試製・転生請負トラッカー日月抄~撥ね殺すのがお仕事DEATH~【18禁版】 作:珍歩意地郎_四五四五
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いつになく閑散とした監視室、その一角。
電子機器の並ぶ、護衛艦のCIC(戦闘指揮所)めく空間。
「信じられない……」
露出の高いカクテル・ドレスに包んだ
「なんで……なんで、
モニターに移るブース席の一つ。
そこではジョーカーの衣装をした男が、みずからズラをとり、ドレッドの地毛を露わにしたところだった。
憎むべき悪の集団の首魁。
恐ろしき存在の記号化。
そんな人物が、かつて自分の彼氏であったマイケルと親しげに向かい合い、なにごとか話し合っている……。
──ヒュッ……!
さらに彼女が鋭く息をのむ気配。
それはどこか悲痛な色合いをもって、オペ女子が少なくなった管制エリアに響きわたる。
なぜなら──ドレッド・ヘアの隣に座る、ゴリラがシンバルを叩くオモチャのコスプレをした小柄な男が、土曜ワイド劇場『**の美女』に出てくる明智小五郎役の天知茂が、変装を解いた時のように、ベリベリと仮面を剥ぎとると……サルにも似た自分の素顔をさらすのを見たからであった。
──ウソっ!まさか……そんな?
夢の中に何度も出てきた怖ろしい
衆目のまえで、自分を犯し、蹂躙し、
あげくに、この “淫猥な人形” になる原因をつくった
──
──
ふいに!
性奉仕ドール『モルギアナ』の──元・詩愛の、魔石を
──まさか……マイケルさん、あのヤクザたちと、グルだった?もともと私のカラダを、こんな “恥ずかしい” ダッチワイフにするために、計画的に乱暴して……洗脳して……調教して。『性奉仕のお人形』に改造するよう仕向けたの……?
あの出会いも。
素敵なイヤリングも。
父に取り入り信頼させたのも。
高級マンションでのみんなとの生活も。
すべては──私を、この店専属の『
運命の夜祭りで見た朱美とその息子、竜太を思い出す。
露天の灯りにうかぶ、幸せそうな若い家族の情景。
涙の出るような “裏切り” のひとコマ
──すべては、
ガクガクと。肉付きのいいカラダが、ケイレンをはじめた。
すると、額に新しく設置された仮の魔石が副交感系に作用して、興奮を鎮める。
それがために、疑似涙腺の働きがブロックされ、泣きたいのに泣けない状況となった。
これが、『モルギアナ』に改造された『詩愛』の絶望をさらに呼び『奉仕人形』を捨て鉢に。
もし──。
彼女がそのままモニターを見続けていたら、憎きカタキに散弾銃でオドされる元・恋人の姿を、モニターに見たことだろう。だがこの人形は “裏切りの情景” に耐えられず顔をそむけたので、肝心の場面は見られずじまいとなっってしまう。
「……どうした。性奉仕ドール『モルギアナ』?」
そばに居て別のモニターで会場の成り行きを見守っていた、例の格闘技に長けたガタイのいい釣り目の女が、顔面蒼白となり小刻みに体をフルわせる奉仕ドールに気づいた。
「ひたいの宝石が “情緒不安定” の非常シグナルをだしてる。なにかあったか?」
「わたし……
絞り出すような、また
「とても……アリアを歌う気分に……なれません」
「あなた──このごに及んで、ナニ言ってるのよ?」
それを聞いたチーフ・レディの『小枝子』の、怒るよりも呆気にとられたような声。
品のいいリップに彩られた、かたちのいいくちびるを半ばポカンとさせ、
「もう本番まで、あまり時間がないのよ?」
「ワタシ……私は……」
「あ~ん、モウ!この
足首に巻いた鈴付きアンクレットをシャンシャン鳴らし、踊り子が管制室に入ってきた。
すでにギラギラ光る長刀を
「ヒッ!」
チリッ!
『美月』は、カラダに巻き付けた天女の羽衣めく絹の薄布を整えつつ、
「会場、
「……覚えてるわよネ?」
『小枝子』は一転、ツメたい声で、
「そんなコトになったら
「やぁん♪ジョーダンよ、マイケル・ジョ~ダン。タダのパーティー・ジョークじゃない」
「だとイイけど……なに?『ユリ』……はぁ?目標を見失った、ですって!」
いきなり『小枝子』が耳のインカムに指をあてて眉をひそめた。
「分かったわ──引きつづき捜索をなさい。使えるものは、すべて使って」
「それに、この衣装……」
『美月』はペルシャ風な
「今までみたいに、お道具を
「いい加減になさい!踊ってる最中に、アクメして、手もとでも狂ったらどうするの!」
「……『美月』サマ。貴女に折り入ってお願いがあります」
このとき『モルギアナ』は、
妹の目じりにチックが
どうやら、例のワルいクセが、また出たらしい。
彼女は、ワザと冷たい
「なによ、お姉──『モルギアナ』。
だが、この
「今晩のアリア。メス人形『モルギアナ』は歌えません……とても歌うことができません」
はぁぁああああああああ!???
