悪魔と呼ばれる生物たちが暮らす冥界。その中でも名高い悪魔とされるフェニックス家。他の名門悪魔たちがそうであるように持て余すほどの広大な敷地を持ち、城のような威容を誇る邸宅の一室で、俺は悠々と朝のひと時を過ごしていた。
人間界にある国、日本から取り寄せた煙草を口に咥え、吸い込む。汚れた煙が肺を満たす。懐かしい感覚だ。俺はソファーにふんぞり返って喫煙を楽しみ、細長い筒状の煙草を眺める。汚く、脆弱な火が先端から灰に変えていく。立ち昇る白い煙をしばらく見上げた後、口から煙草を取り出して右側にあった灰皿へと灰を落とした。
悪くはないが、やはり昔に味わったときよりも随分と不味く感じる。こんな味だったか?
小首を傾げながら煙草を十分に味わうと、広げた両足の間に向かって煙を吐きつけた。すると、両足の間の床に座り込んでいたメイド服姿の銀髪美女が煙の直撃を受け、美しい顔を不快そうに顰める。しかし、メイドはすぐに表情を取り繕うと、極力感情を消した無表情で作業を続けた。
赤いスーツのズボンから飛び出た俺の肉棒を口内で包み込み、メイドが頭を上下に動かす。それに合わせて三つ編みにした銀髪が揺れるのを見つめ、俺は肉棒に絡む粘膜の温かさを感じながら喫煙を継続した。
吸って、煙をメイドの顔に向かって吐く。嫌がらせの連続にメイドは何の反応も示さなかった。完全に無視すると決めたらしい。口内に受け入れた肉棒を根元から亀頭までねっとりとしゃぶり、唾液で濡らし、その唾液をじゅるじゅると啜っていく。
「美味いか、グレイフィア」
熱心に口淫を行い、肉棒を隅々まで唾液で洗っていくメイドに声を掛ける。
グレイフィア・ルキフグス。艶やかな容貌の魅力的な女だ。他所の男と夫婦関係にあり、子供もいる立派な人妻。だが、夫にも子供にも黙って俺と肉体関係を結び、こうして他人棒に奉仕している。
愛しいグレイフィア。右手を伸ばし、ホワイトブリムを着用した頭を撫でる。白い布地の滑らかな質感とともに触り心地のいい髪の触感が手の平に伝わる。俺はグレイフィアを撫でながら煙草をくゆらせ、灰皿へと煙草を押しつける。
その時、灰皿の位置が微かに沈む。
「おい」
俺は灰皿、もとい灰皿を両手で持ってずっと立ち尽くしていた少女に鋭い声を掛けた。
「しっかり持ってろ」
「も、申し訳ございません、ライザーお兄様っ……」
ソファーの傍に立ったまま慌てて謝罪をする少女。金色のロールヘアを頭の左右で束ねたツインテールの髪型。髪型に似合う愛らしくも品のある幼い顔に後悔の色を滲ませ、白い指先でしっかりと灰皿を持ち直す。
俺をお兄様と呼ぶ少女は俺の実の妹、レイヴェル・フェニックスだ。十代半ばの年齢の割に女性的な肉体を包むのは見慣れたワンピース服ではなく、グレイフィアが今身に着けている濃紺と純白を基調としたメイド服だった。グレイフィアに持って来させたメイド服を着せてみたところ似合っていたため、以後はそれの着用を強制し、メイドとして俺に仕えさせている。
灰皿当番はメイドとしての立派な仕事だ。
メイドとしては半人前なレイヴェルを軽く睨みつけていると、ふと強い視線を感じた。この部屋には俺とレイヴェル、そしてグレイフィアの三人しかいない。その視線の主はすぐ割り出され、俺はグレイフィアへと目線を戻した。
「なんだ、その目は」
グレイフィアの表情には明確な敵意が広がっていた。今のやり取りを見て気分を害したのだろう。肉棒を含んで頬を膨らませておきながら俺を見上げる視線には怒りの感情が含まれているのがわかった。
「お前は、自分の立場を理解しているのか?」
俺はグレイフィアの前髪を左手で掴み上げ、顔を近づけて至近距離で視線をぶつける。グレイフィアは全く臆する様子もなく、髪と同じ銀色を湛える瞳で俺の顔を映す。整ってはいるが人相の悪い二十代程度の金髪男。今の俺の姿だった。
「何とか言ったらどうだ」
