フォーリナーと一緒にいるにあたって、最も困ったのは住居と金だった。
今だからこそ、聖杯の力によってでかい屋敷を手にすることができたが、それ以前は転々と各地を渡りながら、誑かした一人暮らしの女性の住まいへと泊めてもらうことで生活をしていたから。
さすがにフォーリナーと共に歩みたいと思った翌日から他の女に手を出すつもりはなかった。
その名残は、今もまだ、俺たちの間にはある。
「おはよ〜」
ふにゃり、と同じベッドの中で眠っていたフォーリナーがこちらを見て笑う。
眠る場所を確保することが難しく、確保できたとしても一部屋ということが多かったあの頃の名残で、個室をお互いに持っていながらも寝室は同じ、そしてベッドも二つあるのに、どちらか片方のベッドで一緒に眠ることが多かった。
今日の朝は、こちらのベッド。
昨晩は、昼間にフォーリナーと一回交わったことで先に彼女が眠ってしまった。
そのため、一夜で溜まった程度のものでしかないが、彼女に対する肉欲が奥底から溢れ出る。
「……んむ!?」
唇を重ねる。
軽い唇の触れ合いから始まり、口の中へと舌を侵入させる。
ちろちろと、熱を持ったフォーリナーの舌と自分の舌の上で、互いの唾液が交換している。
甘い、と感じるのはきっと、常に彼女の媚香に脳が蕩かされているから。
「──んっ、ちょ、ちょっとまっ」
「やだ」
一度離れた唇を、すぐに重ね合わせる。
漏れ出た制止の声を無視してのキスは、なんとも言えない背徳の味がした。
本来なら決して手の届かない相手を、自分の好きに犯すことができる優越感。
無論、彼女がどうしようもなく嫌がるのであれば止めるつもりなのだが。
フォーリナーも、言葉で止めていても、胸板を押しての抵抗をしようと、その瞳には実際快楽が隠しきれていない。
眠る時、フォーリナーは服を着ないことの方が多い、というのは知っている。
こちらの幼馴染のように接してくる村娘のようなドレス、天子様の寵愛を一身に受けていた頃のように妻として接するミニチャイナ、そして戦場で敵を屠るためのクトゥルフチックな服装。
その全てで彼女は接し方を変えてくるのだが、ベッドの上で裸だった時は昨晩最後に着ていた服装に合わせた接し方。
……たまに、混じることがあったりするのだが。
ぐいぐい、とこちらの胸板を押す、形だけの抵抗。
たとえ受肉していようと彼女がサーヴァントであることには変わりなく、力を入れて押し飛ばせば、それだけでこちらは怪我をしかねない。
けれど、本気で嫌ならばそれを知った上で抵抗すればいいだけのことなのだから、それをしない時点で彼女も受け入れているようなものだ。
実際、終わった後に文句を言われたことはあれど嫌いだと言われたことはないので許されている感はある。
だから、こうして、こちらの胸板を押すために伸ばされた腕にするりと自分の腕を絡ませて、いつ見ても、いつやっても自分自身ですら不思議だと思う動きで、彼女が気が付いた時には手首が頭の上で縛られていた、という状況を作り出す。
「え、ええっ!? どうやったんですかこれ!?」
「知らない。俺もこうすればできるって言われて教え込まれただけだし」
術理は知らずとも、使えるので使う。
愛しい天然の傾国に伝える愛の言葉は白々しいものであってはいけないから自分自身の言葉で。
けれど、彼女を喜ばせるためならばそれ以外はなんでも使う。
詠天流なる、どこぞの宗派と同じ名前を持つ戦闘技術は、こうしてエロいことをするためにも使えるのだ。
縛るために使った紐に関しては投影魔術。
そこまで得意ではないが、それでも一瞬で消える程度ではなく、そこに強引にこの屋敷に安置されている聖杯から魔力を汲み取り、魔術回路を通して流し込んでその存在を補強する。
それによって、まあ一時間程度ならば普通のヒモとして使える程度にはなる・
普通のヒモなので、フォーリナーがその気になれば一瞬でちぎることはできるのだが。
「〜〜〜〜!!」
それよりも先に、胸に触れる。
ピンと張った桜色の頂点を、優しく食むようにして唇で触れて。
それだけで、フォーリナーは一度達してしまった様子。
幾度となくしてきた行為は、確かに彼女の体の奥底に根付いている。
「んふふ……」
はぁ、と吐息を漏らしたフォーリナー。
その熱っぽい媚態をこぼした直後とは思えぬ快活さを見せながら、フォーリナーは微笑んでいる。
その姿を見ると、村娘のような快活さも、天子に仕える貴人としての貞淑さも、全てを剥ぎ取ってただの女にしたくなる。
同時に、そうでなくては、という思いも湧き出てくるから、人の気持ちというのはほとほと面倒な代物だ。
「そんなに、私のお胸欲しい?」
「欲しい」
「うわ、即答」
もちろん、胸だけではなく全てが欲しい。
それを示すように、胸だけではなく、額、首筋、脇、臍、そして少女らしい花弁へと唇を落とす。
むず痒そうに身をよじろうとするフォーリナーは、けれど縛っている紐を外すつもりはない様子。
逞しい男を赤ん坊のように扱うのが好きらしく、俺はそこまで屈強というわけではないのでそういう対象として見られたことはない。
それでも、今のところは俺がフォーリナーの胸に触れると彼女は他の時に比べて特別喜んでいるように見える。
一番悦ぶのは、少女が秘しておくべき花園を蹂躙する時だが。
「ユゥユゥ」
「……はい、天子様」
フォーリナー、ではなく真名で。
少なくとも、彼女が召喚時に名乗った名前で。
呼んだ瞬間、少女が切り替わる。
多重人格を思わせるほどにはっきりとした変化。
村娘としての姿から、国家を腐敗させ、荒廃させる傾国の美姫としてのスイッチが入った。
「そろそろ君のことが欲しい」
「はい。あなたがそれを望むのであれば」
恋人として睦み合うのではなく、夫婦として、夫婦らしからぬ何処か退廃的な宴へと。
まるで当然のように、俺たちの性の宴は新たな熱を迎えるのだった。
主人公の中では詠天流は”教え”ではなく”サーヴァントすらも撲殺できる狂気じみた殺しの技”としか認識されていない悲しみ