※この作品はR-18です。

試製・転生請負トラッカー日月抄~撥ね殺すのがお仕事DEATH~【18禁版】   作:珍歩意地郎_四五四五

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     〃    (6:淫猥な小休止/エロ中尉。

「してぇぇぇ!……もっと、してぇぇぇ……!」

 

(サテンが触れあう、衣擦れの気配)

 

「アタシのクリちゃん……もっと……もっといぢめてへぇぇぇ!!111」

 

(かるい吐息。ときおり「ウッ」とか「ン、ハァッ」と声が入って)

 

「おしりを……『美月』のはしたないアヌス(肛門)を、イボつきの“お道具”でキビしく躾(しつ)けてくださぁぁいッッ!」

 

 

 赤いイブニングドレスをまとう、艶めかしい肉体。

 ソファーに投げ出されるような形であお向きに横たわるそれが、淫猥な文句を囁(ささや)きつつ蠢(うごめ)いていた。

 大きく開かれたガーターストッキングな美脚。

 細かな汗をうかべるシミひとつない肌。

 

 ――美香子……だよな?

 

 よがり声をもらし、のたうつ度にドレスの光沢地にさざ波が奔(はし)る、輝く。

 女子高生がまとうにしてはキワどいデザインの、サテン地と見えるその薄物(うすもの)は、胸と腰をあくまで豊かに、対して腰は驚くほど細くされた、同じく女子高生にしてはあり得ない“8の字型”の扇情的な肢体(からだ)にピタリとはりつき、見るからに淫猥な雰囲気を醸し出している。

 

 二の腕まである同色のロングアーム(長手袋)をはめた手が、片方は豊胸処置されこぼれんばかりな自分の乳房をモミしだき、もう片方はドレスのスリットからあらわになった茂みの奥をむさぼるように愛撫している。

 

「あんッ!――あん……あんッ!」

 

 おそらく営業用であろう疑似ダイヤモンド(ジルコニア)のネックレスや、豊かな赤毛のウィッグもそのままに、胸の頂に施術された銀色の乳首ピアスをキラめかせ、長い付けマツゲが飾るまぶたをウットリと閉じて快楽にほんろうされるまま、ピンク色に染まった柔肌(はだ)を波打たせている。

 

 となりの部屋からは、相変わらずBGMのようにギシギシ アンアンがつづき、次第に激しさを増してゆくよう。その伴奏にあわせるかのように、

 

「あぁン……ご主人様ァン……ごしゅじんサマぁん……」

 

 ビクビクッ!

 淫らな身体がかすかに震える。

 プックリと“おしゃぶり型”にされた淫らな施術のなごりが残る口唇を、赤い舌が満足げに(ぬめり……)となめたかとおもうと、満足げな吐息がもれた。

 

 やがて長ソファーの上で体位を変えようと身じろぎをし、薄目を開けたとき。

 (……(゚Д゚)ポカーン……)とアホのように立っている男ふたりにようやくきづいたらしい。

 

「いやぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁああああああァァァァアッッッ!!11」

 

 美香子はソファーの肘掛けに添えてあったクッションを二つともオレたちに投げつけた。

 サッ!とオレはよけるが、

 ボフッ!顔面モロにうける青年。

 運動神経のニブいやつめ。そんなことでは部隊で生き残れないぞ?

 

「ナニよ馬鹿ァ!帰ってるならそう言ってよ!」

「はぁ!?」

 

 そこでコッチもぶちぎれですよ。

 

「おやぁ?確か美香子は今日学校に行っているハズだがなぁ?」

 

 ギロリ!と過激なイブニングドレス姿の相手をニラみつつ、

 

「するってェと……このイヤらしい“オナニー女”は、ダ レ か な ぁ!?」

 

 そう言ってオレは『美月』姿の美香子に近づき、相手のオッパイをモミん!!

