試製・転生請負トラッカー日月抄~撥ね殺すのがお仕事DEATH~【18禁版】 作:珍歩意地郎_四五四五
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エナメル革のせいだろうか。ギチッ!とカラダに張り付くような感覚がある。
キツいヒップ回りが尻に食い込むのを、親指をキツい隙間にムリヤリ差し込んで直しつつ、『美月』は閑散とした廊下をなんとなく足早に歩いていった。
──ヘンね……ココって、こんな暗かったッけ?
それに、この
──
だが。目下の不安から、それらをあまり気にすることなく、彼女はバニー・コートと同色なピンクのハイヒールをカツカツと通路に反響させ、なんとなく殺風景になった通路を急ぎ足で進んでゆく。
……先日の、姉との会合。
……改造され尽くした、見なれない姉。
……そのヘンに人工物っぽいカラダを抱いたとき。
……
「さて……そうとなったら、貴女たち姉妹に、
レイカとかいう、いままで見たことのないほど気位の高そうな女。
あの王女サマめいた人物が放った、真冬のように
──“ちびピエロ” が呼ぶってコトは……今夜の
姉の
先日のゲネプロ(本番と同じ条件での通しリハーサル)で、ようやくなんとかモノになったものの、それまで実際のホールをつかった練習では、客に見立てたマネキンのクビを何体もトバし、革張りのソファーを1ダースばかりダメにしたものである。
『いいコト?本当にお客様のクビをトバしたら……
おまえも人形にしてやるからね!?』
などとデーモン閣下めいた事をいいつつ、チーフ・レディの『小枝子』はスゴんだものである。
本番の舞台となるサロンでの、練習に次ぐ練習。厚い絨毯が敷かれた床とあって、定まらない足もとに苦戦する『美月』。アラビア風の反りが打たれたホンモノの長剣を片手でつかうとあって、いまでは両方の腕が一回り太くなってしまったことを、彼女は密かにナゲいていた。
──だれも……いないわよね。
廊下をちょっと見回し、ひとけのないことを確認。
『美月』は長剣を片手から片手へ移しかえ、華麗に舞うステップをひとくさり……そしてジャンプ!
ビタぁン!と言う音が廊下に響いた。
「あいたたた……ァ」
ヒールでの着地に失敗した彼女は、冷たいコンクリの床に網タイツの尻をついた。あわてて足首をたしかめて──どうやら大丈夫のようである──ホッ、と彼女が立ち上がろうと大股をひろげ、不安定なヒールで片足を踏んばったとき……。
あふぅ!……んッ♪
とたん、クリトリスと肛門に食い込む大粒パールの
ビクビクッ!イキそうになってしまい、思わず肉厚なくちびるをかみしめる。
この2つの玉だけ、表面を荒らした金属製になっているので、よけい刺激がつらい。
こっそりオナニーしたくなるところをグッ!とこらえ、なるべくソッと歩くようにする。
すると──逆光気味となった行く手に。
いつのまに現れたか。通路の左右でカベに背をつけ、腕組みをするメイド服が2人。
「こぉら『美月』ィ!背中ァ、まるいゾぉ!」
「そんな姿勢のワルさで“オモテ”のトップ・ディーヴァ歌姫が張れるのかしら?」
よく見れば、ときどき店主の護衛をしている黒メイド服たちだ。
──たしか……上級フェティッシュ・メイドとか言ったっけ……。
『美月』が近づくにつれ、このペアがニヤニヤと彼女を見つめているのが分かった。
──なによ!サバゲーでもやるの?肩にエアガンなんかかついで……。
「なァ~に廊下でアバれてンのよ!ケガぁなかった?」
「本番まえにアブないわね!おぃで、おバカさん。
クスクスと、廊下のどこかで忍びやかな笑い声。
えっ?と『美月』が振り向くと──ヒュッ!
青、それに赤のバニーコートの照りが2体ぶん、物陰に隠れるのが見えた、気がした。
──なんだろ……気のせい?