俺が言うと、黙って肉棒を舐めしゃぶっていたグレイフィアが反応を見せた。肉棒から口を離していき、大きく存在感のある極太の生殖器が姿を現す。グレイフィアの唾液を塗られててかてかと光る肉の表面には血管が無数に浮かんでいる。唾液の一筋が血管で盛り上がりを見せる表面を伝い、金色の陰毛へ吸い込まれて消えた。
グレイフィアはたった今までフェラチオをしていた口を開き、俺に訴えた。
「ライザー様。レイヴェル様を物のように扱うのはお止めください」
奉仕の手を止めて、主人に意見するメイド。主人に対する態度ではない。メイドは主人に逆らわず、主人の言うことに素直に従っていればいい。それもできないメイドならば、俺にも考えがある。
俺はグレイフィアの髪から手を離すと、横合いに右手を突き出した。すると、伸ばされた右手は手首から先が消失したように虚空に飲み込まれる。
「それは……」
この光景を何度か目にしているだろうグレイフィアが呟くのを聞きながら、俺の手の平が中で何かを掴んだ。それをそのまま引きずり出すと、消えていたかのように見えた手首が現実へと戻り、手の中には先ほどまでなかった物が収まっていた。
俺が有している特別な力、『アイテムボックス』。どんな質量の物でも不可視で不干渉な箱へと収納し、いつでも現実世界へ取り出せるというものだ。収納できる容量に制限はないため、持ち運びに困ることはない。
グレイフィアの前で、俺は取り出した代物を翳した。
小瓶だ。手の平で掴めるほどの大きさのそれは、透明な液体で満たされている。
「これをお前にやったのは、どこの誰だった?」
俺は小瓶の先端を指先で摘まみ、荒い動作で左右に振る。グレイフィアは苦々しい面持ちで眺めていた。
小瓶に満たされている液体。それは、フェニックスの涙と呼ばれる物。どのような傷も即座に完治させられる希少価値の高すぎるアイテムだ。特殊な儀式を経てようやく少量を作ることができるそれの中でも、今俺が手にしているのはさらに特別。傷だけでなく、如何なる病も忽ち治すことが可能だ。
この特別製のフェニックスの涙は俺だけが生み出せる。
冥界の悪魔、フェニックス家に名を連ねる俺、ライザー・フェニックスだけが。
「病に伏した息子を助けてくれた、その恩返しをするために俺の下に来たんだよな?」
「しかし、ライザー様とレイヴェル様はご兄妹で……」
「黙れ」
俺が言うと、グレイフィアは開き掛けた口を閉ざした。
「部外者が我が家の話に口を出すな。お前はお前の仕事をしろ。ほら、舐めろ」
俺の言葉でグレイフィアは忠言をやめたようだ。自身の立場ではどのような不満も飲みこむしかない。それを身に染みて理解したらしく、悔しげに口元を歪ませたのも束の間、落ち着きを取り戻すように吐息をつく。
「……かしこまりました」
そう言って、グレイフィアは尿道口に口づけを放った。
「そうだ。今は朝のお掃除フェラ中だろ? しっかりと舐めろ」
命じて、俺は小瓶をアイテムボックスへとしまい込む。
立場を再確認させたグレイフィアに、肉棒の隅々まで愛情を注がせる。亀頭も尿道口も、裏筋も舌で舐めさせる。俺の遺伝子が詰まった大きな睾丸を優しく揉ませ、吸いつき音を立てて口で可愛がらせる。
グレイフィアの舌で睾丸から亀頭の先まで舐め上げられ、欲望が煽られた。熱い衝動が湧き上がる。甘美な快感を伴うそれは睾丸からやって来た。口の中で温められながら唾液に濡れた舌で撫でられ、肉棒が太さを増した。
「奥まで咥えろ」
ぐぷぷっ、とグレイフィアは肉棒を収納する。視線は主人である俺に固定し、顔を上下に動かす。同時に両手で睾丸マッサージを行い、俺が気持ちよく果てることができるように準備を整えていた。
いいぞ、その調子だ。
俺は徐々に募っていく興奮に背を押され、その瞬間を待った。
出る、と思った直後には尿道口から精液が噴き出て、グレイフィアの口内に広がった。