 

 てのひらに、ボッキした乳首を残酷に穿(うが)つピアスの感触。

 普段ならこんなコトは絶対やらないのだが、オレもよほど疲れていたんだろう。何度も言うように、仮眠を挟んだものの、あの気をつかう大重量トラックを昨日(きのう)から転がしつづけだ。

 

「ン、ひゃぅ!」

 

 この攻撃が思いも寄らなかったのか、またも美香子はビクビクッ!身体を震わせる。

 そしてすぐにトロンとした目になり、

 

「ご主人様アン……もっとぉぉぉ――って、アンタは見てんじゃないわよ!」

「怒るか淫(みだ)れるか、ドッチかになさい」

「あぁん、だってェ。そもそもなんで童貞(コイツ)がいるのよ!しかも――」

 

 美香子はズイ!と青年に近づくや、高飛車な顔を相手によせて凄みのきいた低音で、

 

「いっちょうまえにズボンの前オッ勃(た)ててンぢゃないわよ……?」

 

 前をあけたベンチコートの奥に手を突っ込み、グィと何かを絞りあげる。

 

「うっ!」

 

 青年がガクガクと腰をふるわせ、静かになった。

 

「ハン――おまけにドウしよォ~もないHair trigger(早漏)ね」

 

 ついでに美香子はオナニーしたときに自分の愛液で汚れた手袋を、青年のくたびれたチノパンでゴシゴシと拭き取った。

 

「感謝なさィ?サービスよ。さ、満足したらカエんなさぃ?ボク」

「いや。コイツは諸事情で家に帰れなくなったんで夕方までおいておく。大体なんでキミこそココに居るんだね?高校(がっこう)は!」」

「えぇぇぇ~~~だってぇぇ」

 

 美香子は自らのオッパイをすくい上げ、勃起乳首とピアスの形をイブニングドレスの生地に浮かび上がらせながらイヤンイヤンと艶めかしく身をよじらせて、

 

「きのーの晩はエロぢぢぃーのお客さん多くてタイヘンだったんだからァ。ご主人サマこそなによぉ~。きょうお仕事ぢゃないのォ?」

「コッチはきのうの昼からトラック転がしっぱなしだ。仮眠はしたけど寝たりないよ……」

 

 ンで、アンタは?と美香子は顔の向きを変え、青年をジト目。

 

「アタシらが働いているとき、どうせ一晩中ゲームでもやってたんでしょ?」

「まったくゲームなんぞで徹夜なんぞしおって。『フクロウ』みたいだって言ったのさ」

「ハ!フクロウはフクロウでも――早漏フクロウ!童貞(バージン)フクロウね!……ネェご主人サマ。フクロウって、英語で何ンてゆーの?」

「owl」

「オイルぅ?『バージン・オイル』!『エクストラ・バージン・オイル』!!」

 

 ギャハハハハとツボに入ったらしい美香子は手を打ち鳴らし、前屈みになって下品にバカ笑い。

 その様に、おれは眉をひそめた。以前(まえ)には見なかったふるまいだ。

 やっぱり『紅いウサギ』をハヤいとこ退店(ひか)せなきゃと決意を固める。

 どんどん下品になってゆくじゃないか。

 くそみそに言われ、嗤われ、かわいそうに青年はうつむいてしまった。

 そのとき自分が漏らしたズボンのシミに気づいたのか、ソワソワと。

 

「バァ~カ。『アウル』だ『アウル』。いや、オレの発音が微妙なのか……」

「ボク、やっぱり漫喫に行きます」

 

 いたたまれない顔をして去りかける童貞フクロウのベンチ・コートをあわててひっ捕(つか)まえた。

 

「待てマテまてィ!ココはオレの部屋だ。主人はオレだ。美香子はベッドへ、オマエはソファーを使え。オレは更新しようとして寝オチした珍歩みたいに机でねる」

 

 それを聞いた美香子はまたも『童貞フクロウ』に近づき、

 

「ワかってると思うけどアンタ、におい嗅ぐんじゃナイわよ?」

「だいたい、だナァ」

 

 またもや青年に威圧する美香子に、水商売の女のドスの効いた貫禄を見ながら、

 

