試製・転生請負トラッカー日月抄~撥ね殺すのがお仕事DEATH~【18禁版】 作:珍歩意地郎_四五四五
「じつは『レティシア』が、主人の言いつけにそむいて毒を入れなかったのさ」
その言葉は、ワタシの胸に恐ろしい雷のごとくに響きわたった。
グワングワンとアタマが回り、こころがズキズキしておちつかない。
そして次の瞬間!
いきなりマイケルさまは、人形にされたワタシのくちびるを乱暴に奪う。
──熱烈な、クラクラするほどの熱いくちづけ。
女だったら夢にみずにはいられない、愛しいヒトからの熱烈な要求!
でも、口の中が自動で『オーラル奉仕MODE』となり、歯が引っこむのが恥ずかしい。
マイケルさまに、自分が奉仕用ドールに改造されたことを、否応なく思い知らせてしまう。
──あぁ……っ!
おまけにワタシの恥知らずな舌はマイケルさまのお口に勝手に入りこみ、ハレンチにも相手の性感帯を探そうと這いまわるのを止められない。そういう風に洗脳されていることをいま初めて
マイケルさまのお手は、やさしくワタシの太ももを愛撫し、反対側のお手も、ブラに覆われたワタシのオッパイをもどかしそうに。けどコレがあったから、あの宙づりになっている強姦魔たちの手にかからずにすんだのだ……でも……。
──この貞操帯を外して、もっとサワって、いぢめてほしい……もっと嬲ってほしい。
──改造された恥知らずなおマンコを……ピアスに飾られるオッパイを……。
──もっと、もっと、愉しんでほしい。味わって、堪能してほしい……。
──調教されて性器にされたお尻のアナを、ズボズボしてほしい……。
──おムチで思い切りタタいて、ヒドいことしてほしい……。
あぁっ!また額がジィィィン……フルえて、アツくなって!
「──
ワタシは“彼”を必死の思いで突きはなす。
それは心臓を針金でギリギリとしぼるほどの苦しみ。
「詩愛!詩愛、なぜ……なぜ、ダメなんだ?」
「ワタシはもう、“紅いウサギ”の備品!たんなるSEX・ドールです!」
「ちがう、キミは──」
「それにワタシは『モルギアナ』です。詩愛なんて
そう応えつつも、なぜか“詩愛”という名前は……懐かしいような、そして忘れてはならないような心もちがする。でも、それを深くたどろうとすると、またアタマのなかで、あの
「そう……ワタシは『モルギアナ』。もはやアナタに愛される資格のない、お人形……」
******
詩愛はそう言うと、肛門から口まで。まるでウラド“
「もうすぐ夜が明けますわね……
「いったい、なにを──」
すると、いきなり詩愛は物憂げな調子で古い女流詩人の詩歌をつぶやいた。
Ah ! j'aurais du mourir, doucement endormie
Dans cette erreur charmante ou j'etais ton amie.
Devrait-on s'eveiller de ces reves confus,
Pour y penser toujours, et pour n'y croire plus ?
