※この作品はR-18です。

試製・転生請負トラッカー日月抄~撥ね殺すのがお仕事DEATH~【18禁版】   作:珍歩意地郎_四五四五

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第86話:嵐の前の静けさ(上

***

 

『サロメ』のあえぎ声は、しだいに緩(ゆる)やかになっていった……。

 

 ワイド・キングサイズのベッドをタテにふたつ並べたような、巨大なシーツの海。 

 その真ん中で、2つの女体は全身を官能に紅潮させ、恍惚(ウットリ)と余韻(よいん)に肢体(カラダ)を蠢(うごめ)かせる。

 V字に痙攣(フル)える美脚(あし)の根もとを互(かたみ)に、はた巧(たく)みにスリ付けあう“貝合わせ”のスタイル。

 シルクの輝きもてる真珠色の大海原に、異なる2種の愛液を歓喜とまき散らした愛人たち。

 余人の窺覦(ぬすみ見)をはばみ、2人だけの世界にひたるべく、天蓋から軽やかな吊帳(とばり)を下ろした空間。

 そこにあって、この2匹の美獣は誰はばかることも無く、互いにアクメ(絶頂)をむさぼりあったのだ。

 

「あぁ……『モルギアナ』……いいわァ……」

 

 夢見るように呟(つぶや)くや、淫欲つきたサロメは、甘美な睡(ねむ)りに堕ちたようである。

 『モルギアナ』こと元・詩愛は、さすがに奉仕ドールだけあって、まだ余力が見えた。

 ティアラを飾る豊かなブロンドのウィッグをひと振りして髪型をととのえると、真っ赤に充血する主人の秘裂から、己の股間よりせり出した、イカの触腕にも似る責め具を、ズロッ……ズロロロォ……ッ。きわめてユックリと抜き出す。

 

 ヒクヒク……ッ!

 

 幾重にもならぶ吸盤めいたイボが、己の膣をえぐりながら出て行く感覚。さすがに半睡状態の『サロメ』も夢うつつのまま、うぅ……ん!とよがり声。そしてあられもない大股びらきのまま、さらに深い眠りについた様子だった。

 

 ──はぁ……っ。

 

 凶悪な触手を自らの膣内にユルユル格納すると、この奉仕ドールは覚えずため息をついた。

 イヤらしく改造・調教・洗脳されたあげく、『サロメ』の愛玩品に成り果てた現在(いま)の境遇。

 膣を(ヴァギナ)、肛門(アヌス)を、口腔(オーラル)を、これ以上ないほどの性具に仕立て上げられてしまった己(おのれ)のカラダ。

 

 触ってみると、人間だった頃の感触とは微妙にちがっている。

 なにより汗もあまりかかず、その汗すら香りがついているのだ。

 愛液も同様に、もはや生臭くはなく、粘性のある透明なジェルのよう。

 大きいがカタチの良い乳房をもめば、ピアスの穿たれた乳首からは媚薬が。

 さらには遠隔(リモート)で、B/W/Hといった全身のバランスさえ自在に変えられてしまう。

 おまけにこのボディは電力が要るらしく、休憩(スイミン)は専用の充電ステーションが必須なのだ。

 

 もの憂げな動きで、奉仕ドールは真珠色の海からヒザ立ちに身をおこすと、ゆっくり『サロメ』の寝相(ねぞう)をととのえ、ピンクのブランケット・タオルをその上に優しくかけた。そしてリモコンで片方の吊帳を引き開けると、模様がうがぶ冷たい大理石の床に素足で降り立つ。そのまま、この奉仕ドールは、ベッドの傍らに据えたルイ王朝風な椅子の背もたれに脱ぎ捨ててあった自分の踊り子コスチュームを身体の各所に穿(うが)たれたリングピアスを用いて纏(まと)い、アラビア風のやわらかい絹靴(くつ)をはくと、大扉の片方を静かにひらき、広大・豪奢な寝所を滑り出た……。

 

「ゴ奉仕ハ、オ済ミデスカ・『モルギアナ』サマ」

 