「ナニしてんの、もぅ!……さ、ハヤく!!」
黒髪ロングのフェティマに促され、『美月』は廊下を歩いてゆく……。
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“紅いウサギ”ちかくの路地では、電気工事業者の制服を着た一団が大型作業車を横づけにし、フタをあけたマンホールへキャンバス包みの細長い部材らしきものを運び込んでいた。一団の動きは、俗に言う“底辺”労働者のわりには正確に連携がとられ、動作のひとつひとつが
法令で配置が義務づけられている路上の警備員すら、年金暮らしなヨボヨボ老人ではなく、ガタイのいい若者が担当し、赤い誘導灯をふりながら周囲にするどい視線をくばっている。
(──班長。機材、すべて搬入を終了しました)
(──各員、配置についております。命令復唱、確認ずみ)
(──地上班も、そろそろ準備させろ。 “状況開始” の合図を待て)
デジタル無線機から伝わる、謎めいた
男たちの低い呟き声。ヒソヒソと、路地に伝わる……。
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『美月』がいみじくも “ちびピエロ” と呼ぶ店長の『小男』は、執務室で彼女を待ち構えていた。
すでに作業用スーツから着替えたこの人物は、白い三つ揃えを一部のスキもなく着込み、革張りの大きな椅子にくつろいでいる。黒いドレス・シャツに結び目が大きな、ウィンザー・ノットのネクタイ。ベストのボタンからは懐中時計用の、これまた体格に不似合いなゴツい金鎖がのび、ポケットに消えていた。
その背後には護衛役なのか、プロレスラーがタキシードを着たようなアニキたちが3人ばかり、所在なげに控えている。
「ようやくおいでなすッ……あぁっ!?」
『美月』が部屋に入ってきたとたん、『小男』はイラついた声をだした。
「アレほど言っておいたのに!……『美月』クン!なんでそんなバニー・コートを……」
その言葉に、『美月』は股間からヘソに向け、イヤらしく食い込むビーズが浮き出る自分のバニー
「え”……じゃヤッパ違うんだァ……どおりでサイズが合わないっポイな~~~と」
「あぁ、『ユリ』くん?大至急だ!この子の
えぇっ!なんでアタシが……とブツブツつぶやきながら、バイバ~イと『ケイ』のニヤつきに見送られて部屋を出て行くフェティマの片割れ。
「まったく!最近みなタルんでますな!──ときに『美月』クン。体調は、どうです?」
「どうって……?」
「今夜は!イケそうなんですか!?」
たたみかける“ちびピエロ”に『美月』はフンス!とガッツ・ポーズ。
「ハ!まぁ、アタシの舞いを観て、カンドーに涙しないよう──気をつけるコトね!」
「ほぅ……言ってくれますね!」
めずらしく『小男』はニヤニヤ。
あたかも手もとに転がり込んだ珍鳥を
次いで両手首のキズを気にしてか、自分の腕に目を落とし、多少しかめ面をして、
「本番はゼヒとも──その調子でお願いしますよ……?」
「お客サンの首ィ、トバすんじゃないわよぉ」
『ケイ』が、まるで人ごとのように彼女を茶化した。
「もっともウチらには、ソッチのほうが面白いけど♪」
「大丈夫ですよ!……たぶん」
「
そうこうしているウチに、また店主室の扉がひらかれ、1人の人物が入ってきた。
振りかえった『美月』は、驚きに目を見ひらく。
「──お姉ぇチャン!」
フワッと香るやわらかい気配。
女らしくヒールをさばく、キビキビした歩み。
いつの間にか、本来の気品をとりもどしたような風情。
それが純白なバニー・コスで、コスの載る衣装係の盆を捧げ持つ姿。
ひたいに
複雑にカットされたその石は、ときおり何かを暗示するが
「あぁ、『モルギアナ』クン。キミが来たかね。ささ、妹さんを着替えさせなさい」
元・『詩愛』は『小男』にむけ、ゆるやかに一礼。そして、
さァ、
「
どこか張り詰めたような威厳。
みょうに“ちびピエロ”に対して服従的な態度。
『美月』は、また姉が別の洗脳をされてしまったのか、と危ぶむ……。
衝立の陰で姉は妹を、かいがいしく脱がしにかかった。
ピンクのバニー・コスは『美月』のカラダにピッチリ張り付くようで、なかなか
「やっぱり……体温で粘着するボンドが使われてるわ?早めに脱いで、良かったわね」
