試製・転生請負トラッカー日月抄~撥ね殺すのがお仕事DEATH~【18禁版】 作:珍歩意地郎_四五四五
オレは目の前の女を改めて見やる。
豊かにうねる肩までの赤髪。
少しぽっちゃり目の、トロンとした面差し。
ぼってりとした、ダッチワイフの口元めくタラコ唇。
それは深紅の色合いで、あたかも飴のかかった果実のように艶々と。
外国人とのハーフだろうか。アンバランスなほどの豊かな乳房が印象的だ。
よく見れば、その乳首にも小枝子のようなピアスが穿たれ、リングが洌たく輝いている。
抜けるような白い肌には、恥毛はおろか産毛すら一本も生えていなかった。
下腹部。性器や卵巣のあたりにも何かのマーキングや数字が書かれ、不吉な運命を告げている。
肉付きのいいマネキン人形のような身体は、少女と
両腕を手枷につくリングで背中側に連結され、首輪のDリングにリードを繋げられると、女は手荒に引き立てられる。それに抗い、この見知らぬ全裸の少女はオレの方を向いて、
「イヤっ!……ご主人さまァ!!」
ハスキーな声。
舌っ足らずな口調の叫び。
長いまつ毛が震え、大きな目から涙がこぼれて。
マーキングされた乳房をゆらすと、先端のリングが輝く。
よく見れば女の舌をつらぬいて、ここにもバーベル型のピアスが。
「さ!手間かけさせやがって――来い!」
白衣の男がリードを引っ張ったとき、恐怖のためだろうかジョロロロロ……と女が失禁した。
パァン!ともう片方の男が、すでに赤く腫れあがっている尻を叩く。
「しまりのないマンコだな。やはりもう少しアナをキツめに
「まだまだ処置が残っているんだ!あまり世話やかすと、脳にメスいれるぞ!」
あうあうと白痴顔をしたバタ臭い顔の女がヨダレを垂らしながら、
「ご主人さま……助けて……アタシ美……美か……」
へぇ、まだ自分の名前を言おうとするんだ、と白衣の片方が驚いたように。
「あれだけ自分の出自を消去させて、代わりに性技を催眠教育したのにな」
「すこしサービスしてやるか。メス奴隷『マゾ美!』――強制アクメ!」
あッ!あッ!アッ――――!
条件反射を脳に刷り込まれでもしたのか。
女は人形のような肢体をブルブルっと震わせると、腰をはげしく前後に振りながら、愛液をほとばしらせた。
嬉しそうなアヘ顔をさらし、さらに二度、三度。
もし後ろ手に拘束されていなかったら、ガニ股でダブル・ピースをキメていたかもしれない。
やがて激しくイったあとは、ヘナヘナと崩れかかるところを首輪で宙づりに。
その時、オレの中で何かが噛み合った。
目の前の女が発散する“臭い”と“匂い”。
厳重に梱包された黒い革製の“繭”を開いたときの情景が、フラッシュ・バックする。
横抱きに抱え上げたときの、ピキリとした腰のいたみまで正確にトレースして。
「美香子――美香子か!?」
大きな目と長いまつげ。
外人のように通った鼻筋。肉感的な口唇。
ケバい化粧のせいもあるのだろうが、記憶にある美香子とは、とても似つかない。
白衣の男たちが顔を見合わせる。そのうちの片方が、
「失礼ですが、貴方は?」
「きょう追加で調教師が来るとは聞いてないぞ?ナニやってんだ事務所は」
オレは素早く頭を巡らせた。
「――その、小夜子に言われてね」
時間かせぎの苦しまぎれに、とりあえずそう応え、
「オレの知り合いのバニーが“馴致”を受けてるって聞いて。そこの――」
相変わらず花瓶置きのうえにウサギのシッポがついた尻をのせウトウトしている『菜々』をアゴでしめし、
「“エス”を『トラ箱』に運びがてら様子を覗こうとしたら、この有様サ」
「……この子『菜々』じゃないか。“馴致”はもう少し先の予定だぞ?」
「『トラ箱』だ?場所がちがうだろ、キミ」
「案内人に言ってくれよ。『みほと』たちの先導でここまで連れてこられたんだ」
ははぁん……読めた。と、もう片方。
「アイツ、前々からこの娘に目ェつけてたからなァ」
「ああ、あのビアンのウサギか」
なるほど、と片方の白衣がニヤニヤと。
「一服盛ってレズろうとしたんだな。その子の反応<ゾンビ・パウダー>のものだし」
「ナルホド。この先の“姦り部屋”目当てかぁ」
ふふっ、と二人の白衣は嗤い、」
「アイツらも、たいがいだナァ。いい加減にしろと前々から言われてンのに」
「念のため血液検査して、解毒薬を静注しよう」
「そうだな――きみ、スマんが『菜々』を連れて付いてきてくれたまえ」
「オラッ!施術のしなおしだ!!」
「イヤァツ!……ご主人さまァ!……ご主人さまァ!」
ハスキーな哀願が、身体を精一杯ねじった姿勢から後ろにいるオレに。
