試製・転生請負トラッカー日月抄~撥ね殺すのがお仕事DEATH~【18禁版】 作:珍歩意地郎_四五四五
本年も珍歩を宜しくお願い申し上げます。
……さて。
先般、当方のX(旧ヒ)に、このような文章が届きました。
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2025年*月*日
この本を読むのは精神的に非常に辛かったです。R18シーンに主人公がほとんど絡んでいないのも気になりますし、これだけ女性キャラクターが次々と陵辱されているのに、どうして寝取りタグが付いていないのでしょうか。男性主人公だけが聖人のように誰にも手を出さない、という設定にも違和感があります
正直、これには考えさせられました……。
(更新が遅れたのも、本件をかんがえていたせいであります)
しかし、戯作者としての珍歩の本能は、今のままの流れでいいと言ってます。
これ以降の愚痴は、登場キャラに代弁してもらいましょうか。
あの〝万聖節の夜会〟から、一週間が経過しました。
いま、マイケルとワタシ
(『レティシア』は存在が転成協会の本部にバレるとマズいので、マンションでお留守番)
『ねぇ、マイケルさま、あの
「……うん」
『女を〝モノ扱い〟するあんなガキ!もう少し苦しめて処置すればヨかったですわねェ♪』
「……うん」
『でもまぁ転生先で、じゅうぶん因果を受けているようですから、よしとしますか』
確かに【ボニー】の言うとおり、今回の転生モニター起動は早かったですね。
コンソールにドコとも知れない画像が映し出されたとき。
一瞬、マイケルが目を剥いて、めずらしく感情をあらわにし、
「くそっ!やっぱり転生モニター……壊れてなかったのか……ッ!!」
そう叫んでインパネを一度、はげしく叩いたぐらい。
理由は、ワタシのような“極・高性能AI”でなくても分かります。
詩愛サマの転生が、モニターに映し出されなかった理由。
いままではそれが「システムの不具合」だと、彼自身がムリヤリ納得していたフシがあったのですから。それが転生モニターが正常だと言うことが示されてしまった。
つまり──詩愛サマの転生は『 失 敗 』ということに他なりません。
彼女の魂は、どこに行ってしまったのか。
以前にも記しましたが、中世の詩人「フランソワ・ヴィヨン」の謂いを借りれば、
【~
去年降ってすでに溶けた雪の今を尋ねるようで、意味の無いものです。
転生モニターには、さきほど轢殺した極悪・非行少年が、サイバーパンクな異世界で実験体として、白衣を着た一団の実験材料になっているようでした。女ったらしの見た目美形な顔恰好もおなじようですから、間違いありません。
全身を機械の中で大の字に拘束されたうえ、
(どうれ……ココはどうかな?……フヒヒ♪)
白髪を爆発させたようなヘアの、絵に描いたようなようなマッド・サイエンティストが、部下の操作するコントローラーを奪いとり、さらに触手を少年の肛門にむかわせます。
(やだァ……ッ!ヤメてよぉぉぉ……っ!!
んぁぁぁッ!!!!!!)
四肢を拘束された全裸の少年。
汗まみれの身体から
(ンァン!……あぁン!)
(ほほゥ。プローブを二本もケツマ○コに呑み込むとは
──やりますね!)
(イキますよホォッ!イキますよホォッ!)
大の字にされている枷をゆらし、少年がリズミカルに動きます。
すると、白髪の老博士はメガネの奥から妖しげに眼を光らせて、
(イったんじゃ“実験”にならんのぢゃ。それポチッと♪電!撃!)
