試製・転生請負トラッカー日月抄~撥ね殺すのがお仕事DEATH~【18禁版】 作:珍歩意地郎_四五四五
「……おぃ、【SAI】。なんだあれ、ロボットか?」
すると、オレの “車載型・炊飯器” は、そっけなく「不明です」と述べたあと、
『レティシア、移動体の接近をよけるそぶりで、対象物に接近』
『イエス、
“【SAI】の奉仕人形” は外骨格のフレームを光らせ、さりげなく歩いて位置をかえる。
近づくにつれ『レティシア』に装備されたセンサー類が効きはじめて、奇妙な修道女たちがよく分かるようになった。一団は手をまえに組む祈りのポーズを固定したまま、あたかもガイドレールの上を連結されて進むように等間隔で近づいてくる。
【SAI】が『レティシア』のセンサーから来るDATAを解析し、
『内部に高
さすが奉仕用ドール。
嗅覚を鋭敏にとぎすませてあるのか。
主人の精神状態まで空気から検出し、サービスに役立てるのだろう。
「高心拍……?つまり──ドキドキしてる、ってコトか?」
『はい。おそらくヒトか、ヒトを土台に改造したナニかを
「あの店、そんなんばっかだなぁ……」
ヘッケル、ジャッケルとかいう、白衣を着た若いヤバ気な兄弟の目つきを思い出しながら、
「いったい、どッから“素材”を持ってくるンだか」
『ちかごろは往来で堂々と “立ちんぼ” が出る世相です。カネで釣れば、いくらでも』
「……へぇ」
オレはひそかに感心する。
コイツ。また一段と人間臭くなったような、そんな気配。
「オマエも俗っぽい
『人間を知れば知るほど、絶望に
フン。すこし前まで女房をNTRれて、荒れてたオレをあてコスるのか。
だが、あえてコチラは「──へへッ」と、この人工知能をからかう余裕をみせ、
「ケドな?絶望にあっても、そこに
『非合理的ですね。なるほどヒトの歴史が、いつまでたっても変わらないワケです』
「……というと?」
「いつまでたっても──いつの時代でも、同じような悲喜劇を演じてるではありませんか」
「……言うねぇ。そのとおりだ。【
画面に動きがあった。
【SAI】とのムダ話を打ち切り、オレは映像の方に集中する。
すれちがう修道女たちの被衣の下は、タダの“のっぺらぼう”だと思ったが、近づいてみれば顔は、周囲の景色が歪んで映る
そのとき。
フェティマの『ケイ』が腰に手をあて、サバサバした口ぶりで、
『おうッし、『レティシア』!──ご苦労さん。もう帰ってイイわよォ』
『せいぜい『サロメ』姫と仲良くしてね♪もう
『ケイ』の方も、用済みのスリッパを脱ぎすてるように、つけつけと言い放つ。
『これはマズいですね……いかにも面白くありません』
それを聞いた【SAI】は、不満げに反応した、
『せっかく美味しい展開なのに、残念です……こうなれば、すこし
****
ブルブルっ!
奉仕ドールは、いきなり身ぶるいした。
その
ややあって『レティシア』は、メンテナンス・MODEをおもわせる合成音声で、
『3級・奉仕ドール・ハ・コノ・エリア・デノ・単独活動・ヲ・認可サレテ・オリマセン』
「……あんですってぇ?」
『作業・命令・ヲ・ゴ確認・クダサイ──ゴ確認・クダサイ……』
そう宣告するや、ふたたび待機姿勢をとり、命令なくばテコでも動かない意思表示。
フェティマたちは一瞬顔をみあわせ、チェッという
「……あによォ、メンドくさいわねェ!」
「うそ。最優先の“オート・
「フツーだったら、充電用のクレードルまで勝手にもどるのに……ヘンねェ?」
「このまえ、あの《サロメ》
アナタたちが連れてきたんでしょう?……と、それを見た『お局サマ』は
「さいごまで面倒みてあげなさいな、かわいそうに……」
そう言うや「もう知らない」とばかり巨尻をふりたてフロア奥の暗がりへと歩みさった。
「──ちぇッ、しかたないわねェ!」
「──しょ~がない。おいで!『レティシア』!」
「イエス、マム」
一行は修道女の一団を見送ると、彼女たちがやってきた通路の奥へすすむ。
*****
(へへぇ♪【SAI】サマ、ウマくいきましたね❤)
『油断は禁物です『レティシア』。先ほどのブザマな失態は二度とないように』
(……はぁぃ)
厳重な隔壁めいた扉が、フェティマたちのコードを読み取るのか。
数秒、メイド服にレーザー照射をしたあとは、自動で次々に開かれた。
すすむうちに、歯医者のような匂いがだんだん強くなるのを感じた奉仕ドールは、
(【SAI】サマぁ、なんかお医者サンのような匂いがしますぅ)
『C7・H8・O──フェノール様臭。クレゾール石けん液ですね』
扉がさらに開くと、病院の床めく白い硬質ウレタン塗装のあちこちに、赤茶けたモノがこびりついてるのを『レティシア』は発見する。おまけに彼女の研ぎ澄まされた嗅覚は、消毒液の臭いに混じり、かすかに別の臭いをさぐりあてた。
(【SAI】サマぁ……なんか鉄サビくさい)
『それは酸化した血液の臭いです』
(うぇぇぇ……あっ!なんか踏んだ!!)