 扉を出たところでいきなり声をかけられ、元・詩愛は驚いた。

 振り返れば、『サロメ』の怒りにふれ、完全な“木偶(デク)人形”にされてしまった『レティシア』だ。

 額の赤い宝石を燃え立たせ、盆を捧げて恭順(きょうじゅん)の姿勢。

 自我を消された彼女の、先日の痛ましい光景を思い出しながら、『モルギアナ』は相手に向かい、自分のアラビア風踊子コスチュームに引っかかる乳首ピアスの具合をなおしつつ、

 

「えぇ。いま畢(おわ)ったの……明日の朝、サロメさまの “お目覚(めざ)” にカフェオレをお願いね」

「カシコ、マリ、マシタ」

 

 機械的な一礼をかえす『レティシア』。

 新参の奉仕ドールは、そこにわずかでも個性の翳(かげ)りがみえないかと期待して、古参の瞳をのぞき込む──しかし、まるで陳列ケースの青いガラス玉を眺めるがごとく、感情の揺らぎはうかがえない。やはり、個性の消去は完璧のようだった。

 

 ──あぁ、一歩まちがえば……ワタシもこうなるのね。

 

 機械的に笑みを固める『レティシア』の傍(かたわ)らを、元・詩愛は優雅に一揖(いちゆう)し、ツィ、と通り過ぎて……。

 

 ──あの“島”を思い出すわ……『月』組の皆さんは、お元気かしら。

 

 それとも──もう依頼主(ご主人サマ)のもとか、海外の大富豪たちにむけて、配送されてしまったかも……と、彼女は柳眉(りゅうび)に憂(うれ)いを込め、物音のしない大扉が両サイドにならぶ深夜の廊下を奉仕用ドールとして仕込まれたモンロー・ウォークで歩いてゆく……。

 

 措置入院あつかいで幽閉されていた精神科病棟を抜け出たあと……。

 

 彼女は、離島にある『修(・)養(・)センター』に不思議な手引きで入所させられていた。そこでは若い男女が、従順なSEX奴隷や奉仕ドールとなるべく、昼夜を分かたず調教、洗脳──はては生体改造手術などを受けていたものである。

 

 ──「花」「鳥」「風」「月」……。

 

 それぞれの「組」に配属され、奉仕用ドールとしての研鑽を組ごとに競うなかで、『懲罰棟』や『教導場』、『瞑想室』。あるいは『再利用センター』と銘打った場所で、自我をうばわれ、自意識をもたない単なる “生き人形” となった女たちを、彼女は何人も見てきたのだった。

 

 いまでも、あの “島” を想(おも)うと、陰惨な戦慄とあわせ、淫(みだ)らな肢体(カラダ)に刷り込まれた快楽の記憶を禁じ得ぬ『モルギアナ』である。

 それを証(あか)すかのように、淫奔な血をむりやり注入された彼女のカラダは自然と熱をおび、瞳は妖しげにうるみ、そして手は、己の股間を、乳首を。さりげなくまさぐり、慰めてしまっている。

 

 ……そんな彼女が独(ひと)り、歴史の情景が織りこまれたタペストリが壁を飾り、床は毛足の長い深紅の絨毯(カーペット)が奥まで延びる、ひとけの無い廊下を通って、自分の休眠スペースへと向かっていると、

 

 ──あ……。

 

 行く手から、2体の上級Fetish maid(フェティマ)が、膨らみ袖の肩を並べてやってきた。

 黒髪のおかっぱなワンレンと、パーマをかけた赤毛のショート・ヘァー。

 何やら重そうなものを幾つもブラさげて、それらがガチャガチャと。

 彼女は最上級・奉仕用ドールとはいえ、たかが性処理人形である。

 当然、相手の方が格上なので彼女はわきにより頭を下げた。

 

「アラ♪……この子、あのヒトの “カキタレ” じゃない?」

「ホントだ。マイケルさんの、おマンコ人形♪」

 

 遠慮のない言葉が、うやうやしく礼をする彼女の後頭部に降り注いだ。

 

「なんつったっけ、オマエ?──名前だよ」

「……『モルギアナ』、にございます。マム」

「ちっがァ~~~ぅ! “おマンコ人形” に改造される前の名前だよ!」

「ほら、ちょっと顔ォ上げて!コッチむいて!」

 