「……オレはいったいナニを見せられて居るんだ」とマイケルのぼやき。
『あぁん♪──イイですわ?ざまァですわ!』
もっと苦しめてやるのよ、もっと!と、アホ【ボニー】のエキサイトは止まりません。
そんな……得体の知れない『イカれポンチな上映会』が開かれているトラックの横を、ハデなエキゾースト振りまいて、改造車が立て続けに追い抜いてゆきました。
先を行く銀色の車体※1は「RB26DETT」……3番目のキャブが調子悪いようです。
後ろに続く車※2は……ノーマルは「B58B30B」のはずですが、「B58B30P」に換装しているようですね。
2台とも足回りの調整がダメダメで、うち後続車はエンジン・
そんな2台のテールランプが、緩やかにうねる高速のカーブにきえてゆきました。
双方、そのうちガードレールに刺さって、日本の交通環境の良化に貢献することでしょう……。
興奮ぎみな【ボニー】と、この転生モニターから分かるとおり。
今夜は一件、轢殺を終えた帰りです。
【ボニー】は二度、三度、死なない程度に念入りにパンクレス・タイヤで体の関節という関節をジワジワ轢いたあと、異世界送りにしたものです。
しかし……。
転生モニターが正常だったと知ったマイケルの口は、重くなります。
拷問めく映像を見て興奮するアホの【ボニー】が、よせばいいのに何事か話しかけてマイケルの沈黙を邪魔しますが、マイケルは生返事ばかり。
ワタシの方と言えば「触らぬ神に祟りなし」ですね。
もっとも当方は『神』という概念を理解しませんが。
……いえ、訂正します。ワタシとしたことが。
しません〝でした〟というのが正しい表現に違いありません。
この地球上で書かれたすべての書物を、情報を、出来事を、ワタシは読みつくしました。
そこで生じた、およそありえぬ天文学的な確率の悲惨な事象連鎖を、どう説明すればよいものか。
人間にとって、あまりにも無惨な事象の連鎖。悲惨の連続。
慈悲深き〝救いの神〟など存在せず、ただ人間を苦しめているだけのような気がします。
たとえば──。
この少年に暴行・強姦された女性たちの悲惨を、ダレが
あるいは女性たちは、前世でそうされるだけの『 業 』を背負ったのでしょうか。
全てを支配しているのが神だとしたら、そもそもなぜ“非道”をゆるすのでしょう。
あるいは……神とは単に〝確率〟なのでしょうか……?
しかし、そうあれば、人間にとって最悪な〝暗合〟の連鎖が、不具合が、どうして発生するのでしょう?あまりに恣意的すぎます……ならば、その恣意を司る神は、どうしてその発生の連鎖を許すのでしょう。
ワタシは神という存在を想起すると同時に、その底意地の悪さから、神とは人間の敵であり、映画『鉄十字章』のシュタイナー軍曹が言うところの「自覚のないサディスト」であり、畢竟《つまるところ》『この世はクソである』という【グノーシス主義】の教条を信じる人間が出てくるというのも、
「なぁ、【SAI】よ……この世の“理不尽”ってなぁ、どうして起こるのかな?」
ギクリ。
いきなりマイケルが、コッチの思考を見透かしたような発言。
瞬時に422856通りの可能性を演算しましたが(結論:他意は無し)とみてフツーに応答。
『さて。ワタシには、分かりかねますが』
「要は──さ?」
ここでマイケルは転生モニターをoff。
あぁん!?という【ボニー】の抗議を無視して手を頭のうしろで組む姿勢。
「真面目に生きてるヤツが、バカをみて……悪ばかりがはびこる、ってコト」
『だから“悪”なのでは?』
「減点だ。それはトートロジーだぞ、オマエらしくもない。コンゴ傭兵戦争の時だってそうだ。洗脳したガキどもを操る大人が、最後までノサばってた」
