※この作品はR-18です。

試製・転生請負トラッカー日月抄~撥ね殺すのがお仕事DEATH~【18禁版】   作:珍歩意地郎_四五四五

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     〃    (その5:死の舞踏・後編

****

 

 楽曲最後のフォルテ。その残響が消えた。

 

 辺りは森、として、しわぶきひとつ聞こえない。

 ややあってシャンデリアの明るさが戻ると、流血淋漓(ちまみれ)たるホールのありさまが目の前に拡がった。辛うじて踏みとどまった招待客たちは、様々に仮装した顔をソファーの陰からおそるおそるのぞかせ、互いに恐怖の視線を交わしあう。

 

 どこかで嘔吐する気配。

 あるいは、斬り損ねられた客の、か細い悲鳴。

 気がつけば、あのチャラいMC役も姿を消している。

 

 そんな中……。

 

 黒人の舞姫は、広々としたホール中央に血刀を2本。

 諸手にひっさげ仁王立ちとなり──ギロリ!周囲のブースを睨めつけた。

 己の衣装も、肢体も。返り血を浴び凄惨な有様。それが更にスゴ味を増して。 

 やがて──シャラシャラと、足くびの鈴を鳴らし、オレのブースへと近づいて来る。

 

「──チッ!」

 

 ドレッドが、テーブルの下でショットガンの銃口を用心深くうごかすのが分かった。

 「カチカチ」とカスタネットのような音が小刻みに。ジョージの歯の根が合わないのだ。

 “死の舞姫” は優美さを失わない足どりで、真一文字にコチラへやってくると──ズィっ!血脂(ちあぶら)や髪の毛にまみれた凶刃をオレの鼻先に突きつけた。

 そして、ブ厚いくちびるを紅舌(した)でベロリ、舐めまわすや赤い瞳でハッタと見据え、

 

「アナタモ……コノ刃(ヤイバ)ノ餌食(エジキ)トナリ、死ンデ頂キマス……」

 

 低いカスれ声で『狂える人形』は呟いた。

 殺気を孕んだ瞳。慄然(ゾッ)とする雰囲気と強烈な威圧。

 そこには、有無を言わさぬ地金の凄味がこめられている。

 

 

「安心ナサイ。タダ、ヒト撃チ……」

「ちょっ!待って!待ってくれよ!」

 

 さすがにアワを喰って手を前に出し、みっともなく時間かせぎ。

 

「このオレが──いったい、ナニしたってんだよ!?」

 

 銃で撃たれるならまだしも、山刀(マシェッテ)で膾(なます)斬りにされるのはカンベンだ。

 コンゴでシンバ軍団におそわれ、残虐に殺された傭兵達の死体がフラッシュ・バック。

 腐りかけの死骸たちにむらがる蠅の羽音すら、耳のなかに蘇ってくる。

 戦場の砂塵。硝煙。ガソリン。汗──そして濃い血の臭い

 

「アンタに、うらまれるようなコトは……ナニも」

「ゴ自分ノ胸ニ、聞クノデスネ」

 

 この状況で、ドレッドの野郎は自分に危害が及ばない他人ゴトと踏んだのか、

 

「あッハァァァァ?コイツぁ、見モノだぜ?サイコーだ!」

 

 哄笑しながら散弾銃をテーブルの下でさりげなく赤スーツに包む。

 そしてソファーのワキに置くと、軽薄にパンパン手を打ち鳴らしつつ、

 

「いいゼぇ、姉ェちゃん。思うぞんぶん、殺(や)っちめーな!」

 

 冗談じゃない!とオレが身動きするよりも迅(はや)く。

 黒人の舞姫が片方の重量級サーベルを大上段にふりかぶろうとした、その時。

 

 血しぶきを袈裟(けさ)がけに浴びたタンノイのスピーカーが、別の曲を流し始めた。

 プッチーニの有名な歌劇【トスカ】に出てくる、有名なアリアの一節だ。

 そしてどこかで聞いたことのあるような声が朗々と歌い上げる。

 とたん──目の前の舞姫に、変化があらわれた。

 

「アッ、アッ、アッ……」

 

 額に埋めこまれた魔石が、点滅するように輝いた。

 次いで、この『人形』は天井に面(おもて)を向け、ガクガクと躯殻(いれもの)を震わせる。

 半びらきにした分厚い口唇(くちびる)から、痴呆(ちほう)のようにたれるヨダレ。

 天井の照明にキラキラと輝くぶざまな鼻輪──。

 カッ!と白目を剥(む)く目には、赤い血の涙がひとすじ。

 