『ソレは抜け落ちた人間の奥歯です』
ひぃぃぃ……!!と無表情のウラで怖気をふるう奉仕人形。
(さッ……【SAI】サマ、これからイクとこ……大丈夫なんですよねぇ?)
数瞬の空白。
やがて『レティシア』が不安になりかかったころ、
『オマエが、ワタシの命令を間違えさえしなければ。危険はありません』
(ホント?……ほんとにホント?)
『心配は無用です。ワタシが、守ります』
トゥクン……♪
そのとき、『レティシア』の胸がときめいた。
──【SAI】サマぁ……❤
やがて、いままで通り過ぎたなかで、いちばん重々しい扉があらわれた。
ガシャン!
やけに頑丈そうなロックがはずれる音がして、わずかに開いたとき。
どうやら、この扉は防音だったらしい。
わずかに開いたとたん、いきなり若い女の悲鳴が聞こえてきた。
扉を通って中に入ると、ほかもすすり泣く声や、我が身をあわれむ
はては罵声まで、いきなりムワッと生暖かい空気をとおし、盛大に聞こえてきた。
「放せってンだろ!やめッ!そんなトコさわんじゃ……ンぎゃぁぁぁ──ッ!」
そこには──
そんな金属の間仕切りパネルに仕切られた “
(……うぇぇぇぇぇ……愛液クッサ。それにオシッコやウンチのニオイまでするぅ……)
ひそかに眼を見張る『レティシア』の一番近くにある馬房では……。
後ろ手・M字開脚に固定されたスタイルで、天井クレーンから吊られる裸体。
それをジリジリと下ろされてゆく、顔を
降ろされてゆく先には、奇妙な形をした2本のディルドーと細いカテーテルが生えるサドルがあり、そこにむけて彼女の磨かれたような
「いやぁっ!イヤイヤ、そんなもの!
だが、全裸ではげしく首をふり、金髪をふりみだして拒絶をする女の願いもむなしく、まっサラな女陰に向けて凶悪な淫具がジリジリと迫ってゆく。
さらに『レティシア』がよく見れば、残酷にも女の陰核を包むはずの
(ヒドぃ……なんてコト)
拘束された無表情のおくで、彼女は思わず眉をひそめる。
しかも、その肉芽の根元にはリングがキツくハメられた結果、つねに勃起を強いられており、おまけにそのリングには──電気でも流すつもりなのか──細い導線まで見え隠れしているという念のいれよう。
「──そこでストップ!」
両わきで作業する、全身を光沢ラバーの黒レオタードで包んだ女。
2人とも、まるでビーチ・ボールのように大きい胸を張り出している。
その片方が手を上げ、天井クレーンのコントローラーを握る相方を止めた。
次いでこの女は注射器を取り出して、天井の灯りに透かし、指で2,3回はじく。
そして吊られる肛門の“おちょぼ口”にむけ、針先を冷酷に近づけてゆくのが見えた。
「いッたぁぁぁぁぁぁ!」
20代前半だろうか。
M字に吊られた女は背骨を限界までノケぞらせた。
「暴れないの!──針が折れてもイイなら、それもかわまないケドwww?」
注射器のシリンジをユックリ押しながら、黒ラバーの施術師が、冷酷にクスクスと。