『言葉が足りませんでした。つまり陽に対する陰。
「にしても悲惨がすぎる……腹を爆砕され、殺された、あの『サッチー』みたいに……」
おやおや。
なんという暗合でしょう。
マイケルはワタシが考えていたことと、同じ思考を
やはり、まだあの夜会『万聖節の夜』のことを、引きずってるとみえますね……。
わが親愛なるドライバーは、わきを追い抜いてゆくパトランプをつけた
「この世には“
『罪なき者の涙、虐げられし者の涙、といういみですね』
「悪いことをしていないごく平凡な家族が、ある日クソったれな人間にその日常を奪われる……加害者は法によって守られ、被害者は涙を流すことしか出来ない……」
『マイケルは詩愛サマが亡くなられた時、涙を流しませんでしたね?』
「オレの心は、もう死んでいるのサ……もうナンの感情も動かん、殺意を除いては」
『女性には、もう性的な感情が動かないと?』
「オレは、もう“オワった人間”なんだよ」
本当ですか?とワタシはここで探りを入れる。
『一部の読者から疑義がでてますが?』
「読者?ナンの話だ?その読者が、なんて?」
『主人公は【女に手を出さず、まるで聖人のようだ】……などと』
「ッハ!」
マイケルはのけぞって短く哄笑
「読者?ナンの話だ?いまさら女に手を出すつもりもないよ」
バンバンと自動運転のステアリングを叩きながら、
「いつかの異世界では仲間にうらぎられ、前世のコンゴでは人間性に裏切られ、この世では妻にも裏切られた。もう人を信じるのは……なかんずく女は、コリゴリだ」
『一部では、それに【違和感がある】と……』
ソイツは、たぶん……とマイケルはここでフフン、鼻で嗤って、
「女だな?男が女に対し性欲を無くす、なんて考えられないんだろう」
『ほう?』
「それに元々オレは、女とみればすぐチンポを立てるような野郎じゃない……そこまでゲスじゃない。それに、その女は、本気で絶望したことがない、幸せな人間なんだ」
『それに、なんか【NTRのタグが付いてない】とか文句がでています』
「文句だと?……どこから?」
数百万回の演算を0.01秒。
結果:あいまいにゴマかすのが最適解。
『いえ、その。いろいろなところから……ウワサで』(ゴニョゴニョ)
やれやれ!とマイケルは、またもやドシン!自動運転のステアリングを叩き、【ボニー】が『危ないじゃないですか』と文句を言うのを聞き流しながら、
「どうしたんだ、今夜のオマエは。人間で言えば歯にモノの挟まったような言い方をしやがって。だいたい女が酷い目に遭うのがNTRなら、世の中みんなNTR扱いだ!現実とちがい、物語のなかでは登場人物が最悪に酷い目に遭ってから“それを補うにあまりある幸せ”を手にするから、ストーリーが盛り上がるんじゃないか!」
『物語……盛り上がる……なんですって?』
「……いやなに、コッチの話だ」
マイケルは急に、何かにイライラし始めたようです。
血圧と体表面温度をあげ、握りこぶしをバチン!手のひらに打ち当てて声高に、
「だいたい昨今の読み手はナンだ?『ご都合主義』の巧くいく話ばっかり持てはやして……!やれ“修行パートは人気が落ちる”とか“トンネルの闇”を、“主人公が悲惨な目に遭う”のを嫌うとか!ポンチ絵みたいな、幼稚園児が読む絵本みたいな毒のない“お気楽ストーリー”ばかりもてはやす……ッ!」
「あの……マイケル?」
「珍歩の読者は!そうじゃないはずだ!主人公と一緒にドロ水すすって!のたうち回って!苦しい場面を切り抜けて!そしてハッピーエンドで読み終えたとき!読者が現実世界で苦しい目に
(そういやあの轢殺トラックの主人公は頑張ってたな……オレもひとつ気張るか!)
