給与は?月にいくらもらってる」
「……」
「やっぱり奴隷調教とか、性奉仕訓練とか、受けて居たりするのか?」
「……」
「さっき『美月』のセリフに無条件で反応したトコを見ると、洗脳はされてるってワケだな」
「……」
「そのムダにデカい“エロ
「……」
──ふぅむ。
ワザと相手を
この拒絶するような反応には覚えがある。そう──『六道ビルジング』から帰って来るとき使った、タクシーの運チャンめいた印象だ。『美月』はこの女たちを『
長い道行きは、やがて壁一面の頑丈そうな大扉となって終わっていた。
「どうぞ──コチラです」
その片すみにある、通用口サイズの金庫めく戸を『フェティマ』に促されてくぐると……。
雰囲気は一転。廊下は同じく続いていたが、今までの木目調とは異なり、タイルとアクリル、あるいはステンレス、それにガラスといった無機質な印象で通路が構成されていた。空気もガラッと変わり、消毒液がヒンヤリ漂う。天井の高い照明も今までの暖色系と打って変わって、薄青い、殺菌灯混じりのものに置き換えられ、荒涼とした気配を
──これは……。
その廊下の両側には、幅が1mほどの透明な直方体が、補機類らしきものを台座にしてビッシリと並び、よく見ればそこには一体ずつ、なにかが封入されている。中は暗い液体が充填されているのか、ときおり台座の方からゴボッ!……気泡が、上へと昇っていくのが見えた。
カッ!
突然、すべての直方体の基部で、一斉にフット・ライトがともる。
その暖色系な光は、液体のなかに封入されるものを
──ウッ……。
シリンダーには薄青い液体が満たされており、そこに一体ずつ。若い女性が、
死体なのだろうか?ホルマリン漬け?呼吸用のマスクは口に装着されていない……にしては、みょうに肌が生々しい。全員が、ピッチリとしたラバー製の頑丈そうなビキニ・パンツを履かされており、股間からは太いチューブが伸びている。ゆるやかに開かされた両足首にはを黒い枷が巻かれ、クロームの鎖で直方体の床に後続されていた……それが浮力に抗うためか、ピン!と伸びて。
「ようこそ!
──ようこそォ!
奥から足音が響いてきた。
見れば、白スーツに茶色い
画に描いたような田舎ヤクザが、ジャイアント・プードルのリードを引いてやってくる。
男のかける下品なミラーグラスに見覚えがあった。たしか
例の性悪なサロメとかいうダンサーが、詩愛を嬲った時に居合わせたヤツ。
なにが「我が」だ。“表”サイドの序列3番目じゃないか……にしては態度がデカい。
「なかなかイイお召し物で……見違えましたナァ!」
「皮肉か!こんなもんゴールデン街の“流し”だって着ないわい!」
「まぁまぁ……どうです?一献。わざわざのお越し……お疲れでしょう」
アゴを振って、男は大型犬の背中に革ベルトでくくりつけたテーブルを示した。
盤面には何と。アイスバケツに刺さる『サロン』と、シャンパン用の脚付きグラス。
思わずノドをならしかけるが、ふと、その大きなプードルに目を留め、ギョッとした。よく見れば、それは女のひじ先とひざ先を切断し、そこにイヌの前足・後ろ足を接ぎ足している“ヒトイヌ”だったからだ。
──なん……だと?