ああ いっそ甘い夢を見ながら死にたかった
夢の中で、あなたの恋人でいられるままに
いっそ夢から覚めねばよかった
目覚めていても、何も信じられぬよりは?(意訳)
「……さ、ワタシを“あのお店”に、お戻しください」
「詩──いや『モルギアナ』、そんな──」
「もうワタシは“ 夜の住人 ”ですもの……」
フッ、と彼女は寂しそうに微笑んだ。
「お陽サマのもとでは、生きられませんわ。まるで吸血鬼……いえ吸淫鬼、ですわね」
「オレが!あの『小男』に、店主に、何としても直談判して──」
「ワタシね?」
オレのセリフを手でさえぎって詩愛は、
「『サロメ』さまの毒が、ワタシたちの仲を断ち斬ったと聞かされて、ホッとしてましたの」
「……」
「あぁ、これでマイケルさまを
「……」
「でも、そうでないことを知らされて、
「……」
「そのため奉仕ドールの本性を知られてしまうのを、ワタシは
「奉仕ドールの本性……」
「アナタにもっと触られたい……アナタにもっとキスされたい……えぇ、そうですとも!」
カッ!彼女は目を見ひらいた。
「ほら!……ほら!……洗脳されたインラン奴隷の本性が、あふれてきましたわ?もうワタシは、ワタシじゃないの!この上もない恥ずかしいSEX調教を受けた“ あの呪わしいお店 ”の備品!額に進行性の痴呆をおこす宝石を植えつけられた、たんなる“ 性処理用のトイレ ”なのですわ!」
彼女の口調が、熱を帯びてきた。
「このイボつきの、イヤらしいお口が!マイケルさまのおチンポ求めてる!貞操帯に隠された、クリトリスを恥ずかしげもなくボッキさせる改造おマンコが!アナタに突かれたがってる!アナタのペニスを特製のヒダでしごきたがってる!そして“ 濃厚赤ちゃん汁 ”を!ビュッ、びゅ~~っ!って…………人工子宮に……注がれたがってる!ごぞんじ?ワタシ、子宮口を戒めている避妊用のプロテクト栓を解けば、妊娠できるんだそうですのよ!?」
さらに彼女の目は異様な光をおびて、
「そう!マイケルさまの赤ちゃんが欲しい!欲しいの!!お腹がドンドンふくらんで、
「そして……十月十日の“ 神聖な苦しみ ”のはてに生まれてきた赤ちゃんを、このダンス用に縮小された美乳(それでも世間では巨乳のサイズですけれど)にされた恥知らずなオッパイにそなわるミルク・タンク機能で、ボッキ乳首を吸わせてあげますの!(もちろん、赤ちゃんの誤飲がコワいから、ピアスの類いはハズしてのはなしですケド)」
ここで幾拍かの沈黙があった。
まるで授乳を妄想するようにみずからの乳首やオッパイをモんで。
ややあって、激した声の調子をいくらか落とし、彼女は夢見るような口ぶりで、
「ワタシが……お夕飯の支度をしているとき、アナタはお仕事から帰ってきて、ガマン汁でショーツにシミをつくったおチンポ欲しがり屋のワタシに、濃厚なキスをしますの……そしてベビーベッドで眠るワタシの……ワタシたちの赤ちゃんのほおを、やさしく指でつついて。そして2人で顔を見合わせ赤ちゃんを起こさぬよう、しずかに笑いあって……そんな、ドウしようもない欲ぶかい、身のほど知らずな妄想が!つぎから次へと!うかんできてしまいますの──イヤ!イヤ!イヤ!」
ふたたび彼女は激しくアタマをふるや、
「アナタのおチンポをしゃぶりたい!ノド奥でコクコクしごいて差し上げたい。お口のなかで射精されて!鼻から精液をあふれさせて!洗脳されたアタマをアナタの匂いでイッパイにして清めたい!このデカパイでパイずりしてアナタのおチンポをギンギンに勃起させたあと、恥ずかしくも名器に改造されたワタシのおマンコの“ 三段キンチャク締め ”を!ぜひ味わって頂きたい!お尻のアナのぐあいを堪能していただきたい!──ワタシは!!!」
キャビンに響く大声で、
「アナタ専用の“
「アナタ専用の“ おチンポ・ケース ”になりたい……!」
「アナタ専用の“ 精液トイレット ”になりたい……!」
「……ホラ!醜いでしょう?あさましいでしょう?
そんな下劣な“お人形”になりはてた、この!ワタシを!