 姿勢を起こすと、興味丸出しな2体のフェティマと視線がぶつかる。

 

「あ~ホラ、この顔見て思い出した。アレだ……詩……詩」

「そう!『詩愛』だ!思いだした──そうよね!?」

 

 ──しーあ……。

 

 ミントの香りがただよう2人から言われた名前を『モルギアナ』は反芻(はんすう)する。

 

 ──なんだろう、なにかとても懐かしいような……忘れてはイケないような。

 

 しかし。

 その単語は、たぐろうとすればするほど、手の内から砂のようにこぼれてしまう。

 そして口は自動的に動き、困惑した不安げな声をだしていた。

 

「なんのコトでしょう?マム。小職(しょうしょく)は、最上級・奉仕用ドール『モルギアナ』にございます」

 

 あ~……と、彼女の目の前でガッカリした表情(カオ)をみせるフェティマたち。

 

「洗脳用の魔石がブッこわれたと聞いたから。もしや、と思ったケド……」

「やっぱ前頭葉に根を生やされて、もうガッツリ侵(おか)されてるみたいだネェ……」

 

 やれやれ、とフェティマたちが方をすくめると、全身からぶら下げたモノが、またもやガチャガチャ鳴る。なにかしら?と『モルギアナ』が改めてフェティマたちを見れば、それはスリング(負い革)で吊られた、幾多もの短機関銃や自動小銃、グレネードなのだった。もちろん彼女は、その名称をしらない。ただ(……なんか、大小のテッポーやら見ため物騒なモノが、いくつもブラ下がっていますわねぇ……)と、ボンヤリ眺めるだけだ。

 

「──でも、まぁ。人間にもどれたら、思い出すでしょ」

 

 そう言って黒髪が、やかましい金属音をたて短機関銃の束(たば)をゆすりあげたとき。

 卒然、この奉仕用ドールの瞳は輝いた。

 

「マム!それは本当ですか?……小職(しょうしょく)は……ヒトに戻れますの!?」

 

 じつは、いままで自分が人間に戻れるなど信じていなかった『モルギアナ』だった。

 てっきり美香子に危ない橋を渡らせるための方便だと、悟りきっていたのだ。

 それほどまでに、自分の身に加えられた改造は、絶望的なモノだった。

 しかし第三者に言われてみると、にわかにグッと現実味が増す。

 

 ──ワタシが……人間(ヒト)に!!

 

 ニヤリ。

 そのとき。歓喜の表情をする元・詩愛の面前で。

 ふたりのフェティマは、意味ありげに一度、顔を見合わせると、

 

「そうだよォ?まぁ、上手くいったら……ネ」

「アタシらに感謝するんだね。こんだけ骨折りするんだから」

 

 そう言って赤毛の方が、メイド服の上からグレネードの弾帯を幾重にも下げた胸を叩いた。

 

「アァ、そだ!骨折りといやぁ、アンタにも運搬、手伝ってほしいんだけど……」

 

 そう言って、黒髪がもう一度身を揺すり上げ、銃器をガチャつかせる。

 すると赤毛のほうがヤレヤレと首をふって、

 

「よしなよ『ユリ』。銃のカドで肌にキズつけたり、ガンオイルで汚したらナニ言われるか」

「ソレもそッか。サラブレッドに荷車引かせるようなモンだね……あ!30m先に木偶(デク)!」 

「いぇ~~!ラッキー♪」

 

 そう言ってフェティマ2人組はガチャガチャと『モルギアナ』が来たほうに去ってゆく。

 けれど、そんな光景は彼女にとって、もはやどうでも良いことだった。

 

 ──ワタシが……人間(ヒト)に……もどれる……!