「なんでオマエは、そのぅ……“事に及んで”いたのさ」

「だってェ……お隣の若夫婦、サカってるんだモン。アテられちゃうわ?あ、そうそう」

 

 美香子はまたもや手を打ち鳴らし、

 

「ア(・)ネ(・)キ(・)がねぇ、イイ部屋見つけたって!あのクソ父親(オヤジ)が手配したトコが、気に食わないケド」

 

 そうだ。

 このAV音声付きな賃貸は、もうすぐ引き払わなきゃならないんだった。

 所長(アシュラ)め!家賃補助ぐらいだしてくれてもイイのに!

 

「なんですか?」

「ん?あぁ、この部屋な?あと少しで引きはらわにゃならん」

 

 リビングにある衝立の陰でイブニング・ドレスを脱ぎ捨て、タオル地なピンクのバスローブ姿になった美香子は、

 

「おっきぃ部屋だよぉ。ご主人サマとぉ、アタシとぉ、詩愛さんの部屋もあるの。それでも一部屋余るぐらい!億ションだよぉ、億ション!」

 

 ――ダレが一緒に住むと言ったボケが。

 

 こいつらと一つ屋根の下になったら、それこそ気が休まらない。

 男の隠れ家は、ひとりであるべきなんだ。

 それに今、コイツは自分の姉のことをはじめて“詩愛”と名前で呼んだ。

 姉と血の繋がらないことを廊下で聞いてから、心の中で変化があったんだろうか。

 

「しかもタダ!」

「え……」

 

 聞いたとたん、不覚にも気持ちが一瞬、グラッとくる。

 

「mjd?」

「とうぜんよ!」

 

 フンス!と美香子はバスローブの腰にてを当て、得意げに胸をそらせる。

 そのあおりで、脱毛された股間と、穿たれたピアスの輝きが連なる大陰唇がチラリ、コンニチワして。

 

「アタシとご主人サマの部屋はブチ抜きにしてリフォームで、真ん中に天蓋とシルクのカーテンがついてるキングサイズなウォーターベッド置くのよ!」

「は?」

「そこでアタシはイヤらしいネグリジェ着て、おマンコとアナルにディルドー(疑似チンポ)咥(くわ)えて待っているの……ってキャハハハ!!」

 

 またも美香子のバカ笑い。

 彼女が指差すほうを見れば、またもや青年が鼻血を流していた。

 

「もー『チョー童貞フクロウ』(エキストラバージンオイル)ったら!チェリー・ボーイすぎだヨォ!」

 

 自分の格好に気づかず笑い崩れる美香子。

 鼻をおさえながら、それでも横目で彼女の下半身のガン見をやめない青年。

 うn、やっぱりコイツは“ムッツリ”だ。

 ようやくバカ笑いを収め、目尻をぬぐった彼女は、

 

「あのクソ父親(オヤジ)が詩愛さんとご主人サマをくっつけるために、一つ屋根の下に住まわせようとしてるでしょ?それを利用して一緒に住むアタシがご主人サマに「ズップリ」とハメてもらって、「キッチリ」と既成事実つくって、「バッチリ」といい子を産むってワケ。どう?このか~んぺきな作戦」

 

 ふふん、とまたもやバスローブの前を微妙にはだけたまま、胸をそらした美香子は腰に手をあてドヤ顔の笑み。

 と、そこでコイツが横目に青年の方をうかがっているのに気づいた。

 

 しかも、だ。

 

 下半身だけチラチラと揺らし、はだけたバスローブの奥に見えるであろう“おマムコ”をかすかにサービスするという心ニクい仕草。まったく、これも『紅いウサギ』の同僚から教わったショーもナイ技に違いない。

 

 思った通り『エクストラ・バージン・アウル』からまた鼻血が垂れて。

 キャハハッ♪と美香子はピョンピョン跳びはねると、風呂場へ消えた。

 

「……おそろしい子ですね」

 

 ティッシュで新たに鼻栓を作りながら青年はブツくさ。

 