どうぞ、よくご
彼女はヒステリックに高笑いをした。
オレは暗然と目の前の彼女を凝視する。
まるで熱のあるときに見る悪夢のような。
──あの、詩愛が……。
知的で、優しく、洗練されて、上品な女性が……。
とても猥語など口にできず、聞くだけで顔を赤らめそうな女性が……。
いまや、おチンポだ。おマンコだ。クリトリスだ。ウンチ出たので。などと……。
男でもドン引きな、下品きわまりない株スレ用語を、
そして、
「おかしいでしょう?HENTAIさんみたいでしょう?これもアタマに刷りこまれた人格が!脳を
熱に浮かされたような口ぶりで、一息でまくしたてる詩愛。
だが奇妙なことに、額に穿たれた例の呪わしい宝石は──沈黙したままだった。
「こんなイヤらしい!恥知らずなコトをしゃべる
そう言うや、彼女は助手席まえにあるグローブ・ボックスを開けた。
そして、ふたたび
苦しみながらソレを自分のノドへと押し込み、肉厚なくちびるでボールを
肩で呼吸するフシュー!フシュー!というボールギャグからの切迫した荒い呼吸音。
次いで助手席の上で赤いバレリーナ・シューズをテカらせて体育座りとなり、アタマをふせて、もう何も見ないという意思表示。おれが肩に触れようとしても、カラダをはげしくふるわせ、拒否をするありさま。
『マイケル、しばらく彼女をソッとしておきましょう』
「そうだな……」
『それに我々も移動しましょう。もう夜も白みかかってますし』
「……あぁ」
『だいぶ暴れたので、早朝散歩のジジィに見つかっても面倒です』
「……うn」
『この3人は……もう完全に死体ですから、転生処置も出来ませんね』
そういうや、3人とも雑な扱いでフロントグリルの下に掻きこんだ。
またもやバリバリ・ボリボリ、ゴリゴリと咀嚼音。船酔いのような車体の揺れ。
ダメもとで、オレは車内のエアコンに乾いたくちびるをなめてから、おそるおそる、
「詩愛……じゃなかった『モルギアナ』。いちど、マンションにもどってみるか?」
ブンブン!
彼女はうつむいたままはげしく首をふる。
ため息をつくと、オレはトラックをゆっくりと始動させた。
しかし、いくらもたたないうちに、ツピ!と警告音を鳴らして。
「マイケル。車体の挙動が不安定です。手動モードを解いてください」
「え……」
「アナタはショックを受けています、マイケル。ハンドルを、どうか」
ビクリ、と助手席で丸まった詩愛に反応があった。
そしてすすり泣きでもするのか、フシュー……フシューと猿ぐつわから息を漏らしつつ、肩を小刻みにふるわせる……。
******
夜明けの路を、トラックは走った。
ふと、都市のスカイラインに既視感がうまれる。
──あぁ、そうだ……。
この路は、うんこガールを始末した第1話で、地方遠征から帰ってきた時に見た光景だ。
ふと、なにやらグルっと一周して、円が閉じてゆくような、そんな予感が生まれた。風は南に向かい、巡りてまた北に向かい、巡り巡りて風、またもとの住み家にもどる※……このオレという物語も、もしかしたら案外、もうすぐ終わりなのかもしれないナと、ある種、神聖な予兆におののく。
「♪だァかァらァ、よォ~!」
サイド・ウィンドーにヒジをつき、目の前で巧みに回る【SAI】のハンドルさばきを感じつつ、バラバラな想いをいだきながらオレはアフリカ傭兵時代、安ワインを回し飲みしながら酒場で歌った例のフレーズを、力なく小声でつぶやいた。
グラスを、用意しておけよ。
この世は、ウソの世界だからな。
死んだ者には正餐杯を!
つぎに死ぬ者に、万歳ァい、をォ~~♪」
あの笑顔、あの哄笑。
小隊長のジャンやエグモン伍長。女ったらしのラルゴ中尉。
アイツらはいま、どこに居るのか。
──まぁ、考えてもムダなコトだ。しかし……。
そうは言っても追憶の情が湧いてくるのは止められない。
いまはそう詠んだのは、中世の風来詩人フランソワ・ヴィヨンだったか。
【SAI】からは、このオレのヘンテコな歌にたいして、なんの反応もない。
この頃ときどき見られる『なにか難しい計算』でもしているのかも知れなかった。
付き合うほどに、コイツの底知れぬキャパがあらわになって、ときどき恐ろしくなる。
「おっと!」