吊られる女は “馬房” 前の大鏡で、己に残酷な処置が施されてゆくのを涙目で見ながら、
「……お願い、ヒドいコトしないでッ!」
「ホスト狂いのアンタに!会社のカネ、横領された社長も、同じコト思ったろうサ?」
クレーンのコントローラーを握る方が、叩きつけるように女の耳にささやいた。
「可哀想に一家心中で。そうそう社長がオマエ見つけたら、くれぐれもヨロシクって♪」
「……ッ!」
女に注射をした方は、馬房のカベにかけられた時計を見やっている……。
****
「ムゴいコトしやがる……【SAI】、アレは何を注射したんだ──洗脳薬?」
『78%の確率で、
「……は?肛門に?」
『これからあの太い道具を、肛門の括約筋にむけムリヤリ通そうとするのでしょう。各道具の根元から下にのびるパイプと、それをつなぐ木馬下のステンレス容器に注目』
『レティシア』の視線が、強制的に下へと動かされる。
T字にサドルを支える金属の棒。
それは車輪の付いた円形台座から生えていた。
台座にはモーターが備わり、その横には
『拘束される女からの
──なる……ほど……。
サドルに三つ、タテ並びとなった道具の根もとから、大小のカテーテルが延び、根もとのタンクへと繋がっている。すると相当のあいだ、サドルに
やがて規定の時間がたち薬の効果が出はじめたか。
肛門がゆるみ、
『いいわよ──ヤって』
片方が、冷たい目と口調で、天井クレーンの下降を相方にうながす。
『ああああああああああああああああああああ……ッッ!』
トラックのキャビンに悲鳴が響いた。
オレは、おもわずボリュームのつまみをヒネる。
女のお股は、呆れるほど大きい筒状のアヤしげな道具類を、
ぬぷぷぷ……ぐぬぅぅぅ……ッ。
前後からヌラヌラと呑み込みはじめた。だが、やはり肛門のほうはキツいらしい。
そのうえ、根もと近くには抜け防止のためか、ビリヤードの球サイズな
『ホラ!……もっとチカラ抜くの!……逆にウンチをリキむみたいに!』
『ヘンにちから入れると……裂けちゃうわよッ!そうなりゃ一生オムツ生活だねぇ』
スパァン!
女の背中にゴムべらのようなものが飛んだ。
上気した女のピンクな肌に、長方形の赤い刻印が
にゅるん!と、あとすこしで飲み込みかけた玉から肛門はスベり、上へとあがってしまう。
『あぎぃッ!』
すると、いきなり女がのけぞった。
上気する汗まみれの身を、狂ったように激しくよじる。
『アハハハハ!……よっぽど
筋弛緩剤を打たれたとはいえ、さすがに根もと近くにある玉を乗り越えるのはキツいらしい。脂汗をながして苦悶する女は、得体の知れない輸液の針が刺さるボッキ乳首のオッパイをゆらしながら、
『ガンバります!……ガンバりますから──電気は、やめてェっ!』
『それがホスト狂いで
パァン!
盛大ないきおいで、女の頬が平手打ちに鳴る。
『ぐううう……』
ようしゃない
息をあえがせ、アゴから汗をしたたらせ、快楽と苦痛の板挟み。
やがて……ようやくのこと、ふくらみのピークを肛門が越えると──にゅるン!