 

 足に羽が生えたような感覚で、元・詩愛は自分の調整用ルームに戻ってきた。

 

 ドアが自動で開くと、そこはさしわたし10mほどの円形な広間。

 中央にはドールが入るのを待ち構える、斜めに立つフタの開いたガラスの棺(ひつぎ)。

 周囲をバイタル・モニターや医療用の什器。そしてステンレスの斜交(はすか)いが補強して。

 だが、一件SF的と見えるそれ以外は、装飾的なまでにアンティークの気配が漂っていた。

 

 壁面は、黄金(きん)や真珠母(しんじゅも)で様々に象眼され、豪奢な壁飾りがある。

 大病院でも見たことが無いような先端的風味の医療用設備も、要所を金や銀で飾られて。

 だが、さすがにホコリの元となるような絨毯や壁飾りは設置されておらず、床も粉塵防止のため、水を張った上をグレーチングで覆った構造となっていた。

 

 アンティークと先端医療の融合。

 

 たとえてみれば『ネオ・スチームパンク』と言えるかもしれない。

 モルギアナは、ふたたびアラビア風の踊り子衣装を脱いで、専用のハンガーにかけた。

 いつもなら奉仕を終えた気怠げな動作。だが今はその手つきにもウキウキした感がある。

 腕輪や宝石付きアンクレット、黄金の細鎖などの装身具もビロードの台座に戻して彼女は、

 

 ──ワタシが人間に戻れたら……!

 

 マイケルさまは……ワタシのことを、まだ想(おも)ってくださるかしら?

 ピアスだけの全裸となり、大きな姿見の前で、イヤらしく改造された体をナヨナヨと。

 ウィッグを取り、前腕や太ももを撫(な)でていると、妹に抱かれた時のことが思い出された。

 

*****

 

「……わかったワ──演(や)ります!」

 

 決然たる美香子の声に、半ばフェラチオ・モードに入っていた姉はハッとして我に返った。

 

「ダメよ……美ぃチャン……あぶない」

「お姉チャン!気がついたの?……カワイソウに。こんな非道い入れ墨されて……」

「ひどい、デスと?」

 

 店長がピ!と何かの電子音をならす。

 するとどうだろう。『モルギアナ』の肌の上で、とぐろを幾重にも巻く下品なチンポの刺青が、スゥゥゥ……ッ。跡形もなく消えてしまった。

 

「キミのお姉さんは、当店きっての芸術品なのだよ」

 

 そのあと、美香子が剣舞の指示を受け、話しがまとまったところで。

 妹は“姉だったモノ”を立たせ、淫らに改造されたその肢体(カラダ)を、あらためて眺めた。

 

「ホントウに──“お(・)人(・)形(・)サ(・)ン(・)”にされちゃったんだねぇ……」

「あぁ……美ぃチャン……見ないで」

 

 顔をそむけた元・姉は、半裸な踊り子コスチュームで露出する胸(オッパイ)とお股(また)を隠そうとする。

 だが──ダメだった。

 隠そうとすると洗脳でアタマに刷り込まれた拒否反応がおこり、手を退かさざるを得ない。

 すると、報酬系で脳内にオキシトシンが分泌され、露出の快楽と多幸感を彼女に味わせる。

 

「ほら……もっと良く見てみたまえ」

 

 『小男』は、まるで所蔵する秘蔵の品を自慢するかのように、

 

「キミの“お姉サンだったモノ”は、鑑賞されて喜ぶ、素晴らしい芸術品になったのだよ」

 

 不思議な香りが、やや強くなった。

 ピンク色の女陰から、淫蜜(みつ)がツッ……と垂れる。

 

「お姉チャン……こんなにエッチな身体にされちゃって……」

 

 ぬルン。

 その蜜をすくいとって、鼻先にもってゆく妹。

 

「愛液の匂いも、なんか柑橘系のコロンみたい。それに──」

 

 こんどは姉の股間に顔をよせてシゲシゲと、

 

「アタシとチガって、ク(・)リ(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)にまでピアスされちゃって……」

 

 しかも“ムいた状態”で留められちゃって、痛くないの?と心配そうな妹。

 

 ──カァッ!