****

 

「いいわぁ、効いてる効いてる!」

「さすがは『美月』ドノ。人形の注意を特定の記憶で逸らし──」

「そのスキに強制洗脳コードを受領させるとは、お見事です──」

 

 

 かたずをのんで状況を監視する制御室(コントロール)でも、ホッとしたような空気が流れた。格闘技にたけた釣り目の女も、自分に後始末が降りかかってこないことが明らかになったので、ホッとした気配。それをよそにマイクをにぎり、モニターの中の黒人を睨みながら、複雑な顔で『美月』は歌い続ける。

 

「彼女(アレ)は、もうお客の前には出せないわね。これ以上バグられてもコマるし」

 

 『小枝子』は腕組みをしてため息をつく。

 すると、双子の白衣兄弟が未練がましく口をとがらせ、

 

「いっそ地下の展示室に商品見本として展示するのはいかがで──?」

「もったいない。改造にも、かなりの手間ヒマをかけましたよ──?」

 

 はっ!と『小枝子』は手をヒラヒラさせ、

 

「彼女を気に入った客が現れ、買い取りを強請(ねだ)られたんじゃタマらないわ」

 

 そんなチーフ・レディと双子の悪魔医師のやりとりをよそに、

 

「さぁて──ンじゃ、またオレっちの出番スかねぇ……」

 

 コリンズは、手近にあった鏡で蝶ネクタイの具合をなおした。

 

「アナタも!現場放棄して、こんなトコで油なんか売って!」

「だって姐(あね)サン、あんな狂った人形にバッサリ殺られたンじゃ、ワリに合いませんや」

 

 じゃ、いってきまと、この男は軽薄な調子でヒョイヒョイと出て行く。

 黒ずくめの一団が、その後を同じような足どりで付き従って……。

 

 

****

 

 

 ホールでサーベルを振りかぶったまま。

 カグガク痙攣したのち、動きを停止した黒人の奉仕ドール。

 やがて──なにかの制御用S/W(ソフトウェア)でもインストールされたかのように、彼女の態度と表情は一変した。

 ほどなくして柔和な顔つきになると、威儀も言葉遣いも、殺伐した雰囲気すらも改まり、得物をワキにキチンと並べると、両膝をつきブース前に平服、土下座する。そんな中でも、全身をとりまくチンポの白い入れ墨だけは、あいかわらず黒い肌地にウネウネと。

 

「お客サマぁ?ドぉ~も、タイヘン失礼いたしやしたwwww」

 

 その言葉とはうらはらにま(・)っ(・)た(・)く(・)恐縮さを感じていない口ぶりで、コリンズのヤツが黒衣たちをひきつれ、マイクを手に近づいてきた。すると、他のブースから口々に、

 

「きっ、キミぃぃぃ!こっ、これァどうしたことかね!?」

「本当に斬られているぢゃないかぁッ!だからワタシは念押ししたんだ!」

「どうしてくれるんだね、コレを!由々しき責任問題だよ?」

「当方は政界や、ここのウラ会員ともコネがある!落とし前はキッチリつけてもらうが?」

 

 まぁまぁ、とコリンズは、あいかわらず他人ゴトのような営業スマイルで、

 

「お気持ちは、よぅく分かりやした。ナニをさておき、いまココに居られる皆さん方は,正真正銘、キモの太い方々でいらっしゃることは、身を以て証明して下さった次第。つきましては──」

 

 この男は、足もとに転がっていた女のものと思われる手首を、ぞんざいにケトばしつつ、

 

「残った皆サンを、無条件で当店の “ウラ” 会員に、推挙したいと考えます」

 

 おぉぅ!