妙齢の婦人とみえる肉付き豊かな
接合手術の部分は、例のプードル特有な毛玉がついていて見えなかった。
ウェーブした髪を前面に長く垂らして顔を覆うため、表情はよく分からない。
だが髪の分け目から鼻先が長く突き出し、頭蓋骨もイヌのように細長くされて。
ウェーブが密にかけられた髪も、例によってプラチナ・ブロンドに染められた格好。
ご丁寧に、肛門に深々とブッ刺されるプラグから上にピン!と伸びたシッポも同色に。
一見して分からないも道理。残酷にも身体は青灰色にボディ・ペイントをほどこされて。
おまけに歩きぶりも、相当の調教・訓練をうけたらしい。見た目は大型犬の動きそのもの。
「……だんなァ。こんなコトぐらいで驚いてちゃ、この先コマりますナァ」
チャリチャリとプードル婦人のリードを鳴らしながら、物珍しげに人間犬を観察するオレにサングラスの男は嘲笑う。
「さ──行きやしょうか」
チラチラとシリンダーの中に浮かぶ人体に眼をやってしまうオレだった。
相手は、そんなこちらのユルい足取りを急がせるように、飼い犬のクサリを鳴らした。
「……その婦人は?」
「コイツは、芸能人の男をハメた女でさァ」
シャリン、とひときわ強く男はリードの鎖を鳴らし、
「俗にいう、子供に対するネグレクトをやらかしたことで、親権を奪われた父親からこのクソ女の処分を依頼されたんです」
「なんでこの女は放置したんだ?」
「間男のもとに奔ったが、コブつきはイヤがったんでしょうなァ」
──間男に奔った女……。
それを聞いて、このメス犬に対し火のような怒りが燃えさかる。
男は、そんなコチラの思いも知らず、ヤレヤレといった口ぶりで、
「まだ小さい子供がですよ?カップ麺ひとつ渡されて、戸口にションボリと立っていたそうです。湯なんて沸かせやしないのに」※
「子供は……どうした」
「残念ですが、衰弱が激しくてね。ダメだったそうですワぃ」
アヌスに突き立てたプラグの尻尾をフリフリ先をゆく、そんな放置母の巨尻を思いっきりケリ上げたくなるのをオレは辛うじてこらえ、
「ふぅん。「女体化」や「人形化」だけでなく、そんな
「ま、ありがたい遺伝子改変というヤツでしてネ……ホぅラ」
男は、すぐそばのシリンダーを指し示す。
ゴボッ!泡がひとしきり上がった、その医療機器めく直方体の内部。
そこにはトラ縞ビキニとブーツを付けた、緑色の髪から二本の角を生やす少女……。
「最近は“LORA”とかいう、有り難い遺伝子3D改変システムで、モデルを入れればどんな人体改造も、おもうがままでさァ。スゴい時代ですナァ」
「……なんだと?」
「つまり……昨今の
「ローラ?……キズだらけの?」
「Life Organization・Re-born Assist system/生活構成・再生支援システム・LORA……ま、ハヤいはなし、モデルの写真と一緒に人間をブチ込めば、そのモデルの通りに人体を改変してくれる……ってなワケ。男→美少女なんてワケない。あるいは、アニメのキャラを3次元化したような姿にだって……そこの“改変希望素体”みてェに……」
『サード』は直方体の基部に歩み寄ると、サングラスをズリ上げて目を近づけ、何かを操作。
シリンダーの中の少女が身じろぎをしてパリパリっ!体の表面に電気のようなものを奔らせる。
ややあってムラサキの濃いアイシャドーをした
「呼吸を……してるのか。まさか高濃度・酸素を含んだ、呼吸のできる液体?」
「アニメじゃあるまいし……肺の毛細血管をイタめ
事情通の“上から目線”で
「股間に太いチューブ、
「……なぁるホド」
──尻穴で呼吸するインドのヨガ修行者みたいだな……。
「コイツも……もとァ
「うぇ……版権とか、大丈夫なのコレ?」
「当然、大学館と低橋センセーにはロイヤリティー払いますよ──メス奴隷か、性モデルに堕ちたコイツが、次の奉仕先の給料でね。となりのペアだって、日本サンセットに版権をとってあるワケで……」
男が示した少し大きめな水槽には、2人並んで浮かぶ若い女性たち。
黒髪ロングに、赤髪の短髪──露出の多い、SF的なコスチューム。
体力を警戒してか、床から伸びる支柱で首や胴体、両手・両脚首を拘束されて。
サングラスの男は彼方まで並ぶシリンダーを背景に両腕をひろげ、まるで誇るように、
「御覧あれ!どんなオッサンだって、このシステムにかかれば……エロアニメの“姦られ女主人公”を現実世界に合わせたような
──ニヤリ。
ここで相手はグラサンをズリ下げ、上目づかいにコチラを見て、
「いっそダンナも、この改変槽に漬けられて……アニメ風なワガママ・ボディになって、野郎たちを悩殺しまくり、カネを稼ぐってェのは。スリリングな、違った人生を歩めますぜ?」
──スリリングな、ちがった人生……ねぇ?
