試製・転生請負トラッカー日月抄~撥ね殺すのがお仕事DEATH~【18禁版】 作:珍歩意地郎_四五四五
それからが、また一苦労だったんだコレが。
うしろの座席を使い、この女子高生の全身を執拗に拘束しているベルトを解き、黒革の包みから彼女を脱出させる。あのバカぢからのヤクザどもめ。思いっきり拘束したらしくて、ベルトひとつ緩めるのもひと苦労だ。おかげでキャビンの中、汗まみれになっちまう。
相変わらず目隠しと
「いいか?――これから目隠しを取るが、サワぐなよ?」
「……」
「キミを拉致ろうとしていたヤクザはもういない」
「……」
「危ないトコだったんだぞ?とにかく暴れないでくれ。オレは――キミの味方だ」
「……」
「分かったのか!?」
返事がないことにイラついたオレは、思わず彼女の全頭マスクに幾つもついた用途不明な金属の輪をつかみ、革にピッチリと包み込まれた彼女の頭を手荒にゆすってやる。
首輪につけられた金具が鳴り、猿轡に犯される
「ったく!――ヤクの売人なんかとカラむから、こんなコトになるんだ!」
腹立たしい手つきでオレは彼女の眼をキツく覆っていた目隠しをとった。
少女はしばらくまぶしそうにパチパチしてあたりを見回していたが、やがて顔面をまるごと覆う革製のマスクごしにコッチを見る。
――へぇ……。
涙目ではあるものの、思いのほかキレイな眼をしたヤツだった。
売人と関係するぐらいの生意気な牝ガキだ。先だって見た汚い言葉づかいから、もっとスレっからしな、ヒネた目つきを想像していたんだが。
全頭マスクうしろの編み上げを苦労してほどき、顔面にピッチリと貼り付いていた黒革を取り去ってみると、こもった汗に茶髪をベッタリと張り付かせる、ゲッソリと疲れた顔があらわれた。
うすく化粧でもしていたのか、ファンデやアイメイクが酷いことに。つけ
学校の生活指導から何か言われないのかね?
あるいは最近の生徒不足から、入学志願者に嫌われないよう、あまり校則はキビしくできないのか……?
などと、そんな考えをウロウロとめぐらすオレの顔を、ボール状の猿轡をベルトできびしく留められた少女は、ジッと見つめていた。まるでこちらの顔を記憶し、あとで警察にタレこもうとする算段をするようにも見えて。
オレはヘクサスから回収してきた生徒手帳を手にした。
よく見れば有名なお嬢様学校のものじゃないか。
やはりイイとこ出の娘なんだろうなと少女を見れば、彼女の目は一瞬、オレの手にする生徒手帳にとまるが、スネたような顔ですぐに視線はそらされた。
「
「……」
「いいか?世の中には見なくてもいい闇があるんだ。カネにつられてその世界に踏み込めば、後もどりはできないぞ?」
「……
オレはため息をついた。
「取ってもいいが、ワメくなよ?」
「……」
「分かったのか!」
ようやくコクリ、うなづく少女。
猿轡からのび、後頭部で留められた細いベルトの金具を、これも苦労して取り去る。
少女の口には大きすぎる黒い球をようやく吐き出させたとき、タラリ、よだれが淫猥な調子で紅いセーラー・スカーフに垂れた。
「はうぅぅ……おひゅひんははぁ……おうちひゃヘンいはっひゃっはぉお……」
舌を固められていたためか、ロレツが回っていない。
おっぱいを菱形に
ムリもない。あの変態ヤクザにハメられた性具を取り去った今は、ノーパンなのだ。
うしろ手にした拘束を解いて、少女はようやく自由となった。
自分のほおをさすり、相変わらず巻かれた首輪を気にする風。
そして、きびしくクビられていたオッパイが痛むのか、しばらく少女は自分の胸をサワサワと揉んでいたが、やがて舌のしびれはとれたのか、
「ご主人さまぁ……」
いつのまにかトロンとした目でオレを見つめ、とんでもないことを言い出した。
「わたし『メス人形“ボニー”』は、ご主人さまにえ~えんのちゅ~せ~を誓います……」
「え……」
トラックのキャビンが一瞬凍ったのは気のせいか。
オレは改めて目の前のJKをまじまじと見つめる。
拘束のせいでひどい顔になっていたが、普通にすれば十人並みぐらいの容姿だろう。
そんな少女が、コチラの驚きにはお構いなく妖しげなセリフをさらに続けて、