 

 声にならないどよめき。

 一気に場の雰囲気がユルむのがわかった。

 仲間内を黒人舞姫の刃にかけられた者も、しょせんはカネのつながり。

 己(おのれ)さえ良ければ良いのか、黒衣に運び出されるコスプレ姿の死骸を、さも小気味よさそうに。

 

「しかし──この顛末(てんまつ)は、いったい何なのかしら?」

 

 空気清浄機の脱臭機能が猛然とうなりだすなか、スター・ウォーズのレイア姫チックなコスプレをした『美魔女』ともいえる半裸の中年婦人が、ビキニからハミ出しそうな豊乳の具合をなおしながら辺りを指して、

 

「なんだって、その……黒(・)ん(・)ぼ(・)う(・)のオンナは、こんな大それたコトを?」

「コレはツマりぃ、そのぅ」

 

 コリンズは言葉を選ぶのか一瞬、言いよどんだが、

 

「一種の “バグ” ってヤツでして。デコに付けた臨時あつらえの洗脳用・宝石が、どうやらコイツの脳に合わなかったみたいナンですなぁ」

「その宝石ってヤツをつけりゃァ──」

 

 ドレッドのヤツが、いきなり口をはさんだ。

 

「ドンナ人間でも、操れるってェのかい?」

 

 めずらしく真剣で、必死な表情だった。

 ソファーから立ちあがり、ブースから身を乗り出して。

 そこには、すがるような、そして祈るような気色さえ浮かべている。

 

「そのゥ、ナンだ。貞淑で、品があって、虫も殺さねぇようなスk……オンナが、男のチンポをしゃぶりたがる、ド淫乱なメスに、することも?」

 

 コリンズは芝居っけめいて大げさに肩をすくめ、

 

「オレっち……失礼、ワタクシめも先ホド “ウラ” の事情を聞いたばッかで、タマげてンですが──造(・)作(・)も(・)ね(・)ぇ(・)コ(・)ト(・)でしょうなぁ」

 

 なにやら唸(うな)りながら、ドレッドは土下座する黒人ダンサーを横目で睨む。

 おサルのジョージは嫌悪を浮かべ、薄気味の悪い自動人形(オートマタ)でも見るように。

 

「それではァ~~皆サマぁ」

 

 コリンズのヤツは、相変わらずスカした仕草で、

 

「改めまして、これよりプッチーニの歌劇【トスカ】を背景にした剣舞を、お楽しみ下さいませ」

 

 おいおい、まだ演(や)るのかね!と少なからずのブースから声がかかった。

 

「また気が狂って、客のクビをトバしにくるんじゃなかろうな!」

「さっきみたいなのは、ゴメンですわよ?」

「そのヘンは、心配ご無用!」

 

 生意気にもコイツは義手の腕をまえにまわし、悠々(ゆうゆう)と一礼。

 

「たったいま、改変プログラムの注入に成功しやした。その上、あっし共もココに居て、イザとなりゃ抑制しますんで。それに今度ァ、ナマの伴唱つきですゼ?どうぞおたのしみアレ……おぃ!」

 

 コリンズは、足もとで土下座する黒人女のアタマを蹴って立たせた。

 すると、この舞姫はワキに置いた血刀を手に立ち上がる。

 コリンズはマイクを使わずに直に、

 

「オッと。ソイツは置いてきな」

 

 黒服の命令に、ニコやかな笑みを保ったまま、彼女は言われたとおり、血脂にまみれた得物を、そばのブースに立てかける。

 穹隆となったホールの間に流れる、ホッとした雰囲気。

 彼女は一礼すると、相変わらず『トスカ』の間奏曲が低く流れるなか、曲に合わせて足はこびに鈴を鳴らし、床に散乱する得体のしれない肉塊をさけつつ、中央にもどってゆく。

 

 ほどなくして──。

 

 この悖徳の大広間に、もうひとりの人物があらわれた。

 黒革のバニー・衣装(コス)に、ももの上まであるくろい編み上げブーツ。

 二の腕まである黒いロング・グローブと、裏地が赤い、黒マント。

 今回は、さすがにネコ頭の全頭マスクはかぶっていない。

 

 ──『美月』!……くそっ。

 

 オレは心の中で呪いの声をあげる。

 また心臓に、長い爪を生やした冷たい手がしのびよる気配。

 彼女が踊らずに澄んで良かったものの、新たな心配が増えたのも事実だ。

 

 彼女は黒人舞姫とアイコンタクト。

 わずかにうなづく舞姫。プロ同士の、阿吽(あうん)の呼吸。

 それはまるで、深遠な約束事が2人の間にむすばれたように。

 次いでマイク・スタンドが立つ低いステージに上がり、マントの片側をはねた。

 半身を露わに。緋色の裏地を背景に、女の身体に貼りつく黒革の衣装が、なんとも淫靡な。

 

 やがて──スピーカーから流れ出す、歌劇のイントロ。

 