だが、その時オレの頭に浮かんだのは、強制・女体化施術のうえ魅惑のエロボディにされたあげく、ピンク色の髪を振り乱し、どことなく淫猥な照明のもと、シルクのランジェリーを輝かせながら男の腹の上で騎乗位となり、アンアンあえぐ己の
「もう……そういった人生はノーサンキューだな。考えてみれば今だって十分スリリングさ」
「へ?ただのトラック・ドライバーが?……まぁ、考えてみりゃそうかもしれませんなァ。連日の睡眠不足な運転。トラックの中での待ち時間。
“サード”の言葉に、オレは思わず爆笑してしまう。
コイツめ、自分が思っている以上に真実を言い当ててるぞ、とニンマリ。
事実を知ったとき、このスカした男がどんな顔をするか、見ものというものだ。
そんなオレを見た相手は、冷やかしが空振りに終わり悔しいのか、薄笑いして肩をすくめ、
「まぁネ?実のところ、アニメ化のボディを志願する連中は、注文がうるさくて……」
ピッ、男は“プードル婦人”のテーブルから拾い上げたリモコンを鳴らす。
すると、3Dホロのモニターが宙空に浮かび上がり、
「この鬼娘キャラを希望する“素体志願”の男は多くてねェ……コレは、1ヶ月前かな」
画面では“鬼娘”に改造された人物が、施術台から起き上がるところだった。
白衣を着た、いままで見たことのない医師──多分、ウラ専門のスタッフなのだろう──が、落ち着いた声で、そんな“彼女”に向かい、
『やぁ──お目覚めかな』
『せんせい……ウチ……改造手術は、オワったっちゃ?』
緑色の長い髪をゆらし、気だるい手つきで、この人物は自分の全身をまさぐる。
『あぁっ!オッパイ、おっぱいが……チャンとあるっちゃ!トラ縞の
あふん♪自分の股間をさわると、パリパリっ!放電が全身を奔る。
『女の子の
『そうでなくては、イミがないからね。催眠状態で脳教育して、会話もそのキャラ特有の口調でしか話せないよう、永久にロックをかけてある』
『ウチ……覚えがないっちゃ……』
『当然だよ。しゃべり方はもちろん、立ち居ふるまいから、性奉仕テクニックまで』
『性奉仕テクニック……?』
『ほら、鏡をみたまえ……LORAの威力は
差し出された鏡の前で。
濃いめに施された色合いの顔を撫でさする、改変施術が終わった“素体”……。
『ちゃんとツノもある……
口を開け、イーっする“彼女”は、次いでドコか照れくさいように、
『なんだかお肌もスベスベで、ヘンな感じだっちゃ。お
出来映えに満足がいったのだろう。緑色の長い髪をゆらし、医師に抱きつこうと、
『ウチは……ウチは……うれしいっちゃァァッ!』
なんと鬼娘は、施術台からジャンプして、見事にコロげおちる。
『痛ったたたァァァ……なんで、こーなるっちゃ!』
『こらこら。せっかくの商品に青あざが付けいたら、価値が下がるだろうが』
『なんで……なんでウチ飛べないの?それに商品?って……』
打ち付けたヒジをさすりながら、しかめっ面で“彼女”は立ちあがった。未練がましく、まだピョンピョンとはねて──美乳とも言えるカタチのいいオッパイの揺れなどを、気にしつつ。
『物理法則には逆らえん。
アニメそのままに、キャラの顔が愕然とする。
まるでコンセントを引っこ抜いたように、顔色が青ざめた。
『そんな……置物だなんて──ウチはイヤだっちゃ!』
体の表面に電撃が奔る。
そのまま医師を指さし火花を飛ばそうする、しかし先端からは、わずかな放電だけ。
『だから言っただろう。物理法則には逆らえないと。生体電流ではイミテーション程度にしか放電できませんよ。しかし──コレなら別です』
医師は、白衣のポケットからタブレットを抜き出して、ピッ!何かを操作する。
『あっあっあっ……はい!……はい!……オナニー……おなに~スルっちゃぁぁぁ!!!』
洗脳で刷り込まれた強制行為。そのトリガーが、引かれたのであろうか。
いきなり鬼娘はそう叫ぶとヒザ立ちになり、弓なりに背を反らせ、自分に作られたばかりの『
もとは男だった素体には、女の快感からくる刺激が強すぎるのか。
アニメの女キャラにされた“彼女”は緑の髪を振り乱しつつ、食いしばった犬歯の間からヨダレを垂れながし、ヒグゥゥゥ……っ!
右手のなかゆびで、プックリとふくれた“女の
『お尻が……オシリの
ビュクビュクビュク……っ!
全身をはげしくケイレンさせ、女として初の絶頂を味わう“彼女”……ムラサキのキツめなアイシャドウを刷かれたまぶたが、ギュッ!閉じられる。ひざをガクガクと、子鹿のようにふるわせて。だが女の性欲は、とどまるところを知らない。そのことを思い知らされるかのように、ふたたび両手は前後の孔を淫猥に、
『オナニ~が!……おなに~が!……止まらないっちゃぁぁああああああ!』
ピッ!医師のタブレットから、ふたたび信号音。
すると!……どうしたことだろうか?
絶頂のアヘ顔をしたまま、鬼娘の動きはとまる。
イキすぎたのだろうか?──顔色が、すぐれないようにも見えた。
と、その肌は白さを通り越し、灰色に……やがてグレーへと彩りを変えてゆく。
“彼女は”自慰行為をとめると、ヒザ立ちのまま両腕をひろげ、自分の体のわきへ。
そして、まるで何かを受け入れるように天を仰ぎ“法悦”の表情へとポーズをとった。
ピキピキ……ッ!