『小枝子』とちがい、『美月』は絶叫した。
そして二、三歩たじろぎ、タップリ全音符ふたつ分の沈黙。
「こいつマジかよ」と、相手を、そして『小枝子』を交互に見つめる。
「ね?このメス人形、今さらこんなコト言うの。『美月』、アナタからも説得して頂戴!」
「いっ、いまさらナニいってるのよ、
「どうか……今晩の催し、踊りはナシで。かわりに
「なんで……なんでなのよ!?せっかくアリア役、譲ってあげたッてぇのに」
「ワタシも、たったいま言われて驚いてるのよ。ドウしちゃったのよ、『モルギアナ』?」
「……」
「お姉ェち──いえ、
「まって!」
ここでなにやら思いついたのか、『小枝子』は
「ナニよ、『小枝子』サン。いきなり大声なんか出して」
「フフッ……なにね?
「えぇッ、そんな!」
チーフ・レディの言葉に『美月』は仏頂面をし、裏切られたような口ぶりで、
「アタシのスペアを……用意してたってぇワケぇ?」
「ちがうわよ、バカね。
「そりゃァ……アタシの
彼女は、胸にブラさげたお守り代わりな銀のロザリオを、まさぐりつつ応える。
あの “幽冥の老貴婦人” からゆずられた、年代物のロザリオだった。
次いで、
「まぁお姉ぇチャンには……負けるけど」
ゴニョゴニョと、ナニやら言い訳めく『美月』。
そんな中にあって、わずかにゆるむ “姉” の口もと。
「それならば──よし!」
『小枝子』は、完全に状況を把握したチーフ・レディの顔つき。
そして決然とした
「衣装係!キャスト変更。『美月』を歌姫役にするので
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「おッせぇな……ナニやってやがンだか」
ドレッドは、緑色をしたシャツの袖をめくり手首のオメガを確認した。
「スケジュールじゃ、もうソロソロおッぱじまるンだが……」
「なんの予定だ?」
「へ。今晩の目玉よ。クライマックスにまぎれて、お前ェを殺すための剣舞だ」
良かったな?寿命が少し延びて……と、宿敵は冷酷に
「そうさなぁ。オレを殺すなんざ、いまのオマエにぁ、お茶の子【SAI】!【SAI】!だろうからなぁ……ナンとかしてくれよ、ホント!」
イヤホンからの反応はない。
アイツめ……マサカ本気で例の計算とやらに夢中となってンじゃあるまいな?くそっ……こんなときワルサーがあったら!やはり
「……ナンだぁ?」
ドレッドは赤く塗った眉毛をひょいとあげ、
「いのち
「なるべくオレをジワジワと、なぶり殺しにしたいってワケか、えぇ?」
「おうョ。直接、お前ェに手を下してねェからな。“うれション” しちまいそうだゼェ」
「は!どうにでもしてくだ【SAI】!、ってなもんだ!」
ふと、ドレッドのジョーカー顔が用心深くなる。
ワキに置いたジャケットの下に手を滑らせ、あたりの乱痴気騒ぎを胡散クサそうに。
「……いのち乞い、ってワケでもねェようだな。ナニぃ企んでやがる」
「ソッチこそ。その不自然な余裕。この会場に手下を何人か入れてるな?」
ケッ!
相手は白塗りのジョーカー
そして氷で満たされたシャンパン・クーラーから一本引き抜き、封をあける。
「たりめェよ。ポリの親玉や政治家どもの領袖もカラむヤベぇ店だ。丸腰ではいれっか!」
「だが、そんなとこから人材を引き抜こうとしてる……」
「魚心あれば水心、ってナ──おッ♪」
ホールの照明が暗くなっていった。
どことなく淫靡な印象の通奏低音が鳴り出す。
静かに──ひそやかに──しだいに強く……早く……。
ホールを満たす喘ぎ声やアクメの気配は、だんだん収まってゆく。
やがて……暗いムラサキ色のスポットライトに浮かぶ、ひとりの人物
若い黒人の女。例によって太めな、ムチムチのブリブリしたエロ・ボディ。
それをインド風ともアラビア風ともつかぬ
分厚い
腰まである黒い濃密なソバージュが、まるで復讐を果たすメデューサのごとく
──えッ!あれは『美月』じゃない!!……よな?