 黒人舞姫は、両手を空のままに、ユルユルと踊り出す。

 微笑みをもって、優雅に、雅やかに──羽毛のように軽やかな所作で。

 残酷にも皮膚の肉を穿って各所に吊られた鳴り物も、鏘然(しょうぜん)と涼やかに冴え渡る。

 見よ!薄暮にも似た幽玄なる薄闇のなか、厳かにして玄妙(たえ)なる舞は、下司な来客の目も驚かす。

 

 しかし凡庸な者達の疑念は完全に払拭できないようで、其処彼処から

 

「おぃ、キミ。こんどはホントに大丈夫なんだろうな?」

「イヤですわよ?あんなドレ人形の手にかかるなんて!」

 

「ご安心下せぇ。アレは、もはや完・全・に・再洗脳ずみ……らしいでサァ」

 

 ブースからの声に、コリンズは自信満々に応えた。

 

「チットやソット、踊ってる最中イタズラしても、この『人形』ぁ文句を言いませんゼ?」

 

 なにやら含みをもたせた説明。

 すると……遠慮の無い客たちが、ブースをめぐって踊る彼女が通り過ぎるとき、そのムッチリした美脚を、巨乳を──果ては、怪しからぬコトに股間を。サワサワ♪、モミモミ♪クチュクチュ♪……踊りのジャマにならぬ加減で、勝手気ままに触りだしたものである。

 

 やがて、不思議な現象(こと)が起こった!

 

 南スーダンのディンカ族も斯くやと思われる『人形』の黒い肌。

 それが踊っているうち、しだいにチョコレート色が抜けてゆくのだった。

 体つきも、肥大化した肉感的なものでなく、均整のとれたムチムチ・ボディに。

 腰まであったソバージュも茶色になって行き、ついには波打つ金髪へと変色してゆく。

 

 ──あッ……!

 

 オレの胃を掴む冷たい手が、さらに強くなる気配。

 うつむいたまま、しばらく全身を使い舞っていた奉仕人形。

 やがて、半身を艶めかしくうねらせ、ユルユルと面をあげたとき。

 その容貌(かお)は『モルギアナ』の──『詩愛』のそれへと変化をとげていた。

 だが……あいかわらず全身には、今度は黒色となった蛇チンポが、淫(みだ)らに蠢(うごめ)いて。

 

「あッ、アニキぃ!あのスケですぜぇぇ?」

 

 おサルのジョージが、シャンパンの酔いで勢いのデカくなった声をあげた。

 

「ホラ!ホラ!オレらが神社でさんざマワ(輪姦)した──」 

「叱(し)ッ!バカ野郎!!」

 

 ドレッドは酔っ払った子飼いの手下をドついた。

 

「ンなトコでデケぇ声で言う話題じゃねぇ!」

「家畜みてぇにブザマな “鼻輪” してッけど、間違いねぇッス!」

「だから静かにしやがれ──アホっ!!」

 

 だが『ドール』になり、再洗脳されたアタマには、もはやそれが聞こえないのか。

 蠱惑的に踊りながら、元・詩愛は満面の笑みをうかべて、来客たちに媚びを売る。

 自らのた(・)わ(・)わ(・)な乳房をすくい上げ、黄金のピアスが飾る乳首を吸い、舐めまわし。

 あるいは飾り具、鳴り物、または女陰(おマンコ)を封(ふう)じた小さな南京錠が連なる股間を振り。

 

 そのやや上には──。

 磨かれたように白く、初々しい無毛の恥丘。

 あたかも雪の上で鱗翅(はね)ひらくように、可憐なモルフォ蝶の刺青(いれずみ)。

 それは超・特上の『性奉仕ドール』である証。“紅いウサギ”の、最上級肉奴隷……。

 

 少ない人数のワリに、いつのまにか異様な熱気がみちる血生臭いホールで、ひたいの宝石を煌(キラ)めかせ、それらを間奏曲にあわせて元・『詩愛』は己に付けられた鈴を、けざやに鳴り響かせる。

 

 ──なんてコトだ!

 

 オレの胃を握る冷たい手の握力が、さらに強まった。

 

 ──あの黒人が……『詩愛』の化けた姿だったとは!

 

 なるほど、それでか!