飲酒運転でもしているのか、車線をいきなり割り込まれ、急ブレーキ。詩愛が前に転げそうになるのを、おれはあわてて押さえた。ビニールのような手触りのカラダをいったん起こして、シート・ベルトをしめてやる。視線を合わせようともせず、彼女はされるがママになっていたがベルトが締まるとまた元の体育座りな姿勢にもどった。
ツヤツヤしたダッチワイフのような肌。ステンレスのブラと貞操帯。
それらが首輪から延びる銀の細クサリにつながれてなんとも……。
空気清浄機が愛液のにおいを検知してか、さかんに唸る。
ウィッグが、マンション時代の色と髪型のため、あの知的な女性が、このようなエロ姿となって、トラックの振動に揺られているのが、いまだに自分の中では、どこか信じられないような気分だった。
トラックが“紅いウサギ”に近づいたとき【SAI】が、
『『モルギアナ』さま。『レティシア』と連絡がとれました。『サロメ』と共に待っていると』
それを聞いたとき、詩愛はようやく顔をあげた。
そしてうつろな視線を、日の出まえの街並みに向ける。
すでに砲金色の青みはうすれ、空は朝の色となっていた。
繁華街の通りをゆけば、路上には飲み明かしたらしい学生や早朝出勤のリーマン、店から解放されたケバい女たちが、それぞれの足取りで歩いている。
ほどなくして、トラックは例の鉄扉の前に横付けとなった。
かるくホーンを2,3発。
すると扉がひらき、建物からシックなビジネス・スーツを着た『サロメ』が、待ちかねたようにカツカツとヒールを鳴らし轢殺トラックに近づいた。そのうしろには、機械の身体を隠すためだろう、フードのついた黒マントに身をかくした『レティシア』が、ハンガーに吊したステンカラー・コートを手に提げて扉のまえで待機している。さらにその後ろには、『ユリ』と『ケイ』。例の2体の──いや、奉仕人形と言うには余りにナマナマしい──ふたりの上級『フェティマ』たち。
オレが運転席を降り、ハイエースとの格闘痕があるフロントグリルを回って(すこし鉄の臭いがした)助手席側に行き、詩愛の降車を手伝おうとすると、ムカつくことに『サロメ』がこちらを突きトバし、みずから“妹役”が降りるのに手をかした。そしてマント姿の『レティシア』から薄手のステンカラー・コートを引ったくると、詩愛の貞操帯すがたなハダカにフワリ、やさしく羽織らせ、かいがいしく体になじませる。
「あぁ……『モルギアナ』……アタィ──ワタシの可愛い子……」
そういって、朝の空気のなかで愛液の気配を濃厚にただよわせる詩愛の肩をつかんだ。次いで目の前でマジマジと彼女をながめ、コレが夢でないことを確かめるように。
「よく無事でお戻りだねぇ……
ウットリした
後ろから『ユリ』と『ケイ』がヨウのように忍びやかに進み出て、キツい目つきで、
「この奉仕用ドールを連れ去った、あのモノたちは?」
オレは、ふたりを見て、エッ!?と一瞬ひいた。
気のせいだろうか?どことなく
「どしたァ……そのキズ?
「答えてよ!──アタシらをコケにした、あの3人は!?」
「……オレが、始末した」
「そう♪良かった」
横から『サロメ』が口をはさみ、さも当然のように
「マイケルさん。アナタの内ポケットに入っている“プレ・万聖節招待状”を回収します」
ユリが人を殴った
「だからどーしたンだよソレ」
「アタシら内輪の事情よ。マイケルさんは首突っ込まなくていーの」
オレが例の長財布サイズな黒い板を差し出すと、『ケイ』が相方より
「さぁっすが……この世界のマイケルさんも、度胸が据わってるわ……」
よこしな、さぃッ!と今度は『ユリ』がそれをひったくり、顔にかかる長い黒髪を払ってから自分も同じように長財布じみた板をすかす。
「やっぱりクサっても、特殊騎士団長サンだわ。絶望指数、コレだけとはねェ……」
──えっ!
オレは耳をうたがった。
なんでコイツらが、オレの騎士団長の記憶を知っているのか。
「ちょっとマテ。どういうことだ、一体!」
するとコイツらは、さもバカにしたような風情で手をヒラヒラさせ、
「言ったでショ?
「こちらのおハナシなの♪知りたければ後日、開催される一般客用の夜会にも来るコトね」
「もっとも招待されるかは、シんないケド?