本番前に変更があったか、または何かの不都合が生じたか。
何はともあれ、良かった!とオレはひっそりムネをなでおろす。
オレの胃をギュッ!と握っていた冷たい手が、どこかに行った気分だ。
そうなると、あとは目の前の散弾銃を、どう無力化するかに集中すればいい……。
「
「
大陸の
シャァン!
売女扱いされたヤジが
黒人女が、ウサギが不満をしめす時のように一度、足ダン。
アンクレットに鈴なりとなった鳴り物が、シャラシャラ響きわたった。
しかも、なぜかその音は “凄凄涼涼” たる色調で、オレの胸を
ゆるやかに肢体をウネらせる黒人の女。
そこかしこに巻かれ、穿たれた、
それが、背景の黒にコントラストとなって煌めき、如何にも
天女の羽衣めく薄モノが全身をフワフワとり囲み、ピアスを穿たれた乳首や隠し所がチラチラ。
「
いきなりドレッドが抑えた叫びをあげる。
「あの黒ンぼうの
「珍しくもない。アレがどうした」
「ちょうどアンナ
姉たちの性的奉仕を見せつけられる屈辱的な情景を、また思い出したのか。
“ジョーカー” の目は憎悪まじりに
「……アレは、洗脳用の魔石だよ」
「ンだとぉ……手前ェ、知ってるのか?」
そのとき。なぜかオレは、この憎い敵に説明してしまう。
姉たちが進んで性奴隷になったと勘違いさせたほうが、本人が苦しむものを。
「知性をつかさどる前頭葉に、ひたいの骨を貫通させて直接作用する特殊な器具だとか」
「脳をちょくせつ……支配してやがンのか。チクショウめ、でもどうやって」
「くわしい仕組みは知らん。本人の意思にかかわらず、あやつり人形にしちまう、非・人道的な
「じゃぁ……じゃぁ姉キたちは!完全に色ボケんなったワケじゃなく、
と──その時、黒人女の
ムラサキの灯りにブラック・ライトでも加わったのか。
全身に、長い長いヘビのような『ヒダ付きチンポ』が、幾すじも浮かび上がったのである。
ややあって、それらは
おぉ!とホールの観客からはどよめきが、そして緩やかな拍手が上がる。
「はぃっ!え~、てなワケで──」
黒服がひとり。
薄暗がりなれた観客の瞳孔を維持するためか、赤いスポット・ライトを浴びつつ入ってきた。
目を凝らして良くみれば……なんだ、コリンズのヤツじゃないか。背後に歌舞伎などでよく見る
「ご来賓の皆サマがたにィ、前もってお伝えいたシましたとおり!……これから我が “紅いウサギ” が誇る、こちらの舞姫!彼女が演ずる剣舞をォ──お目にかけマぁッス!」
へぇ。あいつMCなんか出来たんだ?と素直に感心。
勤務態度のワルい、女のケツばっか追いかける同僚と思っていたが。
「これより!彼女が剣を振りつつ、舞いながらお席を回りヤスが──刃先の軌道は、お客サマギリギリをめがけます。そこでチョッとでも避けたら、お客サマの負け!上級会員候補の資格を失い、すみやかに退場シテ頂きヤス」
彼女、チャンと鍛錬を受けてるんだろうね!?とブースからの疑わしげな声。
「ウチの店を信じて命ィあずけるか、否か!ソコが天国と地獄の分かれ目でさァ!」
こうきては、グゥの音もでない客席。すると──。
見るだにおそろしいくらいな幅広の凶悪サーベルが2本。
刀身をギラギラと輝かせつつ、自ら宙をフヨフヨ浮いて座席をめぐる。
よく見れば、それはふたりの黒衣が
「さぁ!ここに集う御方は、老若男女を問わず!いずれも
今回は拍手が起きない。代わりに静かな緊張感。
ホールを散歩していた幅広の凶器が、黒人舞姫の手に収まった。
女らしい魅惑的な体格にくらべ、オークのようなぶっとい腕が目に付く。
改めて見れば、トルコの古いサーベルよろしく、反りを打たせた
優に1mはあろうその獲物。女は肢体の装具をけざやに鳴らし、自在に振りまわす。
やがて彼女の
おぉ!とホールの観客から、またもやどよめき。そして前より盛んな拍手。
音楽の調子が変わった。
リズミカルな低弦。ファゴットのメロディ。
ホールに置かれたスピーカーから、グリーグの『山の魔王の宮殿にて』が流れ始める。