そして妹の股間に食い込んでいる
「まぁ!……なんです?このハレンチなショーツ!」
姉は『美月』の前でひざまづいて、二重履きのストッキングを股まで下げるや、盆に載せていたレーザー
切りとった変態的なパール・ショーツの玉を姉がユックリぬがせると、はずかしいヌメりがキラキラと糸を引く。
パール・ビーズの表面をしげしげと確認していた姉は、
「おクスリ塗ってあるじゃない……なんてこと……よくも!」
ささやくような怒気をだすと、自分が用意した普通のひもパンなハイレグ・ショーツをはかせ、ストッキングを元にもどし、黒いバニー・コートに妹の脚を通させながら、
「いいこと、
姉は、妹の『源氏名』ではなく、改まった本名で話しかけた。
「……
「アブない目、って」
なにか怒られているような口調に、『美月』はドコとなく反発を覚えながら、
「2話で誘拐されかかったコトとか……『拘束服6号』のコトとか?」
「それ以外にも
姉は、床に切り捨てたパール・ショーツを、
そして今度は妹の
「いつまでも、お姉ちゃんは
「……」
「行動する前には、よく相手を。なにより周囲をよく見るのよ?もっと慎重になさい」
それは姉から妹に手向けられる、なにかフラグがらみの暗示的な教訓にも思える。
美月の両手に、二の腕までとどく
白いカフス。そして留め具は、上品な黒のカフス・ボタン──
首もとのピンクな蝶ネクタイを投げ捨て、かわりに黒いシルクのそれを。
そして最後にウサ耳をつけ、カチューシャをピンで髪に固定する。
姉は、
「──ワタシからの、お願いよ?」
そう言って、彼女のひたいに軽くキス。
「お姉ちゃん……」
ふぅっ。姉は、おおきく息をつくと声をあらため、
「お待たせ致しました──終わりましたわ、
姉妹はルイ王朝風な
白黒の、好一対となった麗しいバニー・ガール。
華やか、かつ暗い
「うむ……よし」
満足を押し隠した渋々顔で『小男』がうなずく。
すると、それを『ケイ』が代弁するように、
「へぇ!〝姉妹ワンペア〟で、いっぱしのナリになってンじゃん!」
そして2人に近づいて、姉妹を上から下まで。
品定めの目つきをして、舐めるようにジロジロと検分する……。
「ワルくないねェ……ナルホド2人とも『奉仕用ドール』に改造して姉妹ペアで
こんどは『小男』も本当の渋顔になった。
そして『ケイ』を鷹のような目でニラむやピシリと、
「フェティマ
姉が、まるでグランド・ピアノを覆うカバーのような、表が
「……しっかりね?お父さんや、お母さんをよろしく」
たまにな顔を見せてあげなさい?そう言って姉は、妹のカラダを優しく抱いた。
こんな姉の態度に『美月』は、どこか違和感を覚えつつも、
「うん……分かった。お姉ぇチャンも、本番でアリアの方をよろしく」
「あとでまた、会いましょうね?」
そう言って姉は、店主の執務室から妹を送り出した。
カタン。なめらかに扉が閉まると同時にフェティマの『ケイ』は姉のほうを向き、
「いいンだね?アンタ……本当に」
かつて『詩愛』と呼ばれていた奉仕人形は姉の役目を終えると、どこか哀しさを感じさせつつ弱々しげに
「えぇ……かまいません……」
2人のイミフな会話に『小男』がヒョィと眉毛を持ち上げ、すこし
****
もと来た殺風景な廊下。
そこを、マントに身をくるみ、半ばスソを引きずりつつ。
うつむいた『美月』は、どこかションボリとした足どりで戻っていった。
──お姉ぇチャン……。
さきほどの姉の物言いが、どこか気になる『美月』だった。
まるで、なにかを諦めたような……自分に、なにかを
それがなんであるか、記憶に残る今のシーンを、彼女が振り返っていたとき。
「やぁッと、来やがったわね?」
「待ちくたびれちゃったワヨ!」
そう言って、柱の陰から飛び出て来た姿がある。
赤と青の、茶髪なバニーガール。
“オモテ” のフロアでは、ぜんぜん見かけない顔だ。
20代前半? “ウラ” のキャストにしては“品”がないような。
腰に付けられた
なれなれしい調子で、この赤と青の2人組は、
「──はぁィ♪『美月』ちゅわぁぁぁん!」
「──お元気ぃぃ?もっと “お元気” にしたげよっか」
そう言って、まるで『美月』をバカにしたようにエヘヘヘと笑う。
──ムカッ!