「その子……声帯を手術したのか?」
「いや、
「アタマと往生際の悪いメスだよ……“ウラ”の所属になるってのを、よく理解しないで
「単なるアルバイトか、援助交際の延長ぐらいに考えていたんだろ。カワイソウに」
しかし、その“可哀想”に同情の色はなく、あくまで
オレは店側の処置によって、あわれにもすっかり色情狂っぽく変えられた美香子の面差しを考えつつ、
「そうか。声が変わっていたので、すぐに知り合いとは分からなかった……」
「仕込めばイイ稼ぎするようになるぞぉ?――この素材は」
白衣の片方から、携帯の着信音が鳴り出した。
この男はあわてて取り出して何やら
男は通話を終えると、相棒になにやら耳打ち。相棒はオレの方をチラッとみてから(マジで?)という口のうごき。
「とりあえず行こうか。そっちのアンタも、ナナを連れてついてきてくれ」
オレは“メス奴隷『マゾ美』”にされた美香子を引き立てる白衣たちの後ろから、フラフラと歩く『菜々』を支えつつ、うす暗い廊下を歩いてゆく。
【STAFF ONLY】
冷たいLEDのもと、注意板がネジ留めされた非常口めく金属製の扉。
白衣の片方が、扉わきの光学機械をニラむと、網膜認証のロックが外れる音。
防音機能を備えた重そうな扉が開くと……周りの様子は一変した。
* * *
そこは大規模なペット・ショップを思わせる造りだった。
通路の両側にケージ・ウィンドーが並び、中で飼われるモノを展示するスタイル。
【新規入荷!】
【現在
【御成約済み】
【店長イチおし】
さまざまなポップや、あおり文句。
ところによって「値引き金額」が表示されているところも同じ。
違うのは、ウィンドーの規模が格段に大きいこと。
そして中で飼われているのが動物ではなく、いずれも少年少女~若い婦人という事だった。
ウィンドウの中は、トイレまでもが一体になったプラスチックの小部屋めくものもあれば、いましも拘束具につながれ、秘所をこちらにさらしたまま、前と後ろの
わりと豪華なウィンドーの中では、美乳な胸をもつベリショ髪な少女が、シルクの光沢をもつ大きなクッションに、なよなよと全裸の身体を
ふと、通りすがるオレに気づいたのか、首輪のはまる上半身をもたげ、軽く投げキッス。
よく見れば下腹部には無毛の幼いオチムポが、てろてろと。
ポップには凝ったフォントで文字が踊って……。
【フェミショタ→シーメール置換中】
両脇に次々と現れる奇想のウィンドウをよそに、オレは平然と通路を進んだ。
あくまでも表面上は「こんなの見慣れてますよ」とでも言いたげな顔で。
しかし、内心はモノめずらしさと好奇心を隠すの必死だった。
偏執狂の妄想をぶちまけたような、責めの種類と体位。
少女もいれば
大きなウィンドウは完全防音となっているらしい。
覚えのわるい調教中の奴隷を叱る罵声。
秘所を責められて悶えるよがり声。
激しくムチ打たれる者の悲鳴。
調教師の慈悲を乞う哀願。
薬を打たれた者の哄笑。
――そういった
まるで調教する者とされる者が、趣味の悪いパントマイムを演じるかのように。
そう。様々に色彩効果を
通路の行く手に、一人の小柄な紳士が立っていた。
その背後には、ガタイの良い体躯をした二人の黒服。
隣には『みほと』と『しをん』が、打ち
『マゾ美』を引き立てる白衣たちの脚がとまり、彼らが一礼した。
紳士は独り、
ベージュ色のスーツ。
一見して最高の仕立てだ。
カッティングの冴えが見事に。
生地も相当に佳いものを使っている。
だが、そのスーツをまとう持ち主はとえば、
“奇怪”の一言。
まるで竹中栄太郎の挿絵から出てきた悪漢のような風貌。
スーツに鮮血めくものが点々と
手をうしろに組んだまま、この年齢不詳な醜怪なる男はニコニコとオレに歩みよると、
「いや、どうもご苦労さまでした。
近づき、上着を差し出したフロアレディのほおが腫れている。
よく見れば『みほと』は鼻から血を流した跡すらつけていた。
してみると、この男の上着についた血は彼女のものだろうか。
スーツと引き換えに、オレは『菜々』を相手方にゆだねる。
イエロー柄のバニーは相変わらず呆けた
「さて――
小男はひとつ大きく頷くと、
「自分がどうなるか、すこし見学などして頂こうか。男のマゾ奴隷の注文も入ってましたからねぇ。だがその前に……」
そう言うや、この人物は後ろに回していた腕を前に突き出し、手に握るゴム製の電撃警棒を、グイとオレの喉もとに突き付ける。
「どこの手の者かな――ンぅ?」
「……」
「まさか