 

 ヨコを向く元・詩愛の顔が赤らむ。

 しかし肉感的にされた赤い口は、そんな彼女を裏切り、

 

「ハィ……メス人形『モルギアナ』は……こうされるのが大好きなんです」

「ふぅん。そうなんだ」

 

 ふいに美香子の顔が『美月』と変わり、そこに意地悪そうな笑みが浮かぶ。

 

「こォ~んなイヤらしいヘンタイ人形が!お姉チャンだなんて、ちょっとガッカリ」

「あぅぅ……」

「おマンコも、そうとう造り替えられてるんでしょ?アタシ予知夢でみたよ?いつだったか、お姉チャンのこと『オナニー女』って言って怒られたケド、ほんとぉ~~に『オナニー人形(ドール)』にされちゃったのネ」※

「アァ……どうか……チクチク言葉はやめるので……」

「ふふっ♪とかいっちゃって。『おチンポなめたいので』な~んて、いつも思ってンじゃないの?このヘンタイ人形(サン)は!」

 

 また、コロンめく柑橘系(シトロン)の香りが強くなった。

 

「その人形は、辱(はずかし)め、罵(ののし)るほど、快感を増すように出来てるのよ?」

 

 レイカは、あいかわらず冷え冷えとした眼差しを奉仕人形に投げかけ、

 

「マゾの本性を、植えつけてあるの……でもね?それは元々本人の願望を、増幅させただけ」

 

 えっ?と『美月』は泰然(たいぜん)、王女めく風格を崩さぬ女のほうを向いた。

 次いで視線を、羞恥に消え入らんばかりな姉のほうにうつす。

 

「本人、才女のフリしていたケド、本当は露出狂の気がある弩(ど)エロな淫乱女(いんらんおんな)だったの……」

「ちがう……ちがいます、レイカさま」

「今だって妹サンに見られながら、ガマン汁をタラタラ流してるものねぇ……」

「そんな!これは、そういう施術と調教をされてしまったからで……」

「穴という穴をバイブで犯されたまま、猥(みだ)らな格好で人通りの多いショーウィンドーに飾ってあげたら、どんなに悦(よろこ)ぶことか……ねぇ?『モルギアナ』さん」

「あぁ……ヒドい……」

 

 それを聞いた『美月』の顔に、例の小悪魔的な笑みがますますつのり、

 

「ふぅん……そぉなんだ……お姉チャンのォ、むっつりスケベ♪」

 

 そういって妹は、クリトリスの皮が剥(ム)かれた状態でバーベルピアスをされる充血した真珠に、ふぅぅぅ……ッ!細めた唇で間近から息をふきかける。

 

「あひ!……ィ」

「ふふっ♪かぁ~わぃ。ナメちゃおッと❤(ぺろっ)」

「ひぎぃ……ッ!」

 

*****

 

 その時の情景を思い出した元・詩愛は、美しい眉をひそませた。

 やがて全裸となるや、フタの開いているガラスの棺の中に素足で歩み入る。

 やや両脚を開いた状態で立つと、床からサドルのようなモノがせり上がって来た。

 そこには大きさの異なる3本の凸起が上むきに生え、ゆっくりと彼女の股間に近づく。

 いったんギリギリのところで止まると、この奉仕人形は、尿道、膣、肛門の位置に調整。

 やがて、サドルは前よりもゆっくり、慎重な具合に上昇し、ズブぶぶ……ぬぬぬぅぅ~~っ。

 

 ──あぐぅぅ……ヤダ、なにコレ。おシリのディルド、太くなってるじゃないの……。

 

 反射的に彼女はアヌスの括約筋をしぼった。

 すると──それが、肛門付近に備えられた極悪なビーズの回転を呼び、ますます彼女を官能のトロ火で炙(あぶ)りたてる……。

 

 ──そんな!……はぁぁぁ……ん♪

 

 背面から両わきをささえるレストがのびた。 

 同時に、腎臓のあたりに隠されていた送気口があき、背側のバイパスに接続(コネクト)される。

 防水イヤホンを耳に挿入し、両腕を所定の位置におくと、バシン!バシン!カチカチッ!

