試製・転生請負トラッカー日月抄~撥ね殺すのがお仕事DEATH~【18禁版】 作:珍歩意地郎_四五四五
──なんだってんだ……クソっ!
敷地ゲートでの
──まぁ遅れたコッチも悪いが、あの受付係の、口のキタなさは……。
店員としてどうよ?と思わずにはいられない。
──まったくこの店も……。
来るたびに、なにやら品下るような気がしてならない。
ふと足を止め、ネオンで星の見えない夜空を見上げながらそう考える。
玉砂利の海に浮かぶ飛び石をつたい、重厚な“紅いウサギ”建屋の正面に立った。
すると、両扉がゆっくりと奥にひらき、
対して『麗華』のほうも、ハリウッドの赤絨毯にふさわしいくらいスリットの切れ上がったブルーのイヴニング・ドレス。そして二の腕まである白の長手袋。腰まで切れ上がったスリットからは、ガーターつきのストッキングが覗いている。重そうな黄金の細ベルトは、純金だろうか。リップの色がどぎついムラサキとあって、こちらも一昔前のアメコミな悪女役そのもの。
「まぁまぁ!よくぞ、お越し下さいました❤」
「まってたぜェェェ!仔猫チャン♪」
「──デュクシっ!」
なぜか『麗華』は『サード』に強烈なヒジうち。
下品なスーツのワキ腹をおさえ、
それには目もくれず、チーフ・レディはオレを引っぱる勢いで、すでに招待客がとおりすぎガランとしたエントランス・ホールをピンヒール鳴らして先導し、大理石の柱で囲まれる
たぶん、上客同士の待ち合わせや、男女間の秘密めいた会合に使われるのだろう、ロココ調の豪勢な什器で取りそろえた、こぢんまりと目立たない空間のスツールにオレをイソイソとした調子で座らせる。そして自身は、
上品な装いのワリに、耳に刺さるマイク付きのインカムが目立つ……。
おそらくソレで黒服に来客の誘導を指示したり、フロアレディやバニーたちの働きをコントロールして、今夜の繁忙をしのぐのだろう。すこし遅れてワキ腹をさすりつつ、半笑いな
「ほんとうに、
「それは──申し訳ありません。なにせ
開け放したままの正面大扉にから見える「車寄せ」に、黒いミニバンが停まるのが見えた。
軽くホーンが鳴らされ、振り返ってそれをチラ見する『麗華』。こちらに向き直ったとき、彼女の営業スマイルが、さらに深まるような。『サード』のしかめ面もうすれ、ベロリ。舌なめずりも。
チーフ・レディは、深海を想わせる目の
「お客サマがおいでになったわ──例のモノを……そう、お出しして
そして、オレのほうに
「
「ほう……と、いうと?」
「なァ~に。他愛もねェ、一種のゲームでさァ」
『サード』は、となりに座る女の(コイツ大丈夫かしら……)という目つきを
「フロアを、ね?こう、ダンサーのひとりが歌姫のアリアに乗って、長剣を振りまわしながら演舞をおこなうんスが……その剣は客の顔やノド、スレスレの軌道を描くんで。それにビビって客が身動きしたら、マケ。上級顧客にランクアップの権利を失う、って寸法なんス……けどマイケルさんは、カンケーねぇかな?」
「それと同時にね!?」
『麗華』が、あわてたようにその後を引き取り、
「女の子たちのランク・アップや、
『麗華』が、巧みな装飾がほどこされたロココ風
すると、テーブル上の空間に鮮明な3D画像が浮かび上がった。
『モルギアナ』を思わせる、ロボット化された少女……。
改造手術される時の苦しみを証す、白くなった長髪……。
額には、例の思考制御用の宝石が、残酷に穿たれて……。
──どこかで見た顔だな……?