あとは吸い込まれるように、淫らな道具が直腸のなかへと滑り込むように消えた。どうじに女性器にあてがわれていた、
『いぎッ!……い"ッ!い"ッ、
しかし、つぎの瞬間──きゅうに女は悲鳴をあげる。
それは注射をした側が、白いクリームを塗ったカテーテルを、サドル上で快楽をむさぼろうと股間をすりつけている彼女の尿道に愛情のない手つきでズブズブと、遠慮なく突き入れたからだった。
『──マイケル』
この壮絶な光景に「われ関せず」といった音声で、
『このエリアの監視カメラを掌握に成功。ほかのアングルもワッチ可能』
画面が切り替わり、べつの “馬房” の光景を映しだした。
そこでは、すでに凶悪なサドルへ着座させられた赤毛の女が、腕を背後に伸ばしたまま一つにまとめられ、その上から、さらに黒い革製の長三角形な袋で
『さぁ!口をお開け……もっと!……もっと大きく!』
べつのラテックス・レオタードふたり組が、この女の顔に例の
おごぉッ……おぇェェ……ッ!……コヒュー……コヒュー……。
得体の知れないモノを呑みこまされた赤毛の女は、マスクにあるピンクのドーナツ孔から苦しげな息をした。女はアタマをふり、懸命にマスクをはらい落とそうとするが、もうその銀色の面は、まるで呪いの仮面のように、彼女の顔面へ密着したまま離れない。
また視点が変わり、こんどは腕の拘束が終わった女が、胴体を前後からモナカの皮のように
かぶせ終わると前後がバチン!バチン!──ロックされたのち、ドライヤーを大きくしたようなヒート・ガンで強い熱風が当てられる。するとモナカの皮は、みるみるうちに縮んでゆき、女の
「!!!……!!……」
黒髪の女はヒューヒューと、ピンクのドーナツ孔から苦しげに息をするが、声帯を犯されたのか、もはや声にすらならない。
また、視点が変わる。
こんどの “馬房” では、すでにサドルの背後からステンレスのポールが突き立ち、そこに “女の型枠” の背中と首輪。それに後頭部にあるジョイントを連結されていた。これで、サドルから胎内を犯す淫具の刺激に女がいくら暴れようとしても、背筋をピシリ!のばしたまま、サドルから転げ落ちることはおろか、姿勢を崩すことさえできなくなったワケである。
頭は、ちょうど修道女の白いウィンプルのような、ピッチリした白ラテックスのヘッドカバーで胸もとまでおおわれて、耳にあたる部分には内側にヘッドホンが仕込まれているのだろう、半球にふくらんでいた。
──どうせ、洗脳音声でも流されてンだろうな……。
両肩の部分に義手が装着されると、
義手は体のまえで祈祷をするように両手を組まれ、そこにロザリオが絡められる。
さらに頭の上から黒い被衣がかぶせられ、見なれた修道女のスタイルができあがった。
タップリと背中に垂れるヴェールは、背中でギッチリと拘束される両腕を目立たなくする。
パニエにより「A」型にフンワリ拡げられた長いスカートが、車輪つき台座までゆるやかにおおって、ちょっと見には銀色の面をつけ祈りをささげるシスターのできあがりだった。
『マイケル。例のフェティマたちが、何か言ってます。視点を『レティシア』にもどします』
****
「女をコンナにするのも、イチイチ手間だよねぇ……」
「なんでも “島” にある『地獄の花園』に連れてくらしいよ?」
「なんだっけ……ほら、あの小説の作者。『秘密の花園』の……」
『フランシス・バーネット、デショウカ』
【SAI】が『レティシア』の口を借りて答えを言った。
『1911年カンコウ、ノ、英米・文学、デス』
『ユリ』と『ケイ』は、ふたたび顔を見合わせた。
「やっぱ “自我” のセクターが、若干のこってるんだねぇ」
「リンクの機能がツブされてないだけよ……『レティシア』。オマエの後任、分かる?」
『ハイ。『モルギアナ』サマ、デス』
ふふっ♪
またも顔を見合わせたフェティマたちの、意味深な
「あの子もね?やっぱりこの
「そこで、上品なお顔のワリに以外に優秀な調教成績をおさめてねぇ……」
「ほんらいなら、帰ってこれないトコを、トクベツにこの店に復帰……ってワケ」
「どう……オマエも行って、べつの人格を注入されて、
『──ゴ命令、デ、アレバ、従イマス(イヤよ!!ぜったい)』
彼女たちの前にある “馬房” では、いましも汗まみれの体を清められた女が、ラテックス施術師たちによって例の「女体モナカ」を前後から挟まれようとしていた……。