「なんか。マエよりも過激になってる、ような」

「ヤツがバイトしている店のせいだろ。まったくしょーも無い……」

 

 部屋にこもった愛液の臭い。

 勢いよくカーテンを開き、窓をめいっぱい開けて換気する。

 この地域では昨夜、小雨が降ったらしい。木々の香りを含んだ冷たい風が爽やかだ。

 

 飲むか?とオレは台所にもどって冷蔵庫を開け、クローネンバーグの1664を取り出した。

 

【挿絵表示】

 

 

「いえ――ボクは、エンリョしときます」

「なんだぁ?酒はダメか」

「いえ、飲むと悪酔いするらしいんで、兄キたちから止められてます」

「ふぅん?まぁ……いい。酒なんざ、あまり飲まない方がいいんだ」

 

 オレはそう言って栓抜きで王冠をはじくと、冷えたヤツを一気にノドに流しこむ。

 

「あー!ズルぅい!アタシもー!」

 

 シャワーを終えた美香子が髪の毛をバスタオルで拭きながら出てきた。

 

「おまえー。“ウサギ”で飲んでいるんじゃあるまいなぁ。タノむぜホント」

「あー、お店で思い出した。ご主人サマ、どうスンの?ホラ」

「ホラって、何がだ?」

「ヤダもぅ!ちびピエロとの面談の約束だってばァ!」

 

 ――やべぇ。

 

 すっかり忘れていた。

 しかし青年から資料はゲットしてある。

 さしあたっての手土産には、コレで十分だろう。

 

「ちょっと、ホラ!アンタも!チンコだけシャワーで洗ってきなさいよ!『童貞フクロウ』にシャワー使わせてもイイでしょ?ご主人サマぁ」

 

 おう、と応えたとき、ふとオレは青年の顔を見て、

 

「おまえ……スーツとか持っているのか?」

「はぁ。あるにはありますケド」

「“吊るし”じゃなくて、良いスーツ?」

「兄と一緒に……『銀座米國屋』で仕立てました。けど……」

「けど?あぁ、分かった。デブったんでサイズが合わないんだな?」

「そんなことは!ボク、ゲームソフトで筋トレしてますし」

「なんでもゲームがらみだなぁ。OK,持ってるんだな」

「でも……シルエットが旧くなってるかも」

 

 こいつ。一丁前に。

 

「十分だ。ホラ、早くシャワー使いたまえ。そのあとオレも入って、またビール飲むんだから。脱衣所のボックスに未使用のバスタオルと下着があるから、それを使え?」

 

 青年は、黒くシミの浮いたズボンの前を気にしつつ風呂場に消えてゆく。

 それを見送っていた美香子は、微妙に声のトーンを落とし、

 

「ネェ――ご主人サマ?ひょっとしてなんだケド……」

「んぅ?」

「あの『童貞フクロウ』、まさか店(ウチ)に連れてくる気じゃないでしょうね」

「う……」

 

 ――まったく女のカンってヤツは……。

 

 美香子のジト目から顔をそらしていると、シャワー上がりな女の肌の香りが鼻先に。

 えっ?と思うまもなく、ヒゲを剃ってないほおにキスされる。

 

「ヤですよぉ?あんな早漏チンポ連れてくるなんて。第一“紳士の社交場”な『紅いウサギ』のお客サマとしてふさわしくないモン」

「なぁに言ってやがる。どうせチップ落とすヤツが上客としか思ってないんだろ?」

「……と、思うんだけどねェ。ちびピエロがウルさいんだモン」

「店主が?」

「いっつも『ライヒンには誠意をもって応対しろ』って」

「らいひん?あぁ、来賓か……」

 

 さすがは小男。

 相変わらずのジェントルシップだ。

 見た目に反し、品格と知性が備わって。

 それだけに、敵に回すとコワい存在ではあるが。

 