すぐに記憶は、黒ネコとの会話で浮かんだ奉仕人形の姿に行き当たる。
画像は若干違うモノの、顔の雰囲気や造作はほぼ同じだ。
あの晩、ヤツに言われた言葉を大急ぎで思いだす。
「この娘もね?女の子に改造された当初は画像のとおり、ソレはソレはイヤがって……」
「シミュレートによりやァ、フェラひとつすンのも、ダダをコネるしまつなんで」
なるほど……。
眉間に寄せられたシワ……。
ふまん気に結ばれる口もと……。
瞳は、尋常ならざる
『麗華』が、オレの方をジロジロ見ながら面白そうに、
「最初は、女の子の服を着るのもイヤだなんて、わがまま言って。それがドウでしょう!」
映像が切り替わった。
今度は人物が同じではあるが、額の宝石の色も身体のギミックも──なにより顔つきが柔らかくなり、まるで飼い主である “ご主人サマ” を信頼しきったような微笑を浮かべている……。
「アナタもご存じ『モルギアナ』と同じ改造と調教、それに洗脳をおこなった結果──」
「
「……予定?」
「そ。トビっきりの奉仕ドールに化ける “予定” って寸法で……へへ。おまけに『マンコ』と『ケツの穴』、おまけの『おくち』も極上の名器に仕上げる段取りでしてネ……その処女を、オレっちがみっつとも、もらッ
「処女をもらうって……そのぅ……職権乱用、じゃないんですかね?」
オレは小卓を隔てたふたりの異様な熱気に押されつつ、
「改造手術した人形に──“商品” に、手をつけるというのは」
なぁに、と『サード』はサングラスを取り、クシャクシャのハンカチでガラスを拭く。
そしてみょうに好色そうな、ネットリと粘液質な
「思いっきり
「商業道徳が、なってないように思いますが?」
「どうせ分かりゃしねェって」
「と……言うと?」
「犯した後は洗脳して、強姦された記憶、ゼンブ消しちまうンだから。ほら」
ロココ風な小卓の上に浮かぶ3D映像で、少女の表情と服装が変化する。
なにより外骨格じみたロボットですらなくなって……。
「これは……」
「……大勢で、さんザ
「AI?それに、さっきから予定・予定って……つまり、この少女は、まだ──」
「そう!コレからスカウトして、まずは性転換手術のうえ、性奉仕ドールに改造って寸法よ」
オレは眉をひそめた。
そんなコトもできるのか、と心の中で首をかしげる。
──AI的なもの……まさか。
【SAI】クラスほどではないにせよ、相応のヤツを “ウサギ” も持ってる……?
「どうでぇ!?ダンナぁ」
『サード』は熱っぽい目でコチラに身を乗り出し、
「このカワイ子ちゃんに、会って見たくねェかい?もっとも
「──デュクシっ!」
またもや『麗華』の肘テツが『サード』のわき腹に炸裂!
おぉぉぉぉぉ……と、男は小卓のうえに身をかがめた。
「も、もちろん、
「うぅ……そ、そうでさぁ。性転換手術やドール改造されてるシーンは、あとで編集して──」
もういい、アンタはダマってな!という『麗華』の抑えきれない鋭いささやき。
その時。
遠くから、チリチリ──カツカツと。
小鈴が鳴るような、そして金属が床に打ち当たるような音が近づいてきた。
ふくれ面をする『サード』の背後をすかして見れば、赤と青のバニーが、エントランス・ホールで、みょうに不格好な大型犬を散歩させているのだった。
──いや……ちがう。
バニーたち近づいてきて、はじめて合点がいく。
それは両手両脚を折り曲げたまま固定され、金具を装着されたヒジとヒザで四つん
白い細首に巻かれた黒い首輪。
骨を強制的に
銀髪のアタマには、お決まりのケモ耳つきカチューシャ。
全身を
根元からクビられる乳房の先には、乳首用の鈴が黄金のピアスと共に。
テーブルの上には、シャンパンと、華奢な脚がついた
赤いバニーは、女の鼻に
青いバニーは、秋田犬のようにクルン、とシッポを生やした女の尻を、ムチでピタピタ。
「あぁん!もう、この子は!しょうがないネェ!」
「ふふッ♪……下のクチから──こォんな
ブブブブ!……なにかのバイブ音。
それにつれ、女のなま白い豊尻から生えた黒シッポが、フルフルと勢いよく振れた。
『んふゥゥゥ……ッッッ!』
おそらく、肛門に差し込まれた尻尾つきバイブからの刺激に耐えるためだろう。
女が顔をうつむかせ、全身を紅潮させる。骨を咥えるくちびるの端からヨダレが光る。
みだりに身体をゆすり、全身をめぐっているであろうアクメをむさぼるワケにはいかない。
背中にくくられたテーブルには、不安定なシャンパンボトルと脚付きグラスが載っているのだ。
「んんんん……ぅ」
それでも極限に抑えて身体をゆするメス犬。
チリリリ……と乳首の鈴が鳴って。
「ようやく来たね──遅いよ!」
怒り声で『麗華』は言うが、顔は口ほどでもないようだ。
そしてバニーたちから恭しく渡されるリードとムチを受け取る。そして、
ぐぃぃィィィ……っっ!