イラつく『美月』。
剣舞のジャンプを練習するついでに、古武道の師範から習った飛び蹴り。
ソイツをお見舞いしようかしら!と思ったとき──ふと、姉の悲しそうな顔が浮かぶ。
「運がイイわね──オバさんたち」
たちまち相手の血相が分かりやすく変わった。
「ハァ?──なんですって!もう一度イってみなよ!」
「たかが “オモテ” でチヤホヤされる程度の小娘が、ナニいっちゃってンの?」
「……このあと大事な用があるので、失礼しますネ。センパイたちも宴の準備、して下さい」
白けきった『美月』は、そういってガラの悪い2人の間を通ろうとしたとき。
チッ!──赤バニーのするどい舌打ち。
ズイ!──『美月』の前に出て、通路をふさぐ青バニー。
「そうは “イカの金の玉” なんだなぁ♪このメス豚が!」
「ホラホラ。まずはアンタから、売り物のクソ人形に、なッちまいな!」
そう言うや、青バニーは胸の谷間よりライターめいたモノを取り出し『美月』に向けて、2度──3度。それをチキチキと鳴らした。
「…………」
なにも起きない。
三者三様、キョトンとした顔を、うす暗い廊下で見合わせる。
「え……ナニよコレ!バッテリー切れ?」
「アンタ不感症ォ?……ンなコト無いよねェ?」
赤バニーのほうが『美月』に近づくと、いきなり彼女が羽織るマントの前を開いた。
「あぁッ!このコ “おまた食い込みショーツ” してない!バニーの色もちがう!」
「ちょっとォ!……アンタに割り当てられたピンクの
手ちがいがあったらしくて……と、相手の剣幕にとまどいながら『美月』は慎重に、
「さいしょ受け取った割り当て
「……チッ!あンの、
青バニーは金切り声を出すと脂っ気のない茶髪をカキむしり、ハイヒールで地団駄を踏む。
どうする……?と赤バニーは、そんな相棒の方をうかがいながら『美月』を見て、
「ここで、もう
「──まって!」
そう言うや、青バニーは用心深そうに通路の前後を見回して、
「監視カメラの死角だけど “
──シャキン!