****
フェティマの言葉に、オレは運転席で少なからずショックを受けていた。
知らず握りしめていたステアリングが、気がつけばジットリと汗ばんでいる。
──詩愛が……詩愛が、あんなコトをされて……。
彼女もまた肛門に注射されたり、凶悪なアナル排泄具を
あの
悲鳴をあげ、哀願しつつも、ラテックス施術師たちに有無を言わさず処置されたのか。
あるいはアナル・SEX用に変形された肛門……。
女の肉芽に電撃をあべせ、情け
──なるほど、彼女が絶望して、オレを
『地獄の花園』が、どんなところかは知らないが、想像はつく。
おそらく身も心も、ダッチワイフ仕様に改造、洗脳される施設なのだろう。
やがて画面の中では、施術をおえた『
深夜。閑散とした
****
次の日の夕方。
オレは高級デパート『低島屋』の宝飾店で眠い目をコスりつつ、品物を物色していた。
あれから明け方、マンションに帰って仮眠をしようとしても、凶悪な “馬房” の光景は頭からはなれようとしなかった。そのうえ映像のなかで悲鳴と苦悶のうちにシスター服の中へ封じ込められる女たちが、いちいち詩愛に置き換わり、なかなか眠れなかったのだ。
彼女の調教、改造の施術シーンなら、いままでなんども観せられた。
だが──自分の知らない改造を、彼女以外の女で視聴してみると(あんな
──詩愛……かわいそうに……。
さらにそう思うと、耳栓と遮光カーテンの助けをかりても、まんじりとできない。
あまりに眠れないので朝ビールでも……と冷蔵庫をあけるが、冷えた缶の感触に気詰まりとなる。ここで酒なんぞ喰らうことは、彼女の経験した苦しみを
落ち着かない、汗まみれの
オレは、あの結城ジジィのイヌが使うメルセデスを捜索するため出勤した。そしてトラックに乗る前に所長と面会し、執行に際して、念のために準備しておきたい医療書類の偽造をたのむ。
「ホントウに、そんなものが必要なのかね?」
「当然。酔っていては、正確な執行が出来ませんから……まぁ、保険ですよ」
ウサン臭げにハナシを聞いていた所長は、ため息をついて命令書にサインし、
「コレを医療センターに持って行きたまえ──なんとかしてくれるだろう」
おれは命令書をせしめると、その足で転生協会の一角にある医療センターへ。
当直の医師は、こちらの言う書類の作成期限にメンド臭そうな顔をするも、駆け引きのすえにイヤイヤ受け取ってくれた。まったく、転生協会のスタッフどもは……アタマがカタくて融通がきかないことおびただしい。
──これで、よし……!
ついでに、となりにある技術センターにいき、ロック吉村のオヤジの顔でも
「なんだ、ザンネン。オヤっさん、いつ戻ってくンの?」
「……部外者に当スタッフの予定はお答えできません」
「そんなぁ。轢殺トラックのドライバーだぜ?部外者ってコタぁないだろ?」
「……部外者に当スタッフの予定はお答えできません」
──ココにも石頭か!まるで『六道ビルヂング』のクソOLどもみたいだぜ。
慇懃無礼な受付の無表情な顔からきびすをかえし、オレは地下駐車場へ降りてゆく……。
車庫から轢殺トラックを持ち出したあとは、またコインロッカーに寄って、下らない計算をしてるのかダマりこむ炊飯器を取りだし、トラックの電源にとりあえずつないだ。
「【ボニー】、しばらく目立たぬよう高速をゆっくり巡回していてくれ」
「マイケルさまは、どうなさいますの?」
「ちょっと買い物があるんだ。終わったら呼ぶよ……」
そして今。
自分は単身、この宝飾品売り場をウロついているというワケだった。
「なにか──お探しですか?」
首にスカーフを巻いた20代前半の女店員が、ニコやかな笑みで近づいてきた。
「うん、まぁ。そうなんだが」
「どのような “お品” を、ご希望でしょう?」
「えぇと、そのぅ……ナンだ」
オレは「調教」や「洗脳」などといったモノに全く縁のなさそうな、ケガれを知らぬと見える若い店員のまっすぐな視線をまぶしく受け止めながら、
「女性から見て、その、「もらって嬉しい!」と思えるような装飾品を探してる」
「と、もうしますと、ブローチですとか、ネックレスとか……」
「いや、そうだね。あるいは……指輪とか」
売り子の顔が輝いた。
「まぁ!すると……大変失礼ですが──ご
──
うぅ……ん。そういうことに……なるのかな?