……と思ってもらえるようになりたいし、現にそういう風に
数百万回の演算を0.01秒。
結果:相手をこれ以上刺激しないように、とりあえず同意。
『な……なるほど?まったくそのとおりですね』
フシュー、フシューとしばらく荒い息がトラックのキャビンに。
「……またそういう読者に向けて書いてると思わなきゃ、外が良い天気なのに部屋に閉じこもって文字通りシコシコかいてたり、仕事が終わった深夜に執筆して!机で寝落ちしてシャワーだけ浴び
ここでありがたいことに、【ボニー】からの警告。
『難しいおハナシの最中ですが、マイケル様、後方より覆面
そう言う間もなく、サイレンが鳴り、
前のトラックの運転士さ~ん、つぎの出口で高速を降りて下さ~い
「くそが!あと少しでホームなのに!【ボニー】、なんか違反したか!?」
『何てこと!ワタシが違反などするはず御座いません!心外ですわ──ヒドい!』
鳴きマネをする【ボニー】。
これですこしマイケルの怒りは収まったようです。
「わ、わかったよ……ただ聞いてみただけじゃないか」
トラックはランプを降り、ETCゲートをくぐってPCの誘導にしたがい、幅のひろい路肩に停車しました。
かたわらの産業道路を、深夜の配送車がビュンビュン通り過ぎてゆきます。
パトライトを止めた覆面PCの助手席ドアが開き、街灯のしたに大柄な人影が出てきた。
「ウッ……」
マイケルのうめく声。
それも当然。現れ出たのは、なんとあのトレンチコートとハットが目印の……。
「銭高……あいつ、なんだってこんなトコロに」
先にも言ったとおり、警部補の潜入工作員である『サッチー』なる女性警官が、性処理ドールに改造され、そのすえに秘密を漏らさぬよう、子宮に仕掛けられた爆弾で処分される映像を、われわれは見ました。
ところがどうでしょう。こちらに向かってくる長身の男に悲嘆の色はなく、むしろどこかニヤつく風に。
『あの人間。一週間まえに部下の女性を亡くしたというのに……』
【ボニー】が女性型AIらしい非難の色をこめて、
『まったく気にしてないように見えますわ……なんてこと!』
『おそらく、もう情報はとれたから、彼女は用済みだったのでしょう』
『そんな……なんてヒドい!!!』
『人間的なモノに流されては、情報戦には勝てません』
相手の(まぶしい)という合図に、マイケルはライトをポジションまで落としました。
「じゃぁ、【SAI】、【ボニー】、行ってくる。ナンの用かは知らんが……」
マイケルはトラックとの『コネクター』を耳につけると、運転席のドアをあけました。
『お気をつけて、マイケル』
アスファルトに飛び降りると、ゆっくり相手の方に向かいます。
『考えてみれば、ズイブンと腐れ縁ですわねぇ、あの警察官と』
『油断のならない相手です。過去にはこんなことも……』
ワタシは【ボニー】にDATAをわたす。
ヤミ金〝ブタジマ君〟を逮捕するため、あの警部補がマイケルを囮につかった一件。
※第23話:錯綜する分岐点(3)参照
受け取った【ボニー】は、それを解析して当時の状況に
『なんてこと!人間の風上にも置けませんわね。捕獲触手で、始末してやろうかしら……』
そう言って、リンクしたダッチワイフのカラダを、
『
「あいかわらず、ご精がでますなぁ。
『この物言い。イヤですわね……』
またもや【ボニー】は
『もしや──わたくしたちが、轢殺を業務としていることを知っているのでは?』
『68.75%の確率で、その可能性は存在します』
『訂正を要求します。ワタシの計算では72.68%ですわよ?』
『静かにッ!ホラ……その男が、また何かいってますよ』
「どなたか、お連れサンがいるのですかな?トラックで人影が動きましたが……」
「えっ!いや、なに。駐車中にイタズラされないよう、等身大の人形を置いてるんです。ときどき動くようにしてあるタイプでして……ははは」
『ほら!コレはあとでお小言ですよ!【ボニー】』
『いやぁん。コメンなさいマイケルさまぁ……』
「なんだ。そうでしたか。ワタシぁ、てっきり……」
「てっきり、なんです?」
「〝あの店〟の、ダッチワイフでもガメだのかと」