この女は、腰からいきなり伸縮式の特殊警棒を降り出した。
晴眼に構えると、あいかわらず下品なワラいをうかべ、
「運がイイのは──そっちだぜ。この、クソ
「アンタをキズものにして商品価値ぃオトしたら、コッチが人形にされちまう」
捨てゼリフを吐き、彼女たちは近くの扉に姿を消す。チラッと見たところ、そこは部屋ではなく別の通路の入り口となっているようだった。
扉のノッチが鳴ると『美月』は、知らずに詰めていた緊張をといた。
通路に一人きりになってみると、おびただしい疲労に包まれる。
──あのまま、回し蹴りで攻撃してたら……警棒の餌食だったカモ。
早くも姉の忠告が役に立ったようである。
そこで『美月』はふとイヤなことに思いあたった。
【
わたし「から」ってどういうコトだろう……と彼女は廊下でひとり、首をかしげた。
そして薄ら寒いおもいが胸に広がるのを感じつつ、マントの下でバニー・コスに拘束される自分の身体を抱きながら、廊下の先へといそぐ……。
****
『もう案内状の指定時刻から、だいぶ遅れましたわネェ……』
助手席でシートベルトをするダッチワイフが、気遣わしげにコチラを見た。
『時間厳守と書いてありマス。最悪なトキは、
なぁに、と運転を【ボニー】に任せているオレは、スーツから招待状を取り出した。
開演時間は21時とあるが、トラックのインパネにある時計は、それを大分回っている。
「真打ちは、おくれて登場するものだぜ……」
そして──もうひとつ。
内ポケットから、例の黒い板を取り出す。
何も書いてない、すこし持ち重りのする長財布サイズな板。
【SAI】が走査したところでは、金属でも合成樹脂でもない
走行中の車内に次々と流れこむ灯火にすかしてみるが、のっぺりとして何も書かれていない。けれど、あの『ユリ』と『ケイ』とかいう高級フェティマどもは、これを見てオレの騎士団長だった前世を
『マイケル。装備の最終チェックを、どうぞ』
【SAI】にうながされ、おれは外耳完全挿入型のイヤホンを片耳に差しいれる。
外に飛び出さないタイプの、
『聞こえますか』
「あぁ、バッチリだ」
『先日、『レティシア』が進入した経路は、マップにいれておきました。イザとなれば、こちらで万一の場合の逃走経路などを表示できます』
目の前がチカチカして、コンタクト・レンズ型のモニターに情報が浮かんだ。
車内の照度が微妙にかわり、キャビンの暗がりがよく見えるようになる。
反対に、夜の街を走るトラックの外がいきなり眩しくなった。
自動で照度が調整され、また普通の見え方にもどる。
『OK。では、もうそのまま装着しておいて下さい。あと15分ほどで現着します』
──ふーッ……。
オーディオ売り場のような、電子機器くさいキャビンで、オレは緊張気味な深呼吸。
招待状をスーツの内ポケットに入れようとカラダをネジった時、反対側の内ポケットに入れた医療関係の書類がカサカサと鳴る。次いでオレは、下のポケットにいれたベルベットの小箱をスーツの上から押さえてみた。
オレの、
状況がゆるせば──今夜……。
『詩愛』が人間にもどる目ぼしがついたところで……。
おそらく情緒が不安定になっているであろう彼女にひざまづき……。
映画の中でしか聞かないようなセリフとともに目の前で「カパー」するつもりだった。
──
オレはAIどもに悟られぬよう、ひそかにリキみかえる。
また、ふたたびトラの穴に入るような緊張感。
今度もまた無事に出てこれるだろうか。
すると【SAI】がいきなり、
『マイケル、前方に工事用車両。いつも通る道が塞がれています』
見れば、ガタイのいい誘導員がLEDの赤い誘導灯を振っている。
「ちッ!年度末の工事にしちゃハヤいな。いったん道をハズれて、反対側に入ろう」
『待ってください!』
いきなり【ボニー】が叫んだ
『10時の方向30m。コイン・パーキングに、捜査目標の白いメルセデス!』
フロントグラスがズーム画像のワイプ状になり、そこに見覚えのある車体が、となりに駐車した軽ワゴンに隠れるようにしてうずくまっている。まさに「頭隠してシリ隠さず」だ。