「おめでとうございます!それでしたら、こちらへどうぞ♪」
女性店員に案内され、店内をすこし移る。
そしてガラスの棚にゼロがいっぱい印字された小札がならぶ、キラキラなスペースで、
「コチラなどは、
そこでオレは、あることに思い当たった。
「あぁ、しまった!相手の指のサイズわからないや……こう、薬指にはめてやろうとしたとき、入らなかったらシマらないモンな」
「──それでしたら」
この若い店員は、あいかわらず興味と好意にキラキラとした目で「そんなの何の問題もありません」とでも言うように、
「大きめのサイズをお買い求め頂いて、あとで“お直し”をすればよろしいのですわ?」
「……なるほど」
買い物を済ませると、高速を循環させていたトラックを携帯画面から呼びもどし、オレはダッチワイフを助手席にモソモソ自分で移動させて運転席に乗り込んだ。
──むふぅ~~~~~~♪
いい香りのする『低島屋』の洒落た手提げから、小さな紙袋を取りだす。
そして丁寧にラッピングされた小箱をなでさすった……。
『ナンですかマイケル。そんなフリー○ンみたいに満足げなハナ息だして』
な……ッ!
オレは思わず顔をアカくし、
「ナンだよ【SAI】!──難しい計算とやらを、してたんじゃなかったのか!!」
『タマには息抜きですよ、息抜き。なんです、ハナの下伸ばして』
「ぐっ!……機械には関係のない理由だ!」
『アラぁ、ステキ!指輪ですのね!?』
【ボニー】の、うらやましげな声。
なんと!コイツらX線まで使うのか!?
『あぁ、なるほど。モルギ……詩愛サマに、プレゼント用ですね』
『ソウいえば、詩愛サマ、あのマンションに、いつお戻りになりマスの?』
──あぁ……。
『ボニー』の言葉が、グッサリと胸に来た。
そしてオレの頭に、これからの未来予想図を運んでくる。
人間に戻った詩愛がキッチンで包丁の音をさせ……仲直りをした『美月』……もとい、美香子と『フクロウ』がリビングでゲームをして……オレはそれを横目に、ときどき詩愛の料理を手伝ったりする……。
換気扇まわりにただよう、シチューの美味そうな匂い(……いや、カレーでもいいな)。
リビングでは若いふたりの悲鳴。見れば、画面にせまるゾンビのアップ……。
──そう、あんなに幸せだったのだ。それを……自分のミスで、ぶち壊しにしてしまった。
オレは手もとの小箱を眺めた。
このチョットしたスポーツ・カーが買える金額の指輪は、
──ようやく人間に戻ったとき……ハダカのまま、恥ずかしがる詩愛……。
こちらが目の前に居るのを見て、いままで自分がさらした痴態から恥のあまり、
「出てって──ワタシを見ないで!あっちに行って下さい!」
……と、モノすごい
しかし!そこでオレは落ち着き払い、ポケットからコイツをとりだして、パカー……。
なかには、コンニャク数個分※2のダイヤの指輪。
クリーム色をしたツヤやかな台座のうえで、端然と収まって。
それを見た彼女は、不意打ちな嬉しさのあまり、なにも言えなくなってしまう……。
「んふ~~~~~~♪……んふ~~~~~~♪」
(『ヤダ。またナニかヘンな妄想を始めマシたネ? キン☆モ~~~』)
(『叱ッ!ヒトにはヒトの事情があるのです。プライバシーを干渉しては
(『今夜は、記録にアル白いメルセデスを哨戒すればいいんデスね?』)
(『マイケルからは、そのように聞いています。ではワタシは計算に戻りますので』)
夕暮れの空気がただよい始めた下道を、トラックはゆっくりと走ってゆく。
*****
重厚なモーター音を
土木用とも運送用ともつかぬそのゴツい車体を、白髪の老人はちからなく見送った。
──
ポケットに手をやると、いましがた病院から処方されたクスリの紙袋がカサカサ鳴った。
そしていま出てきたばかりな、灯りのともりはじめる総合病院の大きな建屋を振りかえる。
『とりあえず痛み止めのモルヒネパッチを処方します。ノリ面は、極力指につかないように』
あと……どれくらいなんですか?
そう言った自分の声が、まるで他人のようにガランドウに響いたのを彼は覚えていた。
『だいぶ
ギリッ!