大きな鼻輪につながるリードを引っぱり、哀れなメス犬を自分が座るスツールに近づけた。
「このたびは──超・特別な
そう言って、彼女はメス犬の背中からボトルとグラスを取り上げて、小卓の上に置いた。
そして、イブニング。ドレスのウェストを飾るバックルを触る。
『ンふぅぅぅ!──ウッ!ウッ!ウッ!……』
とたん、紅潮する全身から汗を光らせるメス犬。
フルフルと嬉しそうに振れるシッポにアクメを貪ろうとするのか。
乳首の鈴をけたたましく鳴らし、浅ましくも無惨な前後運動を開始する。
たちまち、ただよい始める女の臭い……。
ピシリ!ムチが一閃。
『麗華』は、そんな女の豊尻をキビしく打ち据える。
アクメをおおずけにされ、恨みがましそうな
「ホラ!お客サマに──その恥ずかしいカオを、良くお見せ!!」
チーフ・レディーはメス犬のアゴにムチを差し入れ、大きな鼻輪のブラ下がる面を上げた。
……サッチーだった。
もと婦人警官にして、銭高警部補の女。
それが今は
『むぐぅぅ……』
ブザマに鼻から下がる大きなリングが、キラリと輝く。
それを恥ずかしがるのか、カオをそむけようとするサッチー。
だが『麗華』のムチは、それを許さずグィッ!強制的にオレの方へ向けて。
「この前の『
その時のコトを思いだすのか『麗華』は、面白そうにクスクスと。
「あとは、この “マゾ奴隷” に仕上がったメス犬を、
「……」
「おまけにこのメスの
慈悲のかけらもなく、得意げな調子でしゃべる『麗華』。
まちがいない。この女こそ、現代の “キルケー” だ……。※
「そのありさまを、このメス犬の “元カレ” は、マジックミラーを叩きながら指をくわえて鑑賞ってワケですの。この元カレの騒ぐコトと言ったら……!」
ここで『魔ほと』の
リリリリ……左右の乳首ピアスにつけられた鈴が、細かに鳴りだす。
オレは、トラックの前にPCを停めて話しかけてきた雨の夜の銭高をおもいだした。
──なるほど……あの暗い顔のウラには、そういう事情があったのか。
「で……銭高の、いや元カレは、それからどうしたんです?」
そういったとき、オレはヒヤリとする。うっかり銭高の名前を出してしまった。
案の定、メス犬状態にされた『魔ほと』の顔が、エッ!?と鼻輪を揺らす勢いでこちらに向けられる。横目でうかがううちに、記憶がマッチしたのだろう、アッ!という表情にかわる。
「感心しませんねぇ。 “
「あら……ソレがイイんじゃございませんコト?」
ネイル・アートにキズが付くのを
そんな中、赤青のバニーは、オレの方を無表情に見つめていた。
しかしこのバニーガール。ウサギには珍しく身だしなみがなってない。
アブラっ気のない茶髪に、ベットリとグロスを塗ったシマリのないくちびる。
そこらでバイクを転がすレディースの暴走族から引っぱってきたかのような風情だ。
とこか遠くで──ワッ!とドヨめく気配……。
それが果てると、エントランス・フロアは再び森閑とする。
シャワシャワとシャンパンの泡がはじける音が、みょうに耳についた。
元カレはどうした、ですって?と『麗華』は
「この女が
そう言ってコースター置かぬまま、精緻カットされ光の乱反射のうえに汗をうかべるフルート・グラスを、オレの目の前に震える手で押し出した。
熱っぽく浮かれたような、目の前の4つの瞳。
まるで何ごとかを、待ち受けるような……。
「見なれない銘柄ですね……手書きの
オレはテーブルの上からボトルと取り上げ、しげしげと眺めた。
うすい羊皮紙に、インクで、醸造年度と使用したブドウの品種。そして(おそらくは)ブドウ棚の区画と、地下カーヴでの熟成場所の位置が書かれている……。
「各国のVIPあてに、とくにRM生産者が選別して送っている品の一つですの……」※3
「さぁ、ホラ!気がヌケちまいますぜ、カワイ子──いや、マイケル
目にはめたコンタクトレンズ・モニターが突然起動した。
それはサーモ・センサーに切り替わり、目の前二人の顔面の紅潮を表示する。
『マイケル・その二人の体温分布と発汗──あきらかに異常な興奮状態にあります』