「マーカー、付けられるか?」
『人間が直接付けるのは、ドラレコを考慮して危険です。近くの防犯カメラを!【ボニー】?』
『回線掌握・完了。当該車両に動きがありしだい、リレーして追跡します』
──いまは、それしかないか……。
あれほど探した要監視対象の車を、みすみす見のがすしかない間の悪さ。
歯がみをする思いでトラックはそのわきをゆっくりと通り過ぎ、しばらく走って “紅いウサギ”の荷物搬入用スペースに駐車した。
パーキング・ブレーキを引いたとき(いよいよか……)と緊張は
『ではマイケル──幸運を』
「よせやい、オマエらしくもない」
『
【ボニー】がどこで知ったものか、一丁前に【SAI】をとがめた。
オレはポケットの小箱をおさえる。そして勢いをつけてトラックの扉をあけた。
すっかり秋の風になった夜気がほおをうつ。アスファルトの地面に降り立つと、
****
「来ましたワね……ようやく」
「ちッ!あの色男、1時間以上も遅刻だぞ。
ブルー系の
ふたりは一つのモニターをジッと眺め、成り行きを見守っている。
以前はズラリとならぶコンソール席には、ヘッド・セットをつけたオペレーター嬢がつめていたが、いまはチラホラとまばらになっている。そのうちの一人などは、手持ちのスマホでコッソリとBLのネット漫画などを読んでいるしまつ。
と──ふたりが見守る監視モニターでは、スーツを着た招待客と入り口の受付がモメはじめた。黒服のひとりが自分の腕時計をしめし、受付時間は過ぎていると大げさにアピールする映像。それを見た『サード』が舌打ちをしてインカムをとるや、通話ボタンを押して、
「エントランス!ソイツはいい。
画面では受付の黒服たちがシブシブといった感じで来客を中に入れているさまが映った。
「さぁて、おれたちの出番だゼェ」
「そうね。
『サード』がサングラスを中指でクィっ、と上げてガマのように舌なめずりし、
「手術室の準備は──できてンのか?」
「モチ♪あのイカれた兄弟には、最大限の技術を出すようハッパかけてるわ」
「そして、あのクソ生意気な『美月』とセットで売り飛ばすって算段か……」
「去りがけの
「『小枝子』にァ、絶対ナイショなんだろ?気ィつけなきゃな」
「
「3人がかりだから、なんとかなッか。ホントは、もう少し裏切るヤツが欲しかったがナ」
「下の電気炉、もう熱上げてるんでしょうね」
「定値運転で1650度、ヌカりはねぇヤ……」
かれらの目の前の監視モニターが、一部変化した。
そして『モルギアナ』のように機械化された美少女のふくれ顔を映し出す。
「……あの『マイケル』って野郎を、コンナにしちまおうってンだから、スゲぇよなぁ」
「まったく、あの男を絶望させるためなら、手段をいとわないなんて……」
「姫サマも物好きだよなァ。あんな野郎を絶望させて、ナニになるんだか」
「意識のあるまま、洗脳用宝石をエグリ着けて、絶望させてやりましょうねぇ?」
「おうサ!この泣き顔を見ながらタップリ言葉責めして、アオってやるゼェ。……」
「あぁっ、その時を思っただけで……アタシ、感じちゃう!」
『麗華』は、美脚が伸びるイヴニング・ドレスのスリットに、片手を差しいれる。
そして、はしたなくも表面に光沢のさざ波を奔らせて、クチュクチュ……。
「でもヨ……ヤツがこっちの
「その時は、例の催しが開催されてる時、バカ面下げて見ている後から注射で……あふッ♪」
「ブッスリ、か……」
『サード』は、ひとしきりシマリない笑いをもらしたあと、不意にテレくさそうに、
「なぁ……ヤツの
すると。かるくイッた『麗華』も、ハンカチで
「イイわねェ。その間アタシは開口具を噛ませて、強制クンニさせてやるわ」
「
「オクは来週で予告だから、大丈夫じゃないの?そうとうな金額で
『麗華』はアゴで『サード』をうながし、
「アワれな仔猫チャンの候補者を、お迎えに行きましょうか……」
いよいよ、この時が来ました……。