 背側から拘束用の枷がせり出し、足首、太もも、両手、両腕、それに首が固定され、施錠(ロック)。

 

 ──うっふ……むぅぅぅ……ん♪

 

 股間(おマタ)の責め具が緩(ゆる)やかにバイブやクネりを開始。

 ガラスの棺の蓋が、自動でユックリと閉じてくる。

 口に当たる部分には、胃まで届くような長いディルドー。

 一旦停止し、彼女がカリ高な亀頭をほおばると、ふたたび動き出す。

 

『ふふっ♪『おチンポなめたいので』とかいつも思ってンじゃないの?このヘンタイ人形(サン)は』

 

 ──おごぉ……。

 

 また妹の、自分を嬲(なぶ)るようなセリフが浮かぶ。

 哀(かな)しげに面(おもて)をふせようにも、もはやソレはゆるされなかった。

 こくん、コクン。必死にノドをうごかし、亀頭を呑みこみ、イボのならぶ本体を収める。

 シリコンのふぐりが下唇にあたるころ、ようやくフタが重たげに鎖された。

 バチバチバチン!上下左右。自動でロックがかかる金属的な微振動。

 

 ガラスのフタごしに正面を見れば、そこには大きな姿見が据えられている。ガラスの棺の全面は、オモチャ屋で売られるバ○ビー人形のケースのように装飾され、血のように赤く、太い帯が斜めに走り、その上をコピー文句が踊(おど)っていた。

 

 おしゃぶりが大好きな淫乱ドール『モルギアナ』♡ 

   エッチでチャーミングなこの娘をお家に連れてゆき、

     夜のお相手にいつまでも末永く可愛いがって下さいね ♪

 

 自分の身体を拘束する手枷、足枷も金メッキで、見るたびに元・詩愛は、まるで自分が本当に黒い台座に固定されたバービ○人形にされてしまったような、そんな錯覚におちいってしまう。

 

 マヌケなおしゃぶり口で驚きに目を見ひらいて……。

 上から、下から、休憩のあいだも、淫具で責め苛まれる姿。

 そんな格好を、箱書きのアオリ文句がイヤらしくあおり立てて。

 

 

──オマエは、マゾ……ご主人サマの、メス人形…………見る者が、恥ずかしくなるほどの淫乱奴隷…………イヤらしい、どエロな、被虐シュミの露出狂……ソレがオマエなのよ…………。

 

 ──あぁ、またこの洗脳セリフ……。

 

 けれど、人間に戻れるとなったいまでは、それほど悲観的には響かない。

 むしろこのカラダと分かれるのが、惜しいような気がしている『淫乱ドール』だった。

 そのとき!いかなる淫魔のはたらきか。彼女の頭に妖(アヤ)しい妄想が、電撃のごとくひらめいた。

 

 ──そうだわ!人間に戻る前に、この肢体(カラダ)で!

     一度、マイケルさんに『ご奉仕』出来ないものかしら……?

 

 せっかく辛(ツラ)く悲しく……なにより苦しい思いをして、改造されたんですもの──と足もとから洗浄用の温かい液体が昇ってくるのを感じながら元・詩愛は、つらつらとアレコレ考える。

 

 ──まずはオッパイを揉(も)んで頂き、媚薬(びやく)入りのミルクを飲んでもらうのよ……。

   そして、おチンポがギンギンになったところで、ワタシの愛の濃厚キス……。

   お口腔(クチ)の中にある性感を、コチョコチョくすぐって甘ボッキさせて上げるわ……。

   つぎはフェラチオね。ノド奥で亀頭をコクン、コクンとしごいて差し上げるの……。

   ワタシの唾液には殺菌・洗浄成分があるから、コレで前と後ろの淫孔(アナ)、どっちでも……。

 

 洗浄用液が股間まで上がってきた。

 尿道カテーテルをかねるバイブが微振動し、あふゥん♪元・詩愛を悶(もだ)えさせる。

 

 

──さぁ、性欲便器となった自分を、見てご覧……情けなくて、恥ずかしい姿に改造された自分を、その目にシッカリ、やきつけるんだよ?……オマエは、もうイヤらしいバービ○人形……命令には絶対に逆らえない、どんなミダらなことでもヨダレを垂らしながらイヌのように喜んでしたがう、ド変態の────。

 

 

 ──あぁ、もう!ウルサいわね!……いい加減クドいわよ!

   そして、そのつぎはワタシ自慢のミミズ膣を味わっていただくわ?