「“ボニー”は『メス人形』としてのおつとめを精いっぱい果たします。だから――ご主人さまも“ボニー”にやさしくしてくらしゃいッ!」
ヤベェ、とオレは身構えた。
一瞬、こめかみに冷や汗がながれる。
――これは、もしかして……。
“ザンネンな子”をひろってしまったのではという心配を振り払うように、
「ご主人様だァ?――オイオイしっかりしてくれ」
だって、と少女はイヤイヤをして、
「“メス奴隷の
「……ダレが?」
「ちょーきょー音声で、ずっと聞かされてました……」
少女は自分をつつんでいた黒い革袋のポケットからA5ほどの紙を抜き出し、オレにささげてよこした。
――性奴の手引き(ご注意!梱包を解く前にお読みください)――
・お買い求めいただいた性奴隷(以下本品と呼称します)は催眠音声による洗脳、
および調教馴致により、主人に対し従順に仕上げてございます。
・本品は最初に見た人物を自分の主人と認定するよう刷り込みがしてございますので
目隠しの除去には細心の心配りをお願いいたします。
・開梱後、本品に対し口腔奉仕、および性器と肛門に
飼い主様への認識は思考に強制ロックされ、以後は解けません。
・月に一度(最低でも半年に一度)の定期メンテナンスを推奨いたします。
当該時点において、本品に対し再洗脳・および健康診断を実施いたします。
(※性技の馴致は別途料金にて申し受けます。ご希望の方はご相談下さい)
・本品に対する強制認識コマンドは『メス豚“ボニー”○○をしろ』となります。
(○○はお買い上げ頂いたお客様の望む行為)
※注:頻繁にこのコマンドが必要な場合は再洗脳・調教の必要がございます。
お買い上げの店舗にてご相談ください。
なお本品は――
読んでゆくうちに頭がクラクラしてきた。
オレは少女が今まで頭に装着されていたヘッドフォン、そこから流れる大音量の怪しげな文句に思い当たった。もうすでに目の前の女子高生は、主人の言う事なら何でも聞く性具に洗脳されてしまったのだろうか。
ぶぉぉぉぉ!!!ふぉ、ぶぉぉぉぉと空気清浄機が強弱に節をつけてうなった。
ピンときたオレは、イヤホンを耳に付ける。
とたんに『マイケル』!と【SAI】の声。
『ハヤいとこ、この子をどこかの洗車機にでも突っ込みましょうよ。臭くてタマりません』
すると偶然、『メス人形“ボニー”』も同じように、
「ご主人さま?“ぼに~”をおフロに入れて下さい。そこで最初のご奉仕をいたします……そのまえに」
制服姿の女子高生はトロンとした痴呆顔で舌を出し、こちらに身を乗り出すと、あろうことかオレのズボンのチャックを開けようとする。
「おいおい、ナニなってんだ!」
なにって?と少女はフシギそうに小首をかしげ、
「最初のごほ~しですよ?おちんぽを“ボニー”のお口に入れて、わたしをご主人さま専門の奴隷にしてくらしゃぃい……」
もうウンザリだった。
トラックをトバし、愛液と汗と尿クサいこの少女を、トラッカーが使うコインシャワーに連れてゆく。終わった後は作業用のツナギを貸し与える(予備をクリーニングしておいて良かった!)。次いで作業用衣料品の量販店に行き、安いジャージの上下を買おうとすれば、なんとダサいのはイヤだと言いやがった。
ゼータクぬかせる身分か!とイラついて一喝すれば、
「……ご主人様は、『メス人形“ボニー”』の事がおキライですか?」
と、身体をクネらせ涙目で見つめてくるしまつ。
結局、半分キレかけ、さらに疲労からハイになったオレは、なにか変なスイッチがはいったらしい。
むかし営業マン時代に、ある上流婦人のツテで知った駅ビル近くの洋品店に入る。
そこで化粧担当をあてがい、メイクを最初から整えてやり、おまけに白いブラウスと茶系のスカート、それにガーター付きストッキング。とどめにはヒールの高い靴まで買ってやった。
このようにミョーに弾みがついてしまったのは買い物の最中、記憶と違い代替わりしたらしい若めな女主人から、
「ご親類の娘さん?いいですね――うらやましいですわ」
と言われ、何となく成長した娘とショッピングしたらこうではないかとういう妄想で舞いあがってしまい、財布のヒモがゆるんだせいだろう……情けない。これで今月はかなりの緊縮財政だ。つくづくバカなことをしたもんだとオレは自分を呪う。