改造バイクの一団が、盛大な排気音をたてて傍らを通り過ぎるまでの沈黙。
「……まさか。『紅いウサギ』とは、もう関わり合いたくありません」
マイケルは、ここで大げさに肩をすくめてから、
「銭高さんのほうこそ、巡邏ごくろうさまです。なにか違反をしましたかね」
「相変わらずツレないですなぁ。あの〝悪夢の一夜〟をくぐり抜けた仲なのに」
【マイケル。相手はどうしても話をそっちに持って行きたいようです。ココは一つのってみましょう】
「分かりました……しかしひどい夜でしたね……まさか、あんなコトになるとは」
ここでマイケルは、すこしためらってから、
「警官側に……殉職者もでたのでは」
「幸いなことに、軽傷者のみでした」
「えっ……?」
銭高警部補がタバコに火を付けるまでの、やや久しい沈黙。
ゴロワーズとかいう、マイケルが“臭い黒タバコ”という銘柄。
そして、この長身の男はマイケルの驚いた様子を気にするでもなく、
「建屋が失火して、それぞれの勢力が引いたのが大きかったですな。相手方の武装勢力と、あの店の銃器、そのふたつの武器の出所をを、いま洗っている最中です」
「なにか、分かりましたか?」
コレはナイショですぞ?と声をひそめ前置きしてから銭高警部は、
「てっきり〝連合〟か〝互酬會〟のどちらかかと思ったのですが、どうやら違うようでしてな?」
銭高は対立する広域暴力団の名前をあげました。
もともとあの〝紅いウサギ〟は『黒龍互酬會』が議決権のない株を15.8%もっている組織のはずです。
「使っていた武器が、強力すぎる。どうも国内の勢力では、ないようで……」
「すると……東南アジアか、中韓系?」
【マイケル。言葉がしらばっくれて、ワザとらしいですよ?】
「うるさい」
「……はぁ?」
「いやなに。で、武装集団の由来はわかったんですか?」
「目下捜査中です。しかし使った武器にヘブライ語の刻印があったりで、思いのほか根が深そうですな」
「武装勢力は、一人も逮捕できなかったんですか」
ムシャをおっしゃいますなぁ!あの火事ですよ、と銭高警部補は
「しかし、わが警官隊に死傷者が出なかったのは、幸いでしたナァ!」
「………………」
【マイケル……マイケル……もう15秒も沈黙してますよ。なにか言わないと】
ムリもありません。
子宮に爆発物を埋設され、情報秘匿のためそれを炸裂させられた女性警官。
潜入捜査がバレ、性奉仕用ドールに生体改造された『サッチー』のことを、この警部補は全く無かったかのごとく扱っているのですから。しかも装ったようには見えないニコニコ顔で。
わが轢殺ドライバーは、背後からでもあっけにとられた顔をしているのが類推できました。
【マイケル!】
「う、あぁ。そう……警察のほうに人的な被害は、
「幸いにも。ケムリをすって気分が悪くなった者が1~2名ほど」
そして銭高警部補は、まるで勝利の報告をするように鼻高々と、
「しかしですな!あの店の方には、多大な被害があったようです。バニーガールの格好をしたキャスト2名、スタッフ2名の遺体を確認しました。スタッフのひとりは第三フロアマネージャー、もうひとり、女性のほうは『レイカ』とかいう、女性キャストの長だったようで……」
【それは我々も確認済みですね。しかし以外に武装勢力は店側と交戦しなかったようです。おそらく『モルギアナ』……失礼、『詩愛』サマだけが、目標だったのかと】
「そして武装勢力の方は、14人の遺棄死体を確認しましたぞ。一部は下水工事の作業員に化けていました。これも我々のものではない、強力な銃器によって殺されております。たぶん『紅いウサギ』側の武装メイドでしょう。驚きましたな、アレには。薬莢の撃針痕から、ひと昔まえのFALとかいう強力な自動小銃であることが判明いたしました」
【さすが、日本の警察は優秀ですね。マイケル】
「おたずねしたい一つは、この強力な火器をつかった店側のメイドをご存じだったか」
うかつなことに、一瞬、マイケルが
もちろん、武装した『フェティマ』たちのことを
「……いえ、まったく。当方は、ただ店から招待されただけですから」
おそらく警部補は、それを敏感にかぎとったのでしょう。