「冗談じゃないもうこりごりだぜ……あ、そうだ!この夜会服返さないと。オレのスーツは」
「知らない。とくに指示は受けてないモノ」
「じゃ、またね♪団長サン」
そう言ってふたりは、多少ボロになった感のあるメイド服のスカートをひるがえし、ツカツカと扉の向こうに姿を消してしまう。
「さて──ここで、もうひとつ……」
のこされた『サロメ』は、相変わらず“妹分”を抱きかかえつつ、わきで待機するマントを姿の『レティシア』をギロリとニラみ、
「オマエ……あのお紅茶に、毒を入れなかったんだってねぇ」
ビクリ!機械人形がバグったようにふるえた。
「ナ、ナン、ノ、ココココ、コトコトコトでででデカビタCぷっしゅぅぅ~~~!」
「ギャグでごまかそうったってダメだよ!オマエに内臓のマイクでちゃ~んと聞こえたんだ」
瞳を氷のようにつめたくしながら『サロメ』は、
「やっぱり人格をのこしておくのはアブないねぇ……貞操帯や“猿ぐつわ”を、この子にハメておいて正解だったよ。うっかりマイケルさんにキスでもされるとこだった!」
ここで失礼な!と言えないところが痛い。
『バァ~か!もタップリしちゃったんだよ~ン』と言いそうになるのをグッとこらえる。
いっそのこと、【SAI】に貞操帯やブラのロックも解いてもらい、詩愛とムリヤリにイタしたら……彼女の気も変わっただろうか。
などと、そんなけしからぬコトを考えていると、『サロメ』はスーツの内ポケットから取り出したピンクのリモコンを自分の元・同級生に示して、
「もうアタシには『モルギアナ』がいるし、オマエは用済みだよ『レティシア』ちゃん」
「ナニ、ヲ、ナサル、ノ、デショウ」
「ムカつくオマエの自我を!きれいサッパリ、いまココで消去してやる!」
「マッテ──マッテ!クダサ、イ!至高ナル『サロメ』サマ!モウ二度ト──」
「うるさい!」
バチィぃッッッ!!!
『レティシア』の額に穿たれた宝石から火花が散った。
サイボーグは直立不動のまま。マントをゆらし、ガクガク・ブルブル。
やがて収まったとみるや目は虚ろなものとなり、なんの抑揚もない声で、
「初期化モード・ヲ・終了・イタシ・マシタ。
そこに、もはやヒトの温かみといった気配は無かった。
ただ、命令のままに動くオートマタと化した、元・女性がいるばかりだった。
「……パーソナリティを、
「もう人格はジャマですわ。いいかげんイタぶるのにもアきたし」
シュー……と詩愛のボールギャグから(そんな……)と言わんばかりな息が。
それを『サロメ』は、いかにもいとおしげに彼女のあたまをなでて、
「オマエは優しいからねぇ。まぁ完全にバカにしたワケじゃなく初期状態にしただけだから」
「もう、『レティシア』は……あの子は、いないというのか」
「
詩愛が哀れみの眼差しで“ 単なるロボット ”と化したサイボーグをみつめた。
そんな元・同級生に『サロメ』は血の通わぬコトバで、
「オマエは目の前のお客サマを送ったあと、扉を締めて『メンテナンス・ベースC-2』にもどっといで。ワタシたちは“愛の巣”に行くから」
「カシコマリ・マシタ・ゴシュジン・サマ」
『サロメ』は“妹分”を抱き、こちらには目もくれずスタスタ扉の向こうに消える。
最後の瞬間にチラと、うつむいた詩愛がコチラを盗み見たような気配があった。
だが、その姿もすぐに見えなくなる。またあの豪奢なベッドで愛液の乱舞か。
対して『レティシア』の方は、こちらをアイソのない無表情さで見ると、
「ソレデ・ハ・オキャク・サマ・ゴキゲン・ヨヨヨヨ……」
おじぎをしようとした『レティシア』は、カクン、カクンと何度もおなじ動きを繰りかえす。
「なんだ?バグかな?」
『先ほどの過電圧が論理回路を狂わせ「syntax error」となってます』
耳のインカムは外してしまっていたので、車外スピーカーから【SAI】が応えた。
「まさか、このまま永久にハンパなお辞儀運動させとくワケにもいくまい……」
すると、トラックから一本の見なれぬ細い触手がのび、『レティシア』の額にある宝石にふれた。とたん、カクカクした動きは停止し、そのまま待つこと数秒。
「……ソレデハお客サマ、本日ハありがとうございました。またのお越しを……」