老人は、アゴを食いしばり、白髪の頭をブルッ!とふった。
腹に巣くう狂った細胞がよぶ鈍痛。それを無視して彼はダン!とひとつ地団駄。
そして前を向くと、いままでとは違う決然たる足どりで、夕暮れをグングン進みはじめる。
「──
「──すくなくとも、まだ死なん!」
「──あの店で飼われる儂の娘を殺した畜生を、処分した報告を受けるまでは!」
「──あの
ブツブツと何やら呟きながら、足どりも荒く歩いてくるスーツ姿の老人を、向かいからきた乳母車をおす母子づれが大きく道をあける。そしてすれちがう、その怪異な背中を振りかえり、いつまでも見送っていた……。
****
かくして時はながれ──『万聖節の宴』が開催される日となった。
“紅いウサギ”では運搬や配膳はもちろん、監視や警備といったセキュリティ関係のスタッフまで狩り出され、朝からキリキリ舞いという有り様だった。
『小男』も、相変わらずウズく手首の傷をカフスで隠し、アチコチに指示をとばして準備に余念がない。いつもの疲れ果てた印象を一新し、醜怪な顔を興奮に上気させていた。
「ほらほら、どこに持って行くつもりですか?──それは2号のエリアに!」
「フロア・マネージャー!リストを再チェック!終わったら衛士に伝えなさい!」
「クリーニング済みバニー・コート!キャストにアサイン!あぁ、『美月』は別扱いで」
「死んでる
本来なら、こんなものは店長の仕事ではない。
しかし、もともと罪のない、お祭り好きな人物なのだ。
作業用の、汚してもいいスーツ姿で、この日は陣頭指揮に立っている。
「あぁッ!そこ!
****
カーテンから夕陽が差し込む、小さな部屋の作業机。
男は、机の上にあるUZI
そして9パラ弾※3の封をやぶくと、30発入りの
机の上には、オレンジの光に照らされ、かつて自身が所属した部隊の集合写真があった。
現地の
しかし、男ひとりをのぞいて全員が、もうこの世には居ないのだった。
『──最後の仕事だよ……』
白髪の老人から言われたセリフ。
退職金がわりに提示された、結構な金額。
「……」
男は、マガジンに9mm弾を込める手を休めた。
そして夕陽が照らす目の前の写真を、虚ろにながめる。
「最後の仕事、か……」
****
「……ン!ふぅ~~」
豪華な個室仕様のドレッシング・ルームに、『美月』の
なよなよと、
ショーツの中央にはしる、あめ玉サイズのパール色な小玉のつらなり。それが自分のお股へ、イヤらしく食い込むのを情けない
「ねぇ……ほんとに、このショーツにしろって?」
『美月』は、バニー衣装やヒールを乗せた盆を捧げ持つ衣装係にグチった。
「お
するといかにも男に縁がない “ハイミス” と見える衣装係はストッキングを差し出して、
「それが──飢えたオトコどもの、ゲレツな欲求を刺激するのでは?」
「コレじゃタダのナプキン留めにしかならないわよ!オシリに当たる玉も、ヘンに大きいし」
ブツブツ言いながら『美月』は、股間に食い込むパールの連なりにムリヤリ生理用品をはさむと、渡された光沢ストッキングを電線に注意しつつ履き、その上から網タイツに足をとおした。
そして、いざバニー衣装を尻までもちあげ、背中のジッパーを上げようとしたトコロ……。
「ふんんn!!111」
なんと、上まで上がらない。
彼女は鏡のワクの中で情けなさそうな顔をする自分を見て、
「……ねぇ、コレほんとにアタシが着るヤツ?チャック上がんないヨ」
衣装係は、わきの小卓に盆を置くと、手荒に『美月』のオッパイをバニー衣装のカップに押し入れ──ジジジィッ!
「ふぐぅッ!……ちょっとォ……今夜のコレぇ、キツくない?ほらァ!」
目の前のロココ風な姿見に全身を映した『美月』は、数珠の繋がりが、ショッキング・ピンクなバニー生地の表面へ淫らに浮き出ているのを見て、
「やっぱりお股からオナカまで浮いて見えちゃってるじゃん!」
存じ上げません、と盆を捧げ持った衣装係の中年女はそっけなく、
「当方は、割り当てられたクリーニング済みの衣装を、キャストに支給するだけです」
「まったくもう……ふんんんん……っ!」
ぐぃぃぃ~~……っ!