「むぐっ!?」
グレイフィアの頬が瞬き一つの間に膨らみ、口から呻き声が漏れた。大量の精液がたったの一射で放たれ、グレイフィアの口中を制圧したのだ。それまで余裕のあったグレイフィアが狼狽し、慌てて嚥下を始める。来るとわかっていても驚くしかないほどの量だっただろう。
気持ちいい。人妻の口内に精液を流し込み、飲ませていく行為が。震えるほどの快感で俺の心を癒してくれる。一射、二射と連続して精液を放ち、いつまでも味わっていたいと思える時間を数分間楽しむ。
グレイフィアは無事に全部飲み込めたようだ。何度も口の端からこぼしそうになりながらも寸でのところで精液を啜り、喉に流し込んだ。今頃胃の中は濃厚な精液に塗れているだろう。空腹時に水を飲んだときのように音が鳴るかもしれない。
射精の勢いが弱まって、グレイフィアが音を立てて残り汁を啜る。余裕を取り戻しつつあるようだが、それでも数分間に及ぶ精飲は応えたのか、苦しそうだった。射精が始まる前よりも鼻を通す息は強く、乱れた呼吸を整えようと必死だった。
時間を掛けて平静を取り戻し、グレイフィアが窺うように俺を見た。何かに迷っていたようだが、意を決したらしいグレイフィアはゆっくりと口内から肉棒を取り出す。肉棒に付着した精液を唇で拭い取りながらゆっくりと。そして、大きく張ったカリ首をなぞって真っ赤な亀頭が解放され、ブルンッと勢いよく跳ねて全貌を曝け出した。
射精を経てなお萎える素振りを見せない肉棒の真横で、グレイフィアは口を開く。
「ん、あ……」
口内に溜まった白濁液。どろどろとした粘りを見せるそれは、濃厚なゼリーのようだった。その白濁ゼリーの中をグレイフィアの舌が泳ぐ。精液を掬い上げ、濃い雄の臭いを周囲に拡散させている。
「あ、あぁ……」
灰皿当番のレイヴェルが震えた声を上げた。
目を向けると、灰皿を持ちながらも恍惚とした顔を浮かべるレイヴェルがいた。何か怪しい薬でも摂取しているのではないか。そう思える状態だが、その様子に心当たりがある俺は問題ないと認識して放っておくことにした。
レイヴェルがあの状態になった理由は、精液を味わうグレイフィアを見たためだ。今のレイヴェルは精液をこよなく愛する肉奴隷。そうなるように『洗脳』を施してある。
「朝食だ。しっかりと味わえよ?」
グレイフィアは精液を味わうように舌を動かし続ける。俺の精液を口に溜めてそれを舌で弄ぶ人妻の姿は卑猥で、俺は我慢できずにグレイフィアの頬に肉棒を擦りつけた。温もりを帯びたすべすべの肌が触れ、肉棒がビクッビクッと痙攣する。
「ほら」
俺に促されてようやく、グレイフィアは自ら肉棒へ頬擦りをした。そうしながら精液を自分の唾液と混ぜ合わせ、口に収めきれなくなったところで口を閉じ、喉を鳴らして少しずつ飲んでいく。
程なくして、嚥下を終えたグレイフィアが大きく口を開いて舌を伸ばす。綺麗に赤く染まる口内に俺の精液はない。白い歯と歯の間にも精液の残滓はなく、全て喉へと流れて胃の中の精液と合流したことがわかった。それを確認して先ほどの溜飲を下げ切った俺は、顎をしゃくってグレイフィアに行動を促す。
「そのまま続けろ」
「……はい」
グレイフィアが亀頭にキスを何度も放ち、再び亀頭を咥える。
まだまだ続く口淫に表情を緩ませた俺は、視界の右端に映るレイヴェルを尻目に正面を見据えた。朝夜関係なく、常に紫一色で統一された薄暗い空。冥界では日常茶飯事の風景だ。気温は暑くも寒くもなく、ちょうどいい気候。冥界特有の少し粘りのある空気はまだ慣れないが、俺は徐々に今の生活に適応しつつあった。
「人間界が懐かしいな……」
ふと零した言葉を耳で拾ったらしいレイヴェルが少しだけ距離を近づけてきた。俺の命令をしっかりと聞き取り、忠実に守ろうという考えからだろう。奴隷としての自覚がある妹の姿が可愛く思えて、俺はレイヴェルへと右手で手招きした。