「店は、変わりないか?あのフロア長や、えぇと……ホラ、ド忘れしたクソ!フロアレディでトップのふたり……」

「あぁ、『小枝子』サマと『麗華』サマかぁ。うん、お変わりなくお過ごしになってらっしゃいます……」

 

 口調に本物の敬意が混じっている。

 やはり、フロアレディの間では、畏怖の対象らしい。

 『小枝子』が奴隷候補を調教する時のムチづかいは、いまだにハッキリとして。

 

「それとだな、サッチーとかいうバニーガールかフロアレディ、見なかった?」

「サッチー……知らない。どんなヒト?」

「こう、ちょっと固い感じの素人っぽい、わりと背の高めな……」

 

 美香子はちょっと首をかしげて眉をひそめ、

 

「う~ん。アタシが知らないなら、もしかして“ウラ”かも」

「ウサギの“ウラ”側……か」

 

 調教され、施術と洗脳によって性具に改変されていた美女や美少年の姿が浮かぶ。

 まかりまちがえば、自分もあのショーウィンドーの内側に居たかもしれないという畏れ。

 銭高のガサ入れは失敗したときく。ならばサッチーは、完全に“ウサギ”に取り込まれてしまったんだろうか。洗脳と、施術と――そしておそらくは“快楽”によって。

 

 ――まかり間違えば、この美香子も……。

 

 オレは美香子を見つめた。

 やはり、はやく“ウサギ”を退店せなくては。

 これ以上、コイツがスレてゆくのを見たくはない。

 と、こう考えていると。相手は、もはや『美月』の妖しい声音で、

 

「なによぅ、ご主人サマぁ……ヘンな目つきして」

「ハ!どんな目つきだ?」

「教師(センコー)がオセッキョウするときみたいな目!」

 

 はぁっ。

 

「おまぇナァ?言葉づかいには気をつけろって、小男――店主から言われてないかぁ?」

「ちびピエロはいつも“ウラ”だし」

「じゃぁ、『小枝子』と『麗華』からは?」

「べつに。おふたりともアタシにがんばってね、って」

 

 ふむ。

 それじゃついでにコイツの行儀を叩き込んでくれるよう、『小枝子』あたりに頼んでみるか。最低限、ことば遣いだけは、何とかしたいところだ。

 

「あ……ご主人サマ」

「ンだよ」

「なんかワルそうな顔してる」

「はぁぁ?ホっとけ」

 

 青年がシャワーから出てきたのと入れ替えに、オレも夜のドライブと【バンディ】の反応による冷や汗や脂を洗い流す。

 スーパー銭湯にもこのごろ行ってない。

 

 ――そうだ、フクロウと一緒に行ってくれば良かったか……いや、明るいうちにトラックを駐車場でさらすのは、やっぱマズいか……。

 

 心なしか薄くなったような頭を洗い、身体をこすり、シメに思い切り熱いシャワーを浴びてサッパリ。ビールを楽しみに風呂場から出ると、なにやらまた騒がしい。

 

 断末魔のような悲鳴。

 断続的な銃声。

 ケモノじみた咆哮。

 

「ほらー!だからココがワカんないのよ!」

「一つ前に分岐あったでしょ?そこまで戻らないと」

「え~!メンドくさい!ウラ技とかで何とかならないの!?」

「ムリですよそんなぁ……」

「チッ!ツカえないわねぇ!」

 

 ――またか……。

 

 青年が置きっぱなしにしていたゲーム。

 プロジェクターが投影する大画面の前で、二人がコントローラーをにぎり、肩を並べて騒いでいる。

 それを横目に、オレは冷蔵庫からまた1664のBlancを一本引きだし、王冠をはじいてビンのままラッパ飲み。かすかに尾を引く、桃のあと味。

 (小声:精鋭読者の皆さまも是非!珍歩おすすめです)

 

「……オマエたち、もう寝なさいよ」

「やぁん、ご主人サマぁ、このステージだけ……」

「ほら、ココです!ここの位置で倒さないと」

 

 ズビュッ!