https://www.youtube.com/watch?v=NZ6k2Nwge3M
それにつれて、黒人の女は拍子をとってステップを踏み、宙を舞い、
ホールを自在に行き交いながら、大きな身ごなしでサーベルの斬撃を開始する。
ヒュン!白刃が唸り──。
ヒョウ!来客の首もとスレスレに──。
──あ……まただ。
そのサーベル2本がホールのうす闇を切り裂く風切り音。
淫猥なカラダ中に付けられた装具の涼やかな鉦鳴。
そのうちに、オレは確かに哀しみを感じ取る。
「さァさァ!脱落者はダレだ!──落伍者はダレだ!」
コリンズのひょうきんめかしたアオり声。
まるで魚屋のオヤジが呼び込みをするように。
どうもこの男。この店に勤務するしては品が無い。
しかし……。
さすがは “ウサギ” の『ウラ会員』になろうとする、海千山千な金持ち連中だった。
身をかがめ、
いままで幾多の修羅場をくぐり抜けてきたと見え、多少の危機にはビクともしない。
まぶたさえ動かさず、ある「アメリカン・サイズ」のデブなどは微笑さえ浮かべる。
銀河皇帝のコスプレをする、
黒人美女の踊り子が演ずるスレスレの剣舞に対し、ロコツな挑発さえ示して見せた。
曲は、激しさを増してゆく。
シンバルが打ち鳴らされ、ファゴットが吠える。
ややあって、空気に鉄臭い水っぽさが混じるようになった。
そのうちホールの片隅で、馬頭の首が血を吹きつつ宙を舞ったような。
ヒィッ!という客の悲鳴は、その光景が現実のものであることを裏打ちする。
つづいて、頭にヘビを絡ませるメデューサの首がもんどりうち、スポットライトに。
エジプト風な
スピーカーから流れる管弦楽の大音響を圧し、さすがに会場で狼狽と恐慌がおこる。
動いた招待客は、否応なく屈強な黒衣に引きつられ、ホールから追い出されてゆく。
あるいは自分から、今のうちにと逃げてゆくドラキュラやフランケンシュタインも。
来客の中には、これが一種の余興で、斬られた首や腕はダミーだと信じる者が少なからず居た。ドレッドも、そんな客の一人だった。
「おぃ……!」
ドレッドが、ふたたび散弾銃をテーブルの下でこちらに向けた。
「ワザと動いて、この場ァぬけだそうなんて、考えンじゃねェぞ」
「ハ!逃げようなんて、【SAI】!【SAI】!思ってねぇぜ!」
……ダメだ。
あのクっっっっっっそAIの野郎!ナニやってやがる!!!!
と──何かのしずくが、けっこうな勢いで飛んできた。
誰かがシャンパンをハデに
こうなると、もう度胸もヘッたくれもない。
さしもの銭ゲバどもも、その多くは黒衣に促されるまでもなくコソコソとフロアをあとにする。それでもネバって客が残っているブースは、本当にウラの会員へ昇格したいヤツか……あるいはドレッドの手下か……。
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監視室は恐慌をきたしていた。
「コントロール!性奉仕ドールの、緊急停止信号を!」
『小枝子』の声にオペレーターのひとりがヘッド・セットを押さえてふりむき、
「ダメです!停止信号、受け付けません!」
となりにいた白衣の双子医者は、監視室のモニターを無表情にながめ、
「彼女の洗脳用魔石は、脳感染症をふせぐための──」
「応急用ですから。本人の特性に合致していない──」
「アナタたちねェ!そんな悠長なコトを!」
なんとかしなさいよ!と、地団駄を踏まんばかりなチーフ・レディ。
釣り目の女が「あの中に飛び込んで止めて来い」と言われないかヒヤヒヤするのが診える。
暗視カメラを確認すれば、すでに相当数の来客が黒人舞姫の
非常の場合、子宮に仕込んだ小型爆薬の起爆も可能だったが、店主の許可がいる。
そして店主と連絡が取れない現在、その手段は絶望的だ。なにより起爆コードがわからない。
「脳に刻まれた本源的な怒りが──」
「今の彼女の行動理念だろうね──」
「ゴタクはけっこうよ!ナニかないの!?」
ヒステリックに『小枝子』は叫んだ。
「あの狂った『人形』を──とめる手だては!」
長くなったので二つに分けます。