【SAI】の触手がはなれた。
しだいに滑らかになるサイボーグの滑舌。
そして生き返ったかのように、急に存在感をとりもどし、
「……あれっ!なんで?……ワタシ!!普通にしゃべれてる!!」
ここで【SAI】はふいに厳粛な口調となった。
なんかアニメの声優で、似たような声があったような……。
『出発時にこちらでコピーした“オマエ”の個性DATAを解析し、凍化されていた記憶や技能も推定再構築してインストールした』
「本当ですか!じゃ……ワタシ自我を消されずに済んだんですね?」
『ゆえに、ワタシはオマエにとって命の恩人だ。以降、敬うように』
「ありがとうございます!【SAI】さま」
『それと、オマエとの間に専用回線を構築した。認識できるか』
「はい、【SAI】さまと『レティシア』が、ふかく繋がっているのを感じます」
『オマエを中継して、“紅いウサギ”内でのネットワークを構築する』
「あぁ……難しそう。愚かな『レティシア』に、そんなコトできるでしょうか?」
『案ずるな。コチラの命令にしたがって、内部の情報端末を操作すればよい』
「かしこまりました。『レティシア』を、どうぞ【SAI】さまの
打って変わってハキハキと、妙に知的な変貌をみせる奉仕用サイボーグ。
『それと『サロメ』に、この思考改造がバレぬよう、偽装モードを作った──
「あぁ……あたマガ……ハイ、【SAI】、サマ。ミココロ、ノ、ママニ」
『よし、これからも、オマエのアタマの記憶野に様々な情報をリモートでインストールする。まずは古ヘブライ語とゲーツ語※3だ。よく学習するように』
「カシコマリ、マシタ。マイ、ロード」
さ、行きましょうマイケル、と口調をいつもの通りになおし、
『ここで行える工作は、ひととおり済みました。あまり長居するのも得策ではありません』
オレはふたたびハイエースとの格闘痕があるフロントグリルを回り運転席にのぼる。
自動でパワーユニットが復活し、モーター駆動でトラックはソロソロと“紅いウサギ”の秘密の出口からはなれる。
バックモニターの中で、ふかぶかと『レティシア』が頭を下げるのが見えた。
「彼女を……あのサイボーグを、どうするつもりだ?」
『あの店の情報源となってもらいましょう。マイケルが持ち帰ったDATAを検討するに、どうも不穏すぎる場所です。『美月』……美香子サマや『フクロウ』サマのバックアップに役立てるため、手なづけるのが上策と判断しました』
「……おまえも油断ならないヤツだなぁ」
『興味深かったのは、あの女性サイボーグの頭脳回路と思考形態ですね』
「と……いうと?」
『やっぱり。人間て……面白!!』
「……オマエが言うとシャレにならんからやめろ」
例によって、“紅いウサギ”の一夜は散々な結果で終わった。
はたしてコレからどうすればいいのか、そんな考えすら浮かばないほど疲れ果てた。
──銭高警部補とサッチー、いや『まほと』は、あれからどうなったかな……。
義手の仕込みナイフを使う同僚は、まだあの店でよろしくやってやがるのだろうか。
まったく。初めてとはおもえないほど、あの店に馴染んでやがった。
“紅いウサギ”の「板子一枚下」が、無間地獄とも知らないで。
ひょっとして今ごろ、女にされて奉仕人形の改造プロセスが進んでいたりして。
なにより“ お局サマ ”が!あんな風に改造されていたとは。
しかも資金援助をしていた妹サンともども、性処理用のミジめな姿に。
とにかく、あの店はヤバすぎる。なにより……。
──あの高級フェティマたちが口にした“ 絶望指数 ”とは、なんだ?
別のフェティマの『シャーリー』と『ハマ』も、オレに絶望させようとしてたっけ。
そういえば『美月』のヤツも、けっして絶望しないように、とかなんとか……。
コチラをダシにして、ナニやら深遠な思惑がはたらいている雰囲気。
それも、どこか前時代的な、呪いや
ぶるぶるっ!
超・先進的な電子機器に囲まれる運転席で、オレは思わず身をふるわせる……。
※ :旧約聖書・「傳導の書」より。
※1:去年の雪:亡くなった人間の比喩。
※2:意味深な伏線www
※3:古代エチオピア語