   “三段締め”と“子宮キす”のマスターに、どれだけおムチを頂いたことか!

   そして……濃~い“お情け”をビュッ♪ビュッ♪……ワタシのおマンコに注いで頂くの。

   すかさず!そこでマイケルさんの腰にワタシの脚をまきつけ「だいしゅきホールド」よ!

   ふたりは完全に密着、合体を完成させるの……そしてチュッ♪チュッ♪接吻(キス)を頂いて……。

 

 んふ♪……んふふふふ……♪

 

 元・詩愛は大口をあけてチンポを頬張るまま、不気味な笑みをもらした。

 暖かい洗浄用液がユルユルと胸まであがり、フワリ、両乳を持ち上げる。

 

 ──シメはアナルの “まったり二段キンチャク” ね……。

   おっと♪その前に、萎(な)え防止でオッパイの媚薬をもう一度呑んで頂きましょうか。

 

  そこで乳首をレロレロ愛撫して頂けないかしら……いいえ!して頂きましょう!

  そして絶品のアナルに、今度はワタシが騎乗位になって存分に絞り上げますわ!

  うんっ♪うんっ♪うんっ♪って。タイミングをあわせ、上手になったおシリで!

  ぬぷっ❤ぐぬぬぅぅ……って。あの方の太ぉいオチンポを、呑み込んでゆくの!

 

 そこまで妄想をふくらませたとき……。

 

 ふと、この奉仕人形は本来の自分をとりもどし、拘束されたまま、情けなくもチンポを胃まで挿入され、首もとまで洗浄液につかった自分の肢体を目のまえの大きな姿見に見て

 

 ──まって!……ワタシったら何てこと……こんな……こんな愚劣な考えを……!

 

 だが、悲しいことに。

 

 正気にもどった元・詩愛の拒否を、脳波で検知したものか。

 このバービー人形の棺は、彼女の“お股”を犯す3種の淫具をバイブさせ。クネらせ。

 さらにはネットリとピストン運動させて、そんなあわれな抵抗を雲散させ、熔解してしまう。

 

【本人、才女のフリしていたケド、本当は露出狂の気がある弩(ど)エロな淫乱女(いんらんおんな)だったの……】

 

 冷たいレイカの口調が、人形の胸に突き刺さる。

 そして防水イヤホンからの、しんねりとした催眠音声は、途切れることもなく続いて……。

 

 ──そうよね……。

 

 元・詩愛のなかで、急にあきらめにも似た感情がうかぶ。

 そして皮肉にもそれが、かえって彼女の心に整理をつける結果となった。

 

 ──ワタシは、どエロな淫乱人形に、改造されちゃったんだもの……。

   だからどんなにエッチな想像が浮かんだって、ワタシのせいではないわ?

   マイケルさんへのご奉仕だって、淫乱ドールの当然の義務であり、作動原理よ!

   炊飯器がお米を炊くように……掃除機がゴミを吸うように……人形は、おチンポを吸うの!

 

 暖かい液体が口もとに──そして額の青い宝石をこえて磁石が並ぶ坊主頭に達した。

 

 イヤホンからは、女の声で、相変わらずの秘めやかな催眠音声。

 だが、それは右から左に通り抜け、もはや彼女の幸せな妄想をさまたげない。

 目のまえの姿見に映る展示BOXの中の人形は、チンポを咥えたまま、ほほ笑んだ。

 ピンク色な未来予想のなか、羊水めく温かい液につつまれて、彼女はユックリ目を閉じる……。

 

****

 

「お~ぃ、そこの木偶(デク)!」

 

 赤毛なフェティマの声に、盆をダイニング・ワゴンに収納していた『レティシア』は振りむいた。

 

「コレ、ハ、『ケイ』サマ。ゴキゲン、ヨロシゥ」

「はぁ?このカッコウ見てゴキゲンなワキャないでしょう、クソ木偶(でく)が!」

「アンタも、荷物運ぶの、手伝うのよ!B3エリアまで来なさい?」

「B3……ダメ、デス。ワタシ、ノ、行動範囲、ヲ、逸(いつ)・脱(だつ)シテイマス」

「アタシらがイイって言うんだから、イイのよ!──コントロール!?」

 