しかし着替えを終えた彼女が、シャッ!と更衣ブースのカーテンを開けたとき、そんな考えは吹き飛んだ。
まぁ♪と女店長の声。
オレも思わず唸ってしまう。
革の拘束から助け出されたときの惨めな面影は、もうそこには無かった。生意気にも慣れた足つきでヒールを履き、微笑とともに出てきた彼女は、ひかえめに言ってもチョッとしたもので、そこいら辺のグラビアアイドルなどは遠く及ばないだろう。
――なるほど。
だが「いい叔父さんで良かったですね?」と女店主から言われた時、あろうことかこのバカ女は、
「オジサンじゃないの――ご主人さまよ?」
と、クソアホにも言い放った時は、背中にヒヤ汗が流れたが。
そのうえ、
「アタシは、ご主人様のメス――」
「うぉっほ!げへげへ!!」
あやうくオレは咳払いで何とかごまかす。
これは“事案”では?という微妙な表情が女店主の顔に浮かびかける前に、オレは会計をうながし、ポリを呼ばれることなくサッサとその洋品店からズラかることに成功した。
* * *
夕暮れが、いつのまにか街を押し包んでいた。
行きかう車の流れ、家路を急ぐ人の群れ。
気がつけば、少女はオレの腕に絡みつき、高すぎるヒールの危うさを補っていた。
「ホラ――だから言わんこっちゃない。その靴はかかとが高すぎるだろ?」
「大丈夫ですよ?ご主人様。『メス人形“ボニー”』はいつもこれぐらいのお靴でフロアに出ています」
「フロアだって?」
立ち止まり、反対側の腕にかけた制服のブレザーから、少女はボルドー色なカルチェの名刺入れから一枚を抜き出すと、こちらに渡してウィンクする。
磨きの入った、そのコケティッシュなしぐさ。
年甲斐も無く、不覚ながらドキッとしてしまうところを、オレは名刺を見るフリをしてごまかした。
「【Le lapin Rouge】……『美月』?“赤いうさぎ”って、何の店だ?」
「くれば分かりますよぉ?ご主人さまァ……」
そして生意気にも上唇をなめつつ、
「そのときにメス人形“ボニー”を厳しく躾けるエッチな“お道具”も、持ってきて下さいね?」
サービスしますよ?と言う彼女の言葉と、ピンクの名刺に印刷された書体から立ちのぼる水っぽい妖しげな雰囲気にオレは眉をひそめた。
――ガキがマセたコトを……だからトラブルになるンだよ。
「“ボニー”のアソコとおしりは、今カラッポで寂しいの……」
「は?バカ言え。だいたい女子高生だろ?学校にバレたらマズいんじゃないのか」
「大丈夫ですよ?ウチのパパ、いっぱい寄付してるもの。先生がモミ消すの」
いったいコイツは何だ?と思いつつ周りをみれば、待ち合わせ広場となったエリアの片すみで人目立ちのする美少女が、とうてい釣り合わないオレのようなムサい中年と何やら交渉をするような有様が周囲から浮いて見えるのか、いつのまにやら往来の視線を集めていた。
「え?チョットあの娘カワイー」
「うわ。ホントだ――ダレだろ?芸能人?」
「相手ダレ?」
「ADとかじゃない?」
「ウッソ、あの
「読モの打ち合わせでしょ」
「援交だったりして」
ささやき。笑い声。
中には露骨に携帯の背を向けるヤツまでいる。
さりげなくオレは彼女の細い腕をとり、その場を離れた。
「ご主人様――どちらへ?」
「駅だ。ホラ、交通費はあるか?」
500円玉を握らせようとすると、彼女が抵抗した。
「いやぁン。『メス人形“ボニー”』はハイヤーで移動します」
「金は?」
「ご主人様が……出して頂けるんでショ?」
イラッとくるが、考え直した。
これだけ目立つ娘だ。それに撥ね殺したヤクザの事もある。
車で帰らせた方が、たしかに得策――かつ無難か。
タクシー乗り場に向かおうとしたとき、少女がアッ、と甘い声を出して前かがみに。
「どうした?」
「ご主人様。『メス人形“ボニー”』は恥知らずにもイッてしまいました……はやくホテルでこのイヤらしいオマ〇コとおしりの穴を罰して下さいまし……」
――まさか。
オレは少女の耳にギッチリと装着されていたヘッドフォンから漏れていた音声を思い出す。
まさか本当に洗脳音声などというものがあるとは思えないが、女をフロに沈めるのが本職のヤクザが使っていたとなると、チョッと心配だ。
だが、もう知らんと思いきる。
オレは十分やった。エラいぞ!オレ!