石のような色合いが、アニメキャラのヒザ……尻……腹部……胸へと這い上がってゆく。
やがて鬼娘は
──まさか!こいつは……石化魔法!?
その様に、余裕をカマしていたさすがのオレも愕然とする。
同時に、特殊騎士団長としての記憶が、祭りの日の情景を運んできた。
【第49話】のエロ・パートで出てきた、あの悪夢のような女体型・噴水台。
よく『高度に発達した医学は魔法と区別がつかない』とは言われるが……これは……。
「石像にされても、快感ァ続くってェ寸法で……」
モニターを停止させながら、サングラス男はフフン、自慢顔で、
「コイツは、永遠に快楽の檻へ閉じ込められた、ッてぇワケでさァ」
まるで騎士団長がいた異世界の魔法そのものだと、オレは瞠目せざるを得ない。
夢の中の出来事とタカをくくっていた事が、きゅうに現実となって立ち塞がったような。
現代社会の医療技術は、遺伝子工学は、ここまで到達したのか?あるいは……もしや……?
オレは黙したまま、傍らを見上げる。
「このシリンダーの鬼娘も……そうなるのか?」
すると、男はモニターの表示を変えて、
「あぁ、コイツは違うようですねェ。この他に、三体の“改変体”とひと組みに、どこぞの引きこもりなマニアの家に運ばれて、ショーケースの中で愛玩用の展示品にされるとか。ったく!カネをもったヒマ人ってなァ、ロクなコト考えませんな……そら、そこの3体です」
男が少し離れたシリンダーを指し示すと、
露出の多いコスに鎖を巻いた女。
長い銀髪を束ね、振り袖をまとう女。
最後はフリフリスカートなピンク髪の女。
これらが、それぞれチャンバーの中で目を閉じている。
男は宙に浮かんだモニターを消すと、
「さ、思わぬ時間を食いました。先を急ぎましょうや。ナンたって、先生が今夜の主役なんですからねぇ……」
ピシリ、プードル婦人の
「そら、メスいぬ!大事なお客さんに、粗相のないようにな!?」
グィぃぃ……ッ!
プードル型のシッポがピン!と立つアヌス栓を、サングラスの男は更に奥へと突き入れる。
鳴き声とともに、牝イヌに改良された熟女の股間から、タラタラと輝くものが糸をひいて。
「まだまだ、お楽しみはコレからですぜ……?」
ゆさゆさ豊尻を振り立て、犬のように歩き出す。プードル婦人を先頭に、オレと“サード”と。それにフェティッシュ・メイドは、様々な色合いの女や少年が封入されているシリンダーの列が続く廊下を進み出した。
「店主は、罪を犯した人物しか、強制手術は行わないと言っていたが……」
宗旨を変えたのか?と尋ねるオレに対し、振り向いた男はサングラスをズリ下げた目で、
「なぁに。ここに封入されてる“改変希望素体”は文字通り自分の身体の『改造志願者』でして……」
歩くウチに、やがて“ウマむすめ”とでもいうのか……ムチムチなボディにウマの首だけがすげ替えられた、葦毛や茶色、黒のまだらな塗装がされた女たちが封入されるシリンダーの前を通る。液体の中で、長いまつげに彩られた哀しげな眼が、オレたちが通るのを視線だけで見送って……。
「昨今のアニメブーム?とやらで志願する“素体”が耐えない……と」
「改変、ってどれぐらいの時間がかかるんだ?」
「まぁ、最低6ヶ月といったトコですかぃ?。店主は、このコト知らなかったみてェですが」
──『小男』が?まさか!
あの大胆にして周到な、そして狡猾な男が!
まんまとウラをかかれるなんてコトがあるのだろうか。
ならば、そもそも一体誰に……?
「……そんなコトって……あるの、か?」
「まぁコッチも“ウラ”のこたァ最近知らされた具合で……イロイロ
道理で“サード”と呼ばれるこの男が、どことなく昔で言う『態度“L”』なワケだ。
しかし“ウサギ”の引っ越しとは、初めて聞いた。いったいドコにいくのだろう……?
やがて、廊下の先は、またもや頑丈そうなステンレスの扉となって終わっている。ただしレールは、扉の下から向こうに続いているようだった。
「さ、おマットさんでした!」
「愛川欽也かオマエは」
「……え~ここから先は、いよいよ“ウラ”の
* * *
お待たせしました。
現在、またも新作との「二正面作戦」を行っている関係上、
更新が遅れ気味となっており、恐縮であります。
今年は、ようやくこの物語も終りを迎える(多分)と考えます。
お時間のある方は最後まで宜しくお付き合いのほど、お願いいたします。
※イヤな事件でしたね……。
※2ご希望があれば、LORAの短編(強制アニメキャラ女体化)を書いてみたいと思いますが、どうでしょう?