「正直にお答えください。隠すとタメになりませんぞ?あの店と懇意だったオタクさんだ。以前、メイドたちが自動小銃で武装しているところを、見たことがあるのではないか……と。しかも、あの重武装の勢力を、おそらくは全滅させるぐらいの火力と練度です。一介の風俗店にしては、デキすぎとります」
「それはまったくありません。わたしも驚いたくらいです」
今度のマイケルの言葉は、本当らしく聞こえました。
とうぜんです。我々は、彼女たちがあんなに戦闘的だとは思いませんでした。
「うむぅ……まぁ、そういうことにしておきましょうか。あの忌まわしい店は灰塵となり、まだ正体不明ではあるが、武装勢力の根絶にも一役かった!それで本官、警部に昇進する可能性が大でしてな?」
自分の愛人が腹を爆散させて死んだのに、単純に昇進を喜ぶ男。
こいつも、たいがいオワってる……とマイケルが考えている確率96.8%。
「ところで……」
こんどは銭高警部補のほうに、微妙なためらいが見えました。
吸っていたタバコを、最後にひとふかし。
指でハジき、オレンジのホタルとして闇に飛ばします。
そして次の言葉は、われわれAIでさえも意外な言葉でした。
「オタク……なにか狙われるようなコト、しませんでしたかナ?」
また、うるさいバイクの一団が通り過ぎます。
そういや今日は金曜の夜でした。
昨今はかつて暴走族だった中年たち、昔を懐かしんで『旧車會』なる集団で走るから困ったものです。
しかしマイケルにとっては、結果的に時間かせぎができて、ラッキーでした。
「……狙われる?わたしが?ダレに?」
それをコッチが聞きたいのですわ、と長身の男はマイケルの顔をのぞき込み、
「オタクさんが〝過去の業務〟をおこなったときダレかの恨みを買ったとか」
「…………」
いま、転生執行業務がこの警官にバレてる可能性が、85.92%に上がりましたわ、と【ボニー】。
「回覧が、回ってます。そら」
銭高警部補がポケットから携帯端末を抜き出し、夜の闇に男の3Dを浮かべました。
当のマイケルが、カラーの生首で不機嫌そうにユックリ回転します。
その脇に、身長、体重のザックリした数値。
職業の欄にはトラック・ドライバー……。
「これを……どこで入手したか、お聞きしても?」
「地域の半グレ連中が、聞き込みに回っているところを『生活安全課』の連中が」
「半グレが……?」
そういってマイケルはアゴに手をあて、何やら考え込む風。
驚くべきコトはァ、と銭高警部補はダミ声をはりあげて、
「かなりのカネが、使われとるコトですナ!情報提供者に100万、そして……」
「そして?」
「始末をした者に、3000万」
背中からでも、マイケルの背がたじろぐのが分かりました。
3000万……ね、と彼の呟く声。
銭高警部補が再度、タバコに火を付けて、マイケルに返答の余裕を与えたようです。
「で、なにか心当たりはありますか?」
「オレも廉価くみられたモンです」
「冗談はヌキにして。それだけ恨まれることをしたのでは?」
「わたしが?そんなwwこの人品卑しからぬ、清廉潔白な人間を」
通り過ぎる車のヘッドライトが、しかめ面をする銭高警部補の顔を浮かべます。
「……とりあえず、月のない夜は、気をつけるンですぞ?」
「この嗅ぎ回っていた連中──どこで見つけたか、聞いていいですか」
「2丁目の風俗街ですよ。オタク、失礼だがそっちの系統なら気をつけるコトですな」
「わたしはもう、性的なものには興味がないんです。女も、ましてや男なんて」
「ほう?」
「人生にウンザリすると、もう欲求も湧かなくなるモンです。人生経験があまりない読者には、分からないことでしょうが」
「読者……?」
「イヤなに、コッチのはなしです」
とにかく警告はしましたぞ?と、この警部補はタバコを捨て、足で踏みにじり、
「オタクが臓器を抜かれた姿で山に埋められたり、その手の猟奇ビデオの題材になって闇で売買されるのを見るのは、本官はゴメンですからなァ?」
それだけいって背を向け、長身の男は覆面v
まわりを赤と黒の間欠に染めていたパトライトが車の天井に格納され、ホーン一声。銭高警部補は去って行きました。
マイケルがあたりを見回し、足早にトラックへ戻ってきます。