 画面いっぱいの血しぶき。

 消えてゆく悲鳴……。

 

「あ~ん、もぉ……」

「そうだ、美香子」

「あによぉ、ご主人サマぁ」

「今夜、店に行くぞ。小おt……店主に会いに行く」

「あ、ちびピエロは今晩居ないよ?何かの打ち合わせだって」

「なら、明日以降だ。オマエのために、なるたけ早いほうがいい」

 

 アタシのためって?、と小首をかしげる美香子。

 ほら。ちょっとした仕草にも、なにやら妖しい色気がまじる。

 それが証拠に、青年がモジモジと“チンポジ”をなおして。それを

 

「早ィとこ店ェ辞めんと、オメーがどんどん品が悪くなるってハナシだ――なぁ?『フクロウ』さんよ」

「え……ボクに振りますか?」

「ちょっとアンタ。余計なコト言うんじゃないワヨ?変なコトいったら、もうオッパイ見せてあげないかんネ」

 

 とにかくタノんだぜ、とオレはゲームを再スタートするふたりに向かい、パソコン机のある部屋に引き取りながら、

 

「小おt……店主への連絡、忘れないようにな」

 

           * * *

 

 それから3日後のことだった。

 

 パリッとしたスーツ姿の男ふたりに、いかにも“水っぽい”露出多めな服を着た女ひとり。

 多くの乗降客や買い物客でにぎわう商業施設付きなターミナル駅の中央コンコースを、女を中にはさむ“嬲”のかたちで歩いていた。

 

 天井の高いその空間で、行き交う人々は等しく目をむき、凝視し、あるいはふり返る。

 

 

 

 

それは、やはり女の容姿(すがたかたち)のためだろう。

 

 

 

 

 波打つような赤毛。

 濃いめのアイメイク。

 おしゃぶりが巧そうな口唇。

 細い首には、南京錠のついた黒いチョーカー。

 豊かな胸は、寸足らずでダボついた白いタンクトップによって辛うじて隠されるが、生地に黒レースのブラが透け、ワキからは文様が丸見えに。

 

 ヘそピアスが輝く、あらわになった細い腰。

 

 かと思えば。

 

 豊かな尻。そこから延びるスラリとした美脚が丸わかりな、レオタード・タイツを思わせるメタリックなスキニー・パンツ。

 

 とどめは「これでもか!」と踵(かかと)の高い、足枷めいたアンクル・ストラップがあるSM風味な赤いハイヒールで〆られて。

 

「――マイケルさん?」

「んぅ……?」

「なんか、見られてません?ボクたち」

 

 ハハッ、とオレは力ない笑いをもらし、

 

「厳密に言えば……注目を浴びているのは、このアホ女だな」

「だから大丈夫かって言ったんですよゥ。そんなカッコで」

「仕方ねぇだろ!コイツがどうしてもコレで行くって聞かないんだから。しかしオレも、まさかココまでとは……」

 

 なによゥ!イイじゃない!と足を止め、腰に手をあててふんぞり返る美香子。

 

「日本人は、保守的になりすぎなのよ!」

 

 しかし、あまりにジロジロ見られ、携帯のカメラ音もアチコチにするので、オレはとうとう美香子に持参したレイバンのサングラスをかけさせた。本来は『赤いウサギ』の中でこれをかけ、視線を分からなくして店内の人物などを観察する用途のためだったのだが、こうなっては仕方ない。

 サングラスをかけた美香子も、ショー・ウインド-に自分の姿をうつし“ご機嫌斜めならず”な様子。歩き方もますます尻をふり、気取ったものになってゆく。

 

 そして、コレがいけなかった。

 

 どう見ても芸能人とお付きの者たち。

 あるいはヤクザの情婦と、その護衛といった雰囲気になってしまう。

 まるではじめて美香子と会ったときの再現だ。3人のまわりにジリジリと集団が出来てゆき、ひとかたまりとなった集団が駅のコンコースを進んでゆく。

 

 そのときだった。

 行く手のほうで、なにやら怒声が交錯するのが聞こえた……。

 

 

 

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