同色のピンク色なハイヒールをはいた『美月』は、網タイツに光沢ストッキングの二重履きな美脚を、ガニ股でスクワット。バニー衣装を股間に食い込ませ、なじませる。すると──肛門とクリに当たる玉に刺激される彼女のカラダを、甘美な “さざ波” が
──うッ……っっ❤
ゾクゾクゾク……ッ♪
心ならずも、カルく濡れてしまった彼女。
パールが食い込む
ヘンに刺激を与え、オナニーしたくならないよう、かるく……かるく……。
さいきん、感じやすいカラダになっちゃったナァ……と彼女は悩ましげにため息。
──オマケに、このごろ骨盤がイタいのよねぇ。ナンか、おシリも張ってきたというか……。
白いシッポが飾る光沢ピンクのバニー・コート。
そこからムッチぃぃン、とハミ出る肉感ゆたかなヒップ。
それは『網タイツに包まれた巨大なボンレスハム』とも言うべき姿。
巨尻になった自分のヒップを『美月』は鏡を見ながら悩ましげに撫でまわす。
すこし離れたところでは、そんな彼女を衣装係が憎しみと
そのとき、ドレッシング・ルームに
「──だぁれぇ……?」
「あぁ、
「……なァんだ、その声は『童貞クン』じゃないの。
全面に彫刻をほどこされた扉が、おそるおそるといった風で開き、メガネをかけた黒服すがたの『フクロウ』が顔をのぞかせる。そして、モデル立ちする彼女のハイレグなバニー・コートからハミ出た、大陰唇とそれを飾るピアスに気づいて目を白黒させ顔を赤くした。
「ヤ~ねぇ、もう……エッチ!バカ!ヘンタイ!」
そして、どこか恨みがましい調子で相手をジト目に、
「──あの『
「そんな。『菜々』は……見せてくれませんから」
「えぇぇぇぇ?
そして『美月』は、もしや……とばかり上目づかいで『フクロウ』を見て、
「ひょっとして、まだ『童貞』!?」
「えぇ……まぁ。彼女、酒グセがワルくて……」
はァァァァァ……っ!
『美月』の、くそデカため息。
だ~から、
「……ンでぇ?ナンの用なのョ、いったい」
『──
****
「アニきィ、ホントにヤツぁ、来ますかネ」
深閑としたBAR1918の店内。
店を閉めてから久しいので、すでに静物たちに枯死の気配が漂っている。
おもての通りをゆっくりと過ぎる回転灯に、ドレッドは背中の筋肉を緊張させながら、
「──すくなくとも “黒ネコ” のヤツぁ、そういってた」
「ま~た、ネコのハナシですかぃ?」
男の対面にチョコんと腰掛ける相手は、サルを想わせる顔をしかめて、
「……コッチにァ、見えませんでしたゼ」
「ジョージ、
「いえ、そんナァ……ただねェ」
カラン。
ドレッドヘアが手にするロック・グラスが鳴った。
それを潮に、うす暗い酒場の中でただよい始めた緊張は、雲散する。
まぁイイ……と、この男は思う。
──
表に黒のミニバンが止まった。
かるくホーンが2,3回。
「さ──いよいよ出かけるぞ、ジョージ。準備はイイのか?」
「身ひとつで行きゃイイんでしょ?準備もナニも、ありやせんゼ」
男たちは酒場の床板をふみならし、ゆっくりと出て行った……。
****
『六道委員会の決定は、出たのかね?』
『いま、裁定中だよ。老人は、意思決定に時間がかかる』
『本当に老人なのかね?ウワサではAIという──』
『叱ッ!滅多なコトを言うものではないよ、キミ』
『左様。雄弁は「銀」。そして沈黙は「金」だ』
『だが彼らとて、我々にいつまでも協力的というわけでもあるまい……』
『そう。この6人だって、完全に安全というわけではないのだ』
『ときに──
『ハナから、あの男を中心に計画されてたコトだ。もはや
『いい人材なのに、惜しいナァ……』
****
ゴゥッ!
この季節にしては、生暖かい風が吹いた。
宵の口の、どことも知れぬ狭い路地の暗がり。
ふと気づけば、そこに金色の瞳が一つ、うかぶ。
「さァて。コレで役者は、
いまどき珍しい、裸電球の防犯灯。
木製の電信柱には、ホーローの
と──いきなり闇から黒ネコの姿がヌルリ、切り出された。
「
黄金の片目が、糸のように細められる。
またひとしきり生暖かい風が吹いた。
防犯灯の裸電球が消え──同時に黒ネコも闇に、溶ける……。
※1 【
※2 コンニャク数個分:百万円の札束が数束分。
※3 9パラ弾:9mmパラベラム弾 標準的な拳銃用の弾丸。
さぁ、いよいよその時がやってまいりました。
次回・第87話『崩壊する夜(その1:錯綜する思惑』