 今にしてみれば、彼女の口上(セリフ)に思いあたる。

 あの子は自分が性奉仕用の『奴隷人形』になったことを、オレの責任と考えているのだ!あの運命の分かれ目となった夜祭りの日。彼女より同僚ドライバーである朱美との約束を優先したことで生じた、取り返しのつかない悲劇とその結末。我ながら浅はかな自分の行動……ならば!オレは甘んじて彼女の刃のもとに斃(たお)れる義務があるのではないか?赦(ゆる)しを請いつつ──潔(いさぎよ)く!

 

 もはや “切り札(婚約指輪)” 云々(うんぬん)という段階を過ぎていることは、明らかだった。

 考えてもみろ!と、オレはイヤな汗をかきながら、さきほどのシーンを思い起こした。

 いまも彼女はポージングを変えながら、好色、下品、外道の客どもより、さまざまに悪戯(イタズラ)をされてるではないか。それを甘んじて受け入れている!それもコレも──オ(・)レ(・)に(・)復(・)讐(・)を(・)す(・)る(・)機(・)会(・)を(・)窺(・)う(・)た(・)め(・)の(・)ガ(・)マ(・)ン(・)に他ならないではないか!?

 

 もはや、決定的に、彼女の “聖なる器(こころ)” は毀(こぼ)たれてしまったに違いない。

 たとえ人間に戻れたとしても、受けた恥辱や調教の記憶。淫らな己の振る舞いは忘れまい。

 それとも──また、忌まわしい洗脳の技をもちいて、都合良く記憶を改変さればいいのか?

 否!……否!それこそ彼女に対するこの上も無い冒涜(ぼうとく)!人間性の否定!倫理に対する罪だ!

 

 ──あぁ……また!

 

 ニコやかにY字開脚する彼女の、濡れそぼった股間に、ヒヒ爺ぃ共やレスボスな女たちは群がるのだった。乳房は変形するほど揉まれ、乳首に取り付けられた可憐な鈴を激しく鳴らす。彼女のおまたも、同様に様々な指で責め立てられていた。

 

 もし──肉を穿って留め合わせ小陰唇(ラビア)を封じる小さな南京錠の連なりが無かったら──あるいは肛門にズップリと、抜き差しならぬほど挿入(いれ)られて、ピンク・ダイヤの輝きを大きな尾部にのぞかせるアナル・ジュエリーがなかったら……元・『詩愛』の秘部は、たちまちにしてこれら色畜生どもの蹂躙するところとなっただろう。それでも彼女はニコやかな笑みを氷結させたまま、まさに “愛玩人形” のように、媚びた顔つきを崩すことなく。

 

「──動くなよ?」

 

 ドレッドが散弾銃を包んだスーツに手を伸ばしつつ。

 その彼女が弄ばれる情景と、オレの苦悶とを交互に眺めながら、心から楽しそうに、

 

「ダッチワイフになった “元カノ” のお楽しみを、ジャマしちゃワリぃってモンだ」

 

 様々にポーズするはしから、匂いを嗅がれ、乳房をモマれ、股間に指を這わせられる彼女。

 こっちはそれを目の当たりにしながら何もできず、指をクワえて見ているしか出来ない。

 

「アニキぃ!おれっチも、行っていいスかね!」

 

 最後のシャンパンボトルをラッパ呑みしながら、ジョージがスっ頓狂(とんきょう)な声で叫んだ。

 

「おれっチも、アイツのマンコいぢりてぇ!マンコの臭(にお)い嗅ぎてェ!」

「ダぁメだ!この芸無しザルが!酒でも飲んで──おとなしくしてろ!!」

 

 だが、このサルは不満顔に口をとがらせ、貧乏ユスりなどして納得できない様子。

 グビリ!口の端からシャンパン垂らし、マラリヤの熱に浮かされたような眼で元・『詩愛』を見つめる。

 

「♪私は歌に生き──愛に生きてきました(Vissi d'arte, vissi d'amore,)」

 

 『美月』の歌う【Vissi d'arte, vissi d'amore(歌に生き、愛に生き)】が始まった。

 そばには、なんと黒服姿の『フクロウ』が付き従い、彼女を護衛するように。

 

 珠玉(たま)のような歌声に包まれて、元・『詩愛』は舞いはじめる。

 その時には、もはやこの踊り子に手を触れようとするものは居なくなっていた。

 なぜなら舞いの最中、アラビア風コスプレイヤーの腰布から、ふた振りのジャンビーヤを抜き出し、両手に握るその半月型をした不吉な短刀を、シャンデリヤの灯にキラキラと輝かせたからである。心なしか彼女の笑みは、短刀を手にして弥増(いやま)しに美しく。