「……うん」
オレは独りごとを呟くように
視界が元にもどると、あいかわらずワクテカなふたりの顔。
入り口大扉の陰から、車寄せに停めたミニバンを背景に、サングラスをかけた黒服たちがチラッと顔をのぞかせて。
「……なるほど」
そう言って、ボトルを『魔ほと』の背中にくくりつけられたテーブルに戻す。
次いで
思わずノドが鳴る。
ふだんの自分なら、はやる気持ちをおさえきれず口をつけるところだ。
──出されたお酒は、飲まないほうがイイかもしれないねぇ……。
都市の夜景を見わたせるあの丘で、黒ネコから言われたセリフ。
オレはグラスに満たされた黄金の泡を鑑賞し終えると、グラスを『魔ほと』の背に戻した。
「どうなさいましたの!まさか召し上がらない……とか?」
「そりゃァねェですゼ、だんなァ!今晩のために骨折りで用意したってェのに!」
さらにスゴい勢いでなにやら言いかける彼らを制し、オレはスーツの内ポケットから封筒を取り出すと、中身を『麗華』たちの目の前に拡げてみせた。『サード』がオレの手からその書類をひったくって目を近づけ、
「はぁ?……肝硬変だってぇ!?肝ガンに進行の疑いあり……」
「お寄越し!──酒類の摂取を厳重に禁止──服薬による腎機能の低下に注意──」
転生協会の医療部で作らせた偽造の診断書。国立病院のフォーマットを使ってある。
やはり、こんな時のために、備えておいて正解だった。あやうく人形にされるところだ。
屁を嗅がされたような
「今夜、遅れたのはそのためです……さっき言ったでしょ?思うに
「でも、一杯ぐらいなら!」
『麗華』が食い下がった。
「一杯ぐらいなら!変わらないんじゃないこと?えぇ──そうですとも!」
先ほどの熱気を復活させ、このたびはどこか必死な勢いで、
「これからの療養生活にそなえ、最後の一杯!それも特上の、美酒を!」
「そうでェ、そうでェ!うちらの好意をムシするとあっちゃァ、この先は行かせませんゼ」
「……ワタシに『早死にしろ』と、こうおっしゃるんで?」
「コレだけはゆずれねェ!この一杯を、飲んでもらうまでは!」
もはや鬼気せまる勢いで『サード』は『魔ほと』の背からグラスを取ると、オレに突きつけた。血走ったような目。口の端は泡を噛んで。
オレはグラスを受け取ると──黙って『魔ほと』の背にソッともどした。
「頂けませんな……あらゆる意味で。客の意向をないがしろにするとは」
『サード』がミラーグラスの上から、赤青のバニーたちに目配せするのが見えた。
パサパサの茶髪をした彼女たちが、ガンをつける目つきでオレの背後ろにまわる。
──まずい。
オレは無意識に腰を浮かすが、赤バニーがこちらの肩を押さえるのが早かった。
空気が一気に緊張でふくらんだその一瞬──。
ガシャン!
相次ぐバイブ攻撃でチカラ尽きたのか、『魔ほと』が大理石の床で横倒しになり、背中に乗せていたクリスタルのフルート・グラスが文字通り粉みじんになる。ただ、さすがにシャンパンボトルは、耐圧のためにガラスが厚手とあって、広い空間にピアノの高音を叩いたような、澄んだ響きで床に転がると、中身をドプドプ、シュワシュワと大理石の床に
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
「もッたいねぇッ!」
あわてて『サード』がボトルを拾い上げるが、持ち上げたとたん、濡れたガラスで手が滑り、宙で放り投げてしまう。さしものシャンパンボトルも硬い床に叩きつけられ、グラスとおなじ運命をたどってしまった。
ギロリ!猛然とコチラを睨む『麗華』と『サード』。
「オレのせいかよ!!?」
コッチも思わず怒鳴ってしまう。
床に拡がる液体と、様々な散乱を魅せるガラスの破片。
それが壮大と言っても良い天井のシャンデリアの灯に輝いて。
このなかで
と──閉じていた彼女の目が薄く開かれ、オレに向かって微笑するのが分かった。
──なんてコトだ!……そういうワケだったのか。
卒然と倒れた理由に思い至る目前で、『麗華』は──ヒュン!