「灰皿を置いてこっちに座れ」
「はいっ、お兄様」
近くのテーブルに灰皿を置くと、レイヴェルがメイド服の裾を揺らして俺へと歩み寄った。裾を両手の指で摘まんで持ち上げ、「失礼いたします」と恭しく一礼すると、俺の右横に座った。
「お兄様ぁ……」
小動物のようにすり寄ってくるレイヴェル。俺はレイヴェルの背中に腕を回し、スカートの上から尻を掴んだ。年不相応に我が儘ボディになりつつある肉体を手の平で掌握し、体温を感じる。
「んふっ……!?」
もっとレイヴェルの熱を感じようと、レイヴェルの唇に自分の唇を押し当てた。驚いて大きく見開かれた目の内側で輝く青い瞳。その青い瞳は人間界の青空を連想させた。俺は可愛い声が漏れ出る口内を舌で掻き回しながら、意識を遠くに向けた。
一年前まで、俺は人間界に住む人間だった。犯して屈服させた女を売り物にする仕事に勤めていた。この仕事が他人から恨まれることであるという自覚はあったが、まさか売り物であるはずの十代半ばの少女に襲われるとは思わなかった。
気が強そうで整った外見に惹かれ、商売だけでなく自分にとっても便利な肉穴に仕立て上げていた途中だった。脅迫するネタも入手し、逆らうことはないだろうと思っていた。油断していたのだ。
一緒のベッドで眠る前に呑んだ飲み物に睡眠薬が入れられていたらしく、激痛で目を覚ましたときには致命傷だった。腹部に包丁を深々と突き立てられ、見たこともない量の血が溢れ出ていた。
もう間に合わない。冷静に悟ってベッドに沈む俺を他所に、少女は怯えた様子で逃げ去っていった。後を追う力も残っていない。携帯電話で連絡を入れて救急車を呼ぶことも考えたが、助けが来るまでに生きていられる保証はない。
俺は諦めた。仕方がない。これが俺の人生だ、と。
そんなことを思いながら、俺は息絶えた。
俺の人生は幸せだったと思う。だが、俺はもっと幸せになりたかった。他人がどうなっても構わない。俺が幸福を得るためならばどんなことをしてもいいと思っていた。誰かが俺のことを悪人だと言ったが、その通りであると自覚していた。
俺は悪人だ。若い頃は善い人間になろうと考えたこともあったが、結局は悪に堕ちた。俺は善人にはなれない。そう確信し、悪人なりの幸せを得ようと思った。
その想いが強かった故か、俺に奇跡が訪れた。
死後、冷たく何もない暗闇を漂っていた俺に誰かが話し掛けてきた。相手はどんな声で、何を話したのか詳しいことは覚えていない。ただわかったことは、その誰かは神の如き力を有していて、その力の一部を俺に与えてくれたことだった。
アイテムボックスや、他者を洗脳する力、などなど。
一つ一つがチートとも呼べる力を有しているそれらを得た上で、俺の魂は一人の男の肉体に押し込められた。それが、ライザー・フェニックスの肉体だった。元々あったライザー本人の魂を消し去って、代わりに新しい肉体の主となった俺。魂の入れ替えが行われた際にライザーが激痛でのたうち回っていたようだが、俺には関係ない。
俺はチート能力とライザーの肉体を得て、この世界で新たな生を受けた。
どうして俺にあらゆる物を与えたのか。その理由はわからない。確かに出会ったはずの高次元の存在は今になっても俺の前に姿を現さない。能力を悪用し、魅力的だと思った他所の女に手を出しても咎めの言葉もない。
俺は選ばれた。そう思うことにした。
余計なことに時間を費やさず、俺は現実を受け止めた。俺が悪人として、いや、悪魔として好き放題に生きられる現実を。
「んっ、ふっ、あっ……」
与えられた能力『洗脳』で肉奴隷となったレイヴェルを可愛がる。尻を撫で、甘い声を漏らす口を舌で犯し、肉棒をグレイフィアに奉仕させる。人間の時には関わることもなかった日本人離れした美少女と美女。朝食の用意を終えたメイドが部屋に来るまでの間、俺は二人の女と戯れた。