改めて見るまでもない。
オレのブリーフ・ケースの中に入れておいた警棒だ。
たぶん、オレの身分も照会されたことだろう。
考えてみればこんなヤバそうな店だ。廊下に監視カメラが設置されているのを想定しておくべきだった。これまでの行動は逐一見られ、疑問に思われたに違いない。
過去に、さんざホールド・アップをくらった記憶がよみがえる。
軍人くずれ――。
悪徳警官――。
土地の顔役――。
ひとしくドルがモノを言ったが、ここでの切り札は自分の“頭の中の情報”だけ。
オレは胸のうちで
「……いきなり警棒を突き付けるのが、客に対する礼儀なのかね――この店の」
「ホ。なかなか言いよるワ。たしかに“客”ならば非礼にあたりますが」
「私は。別にアヤしいものじゃないよ……」
「フン。その腹のスワり。よもやカタギとは言いますまい?」
「ところがどっこい。事実は往々にして奇なりでね――それソコの……」
オレは、なかば“性の奉仕人形”に改変された元・美香子にアゴをしゃくり、
「その子がらみで用事があったのサ」
オレはダッチワイフ系の「リアル・ドール」めいた姿になってしまった美香子をみつめる。
そんな
「まさか
「その子の拘束を、解いてくれないか」
「もうだいぶ施術の費用がかかっていますよ?――なにしろ健康保険証が訊かない」
そう言って、この小男は自分の冴えない冗談にクックッと忍び笑い。
「――いくらだ?」
「なんと。買い戻す気でらっしゃる?なんとまぁ……おい!」
男は白衣たちの方に顔を向ける。
片方が、天井を見つめつつ指を折って、
「まだステージ2ですからね。本格的な洗脳や、性器の改変もこれからで……」
「気の効かんヒトですね。概算でイイんですよ概算で」
「……顔面整形と薬剤、およびホルモン注入。初期洗脳に頭部の処置で4~500万」
――頭部の処置?
オレは眉をひそめる。
するとこちらのモノ問いたげな視線を見たか、やおら白衣の片方は“『マゾ美』”の豊かすぎる赤毛をわしづかみにし、引きむしった。
カチッと音がして、赤毛全体が頭からゴソリとはずれ、哀れにも坊主頭が現れる。
コーティングでもされているのか、みょうに光沢感のあるその頭には、サイコロの「五」のような配列でネオジム磁石らしきアタッチメントが埋め込まれ、銀色の輝きを見せていた。
「あとは胸部と舌部へのピアス。あぁ、性器にはマダです。これから膣の改良と、卵巣からの管を結索して永久不妊処置を」
「それに、これだけ手間ヒマをかけさせてくれたんだ」
小男はチッチッチッと舌を鳴らし、
「――手数料も、頂かなくちゃ」
「おりいって話がある。だがまずは、その子に服を着せたい」
オレは手にした上着を示した。
ふむ、と男の合図。
白衣たちが金具を鳴らし、後ろ手にした“メス奴隷”の拘束を解く。
首元に突き付けられた警棒を払いのけ、無残にも坊主頭にされた『マゾ美』近づくと、オレはスーツの上着を羽織らせた。
“奉仕人形”は身を縮めてスーツの前を合わせ――長い
「なかなか趣味のいいスーツだ……」
男はウムと満足げに。
おれも負けじと見識のあるところを。
「そちらも最高の仕立てじゃないですか。生地もすばら……しかった」
意図するところを汲んだのだろう。
この醜怪な小男は自分の服に飛び散った鮮血をながめ、その風貌の奇怪さをさらにまして、
「そうなのだ――じつに残念なことをしました」
そう言うや、性悪なレスボスたちを一瞥する。
『菜々』を虐めていた二人のフロアレディは、身の置きどころがないようにソワソワと。
「イギリス風ですね。どこのです?やはりサヴィル・ロウ?」
「――の、職人を数人引き抜いて、自分のブランドを作っとる」
「ちょっ!……なんて贅沢な!?」
オレは、自分が今おかれたピンチな状況も忘れて驚嘆した。
相手もそれが分かったのだろう。いささか自慢げに低い鼻をうごめかし、
「下ろしたてだったンですよ?これは。まぁ短気はソン気といいますからねぇ」
さすが反社組織。
ボッタくりクラブを経営し、なおかつバックは税務署にドスを効かせてビビらせ納税も免れているとあれば、こういう芸当もできるのだろうか。
「さ?――おりいって、の話とやらを聞かせてくれたまえ」
「ここでは……ちょっと」
オレは白衣二人、レスボスたち。それに黒服などを見やる。
これは自分にとって最後の賭けだった。
こちらの持つ情報に、相手がうまく食らい付いてくれるか、どうか。
小男が(フム)と興味深げにオレを見ると、
「ならば――ココを案内がてら、私の事務所にでも行こうかね?」