 『ケイ』がどこかとコンタクトした。

 ──ッピ!と『レティシア』が額の宝石をキラめかせて電子音を発する。

 

「禁止ジコウ、ノ、一時的カイジョ、ヲ、確認。上位命令者を『サロメ』、サマ、カラ、『ユリ』サマ・『ケイ』サマ、ニ、ヘンコウ──上書、ホゾン」

「おーっし、んじゃこのクソ重いグレネード弾帯持って」

「こっちのSMG(サブ・マシン・ガン)も、ネッと!」

 

 さしものフェティマたちも知らなかった。

 

 『レティシア』に“紅いウサギ”のシステムがリンクした途端、【SAI】の用意したウイルスが発動し、この奉仕人形を媒介として、瞬時に店内へと根を張りつつあった。

 トラックの中で何やら不可思議な計算にふけっていた【SAI】の予備自我がアラートを発し、演算活動を中止させて、全機能を奉仕用ドールとのコネクトとバック・アップに集中させる。

 すでに監視カメラをハックして、『レティシア』をS/W(ソフトウェア)と光学の両面から援護。

 

『たいへん結構、『レティシア』。RUN:深層心理MODE』

『深層心理MODE、イエッサー、ですわ【SAI】サマ』

 

 無表情なロボ人形の顔とはうらはらに、『レティシア』の胸の内には感情が復活していた。

 

『オマエが連れて行かれる先々に情報コネクタがある。遮蔽(しゃへい)されているエリアも多いから、指示の通りにコネクターにつなげ。ただし秘匿(ひとく)厳守。現在の状況が露見しないことを最優先』

 

『サー。指示の通りコネクターに接触。秘匿厳守。状況が露見しないことを最優先』

 

 【SAI】にリプログラミングされたためか、軍隊調で命令を復唱する木偶(デク)人形。

 

「よぉ、『レティシア』。オマエんトコの『サロメ』。随分とあの改造人形カワいがってんじゃん」

「ハイ、『ケイ』サマ。『モルギアナ』サマ、ヲ、カナリ、オ気ニイリ、ノ、ヨウデス」

 

 全身からSMGやら弾帯やらをぶら下げて、木偶人形は身軽になったフェティマたちの後をダイニングワゴン押しつつ、ついてゆく。もちろんそのワゴンの上にも、散弾銃の弾帯やグレネード・ランチャー(擲弾弾発射機)が山盛りだ。

 

 歩いてゆくうちに深紅の絨毯はとぎれ、コンクリむき出しの冷え冷えとした廊下となる。

 床面には病院のように色違いのラインがあちこち引かれるようになり、曲がり角ごとに分かれていった。

 その床面も、なにか重い台車が何台も通ったあとのように、一面傷だらけとなっている。

 こういうときは、床にプラダン※2やブルーシートで養生をするものだが、その手間すら省いた急ぎの作業が行われているらしい……。

 

 廊下は次第にザワついた空気となり、両側にならぶ扉の内で、作業が行われている気配。

 やがて、廊下に対してゴールのように引かれた黄黒のラインを越え、3体がしばらく行くと、やがて大きなエレベータの扉に突き当たる。

 

『よし、『レティシア』、そこのエリアから情報が遮断されている』

 

 このとき『ユリ』が黒髪をゆらし、

 

「ねぇ、悔(クヤ)しくないの?あんな新入りに、ポジション取られちゃって。あ、下行き押して」

『良いタイミングです。行き先ボタン下のエレベータ管理端末に、アクセス』

『ワカリ、マシタ、【SAI】サマ』

「はぁ?あんなイカレポンチな『サロメ』なんか、こっちからゴメンですわ、『ユリ』さま」

 

「…………」

「…………」

「…………」

『…………』

 

 4者4様の沈黙が、一瞬、エレベーターホールを吹き抜けた……。

 




※  第36話:パニック in 鷺ノ内医院を参照
※2 プラダン:プラスチック・ダンボール
       (紙のかわりに薄いプラスチック板で
            段ボールができているモノです)
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