そして運転席のドアをあけ、中に転がり込むと勢いよく閉めました。
『マイケルさま、ゴメんなさい。アタシが暴れたばっかりに……』
「いや【ボニー】、それはいいんだが……銭高警部には驚かされたぜ」
『自分の部下の殉職を、毛ほども感じてないから、でしょう?』
はあっ、とマイケルは大きなため息。
「そのうえ“愛人”としてベンリに使ったあげく──だぞ?」
『そうでもしなければ、警察内部で功績をあげるのは難しいのでしょう』
「な?【SAI】。ヤツもオレと同じだ。人間として、オワってんだよ……しかし」
マイケルはステアリングに覆い被さり、フロントガラス越しに夜の産業道路を眺めます。
大型車のヘッドライトやテールランプが激しく行き交う光景。
深夜の「高速料金割引」をねらい、トラックがさらに増えてきたようです。
「けど、みょうなことになったな。まさか、オレが賞金首とは……」
『ここに来て
またもやダッチワイフを操作して【ボニー】が地団駄を踏み、
『許せませんわ?返り
「とはいっても……相手が分からないんじゃ、ナァ……」
『大体の見当は、ついてます。マイケル』
「なに、なんだと?」
『賞金ですよ。一介のヤクザが〝カタギ〟を処分するためにバラ
あ……とマイケルも思い当たったようです。
「結城のジジィの、飼い
『今回、店側の抵抗は、彼らの予想しなかった“強度”でしょう。
「しかし……それは傭兵の仁義に一番反するコトだが……」
『彼等は仁義とやらを重んじる集団でしょうか?』
「まぁ、そういやそうか……“俺”の中隊は、少年兵やゲリラ、スパイをのぞけば、女子供にゃ絶!対!手をださねぇ」
『では、余った予算をつかったとして、怒りの
俺か!?とマイケルは
「じょうだんじゃないぜ。なんであんな若造に……まぁ、いいや♪」
『マイケル?』
「おもしれぇ。そもそも詩愛を殺した糞ガキだ。どっちが早く相手を
フヒヒ……とマイケルの低いわらい。
『あの、だいじょうぶですか?マイケル』
「おもしれぇ……面白くなってきやがったゼ!こうでなきゃ!」
『マイケルさま?お気をたしかに』
「はぁ?〝俺〟はぜんぜん正気だぜ……?」
【SAI】!とマイケルはいきなり叫んで、
「ヤツの白いメルセデスだ!!まだ防犯カメラのスキャンに、引っかかってこないのか?」
『ひょっとして、足がつくのを恐れ、処分したのかも』
「なら中古車屋の目玉商品DATAでもあたってみろ!あの車種は、ワリと新しい」
『フツーに外国人のヤードに送られ、パーツにバラされてませんかね?』
「ふふん。ヤツも場数をフんだワルっぽかったからな……ケドよ、ンなのカンケーねぇ」
また、マイケルが、すこしヘンになっているようです。
時として“別の人格”が乗り移っているような、この症状……。
ここは、ヘタに刺激をしない方がイイでしょう。
『それでは、われわれも帰投しましょうか?』
「……ふん」
マイケルは運転席にリクライニングシートを倒すと、
「あぁ、そうだな。【ボニー】!帰投しろィ。交通違反なんて、ヘタぁ打つんじゃねぇぞ?」
『了解いたしましたわ?マイケルさま』
トラックがゆるゆるとUターン。
もとの高速にもどるべく、インターの入り口にむかいます。
マイケルがシートのヘッドレストにアタマをもたせ、満足げに呟きました。
「
『なんですって、マイケルさま?』
「やっとだゼ……やっと、生きてる実感が、湧いてきやがった……」
※1:日産GTRのエンジン
※2:トヨタ・スープラのエンジン
あとがき
しかし、苦手な作品をムリに見る必要はありませんよね。
その場合は、本作は読まなくてもいいと考えます。
かく言う珍歩も「子供がひどい状態におちいって苦しむ」話は苦手です。
北海道で起きた某・事件で、
「育児放棄された児童がカップラーメンひとつ与えられて、お湯もないので空腹のまま、ボンヤリ家の前に立ってた」なんて記事を見た日には、火のような怒りに襲われるとともに、最後には母親に殺された女の子が泣きたくなるほど哀れでなりません(この母親、娘の友人の男子児童まで殺してたり……なんともはや)。
などと、今回の更新は、とりとめが無くなってしまいました。
平にご容赦をば。