 

 快楽(けらく)の都邑(まち)に名だたる伝説の踊り子よろしく、淫躯(カラダ)の周囲に真珠色の薄絹を舞わせ、鏘然(しょうぜん)と鳴り物を響かせ、蠱惑的な笑みを浮かべて、その蕩けるように眩惑的な身のこなしは、会場に残る先ほどの陰惨な椿事の印象を、客の頭から瞬く間に払拭してしまう……。

 

「♪人に害を成したことは一度たりとてなく(Non feci mai male ad anima viva)!」

「あぁ、クソっ!あの乳首ピアス付きのエロいオッパイ、モミてぇなぁ!!」

 

 そんな中、“おサル”のジョージが叫ぶキンキン声が、いかにも雰囲気をぶち壊しに。

 周りのブースからも、さすがに(叱ッ!──叱ッ!──)と顰蹙がはいる。

 

「♪困難な方々に出会えば、

      ソッと手を差し伸べてきました!」

 

 『モルギアナ』の華麗なジャンプ!

 そして羽衣を波打たせ、物理法則を無視したようなユックリとした着地……。

 

「♪いつも真摯な信仰をもって……

    聖なる幕屋に祈りを捧げました……」

 

 体幹を微動だにさせない3回転ターン。

 そして滑らかに宙をおよぎ、ひれ伏す。

 まるでそれは花が舞うように──美事!

 

「♪いつも誠実な信心を以て(Sempre con fe' sincera)、祭壇に花を捧げました (diedi fiori agl'altar)」

「いょう、姐(ね)ぇチャン!また “おマンコ” 見してくれやァ!」

 

 こんどは会場からのクスクス嗤い。

 大道芸人のサルが、珍妙な芸でも見せるかのような反応。

 シャンパンの酔いが回ったのか、怒り顔のドレッドにドツかれたにも関わらず、“おサル” の雰囲気ブチ壊しなヤジは止まらなかった。ついには親分の制止も振り切ってソファーに靴のまま立ち上がり、腕を大きく上げて振りまわし、

 

「オメーのおマンコの具合、熱くてドロドロしてて、サイコーだったぜぇ!」

「♪それなのに、この苦しみの時に──どうして(Nell'ora del dolore perché,)」

 

 サル面(づら)をドヤ顔にして、なんとジョージはカチャカチャとベルトをゆるめ、あろうことか怒張し天をむく “淫水灼(いんすいや)け” した赤黒い異形の性器を露出させたものである。

 

「みてくれェィ!……オレっちのイボつきチンポ!勃起して──タマんねぇ!」

 

 “元・『詩愛』” は、それを見てトロけるような微笑を浮かべる。

 もはや、完全な愛玩ドールにされたように、蠱惑(こわく)の眼差(まなざ)しと、妖艶(ようえん)な仕草(しぐさ)で。

 そして色ボケした貌(かお)をもて、大きく開けた口から陽物(チンポ)を欲しがるように、舌を猥(みだ)らにそよがせる。

 

「うひょぉぉ?誘ってやがる!誘ってやがるぜ?肌のチンポ刺青も、めっちゃエロいし!」

「♪どうして、主よ(perché Signore)!」

「どエロな “ダッチワイフ” さんよォ!このチンポに、キスぅしてくれやァ」

「♪どうして私に(perché me)──このような報いをくださるのですか(ne rimuneri così)?」

 

 舞姫は、ニコやかな笑みで、仁王立ちになったジョージに近づく。

 そして、勃起チンポにふぅ……っ!強く息を吹きかけた。

 たまらずジョージはビュクビュク……っ!

 

「あぁもうタマんねぇ!キスwwしてくれェ!シャブってくれぇ!」

 

 ジョージは舞姫の金髪なアタマをワシづかみに、イラマチオさせようとする。

 その手を華麗にのがれた元・『詩愛』は、このとき面差しを般若のごとく一変。

 いきなり高らかに哄笑するや、ジャンビーヤ握る両腕を一度、二度、閃めかせた。

 

 一度目の右手で、イボつき勃起チンポは陰嚢(キンタマ)ごとシャンデリアが輝く宙を飛び──

 二度目の左手で、歪んだ刀身が、ザクリ!ジョージの肛門に根元まで突き立てられる。

 

「……これが『モルギアナ』のキスだよッ!」

 

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