ムチをしならせて空気を鳴らし、足もとで横たわるハーネスに縛められた女体を、冷たい目つきで見おろした。口もとに浮かぶ酷薄な薄笑いには、一片の
「……そうですワネ。もとはと言えば、
再度、ムチが唸りをあげて振りかぶられる。
素早くオレは動くと、その前に立ち塞がって『魔ほと』、いや“サッチー”をかばった。
「マイケル
「お断りだね!飼いイヌを虐待する飼い主に──ロクなヤツはいない!」
「コレも躾ですわ!」
「なら別の方法にしてくれ!」
「あらソウ」
『麗華』の目つきが氷温になり、声が
ギャン!と、横たわっていた “サッチー” が悲鳴をあげてのけぞった。
電流だ。おそらく胎内に差し込んだ淫猥な性具に、電極がしかけてあるんだろう。
「やめろ!」
「動かないで!」
『麗華』の目つきが一変。
彼女はハイヒールで、飼い犬の
「うごくと……このメス犬の子宮をフッとばしますわよ!」
「したら、私のキミへの評価もフッとぶなァ!?」
グッ、と悪役じみたムラサキのくちびるが噛みしめられる。
『サード』は、オレと彼女の間にあって、ただオロオロとおちつかなげに。
しかし、例の赤青なバニーだけは、油断ならない目つきでコチラを凝視している。
まるでタイマンでも仕掛けてきそうな陰険な目つき。本当にどこからひろってきたのか。
「なにをなさってるの!」
エントランス・ホールに威圧感のある女の声が響いた。
全員が声の方をむくと、白いビジネス・スーツをピシリとキメた『小枝子』が、もはや見なれた感のある高級フェティマのペアを従えてやってくるところだった。
チッ!と赤青バニーの舌打ち。
いつのまにか伸ばしたものか、青のほうが特殊警棒をひそかに収める。
「いつまで経ってもおいでにならないと思っていたら──こんなところで!」
「アナタの出る幕じゃなくてよ?『
「そのお言葉、ソックリお返し致しますわ?『麗華』さま」
鋭い視線がカラみあい、バチバチと女の火花が散る。
『小枝子』は、電撃をうけて腹ばいになった『魔ほと』を
「あいかわらず、ご容赦のないこと」
「あら、まだ未練がおありになって?もうコレは
「存じておりますわ?でもお客サマの手前、あまり非道な仕打ちは控えたほうが宜しいかと」
「よもや
「『麗華』サマにふさわしく “無惨”と言い換えたほうが、よろしかったかしら?」
「その減らず口をこのムチで打ち据える権利があったら、1億でも廉いくらいですわ」
あらあら、こわいコト!と『小枝子』は
「
その時の『サード』と『麗華』の怒りをこめた視線は、ちょっと見ものだった。
まるで憎悪という記号を、そのまま表情でもって形而下させたような勢い。
「では、失礼するよ?私だって肝臓がコンナでなけりゃ、一本まるまる呑みたかったんだ」
そう言って偽造書類をふところにおさめ、ついでにチョッと身をかがめ、オレはサッチーの銀髪を、お礼の意味も込めてやさしく撫でた。
かすかに彼女がうなずく気配。
背中に『麗華』の悔しげな視線をギリギリと感じつつ。
*****
『小枝子』と、マイケル。
そして、2人を護衛するかのような位置で歩く高級フェティマのペアが遠ざかるのを、『麗華』は悔しげに見送った。次いで足もとに目をやるや、伏せをして恭順のポーズを取っているメス犬に向かい、その腹をケリ上げようと片足を大きくスィング・バックさせる。
それを見上げ身をかたく縮める、飼い犬にされた元・サッチー。
だが、何を思ったか『麗華』は、フイにそれをやめると、
「まぁイイ……どうせあの男はコッチの
そう言って赤青のバニーに顔を向け、
「
「でも──
赤バニーがパサパサな茶髪を手ぐしでかきあげながら、
「ヨケーなジャマが入るかもしれません」
「大丈夫さ。その時分には──」
ここで『麗華』はフフッと微笑を浮かべ、
「あのおチビさんは──もうこの世に居ないのよ……」
1※キルケー:古代ギリシャの叙事詩『オデッセイア』に登場する、ヒトを動物にするのを好む魔女。
2※
3※RM:レコルタン・マニピュラン。自社畑のブドウのみからシャンパンをつくる稀少メーカー。
(反対に大量生産のメーカーはNM: ネゴシアン・マニピュラン)