「いいかい、これはご主人様の命令だ」
そう言われた時、少女の眼が期待にかがやくのを看る。
「今日はタクシーをつかって真っすぐ――
「……そんな。では『ボニー』は、これからどうやってご主人様とお会いして、キビしく
表情を一転させる少女。
そのすがりつくような必死めく声に、たまたま通りかかったカップルがヒソヒソと。
焦ったオレは少女の耳元に口を近づけ、熱い息を吹きかけながら、
「心配するな――お前のバイト先や学校は分かっている。そのうち連絡して、イヤというほどタップリ躾けてやる」
あはぁン――あぁぁぁン♪
彼女が嬉しそうにブルブルっと身をふるわせた。
見れば、早くもすこしスカートに染みができて。
トロンとした目が、期待に満ちた視線でこちらを見つめる。
――マズい。ハヤいとこタクシーに放り込まねば。
オレは少女の住所を聞いた。
遠くもない、が、近くもない。
駅のタクシー乗り場に行くまでもなく、タイミング良くやってきた“流し”の1台を止めて彼女を後席に放り込むと、運転手に1万円を握らせ、教わったばかりの所番地を告げた。
「イイんですかぃ?こんなに」
「釣りはとっとけ。そのかわり玄関口まで、間違いなく届けてくれよ!?」
「ご主人さまァ!――離れたくなぃぃぃ!」
さらに何か言いかける彼女に再度耳もとで、
「『メス豚“ボニー”おとなしく帰宅をしろ』……」
すると、効果てきめん、彼女はおとなしくなる。
タクシーの運ちゃんはギョッとするが、オレはすかさず、
「この
あぁ……と初老のオヤジが納得する気配。
ドアが閉められ、モーター音と共に彼女の振り向いた顔とタクシーのテールランプが小さくなってゆく。
――オワった……。
オレは激しくしく脱力する。
まるで滝に打たれるように疲労が夕暮れの空から降ってきた。
ビルにかかる大時計を見れば、すでに18時を回っているではないか。
これから日報を書きに事務所へ。そしてトラックを置いて社宅に帰るころはいい時間になってしまう。
――でもまぁ、仕方がないか……。
最低限“大人”としての責任は果たしたのだとオレは自分を慰める。
もう二度とあの女子高生に関わる気はなかった。
あの娘も、今からアレでは先が思いやられる。
親も大変だろう、と彼女の両親に同情。そしてふと我が身をかえりみて、
――オレの娘も、将来あんな風にならなきゃいいが……。
想いに沈みかかるところを頭を振って現実にもどった。
「あぁ、クソ。もう冗談じゃねぇ!」
もう終わったコトだ。
今夜のビールはヤメだ。代わりにシャンパンにしよう――はい決定!
――あ、いや待て……。
つい先ほどの支払いを思い出す。
カード一括払い。
やはり発泡酒にしておこうか……。
オレはトラックを駐めたところに戻ると、運転台に乗り込む。
空気清浄機が回しっぱだったようだが、いまだキャビンには
そして後席を見てウンザリ。
「あ~ぁ……」
このガラクタも、どこかに始末しなくては……。
『お疲れさまでした、マイケル』
「とんだ出費と回り道だったよ【SAI】――もう二度とゴメんだ」
『でもザンネンでしたね』
「ナニが」
少しばかり【SAI】がためらう気配。
「どうした」
『……あの少女、ボニーと言ってました』
「それが?」
「マイケル、ボニー、そしてわたしが“キット”役でトリオが出来上がったのに」
「はぁ?オマエまで?――カンベンしてくれよ」
事務所に戻る途中、オレはナビで神社を見つけ、そこに立ち寄った。
暗がりの中、とぼしい灯りに社殿が赤く浮かび上がっている。
なにか、こう、厄落としでもしたい気分なオレは、境内に入る盛大に鈴を鳴らし、小銭入れをひっくり返してぜんぶ賽銭箱へ。
思いっきり柏手をうち、
――願はくは 我が
いままでになく真剣に祈って、ホッと一息。
これであの娘との縁もこれきりだ。
いったいどんな悪魔がイタズラを仕掛けてきたのやら。
過去に転生モニターのドラマで見た有翼の悪魔や地霊の映像がうかぶ。
いやはや、なにか本当に得体のしれないものに捕まれかけていたのかも。
社務所でお守りを買い、念のためにおみくじを引けば【大吉】と出た。
ナイス。
せいせいした気分で玉砂利をふみ、ふと振り返って鳥居わきの立て札を見れば、
【 開運・縁結び 】
うぇ、とおもわず足を止める。
しまった。このところどうも詰めが甘い。
――まぁ神様も
トラックにもどり、ナビを復活させたオレは、ふと彼女から教わった所番地を【SAI】に告げる。
マップが移動し、高級住宅街の片隅に停まった。
“鷲ノ内医院”と表示のある場所で、ポインタが点滅している。
ストリート・ビューでみると、カーポートにはメルセデスとアルファロメオ、それにオープンの赤い軽自動車が駐まっていた。
「ふぅぅん。ヤッパり金持ちのドラ娘が、アブない遊びかァ……」
やめやめ、とオレは表示を元にもどした。
もう縁は切れたんだ――二度と関わり合うことはないだろう。
「いくぞ、【SAI】」
『了解しました、マイケル』
オレは晩方の込み合う車の流れに、重量級の殺人トラックを乘りいれる……。